ギャグ・コメディ

白「黒ちゃん、お醤油取って」

黒「はい、でもお醤油をどうするんだ? 今日は洋食なのに」

白「え? だって目玉焼きにはお醤油だよ?」

黒「何を言ってるんだ、白は。目玉焼きにはソースだろう?」

白「えっ! お醤油だよ!」

黒「ソースの方がうまいじゃないか」

白「……お醤油の方がおいしいもん」

黒「白もソースで食べてみれば分かる」

白「……黒ちゃんこそお醤油で食べれば分かるもん」

白「……」

黒「……」

 重い空気が支配する。そんな中、一人の少女が空気を切り裂く。

黄「そういや、色無は何かけるのよ?」

無「え? おれはケチャップとマヨネーズ混ぜてるけど?」

黄「えーっ! なにそれ? 色無ってお子ちゃま?」

無「うるさい、カレーは黙ってろ」

黄「ひっどーい!」

黒「うるさいなぁまったく、あんなことで騒ぐなんて」

白「ふふふ、私たちも人のことは言えないよ?」

黒「そうだな、色無に比べれば醤油とソースの差なんて微々たる物だ」

黒「そうだ、そっちの醤油のを食べてもいいかな?」

白「うん、じゃ半分ずつにしよっ」

黒「(パクパク)醤油もおいしいな」

白「(モグモグ)ソースもおいしいね」

黄「カレーかけてもおいしいよ?」


無「マスター、掃除終わりました〜」

マ「そうかい? じゃあ休憩に入ってくれるかな」

無「そうさせてもらいます。でも助かりました、こんな急にもかかわらずバイトをさせてもらえて」

マ「いや、こっちとしても人手が欲しかったからちょうど良かったよ。……それにキミ目当てなのかお客も増えてるしね。他のところよりは安いかもしれないけど、労働と釣り合う程度には誠意を見せるつもりだよ」

無「本当にお世話になります」

マ「女の子にプレゼントを買うんだろう? いいことじゃないか。当日にはどこか食事に行くのかい?」

無「いえ、特には決めてませんが」

マ「やっぱりね、そんなことだろうと思ったよ。ほら、これを持っていくといい」

無「これは?」

マ「某有名高級ホテルに弟が勤めていてね、そこのレストランの優待券だよ。みんなと一緒もいいけど、二人きりで過ごしたほうが彼女も嬉しいんじゃないのかな」

無「そんな、もらえませんって」

マ「別に行かないなら行かないでいいんだよ。なんだったら金券ショップで換金したってかまわないさ。キミは本当によく働いてくれるからね、せめてもの礼だと思ってくれよ」

無「マスター……」

無「まずいなぁ、女の子にプレゼントあげたいって言ったら完全に彼女に渡すもんだと誤解してるよ。思ったとおりチケット二名様用だし。どうしたもんかなぁ……」

 

 1.朱色さん群青さんに渡す

朱「どう考えてもアタシら場違いだよね」

群「そうね」

朱「綺麗な夜景だけど、女二人じゃロマンもへったくれもないね」

群「写真取れるような雰囲気でもないし、本当にもったいないわね」

朱「見てよ周り、なんか頭の悪そうなカップルばっか」

群「朱色、言いすぎよ。でもまぁ、肩身が狭いのは確かよね」

朱「料理の味、わかる?」

群「緊張してそれどころじゃないわ」

朱「だよね。しかも全然足りないわ。寮で出す食事の参考にしようにも、食材がまずありえないし」

群「それよりも本当にここがタダになるのか不安でしょうがないわ」

朱「さっさと食べて帰ろうか。で、腹癒せに色無にお酌させよう」

群「賛成。一晩程度じゃ許してあげないんだから」

無「二人ともその辺りでやめておいた方が……明日に障りますよ」

朱「あぁ〜ん? なに言ってんだよ、ウチには黄緑がいるからぜんぜ〜んだいじょ〜ぶなんですぅ〜。アタシなんて空気よくーき」

群「なんで若いのにあんな店で食事なんて出来るのよ。一体いくら稼いでるのよ。しかも彼氏と二人なんて、一体どれだけ勝ち組なのよ。ねえ色無くん聞いてるの? どうして私達は女二人でご飯食べてるの? 色無くんは私の王子様じゃないの? ねえ聞いてるの? ねぇ!」

無「あはははははぁ……誰か助けて」

無「……うん、二人に渡すのはやめておこう」

 

 2.バカップルに渡す

店員「お客様、大変申し訳ありませんが、当店への危険物の持ち込みはお断りしております」

侍黒「む。しかし某は侍ゆえ、刀を手放すわけにはいかぬのだが」

男「まぁまぁ、こんな高級なところで飯食う機会なんてそうそうないんだし、少しの間だけでも預かってもらえばいいじゃん」

侍黒「しかしこの妖刀・血煙灯台を軽々と他人の手に渡すわけにはいかんだろう」

男「いちおう突っ込んでおくけど、その名前は侍用の武器じゃねえからな」

侍黒「貴様は侍の魂を他人に預けろというのか? 貴様だって自分の魂を人に預ける事なんて出来ないだろう!」

男「出来るさ」

侍黒「え?」

男「付き合い始めた時から俺の魂はお前に預けてある。お前に覚悟があるのなら、お前の魂を預かる覚悟だってある。確かにお前の刀を見知らぬボーイに渡すのは不安かもしれない。だけど俺を信じてくれ。何があってもなんとかしてみせるから、少しの間だけでもその魂、俺に預けてくれ」

侍黒「男……。わかった、だが少しだけだぞ?」

男「侍黒……。よし、じゃあ行こうか!」

侍黒「ああ!」

店員「お客様、お待ちください」

侍黒「まだ何かあるのか?」

店員「当店では危険人物(男)の来店を固くお断りしています」

侍黒「おぉぉぉぉぉとぉぉぉぉぉこぉぉぉぉぉぉ!貴様というヤツはぁぁぁぁぁ!!!」

無「……あの二人は駄目そうだな」

 

 3.大穴で行ってみる

店員「チ、チーフ! 大変です! チケットが浮いています!」

チーフ「何を言っているんだねキミは。可愛らしいお客様がお見えになっているではないか」

店員「はい?」

チーフ「お嬢ちゃん達、お父さんとお母さんはどうしたのかな?」

しろ「おとうさんもおかあさんもいないよ?」

くろ「いろなしがごはんたべておいで〜って渡してくれたの」

チーフ「おや、じゃあお嬢ちゃん達だけかい? 困ったな。おうちの電話番号とか住所とかはわかるかな?」

しろ「さー?」

くろ「にじいろりょーはあっちのほーにあるの」

チーフ「そうかい、お嬢ちゃん達の家は虹色寮というのか」

店員「あの、チーフ?」

チーフ「ああ君、私は虹色寮とやらを調べてみるから、この子達の世話を頼む」

店員「この子達って……? チーフ、最近働き詰めだったからなぁ。少しくらいは休ませてあげないとなぁ……」

オーナー「キミ、今日はもういいから、家に帰って休むといい。私もキミに頼りすぎていたのかもしれない」

チーフ「あの、オーナー?」

店員「チーフがいなくても、俺達頑張りますから、心配せずゆっくり療養してください!」

シェフ「ここに置いてあったデザート食ったの誰だー!!」

しろ「うまうま」

くろ「うまうま」

無「……絶対にろくなことにならないよな……」

 

無「……結局どうしようかねコレ?」

灰「貴方が落としたのはこの金のチケットですか? それとも銀のチ……ってこれプラチナチケットだ! すげー!」

無「どっから現われやがったこのヤロー」

灰「なになになにどしたのどしたの? ホワイトデーのお返しコレ? 誰誘うのだれ? ねぇねぇねぇねぇ?」

無「えっと……その」

灰「うっわやっべーやっべー、ちょいっとみんなに報告してくる! 色無がついに本妻決めるって!」

無「まて! 話をややこしくするんじゃない!!」

 こうしてホワイトデー当日、色無はみんなの期待のこもった視線を受けながら、胃の痛くなるような一日を送ったのでした。


青「くしゅん!」

緑「……くしゅっ!」

紫「ふぁ……くしゅっ!」

無「この時期はみんな辛そうだなー」

空「ふぁ……くしゅん! うう……」

無「空ちゃんも大変そうだね」

空「うう……先輩、代わって下さい……」

水「……くちゅっ!」

無「……(かわいい……)」

水「……くちゅっ! ……え? あ、あの何か……?」

無「え? い、いや、ごめん。なんでもないんだ(水ちゃんはくしゃみまで控えめなのか……)」

朱「……」

無(あ、朱色さんだ。確か朱色さんも花粉症……)

朱「くちゅん!」

無「へ?」

朱「くちゅん!」

無「あ……」

朱「……なんだよ、人の顔ジロジロ見て……」

無「い、いや……意外とかわいいくしゃみだなーと……」

朱「……お前、今週一杯風呂掃除とトイレ掃除の当番、掛け持ちな」

無「なんで!?」


 〜クラス編成職員会議中 関係者以外入室禁止〜

先生A「毎年クラス編成は悩みますなぁ」

先生B「そうですねぇ、仲良し同士ばっかりという訳にもいきませんし」

先生C「かといって、バラバラにするとクラスがまとまりませんし」

先生A「それに、今年は虹色寮生の女生徒達が……」

先生B「色無君に群がってますからなぁ」

先生C「いっそ、色無君だけ別のクラスにしてみますか?」

先生A「それは私も考えたんですが……ねぇB先生?」

先生B「えぇ、いつぞやの化学の実験で色無を別の班にしたのですが」

先生C「何か問題でも起きたのですか?」

先生B「問題というか、何かある度に寮生が色無の所に行きまして」

先生C「はぁ」

先生B「結局、事実上色無と他の寮生の班になってしまって」

先生C「それはちゃんと班の通りに実験をさせるべきだったのでは?」

先生B「それが、色無の他の班員も同意してましたし、それに」

先生C「それに?」

先生B「いろいろ色無君がフォローしていまして」

先生C「はぁ」

先生B「茶色君が塩酸持った時とか、水色君がマグネシウム点火で泣いた時とか」

先生B「黄色君が黄リンをカレーに入れようとしたり、あと……」

先生C「あ、もうそれで十分です」

先生A「やはり、新年度も寮生の女生徒と色無君は同じクラスにするしか」

先生B「やむを得ませんなぁ」

先生A「別のクラスになったところで、どうせ休み時間に入り浸りになるでしょうし」

先生C「そういう事情があるなら、他の生徒のためにも仕方がないでしょうな」

先生B「別のクラスにして彼女らを敵に回すのは避けたいですし」

先生A「会議時間も終わりですな、残りの生徒は適当に振り分けて終わりましょう」


めいさくげきじょう『かぐやひめ』

紫「どーも、おじいさんです」

黄緑「おねえさんです」

紫「へ? おばあ——いえ、何でもないです、ハイ」

黄緑「あらあらそうですか? じゃあ、早速ですけどこれまでの事をお話させていただきますね〜」

紫「始まりは私が竹やぶから赤ん坊を拾ってきた事かしら」

黄緑「えぇ。あの子、あっという間に都中の噂になるぐらい可愛い子に育ったのはいいんですけど」

紫「何をどう間違っちゃったのか、読書好きのヒキコモリになっちゃったのよ」

黄緑「あら、私はあれはあれで可愛いと思うんですけど?」

紫「おばあ——イヤイヤ、おねえさんがそうやって甘やかすからああなっちゃったんじゃない。で、仕方ないから」

黄緑「好きな人ができたら何か変わるかしら〜? なんて考えたんですよね」

紫「それでちょうど求婚者もたくさんいることだし、無理矢理にでも集団お見合いをやってみましょうかって事にしたのよ」

黄緑「でも、あの子せっかく来ていただいた方達に無茶なお願いをしちゃったんですよね〜。やっぱり嫌だったのかしら?」

紫「本当、ヘタに頭が回るって勘弁してほしいわよね。……っと、皆帰ってきたみたい。あの子の要求に応えられた人、いるかな?」

黄緑「どうでしょうね〜?」

紫「えっと、それじゃあまず『仏の御石の鉢』を頼まれた人ー」

橙「は〜い。これで〜す」

緑「……私が普段使ってるお茶碗に見えるんだけど」

橙「あ、やっぱバレる? 探しに行くのもめんどくさいし、さっきちょっと借りてきたんだけど。ダメ?」

緑「失格」

黄緑「残念でした〜。続きまして『蓬莱の玉の枝』を頼まれたのは誰かしら〜?」

黒「私よ。はい、これ」

紫「う〜ん、私の目には本物に見えるわね……どう?」

黒「私が持って来たんだから本物に決まってるでしょう。これで文句ない?」

緑「……」

青「く〜ろ〜っ!? 出てきなさぁ〜いっ!!」

黄緑「あらあら、どちら様?」

青「あんた、私が『蓬莱の玉の枝』を作るのにどれだけ苦労したと思ってるの!? ちゃんとお金払いなさいよ!!」

紫「……ってことはニセモノ?」

黒「あら、ばれちゃった」

緑「失格」

紫「次は『火鼠の裘』ね」

桃「はーい、今私が着てるこれがそうでーす。どう? 似合ってる?」

緑「それって燃えないっていう話よね」

桃「うん、そうだよ」

緑「じゃあ燃やしてみて」

黄緑「はいは〜い、失礼しますね〜☆(スポーン)」

桃「きゃっ!? い、いきなり脱がさないでっ」

緑「燃えてるじゃない。失格」

桃「へくちっ。……あの、何か着る物貸してくれないかな?」

紫「……どうせサイズが小さいとか言い出すからダメ。『龍の首の珠』を頼まれたのは?」

赤「ぼっくで〜すっ!! ほらほら、ちゃんと龍捕まえてきたよ? 見て見てっ!!(ズルズル)」

黄緑「あらまあ」

緑「……龍じゃなくて、龍が持ってる珠が欲しいって言ったはずなんだけど」

赤「へ? それなら邪魔だったから近くにいた子供にあげちゃった」

緑「失格」

黄緑「最後は『燕の子安貝』ですね」

水「ぁ、あの……」

紫「……水色? 『燕の子安貝』って茶が取ってくるんじゃなかったっけ?」

水「そうなんですけど、その……」

黄緑「何かあったんですか?」

紫「茶のことだからどうせ屋根に上る時に梯子から落っこちて失敗したとかそういうオチなんでしょ?」

水無「そ、その通りなんですけど、あの、それが……」

紫「何でそこまで口ごもるのよ。ま、まさかあの子死——」

茶「いっ、生きてまぁ〜すっ!!」

黄緑「あらまあ、元気一杯ですね。これなら水色ちゃんを代役に立てなくてもよかったんじゃないですか?」

茶「は、梯子を踏み外して失敗しちゃったのが恥ずかしくて」

紫「別に恥ずかしくないわよ。その程度予測済みだったし」

茶「そ、その……に、2段目で踏み外しちゃったんですっ」

紫「前言撤回。そりゃ恥ずかしいわ」

緑「……失格」

紫「結局全員ダメかぁ」

黄緑「まあまあ、そう気を落とさずに。あの子ならすぐにいい人ができますよ」

紫「そう簡単に言うけどさ、おばあ——違います、すごく若々しいおねえさんです、ハイ」

黄「ふっふっふ……主役は遅れてやってくる」

黄緑「あらあら、どうしたんですかおじいさん?」

紫「何でもない、何でもないから、いやホント」

黄「……はっはっは、主役は遅れてやってくるっ!」

黄緑「それならいいんですけど。それよりもどうしたんですか緑ちゃん、浮かない顔してますけど」

緑「ちょっと二人に話があるの」

紫「どうしたのよ、改まって」

黄「しゅ〜や〜く〜は、お〜く〜れ〜て、やってく〜るぅ〜っ!!!」

紫「うっさいわねあんた、さっきから何なの?」

黄「気付いてたならリアクションしてよ!? 私、帝なんだよ? 一番えらい人なんだよ?」

黄緑「よかったですねぇ。で、どうしたんですか?」

黄「そうそう、噂のお姫様を見に来たのっ。もし可愛かったら私のお嫁さんにしてあげてもいいかな〜って」

緑「もう、私には時間がないわ。迎えが来るの」

黄「あっ、この子が噂のお姫様? 確かに可愛いけど私ほどじゃあないかな〜、なんつって〜!!」

紫「……ちょっと、それどういう意味? この家から出て行くってこと?」

緑「その通りよ」

黄緑「いくら何でも急すぎじゃないですか? もうちょっとゆっくりしていっても——」

緑「私の一存で決まる話じゃないの。二人には凄くお世話になったし、感謝もしてる。でも無理なの」

黄「……あの〜」

紫「やめてよそんなの! あんたはここにいればいいんだから!!」

緑「私もそうしたいけど、駄目。決まった事だから……」

黄緑「そんな……」

黄「無視しないでよぉ〜っ! MIKADOだぞ〜っ!?」

紫「鬱陶しいなぁもう! 早く誰かこいつを引き取りに来なさいよ!!」

男「う〜い。迎えに来たぞ〜」

緑「……」

黄緑「これで落ち着いて話ができますね」

白「お待たせ、お迎えにきたよ〜」

紫「嘘っ、バカを相手してる間にもう迎えが来たの!?」

黄「ちょっとそれ誰のこと!?」

男「お前以外に誰がいるんだよ。ってか帰るんだから柱にしがみつくなっての、置いて帰るぞ?」

緑「おじいさん、おば——若すぎて困るおねえさん、本当にありがとう。私、行くわ」

黄緑「身体を壊さないようにくださいね?」

紫「……いつでも帰ってきなさいよ」

緑「ええ、すぐにでも。それじゃあ行きましょうか」

白「……あれ?」

男「お、俺?」

緑「急ぎなさい、貴方が来ないとご両親に挨拶できないじゃない」

男「……へっ? いや、俺はそこにいるバカの迎えに来ただけで、お前の迎えはそこにいる——」

緑「私の迎えは貴方だけなの。それが全てよ」

男「真っ赤になるぐらいなら言うな——イタタッ、引っ張るなって!!」

紫「……行っちゃった。どうしよう、コレ?」

黄緑「いいじゃないですか、めでたしめでたしって事で」

紫「いいのかなぁ……」

黄「……」

白「……」

黄「……代わりに連れて帰ってくれる?」

白「……えへへ」

黄「笑ってごまかすなぁ〜っ!!」

黄緑「白ちゃん、長旅疲れてるでしょう? しばらく家に泊まっていきません?」

紫「あの子連れて帰れなくてあんたも帰りにくいだろうし。ゆっくりしていきなさい」

白「わっ、いいの? ありがとう!」

黄「あの、私も——って閉め出さないでよ、MIKADOだぞ〜っ!?」


『もしも色無が執事だったら』

 青編

無「おはようございますお嬢様」

青「おはよう、色無」

無「お食事の用意が出来ております。本日は——」

青「待ちなさい」

無「どうなさいました?」

青「ネクタイ曲がってるじゃないの。……はい、これでよし」

無「あ、ありがとうございます」

青「あなたがちゃんとしてないと私が恥をかくんだから、しっかりしなさい」

無「はい、心得ます」

青「ままままぁ、だらしなくても、わわたわた私が注意してあげるからいいんだけどね。でもしっかりしなさいよね?」

無「はい、精進します」

青「ずずっと気を張っちゃうと疲れるから、偶には気を抜いてもいいからね?」

 灰色編

無「おはようございますお嬢様」

灰「おはよう色無」

無「ところで何故私のベットで寝ているのでしょうか?」

灰「てへっ」

 黄緑編

無「おはようございます、奥さぁぁぁぁぁぁぁぁ」

黄緑「ど う し て わ た し だ け お く さ ま な の か し ら ?」


赤「レインボーレッド!」

青「れ、レインボーブルー!」

緑「レインボーグリーン。(ボソ)」

黒「レインボーブラック」

桃「レインボーピンクぅ!」

赤青緑黒桃「5人そろってレインボーファイブ!(シャキーン)」

赤「うーん中々よくキマったね!」

緑「……違うわ」

黒「そうね。何かが違うわ」

青「そう、なんて言うか……暗いわ」

桃「確かに青、黒、緑って配色悪いかも……」

黄「そうだよ! 誰か抜けて私達を入れるべきよ!」

白「私はどっちでも……」

緑「私の特撮統計からすると緑と黒が共演した戦隊物はほぼ皆無。つまり……」

黒「将棋ね」

水「あの……私は……」

緑「君はたまにブルーと銘打って代りに入る可能性がある。ちなみにハリケンブルーは明らか水色だった」

青「そ、そんな!私もレギュラー争いの内に入ってるの!?」

黄「緑でも黒でもいいから誰か代わりに入れてよー!」

紫「わ、私はなんなのよ!」

赤「聞いて紫ちゃん! 紫ちゃんはなんと6人目のヒーローなんだよ!」

紫「ってことは私は最初敵だったりするの! 嫌よ! そんなの!」

黄緑「私もそうみたいなの」

緑「黄緑はハリケンジャーのシュリケンジャーで——」

全員「12そろってレインボートゥエルブ!!!(ドッカーン)」



 日に日に日差しが温かくなり、ときに汗ばむこともある今日このごろ。共同のリビングに行くと、リラックスした様子の彼女と目があった。

 その手元には、冷たそうな飲み物が入ったカップが置いてある。ふと喉の渇きを覚えた俺は、一言声をかけてから返事を待たずにそれを手に取った。

 一口二口味わい、礼を言ってカップを置くと、微妙な表情をした彼女がこちらを見つめている。そこでようやく気づいた——今の行為が意味していることに。

 悪戯心がうずいた俺は、少しにやけた顔で試すように言った——。

「なあ、これって間接キスだよな?」

『色鉛筆にこれって間接キスだよなって言ったら』

 

青「い、いきなり何言ってんのよ、バカ!!」

無「いや、バカってことはないだろ。事実を言ったまでだ」

青「それがバカなことだって言ってんのよ! だいたい、許可も得ずに勝手に飲まないでよ!」

無「悪い悪い。もう喉が渇いて仕方なかったもんだからさ。あ、気になるんだったら新しいカップで入れ直してこようか?」

青「い、いいわよ別に。もうそんなに喉渇いてるわけでもないし……これを飲むから」

無「ふーん……」

青「か、勘違いしないでよね! 飲み物を無駄にするのが嫌なだけで、別に色無との間接キスなんか全然意識してないんだから!」

無「なんも言ってないけど。まあ気にしてないならよかった」

空「お姉ちゃん……またベッドの上でごろごろしながら自己嫌悪することになるのに、懲りないなあ」

灰「いやー、前々から分かっちゃいたけど、やっぱり空の姉ちゃんは本物だね。もうテンプレ通り。純正品だね」

 

紫「はあ? またそんなつまんないこと言って……ホント色無ってお子ちゃまだよね」

無「うわ、紫に子供扱いされるとは、さすがに思わなかったな」

紫「どういう意味よ!?」

無「べっつに〜。ただ、卵ボーロもりもり食べながらアイスココア飲んでる誰かさんの方が、よっぽどお子ちゃまだってこと」

紫「い、いいでしょ、好きなんだから!」

無「それだけじゃないさ。お前だっていろいろ心当たりあるだろ? 胸に手を当ててよーく考えてみろ……おっと悪い、そもそも当てられるだけの胸がなかったな」

紫「な、なんだとー!!! もう怒った! 絶対許さないんだからね!」

無「おっと、へへーん、そう簡単にはつかまんねーよっと! ここまでおいでー!」

紫「待てー!」

黒「どっちが子供かと言われたら……」

緑「……どっちも子供、と答えざるを得ないわね」

 

白「ふふふ……そうだね。私も今そう思ってたとこなんだ」

無「そっか。俺たち似た者同士だな」

白「そうかもね。はー、なんか喉渇いちゃった」

 ゴクゴク

無「……これで白も間接キスだな」

白「あ! そ、そうだね……全然気づかなかったよ。えへへ」

無「俺もまたもらっていい?」

 ゴクゴク

白「また色無くんも間接キスだね。じゃあ、また私も」

 ゴクゴク

無「また白も、だな。ははは」

白「そうだね。うふふ」

男「ぶちこわしたい……あの場に行って目も当てられないような奇行を演じ、何もかもぶちこわしたい……」

侍「寮生にとってはこれが日常茶飯事なのだぞ。耐えるのだ。これも精神修養の一環と思うのだ」

 

黒「そうね。まさしく間接キスだわ」

無「いや、そんな涼しい顔で肯定されてもつまんないって言うか、リアクションに困るって言うか……」

黒「私が口をつけたカップが色無の唇に触れて、私の唾液混じりの冷たい液体があなたの喉を潤したのね」

無「ちょ、お前何言って——」

黒「私も一口いただくわ。あなたが触れていたのはこのあたりかしら……ふふふ……ふう、ごちそうさま。あんまりおいしかったからつい一息に飲み干しちゃったわ」

無「いや、だから——」

黒「ああ……今あなたが食道を通っていくのを感じたわ。言い方を変えると、あなたの分身が私のお腹の中に——」

無「わー、やめろやめろ! もう降参!」

灰「色無がお姉ちゃんをからかおうなんて、十年早いんだよね」

 

赤「ん〜、そう言われるとそうかもね!」

無「そう言われるとって……赤はあんまりそういうこと気にしないのか?」

赤「だって陸上部の子たちとしょっちゅうスポーツドリンク回し飲みしてるしねー」

無「ああ、運動部だとそういうこともあるのか。でもそれって女子部員同士の話だろ?」

赤「たいていはそうだけど、男子とだってするよ」

無「……え?」

赤「あとはタオルの貸し借りとか。もちろん使ってないやつだけどね。男子は忘れっぽい子が多くてさー、しょっちゅう借りに来るんだよ」

無「それは、お前……」

赤「そのうえすぐなくしちゃうんだから、困っちゃうよ。まあボクはいっつも何枚か用意してるし、新しいの買って返してくれるからいいんだけどさ」

無「禁止! 今後男子と回し飲みしたり、男子にタオル貸すの禁止!」

赤「えー、何でさ?」

無「いいから禁止ー!!」

 

無「なあ、これって間接キス——ぶーーーーーーーーーーっ!!」

黄「あはははは、ひっかかったひっかかったーー!!」

無「おま……なんだこの、最初はさわやかな甘みしか感じないのに、口に含んでからしばらくすると漂う嗅ぎ慣れた刺激臭は……」

黄「色無が来る直前に、オブラートに包んだ特製ブレンドのカレー粉をカルピスの中に入れておいたのさ!」

無「なんてことしやがる! だいたい、俺がお前の飲み物を横取りするって何で分かったんだよ!? エスパーか?」

黄「ふふふ、気温、色無がさっきまで肉体労働していたこと、色無が買い置きしてたアクエリアスが今朝なくなったこと……これらから君の行動は容易に予測できるのさ!」

無(こいつ……バカのくせに頭がいい!)

 

緑「……そうね。ところで、古来キスは相手の浮気を確認する手段でもあったけれど、間接キスでは浮気の有無は分からないわね。それに唾液中にはさまざまな雑菌、特に虫歯菌が繁殖しているから、あまり回し飲みをするのは褒められたことではないわ。それから——」

無「緑ってさあ、何か失敗したり照れたりしたとき、それを隠そうとしてやたらと小難しい理屈を並べ立てるよな」

緑「……照れてない」

無「いや、照れてるだろ。だって耳まで真っ赤——ばぶっ! おい、本で殴るのは反則べぶっ! 分かった、照れてない照れてない! やめろ、ハードカバーの角はシャレにならん!」

緑「照れてない」

 

茶「えっ!? かっ、かかかか間接キス!?」

無「ちょっと茶、落ち着け! まずはカップをテーブルにそーっと——」

茶「え? あ、はい……」

 ツルッ

茶「ひゃああああああああ!?」

 スポーン! ガシャーン! ガタガタガタガタ! ズシーン! グラグラグラグラ……ゴロゴロゴロゴロ……バッターン!!

『ええ、私たちはただ呆然とそれを眺めることしかできませんでした。まさにリアルピタゴラスイッチでした』

                           ——虹色書房刊「色無——酒池肉林こそ我が人生」より抜粋

朱「で、食器はほぼ壊滅、棚も半数近くが使用不能か……やってくれたな」

茶「はうう、ご、ごめんなさい……」

朱「いや、もちろん色無が責任持って直してくれるさ。なあ?」

無「はい……正直すんませんでした」

 

桃「ふふふ、そうだね……うれしいな、色無くんと間接キスできるなんて」

無「そ、そうか? 面と向かってそう言われると、なんかこっちが照れるな」

桃「色無くんからそんなお誘いがあるなんて、ちょっとドキドキしちゃう……でもいいよ、桃はいつでも準備OKだから」

無「はい? いや、別にお誘いとかそんなつもりは……」

桃「もう、今さら恥ずかしがらないで。『これって間接キスだよな。でも直接キスもしたいし、できればその先も……』ってことでしょ? ちゃーんと分かってるんだから」

無「いやいやいや、そんなことはみじんも思ってない……ことはないこともなきにしもあらずだけど、心の準備とか公序良俗とか俺たちまだ高校生だとか——」

桃「そんなの、ぜーんぶ愛があればなんにも問題なし。ほーら、勇気を出して……」

無「ま、また今度お願いしマース!!」

桃「あん、もう……意気地なしなんだから」

灰「ああなるのが分かってるのに、何度もちょっかいかけては逆襲されて逃げ出す色無ってなんなんだろうね? 学習能力がないのかなー?」

空「……寸止めマニアなのかも?」

 

橙「ん〜……ダメ! もう全然ダメ! 三十点!」

無「は? 何が?」

橙「そんなだらしない部屋着のままで、カップに入った森永チルミル飲んで『これって間接キスだよな?』なんて言われても全然ぐっとこない!」

無「いや、別にそういう意図があったわけでは……」

橙「そうね、この時期ならジャケットにジーンズが無難かな。二人で一日遊んだあと、バイクで立ち寄った夕方の海、なんてシチュがいいよね」

無「俺チャリしか持ってないんだけど」

橙「ガードレールに腰掛けて話してるうちに、ちょっと寒くなった私に買ってくれた缶コーヒー。くしゃみする色無を笑う私。ちょっとムッとした顔の色無にお詫びのつもりで缶コーヒーを渡すと、それをぐいと一息に飲んで、真顔でさっきの台詞を言う……これね!」

無「人の話聞けよ」

橙「もう分かったと思うけど、服装のみならずシチュエーションや台詞にもこだわる……これが真のオシャレなわけよ。今のはほんの一例だからね。次の日曜日空けとくから、めいっぱい知恵を絞ってさっきの台詞にふさわしい最高の舞台を用意してよね! それじゃ!」

無「……え、なに? 今のってもしかしてデートの約束?」

 

無「なあ、これって間接キス——」

水「きゃーーーーーーーー!!!」

無「うわ! びっくりしたあ……なにごと?」

水「な、何でもないです……」

無「何でもないってことはないと思うが……まあいいや。それで、これって間接キ——」

水「きゃーーーーーーっ、きゃーーーーーーーー!!」

無「うわ!! だからなにごと!?」

水「え、えっちなことを言ってはダメです!」

無「エッチなことって、俺はただ間接——」

水「ダメダメダメだメーーーーーーー!! ダメです!!」

無「……分かったよ」

水「はあ、はあ……」

無「……間接——」

水「きゃーーーーーーっきゃーーーーーっきゃーーーーー!!」

無(おもしろい……)

黄緑編はこちら


『もしも色無と色鉛筆が七年ぶりに再会する幼馴染だったら』

赤「雪……積もってるよ?」

無「そりゃあ、どっかの誰かさんに二時間も待たされたからな」

赤「あはは……ごめんごめん。これでも結構急いだんだけど」

無「その割にはあんまり疲れてなさそうだけどな」

赤「ボク陸上部だから。ほら、お昼に練習が終わって、まだ時間があるなと思って部屋で休んでたら……」

無「見事に熟睡した訳だな……。陸上部がそんなのでいいのかよ。朝練に起きれなかったりするんじゃねえの?」

赤「それとはまた別だよ。……それに、ちょっと起きたくない夢だったから」

無「はあ? なんだそりゃ?」

赤「……秘密だよ。でも色無が変わってなくてよかったよ。一目で色無だってわかったもん」

無「そういうお前もな。自分のことを「ボク」って呼ぶあたりとか」

赤「うっ……しょうがないじゃん。もう慣れちゃったんだもん」

無「ははっ! そうやってすぐ頬膨らませて拗ねるところも昔のままだな」

赤「……色無の意地悪もね」

無「何を言う。俺のは更に磨きが掛かってるぞ」

赤「余計悪いじゃんか……あーもう! ほら! 色無も立って!」

無「ん、なんだよ?」

赤「寮まで競争! ほら、行くよー!」

無「ちょ、お前陸上部なんだろが! というか俺は道覚えてねーよ!」

赤「聞こえなーい!」

 

青「雪……積もってるわよ」

無「お前に待たされるとは思ってなかったぞ、青」

青「悪かったわよ……私だってそんなこともあるわ」

無「ふーん……しかし、どうして遅れたんだ?」

青「……べ、別になんでもないわよ?」

無「怪しい……何もないのに一時間も遅れるか?」

青「……」

無「おーい、青?」

青「あーもう、うるさい! いいじゃないのよそれくらい!」

無「うおっ!? ちょっと待て、俺が怒鳴られるのはおかしいだろ!」

青「あ……その、ええと……」

無「なんなんだよ……ひょっとしてあれか、緊張して一睡も出来なかったとかそんなのか?」

青「っ!? あ、ああ……」

無「……へ? ひょっとして……図星?」

青「……」

無「え、ええと、そういうのも可愛くていいと思うぞ、俺は。うん」

青「よ、余計なお世話よ!」

無「あだっ!? ちょ、落ち着け!」

 

黄「やっほー! 愛の天使黄色ちゃん参上! さあ、感動の再会に咽び泣くがいい!」

無「これだけ遅刻してきてその態度とはどういう料簡だコラ」

黄「慌てない慌てない。ちゃんとお詫びの品も用意してありますよっと。凍えそうな色無にこれをプレゼント」

無「缶コーヒー一本かよ……って、冷たっ!? なんで冷たい奴なんだよ!? 嫌がらせか!」

黄「ノンノン。そこは「つめた〜い」だよ? ほら、リピートアフターミー?」

無「何この仕打ち? 俺なんか悪いことしたか? 普通に待ってただけだよな?」

黄「まあまあ、そう言いつつなんだかんだで許してくれるのが色無の恐ろしいところでしょ?」

無「お前俺の何知ってんねん。いいから反省しやがれこのスットコドッコイ」

黄「むう……昔から思ってたけどさ、色無ってなんか私には厳しくない? ツンデレ?」

無「アホ。で、遅れた理由は何なんだよ。どうせ寝坊したか日時間違えたかのどっちかだろ?」

黄「あー、まあそういうことにしといた方があたしらしいかな……?」

無「なんだそりゃ、どういうことだよ」

黄「んー、教えてほしい? だったらほら、頭下げないと。レッツ土下座」

無「ははは、こやつめ。しまいにゃ殴るぞオイ」

黄「きゃー、色無が乱暴するー! 逃げろー!」

無「って、お前が逃げたら俺が道に迷うだろが! 待てこの野郎!」

黄「はっはっはー、ここまでおいでー!」

 

無「久しぶりだな緑。待っててくれたのか……って、あれ?」

緑「……」

無「おーい、緑さーん。もしもーし……読書中で反応無しか」

緑「……」

無「この雪の中でよく読むな。昔から本読んでるときはすごい集中力だったもんな、こいつ」

緑「……ふぅ」

無「何読んでるんだ?」

緑「色無? 別に面白いものじゃ……え?」

無「どうした?」

緑「い、いつから来てたの!?」

無「ちょっと前だぞ。つーか、何読んでるんだ?」

緑「あ、ちょっ……」

無「……『円滑な人間関係を築く方法』。へえ、こういうの気にしたりするのか?」

緑「悪かったわね。私の愛想が悪いことぐらい、あなたも知ってるでしょ?~」

無「いや、でも大丈夫だと思うぞ? 俺はお前のことはちゃんと分かってるつもりだし」

緑「なっ……」

無「そこで黙られると結構恥ずかしいんだけど」

緑「……はあ、よくもまあそんな臭い台詞が平気で言えるわね?」

無「そういうお前は顔真っ赤だけどな?」

緑「……ばか」

 

白「あ、……えへへ、色無君、だよね?」

無「お、白。待っててくれたのか?」

白「うん。だって、やっと色無君と会えるんだよ? 私、ずっと待ってたんだもの」

無「はは……ありがとう。嬉しいけど、ちょっと照れくさいかな」

白「ふふ、私も。おんなじだね? ……くしゅっ」

無「おいおい、ちょっと顔色悪いぞ? 大丈夫か?」

白「ちょっとだけ、寒いかな……」

無「じゃあ、早く行くか。こっちに来て最初にやることをお前の看病にする訳にはいかんだろ」

白「あ、看病はしてくれるの?」

無「そりゃ、俺の責任みたいなもんだし。まだだいぶ体弱いんだよな?」

白「ふふ……やっぱり色無君だね」

無「何を今更。当たり前だろ?」

白「だって変わってないんだもん。こんなに私に優しくしてくれる人、なかなかいないよ?」

無「そうか? 白相手ならみんなやりたがるんじゃないの?」

白「え、なんで?」

無「それは……なんでもない」

白「えー、気になるよー」

無「何でもない! ほら、行くぞ!」

 

黒「久しぶりね、色無」

無「おう、黒。元気そうだな」

黒「じゃあ、行きましょうか」

無「……随分あっさりしてるな。もっと他に何かないのかよ?」

黒「何かって?」

無「いや、別に、えーとだな……」

黒「ああ、抱きついたりしたほうがよかったかしら?」

無「んなっ!?」

黒「ふふっ、冗談よ」

無「……そうか、そういう奴だったなお前は」

黒「あら、忘れてたの?~案外薄情なのね」

無「だから……はあ、もういいや」

黒「そうね。性格的なことに関しては昔から変わってないと自分で断言出来るわ。でも、外見の方はどうかしら?」

無「へ?あ、その」

黒「あなたは……そうね、男前になってるわ。もっと好きになっちゃいそうなくらい」

無「く、黒?」

黒「ほら、次はあなたの番でしょ?」

無「……綺麗になってます」

黒「よろしい」

 

橙「おーい、色無ー! いるー?」

無「こっちだー……というか、駅前でそんなでかい声出すなよ。恥ずかしいだろ」

橙「いやまあ分かっててやったけどね。あたしが色無の顔見間違える訳ないもん」

無「お前な……まあいいけど」

橙「で、どうよ成長したあたしの姿は。惚れちゃってもいいよー?」

無「何言ってんだかお前は」

橙「ダメダメ、そのリアクションじゃ0点だよ。そこはちゃんと「綺麗だな」って言わなきゃ」

無「言えるかそんなの」

橙「せっかくおしゃれしてきたのにー……くしゅんっ」

無「おしゃれもいいけどさ、この雪の中でちょっと薄着すぎるだろ。風邪ひかれたら困るのは俺だぞ」

橙「あれ? ひょっとして心配してくれてる?」

無「そりゃあな……」

橙「じゃあ、こうしようよ……っと」

無「なっ、おい、ちょっ」

橙「んー、色無の腕あったかーい。これならあたしも寒くないし、色無も役得アリで問題ないでしょ?」

無「だ、だから……はあ、いちいち突っ込むのも面倒くさい……」

橙「またまた、嬉しいくせに。うりうりー」

無「ちょ、力入れんな! 当たってるから!」

橙「一回これやってみたかったのよねー。当ててんのよー」

 

水「だ、だいじょうぶ……絶対、だいじょうぶ……」

無「……水?」

水「ひやああぁぁぁ!?」

無「ああ、やっぱり水であってたか。で、なんでこそこそしてるんだ?」

水「あ……ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」

無「いや、いきなり謝られても」

水「だ、だって……待ち合わせの時間、遅れちゃったから……」

無「遅れたって……たった数分じゃないか。気にするなって」

水「……怒ってない?」

無「怒ってない。というか、怒られるのか怖くてなかなか出て来れなかったのか?」

水「ふえぇっ!? ど、どうしてわかるの……?」

無「どうしてって、昔も似たようなこと何度かあったからな。あんまり人の顔色ばっか伺っててもしょうがないぞ」

水「あ、あうう……」

無「まあ、それがお前の優しさなんだろうけどな。それはちゃんと分かってるつもりだぜ」

水「……うっ、ぐすっ……」

無「ちょ、え?~俺なんか駄目なこと言ったか!?」

水「ううん、違うの。だって……ひく、えっぐ」

無「いや、違うならいいけど……なんだかなあ」

 

紫「いろなしー!」

無「お、紫。ひさしぶ……り……?」

紫「あれ、どうかした?」

無「……むらさき、だよな?」

紫「当たり前でしょ。……あ、ひょっとして、あんまり魅力的になってるものだからびっくりしたー?」

無「いや。……実は妹、とか」

紫「……」

無「あだっ!? おい、無言で蹴飛ばしてくるな!」

紫「ちっちゃいってゆーなー!」

無「言ってねえだろそんなこと! ぐおっ、脛は反則! 弁慶じゃなくても泣いちゃうぞ!」

紫「うるさーい! このバカ無!」

無「ったく……しかし、見事に伸びてない、いや、変わってないな……」

紫「うう、昔は色無より大きかったのに……」

無「いつの話だよ……いや、変わらないというのはいいことだと思うぞ、俺は」

紫「それは外見じゃなくて性格に対して使う言葉だー!」

無「いや、需要はあると思うぞ? ちっちゃいのも可愛いし……くくっ」

紫「笑ってるじゃんかー! バカバカ、大バカッ!」

無「いや、可愛いっていうのは本当……ぐあっ、だからやめろっての!」

 

無「おーい、桃、だよな?」

桃「あ、色無くん。……えへへ、なんか懐かしいねー?」

無「まあ、そりゃあこんだけ会ってないとな。しかし、相変わらず寒いなこっちは……」

桃「今日はまだあったかいほうだよ?」

無「……実家に帰らせていただきます」

桃「だーめ、これからいっしょに暮らすんでしょ?」

無「いっしょの『寮』でな。……にしても、桃。お前薄着すぎじゃないか?」

桃「慣れちゃえばこんなものだよ。えへへ、それにね?」

無「それに?」

桃「色無くんはこんなのが好きかなって……ね?」

無「んなっ!? それってどういう……」

桃「ねえねえ、どう?」

無「いや、どうって言われてもですね……ちょ、強調しないで、頼むから」

桃「えー? なんのことかなー?」

無「あうあう……」

桃「ふふ、色無くん顔真っ赤。少しはあったかくなった?」

無「……充分でございます。はい」

 

無「茶遅いな……時間間違えてるんじゃないだろうな。やっぱりドジは変わってないのかねえ」

茶「……色無くーん、ずず……」

無「お、茶。来たか……って、なんだその格好!?」

茶「うう……今日に限って何度も転んじゃって……鼻水があ……」

無「それで服びちょびちょなのか……大抵雪の塊に突っ込んだんだろ、大丈夫か?」

茶「だ、大丈夫です……ぐずっ」

無「顔真っ青で言われても……よくこんなことがあるのか?」

茶「ええっ! どうして分かって……」

無「いや、もう突っ込まないことにしよう……とりあえず、これ羽織れ」

茶「そ、それは色無くんに悪いよ! 寒いでしょ!?」

無「あー、そりゃ寒いけどさ……」

茶「だ、だったら! ほら、私なんかのことは気にしないで……」

無「いや、とにかく俺の理性の為にも羽織ってくださいお願いします」

茶「ふえっ……? っ!? ああっ!? ふ、服が透け……」

無「……なあ、その格好でここまで歩いてきたんだよな?」

茶「っ!! あ、あああ……」

無「なんというか、その、ドンマイ」

茶「も、もうお嫁に行けません……」

無「その、気にするなって。ほら、最悪俺が貰ってやるから。なんちて……」

茶「ほえぇ……」

 

黄緑「色無くん、お久しぶりです」

無「ああ、黄緑。ごめんな。わざわざ迎えに来てもらって……」

黄緑「いえいえ、それよりも寒いでしょう? 携帯ポットにお茶入れてきたので、どうぞ」

無「お、ありがとう。……ん、おいしいな」

黄緑「ありがとうございます。それと、マフラーと手袋があるんですが、使いますか?」

無「じゃあ使わせてもらうかな。……」

黄緑「どうかしましたか?」

無「いや、黄緑は凄いなって。いろんなところに気を配れるんだな」

黄緑「ふふ、そうですか?」

無「うん。俺のことなんか全部見透かされてる気がする」

黄緑「そんなことはないと思いますけど……そうですね。そうなれたら素敵かもしれませんね」

無「おいおい、そこまで世話かけるつもりはないぞ?」

黄緑「あら、色無くんなら大歓迎ですよ?」

無「いやいや、俺だって何か役に立つようなことしないと。手伝いくらいなら出来るから」

黄緑「いいんですか?」

無「むしろ手伝いじゃないと出来そうにないからな……足引っ張らなきゃ」

黄緑「じゃあ、お願いしますね。ふふっ、楽しみが一つ出来ました」

無「お手柔らかに、な」


色鉛筆落語「饅頭怖い」

 することもないので青、水色、黄色、茶色、灰色、朱色が集まって話をしていた。

 思いつくまま話をする内に、話題は怖いものをあげることに。

灰「やっぱりおねーちゃんかなぁ。ゲームやってるだけなのにガミガミうるさいんだよ、まったく。怒られるかと思うと怖くっておちおちゲームもやってらんないよ」

朱「お前さんはただ怒られるだけだからいいじゃないか。アタシなんか減給されたり酒没収されるんだぞ。給料が出たと思った翌日にガサ入れされたときなんか心臓止まるかと思ったよ」

黄「二人ともそれだけで済むんだから別にいいじゃんよー。黄緑なんか実力行使よ実力行使。私そのウチ殺されるんじゃないかしらん。やっぱりこの美貌を妬ん——」

皆『カレーは黙ってろ』

黄「ひどっ!」

青「ていうか、あなたたちの場合は怒られて当然でしょ。朱色さんも寮母なんですし、寮生の見本になるよう心がけて下さい。私なんて、ちゃんとしてるのに空にいじられるんですよ? 酷くないですか?」

水「青ちゃんは隙が大きすぎるから問題なんだよ」

青「そうかもしれないけど、家族の前でくらい隙見せてもいいじゃない。そういう水はどうなのよ?」

水「わ、わたしはその……怖いとかじゃないんですけど、色無さんがちょっと」

黄「そいや男の子が苦手だったね」

朱「アタシも女子高育ちだからわからなくもないけどさ。無闇に怖がってても治んないよ?」

青「色無はだらしないけどね、けっこういい人よ。……その、ちょっとカッコいいトコもあるし」

灰「ここはいっちょ、荒療治といこう。水ちゃん午後色無とデートね」

水「ええええええええええっ!!?」

水「その……よろシクオねがイしまス」

無「うん、こちらこそよろしくね。急に決まったデートだけど、どこか行きたいところとかある?」

水「えっと……その……あの……お任せしますっ!」

無「まいったな……。あ、じゃあフラワーショップに行こうか。母の日近いし、カーネーション見ておきたいんだよ。なんか色によって花言葉とか違うんでしょ? そういうの教えてよ」

水「はいっ、わかりました!」

無「ついでに黄緑さんにも買ってちゃう?」

水「もう、色無さんったら。ふふふふふ」

黄「なかなかいい雰囲気じゃん」

朱「色無もいつになく積極的だな。あれは水色に合わせてるのか天然ジゴロなのか」

青「あああああ、なんで手を繋いでるのよ、羨ましい!」

灰「もしかして男性が怖いっての嘘なんじゃない?」

黄「ええっ? あれ計算なの!? くっそーすっかり騙された〜!!」

青「色無近い! 近い! あぁあぁぁぁダメよダメ! 近い近いぃぃぃぃ!!!」

朱「? そういえば誰か忘れているような?」

茶「そうですよね私のことなんか誰も気にしてませんよね知ってます知ってました。誰も私が怖いことなんて興味ないですよねっていうかそもそも私に興味なんてないですよね。私みたいなドジの——」

朱「うわぁ驚いた」

青「今度はなんだか茶が怖い」

黄「お後がよろしいようで」

灰「で、饅頭は?」


黄「すぴー」

無「(ボソボソ)おい青。ペンもってこい」

青「どうするの?」

無「顔に落書きするのに決まってるだろ」

青「やめときなさいよ。でも面白そうだからとってくるね」

無「何だよノリノリじゃん」

青「はい。お待たせ」

無「よーし」

 キュッキュッキュ

黄「んー。よく寝た」

水「あ、あの、黄色ちゃん。額に何か書いてあるよ」

黄「うそ!? 鏡見てくる」

 ダダダ

黄『うわー! なんだよこれー!!』

 バタバタバタ

黄「ちくしょー!! あたしの額にガラムマサラって書いた奴でてこーーい!!!」

青「も、もうだめ、耐えられない。あはははは」

無「ばか、ばれるって!」

黄「お前らかー!? どうすんだよぅ。油性だから消えないじゃんかよぅ」

無「カレー好きなお前にピッタリじゃないか。ははははは」

黄「絶対に仕返ししてやる!! とりゃー!!」

青「きゃ! ちょっと危ない──」

水「わ、私関係ないですー!!」

橙「だからあんたら額に文字書いてあるの? あほだねー」

無 ドM

青 ポエム

水 あやめ


『色鉛筆たちに苦手なことをさせてみよう!』

 赤:女の子っぽい服装をさせてみよう!

赤「うう〜何このひらひらしたやつ〜動きづらいぃ〜」

無「可愛いじゃん。たまにはそういう格好もしてみろって」

赤「恥ずかしいんだもん……。それに……このミニスカートも……」

無「? 橙とかいつもそれぐらいの丈だぞ?」

赤「こんなの絶対見えちゃうよぅ……今日スパッツも履いちゃダメって言われたし……スースーする……(モジモジ)」

無(……やばい、この赤めっちゃ可愛い)

  ひゅー

赤「ひゃう!?」

無「ひ、ひゃう!?」

赤「う、うるさい! 僕だって驚けばあんな声ぐらい出ちゃうよ! そ、それより……」

無「ん?」

赤「……み、見た?」

無「いーや。赤の可愛らしい声に驚いてそれどころじゃなかった」

赤「ふう……」

無「……まあ、ちらっと白っぽいものが見えた気がしないでもないかなー」

赤「や、やっぱり見たんじゃんか! このエロ無!」

無「あ、バカ! せっかくそんな格好してんだから走るなって!」

赤「もう知るかぁ! 待てエロ無ぃ!!」

 

 青:褒めちぎろう!

青「色無おはよう」

無「おはよ、青。今日はなんかいつもより可愛いな」

青「な、何いきなり言ってるのよ!?」

無「なんとなくそう思ったからさ。あ、ヘアピン変えた?」

青「う、うん。昨日買ったんだけど……」

無「似合う似合う。可愛いよ」

青「お、お世辞なんか言ったって何も出ないんだから!!」

無「お世辞なんかじゃないよ。俺はいつだって青は綺麗だって思ってる」

青「え、あ、その……そ、そんなこと言われたって全然嬉しくなんだからねっ!!」

 だっ! がしっ!

無「そうやって逃げるなよ。俺は朝から青に会えて嬉しいんだ。一緒に学校行こうぜ」

青「あ、あぅううううう……」

無「そう照れることも可愛いよな」

青「……」

無「青?」

青「オチツクノヨアオ、コレハゲンジツ、ユメジャナイワ。ソウ、ポエムヲタナエマショウ。アサカラワタシノココロヲユラス、アナタハキットセカイノチュウシンネ。イツカワタシモメルトシタイ……」

無「あ、青!?大丈夫か!?!」

 結果、キャパシティに限界があるようです

 

 白:体力トレーニングをやろう!

白「はあ……はあ……ランニング……大変だよ……」

無「ゆっくりでいいから頑張ろ。な? たまにはこういうことをしたほうが体力もつくしさ」

白「そ、そう……だね……」

白「ぜえ……ぜえ……」

無「し、白!? 大丈夫か!? 辛くなったらやめていいんだからな? 無理すんなよ?」

白「だ……だい、じょうぶ……がん……ばる……」

無「急に無理したらトレーニングにならないしさ。体壊したら何の意味もないし」

白「わた、し……みんなと……い、っしょに……あそん、だり……した、いから……たいりょく……つけたいから……」

無「白……じゃあ、もっとゆっくりやろう。寮のみんなもいれてさ。そのほうが楽しいだろ?」

白「う、うん……」

無「だから、今日は終わりにしよう。今度はみんなでジョギングしよう」

白「わ、わか、った」

無(決めた。本気で俺も白に付き合ってやろう)


 橙:やりかえそう!

橙「色無おっはよー」

 ほっぺにちゅ♪

無「お前なあ……朝っぱらから恥ずかしいっつーの!」

橙「だってしたかったんだもん。いーじゃん、スキンシップだよスキンシップ」

無「スキンシップねえ……じゃあ、俺からしてもアリだよな?」

橙「へ?」

 おでこに ちゅ

橙「えええええ!?」

無「どうした? スキンシップなんだろ?」

 まぶたの上に ちゅ

橙「そ、その! こ、心の準備ってもんがあって……っ!」

無「いっつも俺には準備させてくれないだろ?」

 耳たぶを甘噛み

橙「ふぁ!?」

無「やっば、可愛いよ、橙」

橙「う、受け身なのはやだよぅ……は、恥ずかしくて死にそう……」

無「だーめ」

 唇に ちゅ

橙「んんっ!? い、色無ぃ……」

無「……はい、お終い。これに懲りたら今後自重しろよ」

橙「はーい……ってもう終わり!? ここでやめるの!?」

無「……続きはあとでな。……今度はもっと攻めてやる」

橙「こ、今度はあたしの番でしょー!」


 朝

先「今日はHRに体育祭の出場競技を決めるからね、必ず一人一つの競技に出ること。

それじゃ一限の準備をして待つように。号令」

青「きりーつ──」

緑「ちっ」

無「おいおい、何だよ舌打ちなんかして」

緑「体育祭のこと。サボろうと思ったのに」

無「あーそうか、そうか。楽そうなのに一個出てあとは見てれば?」

緑「炎天下の中ずっといるのも不愉快だけどね」

無「日陰行け、日陰」

緑「そうするわ」

 休み時間

赤「おーい、色無いるー?」

無「いるよ」

赤「おわっ!! なんで後ろにいるんだよ!」 

無「飲み物買いに行ってた。で、何の用だ?」

赤「体育祭で勝負しよ」

無「は? クラス違っても合同チームじゃん」

赤「そうじゃなくて、僕と色無でどっちが多く一位とれるかで」

無「やだ。めんどい」

赤「そういうと思ったよ。でもこれを言えばきっと乗ってくるよ」

無「ふーん、言ってみ」

赤「勝った方は一ヶ月お昼をおごってもらえる!!」

無「乗った!!」

赤「ふふふ。もう降りることは出来ないから。頑張って僕に勝てるように努力することだね、無理だと思うけど。じゃあねー」

無「ん? ……あー!! 去年も似たようなことをして負けたんだったー!!!」

赤(計画通り)

 HR

先「これから体育祭のこと決めるけど、みんなでよく話し合うように。あとは学級委員よろしく」

青「はい。それじゃ黒板に競技名書いていくからその間にどれに出るかみんな決めてね。それから緑、このプリントに決定しやつ書いて」

緑「わかった」

青「あとまだ競技に出てない人いる?」

緑「私」

男子生徒「俺もまだ決まってないや」

女子生徒「あたしもー」

紫「あと私も」

無「おい、紫」

紫「なに?」

無「お前障害物競走に出ろよ。ちっちゃいからたぶん有利だろ」

紫「ちっちゃいってゆーな!」

『おおおー!! 桃ちゃんが障害物競走に出るのか! 期待するぜー!!』

無「なんだって!? 桃が!?」

紫「……あたし絶対に出ない! ゆるんだ顔しちゃって、隣のクラス行け、ばーか」

無「行ってまざりたいけど、教室を抜けらんねえだろ」

紫「ふん」

青「あんたたちさっきからしゃべってるけど、話し合いに参加してよね」

紫「あ、ごめん」

無「俺は決めるもん決めたんだからしゃべらせろ」

青「訳分からない屁理屈言わないでよ。そだ、二人で二人三脚にでも出なさい」

紫「えー!?」

無「紫とかよ」

紫「それはこっちのセリフだよ」

青「二人ともいいわよね? それとも文句ある? 早く終わらせたいんだけど」

無・紫「な、ないです」

 放課後

緑「なんてこと……」

無「いつまでそうしてるんだよ。てかお前何に出るの?」

緑「障害物競走」

無「そんな面倒なものによく出ようと思ったな」

緑「私の意志とは関係ないわ。あの時グーを出せば勝てたのに……」

無「どんまい」

緑「一言で片付けないで。あーもー! 体育祭の日に学校が爆発すればいいのに」

無「お前は小学生か!?」


先生「あー、お前らも来年には受験だ。このへんで一度進路相談をしておこうと思う。じゃあまずは青から進路室来てくれ」

先「もう行きたい大学とか決まってるのか?」

青「いえ、その、まだまったく考えてなくて……」

先「まぁ二年の夏前なんてそんなもんだろうな。じゃあ何か夢とかはないのか?」

青「夢、ですか?」

先「そうだ。夢があると進路も決めやすいぞ」

青「夢……(出来れば色無のお嫁さん……なんてバカなことはもう言ってられない……でも……)」

先「……」

青(色無の夢は何なんだろう……?もしかしたら……)

先「……」

青(いや、そんな、思い上がりよ青! ……でも、もしそうだとしたら……キャー!)

先「……」

青(……結婚式はウエディングドレス? でも色無って結構和も好きそうだし……両方やっちゃえ!)

先「……」

青(色無との新婚生活……お仕事を終えてクタクタの色無を私が支えるのね! そして夜にはやっぱり……するの、かな)

先「……」

青(でもでも、そんな、疲れてるだろうし無理には……キャッ! そんな、色無のほうからだなんて……)

先「……はぁ、青でさえこれか……先が思いやられるな……じゃあ次はー、赤、来てくれー」

先「行きたい大学とかあるか?」

赤「えっと……まだ何も考えてなくて……えへへ」

先「そうか。まぁまだ時間はある。赤は陸上続ける気はあるのか?」

赤「うーん……続けたい気持ちはあるんですけど、大学で通じるかどうかが心配で……」

先「陸上のほうでは何の問題もないぞ。記録も残してるし、例年陸上で行くヤツの中でも上のほうだ」

赤「本当ですか!? じゃあ続け——あ、でも……」

先「どうした?」

赤「えと、友達で大学選んじゃいけないとは思うんですけど、やっぱりみんなと離れることになるんですよね……?」

先「……そうだなぁ、陸上だと一番近い大学でも結構離れることになるな……」

赤「そうですよね……」

先「……」

赤「今まで陸上続けられたのは、色無とか……結構みんなの応援があったからだったりしまして……一人になっても挫けても続けられるか不安で……」

先「……そうか。まぁ、決めるまでにはもう少し時間がある。そのへんは赤自身で決着をつけるしかないな。応援してるぞ」

赤「はい!」

先生「次は黄色ー、進路室来ーい」

先「もちろん行きたい大学なんて決まってないよな?」

黄「ないです!」

先「だろうな。夢はあるのか?」

黄「夢……ですかー?」

先「そうだ。夢があると決めやすいんだ」

黄「うーん……五年ぐらいインドに渡って本場のカレーの極意を手に入れる! ……のはどちらかというと野望だし……」

先「自分で気づいたか」

黄「色無に私を女として意識させる! ……のも野望だし……」

先「……」

黄「あー、あ! もっと成績よくなりたい!です!」

先「その先の話をしてるんだぞ」

黄「あ、そっかー……んー……先生はなんだと思います? 私の夢!」

先「黄色、教室戻って、黒に進路室来るように伝えてくれ」

 コンコン

先「どうぞー」

 ガラ

黒「失礼します」

先「おー。まー座ってくれ」

黒「はい」

先「黒はもう大学とか決めてるか?」

黒「一応決めてあります」

先「おぉ、そうか! で、どこなんだ?」

黒「○○です」

先「○○……? 黒ならもっと上を目指せるんじゃ? 悪いが、押さえよりも下じゃないか?」

黒「○○に行きたいんです」

先「……まぁ本人がそう言うなら別に止める理由はないが……ん?」

黒「……」

先「そうか……××病院がすぐ近くにあるんだな、あそこは」

黒「……」

先「友達のため、か……いい心がけだとは思うが、大学は人生を左右するぞ。だいたい、いつまでもかかりっきりってわけにはいかないんじゃないのか?」

黒「……わかってます」

先「あと、白とも話し合え。どうせ本当のことは言ってないんだろ? 善意の押し付けは、相手が喜んでくれるとも限らないぞ」

黒「……っ! 私はそんなつもりじゃ……!」

先「あー、わかってる。とにかく話し合え。な」

黒「……はい」

先「……そういえば、黒は色無がどうとかはないのか? あー、余計なお世話かもしれんが」

黒「……ふふっ。先生、色無も○○志望ですよ?」

先「……あー、教室帰ったら紫呼んできてくれ」

紫「お呼びか先生!」

先「背の大きい人に対してすぐ敵対心を持つのはやめような」

紫「なんですか先生!」

先「いや、お前大学は決まってるのか?」

紫「まだですけど先生!」

先「だからな、その前にまず先生だぞ。普通に話せ普通に」

紫「……大学とか、実際どうやって決めたらいいのかわからなくて」

先「みんなそうだ。じゃあ、夢とかあるか?」

紫「夢……」

先「そうだ。ちょっと考えてみろ」

紫(身長伸ばして……大人っぽいおしゃれとかして……)

先「……」

紫(そんで色無にも見せて……見返してやって……それから……)

先「……」

紫(それから……えっと……で、デートとかしてみたり……)

先(……あー、何か色無関連のことを考えてる顔だなー……)

紫(やっぱり夜景の見えるところがいいな……観覧車? ……ううん、ここはおとなっぽく展望レストランとか……)

先(ったく……あの女ったらし、どうしたもんか……)

紫(でもでも、キス……とかしちゃうんだったら、やっぱり観覧車かな)

 ガラガラ

無「せんせー」

紫「ひゃあう!?」

先「ちょうどいいところに……どうした?」

無「いや、みんな手持ち無沙汰なんで、席替えしててもいいですか?」

先「あぁ、いいぞ。ついでに紫も連れて帰ってくれ」

 ガラガラ

緑「……失礼します」

先「おー。まぁ座れ。緑はもう大学決まってたよな?」

緑「○○大学の文学部です」

先「そうか。緑には合ってるだろうな」

緑「ちゃんとオープンキャンパスとか行ってから決めましたから」

先「うん、言うことなしだな。頑張れよ。じゃあ次、水呼んできてくれ」

緑「わかりました。失礼します」

先「……ふぅ、こんなに簡単に終わるものなのか。今までのヤツらは……」

 ぴらっ

先「……ん? このプリントは……そうだ。おい、ちょっと待ってくれ緑」

緑「……なんでしょうか」

先「この間の文化祭での文学部誌の発行なんだが……」

緑「……それが何か」

先「……PTAから苦情が来てな」

緑「……」

先「先生は表現の自由だとは思うんだが、やっぱりあそこはうるさいからな。もう少し抑えてくれれば助かるんだが……」

緑「それは無理です」

先「……次、発行の許可下りないぞ?」

緑「……わかりました、善処します」

先「頼んだぞ。それで……なんだ、ここからは答えなくてもいいんだが……やっぱりモデルはあいつだったりするのか?」

緑「……」

先「……」

緑「……しません」

先「そ、そうか。変なこと聞いて悪かったな。行っていいぞ」

緑「失礼します」

先(今の間は……?)


男「いや〜、カラオケも久しぶりだなぁ」

黒「あら、こういうの好きだと思ってたけど」

男「皆で騒ぐのはいいけどな、疲れるんだよ」

橙「それよりさ、部屋どうする〜? この人数だとあんまり歌えないし。3グループぐらいに分かれる?」

青「それでいいんじゃない?」

黄「よっし、けって〜い!! ってわけであんたはこっち!!」

黄緑「楽しみですね〜」

男「いや、ちょっと、俺はもっと大人しいグループの方が——たすけて〜!!」

橙「♪〜っと。最後、ちょっとズレてなかった? 後で歌い直し〜」

男「はぁっ、はぁっ……」

黄「何勝手に休んでんのよ!? 次はコレを歌うんだからねっ」

桃「あ、その次はこっちを一緒によろしくね?」

男「……少しは落ち着かないか? いくらなんでも俺のノドがイカれるって」

黄緑「そんなこと言っても、せっかく来たのにもったいないじゃないですか。あ、私はこれをお願いしますね?」

男「……」

橙「ん? どこ行くの?」

男「他の部屋。様子見がてらちょっと休んでくる」

橙「いってら〜。……ま、あんまり休めるとは思えないけどね」

男「うい〜っす」

黒「いらっしゃい」

男「ここはどんな感じだ?」

緑「別に普通よ」

男「ちょっとは本から顔上げろ。ってかカラオケなんだから歌ってから普通って言えよ」

緑「……歌え、ねぇ」

男「何だよその意味ありげな切り方は」

青「……ふぅ」

男「ほれ、ちょうど青も歌い終わったし——」

青「♪〜」

男「……あれ?」

黒「ま、こういう状態だから。歌えないわよ」

男「白さん、これでいいの?」

白「私は人前で歌うの苦手だから。それに青ちゃん歌うの上手いし、聴いてるだけでも楽しいよ?」

男「……そうなの?」

白「うんっ」

男「何だかなぁ……」

青「こらぁ〜っ!! さっきから何ゴチャゴチャ話してんのよ!? 大人しく私の歌を聴きなさい!!」

男「……失礼しました〜」

男「さて、ここは——(ドガガガガ)うおっ!?」

赤「あ〜っ!! いらっしゃ〜い!!」

男「何だよこの音!?」

紫「メタル系はー!! この大音量がー!! 魅力なんでしょうがー!!」

男「あ〜!? 聞こえないぞー!!」

赤「いぇ〜っ!!」

男「お、終わったか。まだ耳がキーンっていってる……」

紫「軟弱な耳ねぇ」

男「これに慣れるつもりはねぇよ。茶さんはコレについていけてるの?」

茶「は、はいっ、楽しいですっ。皆で歌いながらこうやってジャンプした——(ツルッ)きゃあっ!?」

男「危ないっ!!」

茶「す、すいませぇん……」

男「とりあえず茶さんはモッシュ禁止」

赤「じゃあ次は水色ちゃんね〜」

男「へ?」

水「は、はい……」

男「水色ちゃん、大丈夫?」

水「……」

男「やっぱ無理だって、震えちゃってるし。無理しない方がいいよ、水色ちゃん」

紫「ほっときなさい、気にしないでいいわよ」

男「お前人事だと思って——」

水「……デストローイ!!!」

男「っ!?」

紫「ほら見なさい」

赤「あれっ、このジャンル水色ちゃんが一番好きなの知らなかった〜!?」

男「知るわけねぇよ!!」

水「デストローイ!!!」

茶「ですとろ——(ツルッ)きゃあああっ!?」

黄「あぁ〜っ、やっと帰ってたわね!? いろいろ詰まってるんだからペース上げて行くわよっ!!」

桃「お〜っ」

黄緑「それじゃあ早速私から行かせて貰いますね? さ、マイクをどうぞ」

男「……う〜い」

橙「結構早く戻ってきたね。どうだった?」

男「……きっついけど、ここが一番まともだ」


『カラオケ』

 〜まぁ、らしいよな編〜

赤『I can feel fain everybody 波に漂ってー♪』

無「倉木麻衣か……」

黄「一応赤らしいよね」

橙『信じようー二人なーらばーあーるきだせーるー♪』

黒「橙好きよねこの曲」

無「うん。らしいね」

桃『桃色の片おもーい♪ こーいしてーる♪ まーじまじと見ーつめてる♪』

無「あー! うんうん!」

紫「死ねよ」

黒『ありがとうとー君に言われーぇるとなんだか切ない♪』

無「黒は宇多田好きなんだ」

白「この曲は気に入ったんだって」

黄『チューリップの恋模様ー♪ ちゅーすればするほど好きになーる♪』

無「きらきら研修医だったかな?」

黄緑「私もあのドラマ見てましたよ」

青『きっーとー何年たっーてもこうしてー変らぬ気持ちで♪』

無「ありかと言えばありだよな」

空「お姉ちゃん昔この曲聞いて泣いてたんですよ」

水『sugar baby love ♪sugar baby love♪』

無「水色は洋楽うたえるんだ」

青「水色は英語の成績いいのよ」

 〜おい、待て編〜

緑『せめてーあと少しだーけー♪ 何もー言わないで♪』

赤「これって何の曲? 色無」

無「さ、さぁ何かな?(もろBLゲーの曲です、ありがとうございました)」

白『私のーお墓のー前でー泣かないでくださいー♪』

無「……」

黒「……」

紫『ユァ ベス マイ ベス 生きてるんだから失敗なんて 目じゃない♪』

無「どうりで日曜は早起きなわけですよぉ」

桃「いつもテレビ占拠しちゃうのよ」

茶『スキスキスキス♪ スキスキスキス♪ スキスキスキス♪ スキスキスキス♪』

無「ハイハーイ!!!」

青「い、色無……?」

黄緑『あるー日ー森の中ーくまさんにー出合ったー♪』

全員(くまさん逃げてぇぇぇ!!!!!!!!)

 〜ぶっちゃけこいつらどうでもいい編〜

朱『呑んでぇ〜! 呑んでぇ〜! 呑まれてぇ〜! 呑んでぇ〜!』

無「臭い! とりあえず臭いよ!」

群「大丈夫、私の目が黒いうちは何もさせないわ」

薄『私やー君のメロディやその哲学や言葉全てをー守るたーめなら少しぐらいする苦労も厭わないんでーす♪』

無「椎名林檎懐かしいな」

黄「昔ガラス素手で割る物まね流行ったよね」

空『なーによりもー大切な事ー♪ 手を繋ごう柔らかい風が吹ーく♪』

無「またまた懐かしいものを」

青「YUKIには頑張って活動してほしいよね……」

群『貴方はアジアのパーピヨン♪ ふーしぎな夢を見るー♪』

無「うん、大人の人って感じだね」

朱「ブー! Boo!!」

侍『カラスの〜女房に〜なるからぁ〜ねぇ〜♪』

無「いたの?」

男「ずっと曲待ってたよ」

男『do want to close my eyes♪』

無「え、エアロスミス……!」

黒「対照的ね」

無『こーこーろーはー♪』

男「はーしるー」

無『あぁのー空の下♪空回りする気持ちが叫び出すのを止められぇえない♪きーみーまーでー♪』

男「よーんでー」

無『いーるー君の声ぇ♪ここで立ち止まるような時間はないさlady study go♪』


『今日の色鉛筆』

 虹色寮の灰と空はいつも一緒。

「あづい……」

 暑さに参ってぐったりとテーブルの上に突っ伏しているのが灰。と言っても、灰は暑さ寒さに関係なく、一年中ぐったりしています。

「暑いね……」

 そんな灰を引っ張り回す、元気の固まりみたいな女の子が空。ですが今日は季節外れの暑さにやられたようで、さすがの空も一緒になってぐったりしています。

「七月下旬並みの暑さとか、あり得ない……ねえ、クーラーいれようよ。七月下旬ならいれててもおかしくないでしょ」

「うーん……電気代がかかっちゃうから、朱色さんとか黄緑さんが怒るんじゃないかなあ。それに真夏でも食堂のクーラーは四人以上いないといれちゃいけない決まりだし」

「そんなの黙ってたら分かんないよ。誰か帰ってきたらすぐ切っちゃえばいいんだし」

「お部屋が冷えてるからすぐばれちゃうよ。灰ちゃんは頭いいのに、ときどきおバカさんだよね」

「うー……気の利いたことを言って切り返したいけど、暑くて頭が回らない……」

 灰は長い髪をうっとうしそうに背中の方へ流すと、椅子に浅く腰掛けてスカートの裾をつまみ、ばっさばっさと扇ぎだしました。

「灰ちゃん、パンツ見えてる」

「空しかいないし、気にしなーい……あー、涼しー」

「……私もやろーっと。はー、ちょっとは涼しくなるねー」

 至福の表情を浮かべて二人でばさばさやっていると、食堂のドアが開きました。

「ただいま——って二人とも何やってるの! 恥ずかしいからやめなさい!」

「あ、お姉ちゃん。おかえりなさーい」

「我が姉もおかえりー」

「おかえり、じゃないわよ。もう少し慎みを持って行動しなさい。あまり見苦しいものを見せるものじゃないわ」

 入ってきたのは青と黒。空と灰の姉ですが、いつも二人には手を焼いていて、今日もさっそくお説教モードです。

「空、あんたいつ帰ってきたの? 制服のまんまで着替えもしないで……宿題やったの? 学校で何か変わったこととかあった?」

「宿題は涼しくなったらやるよお。そんな毎日毎日、変わったことがあるわけないでしょ。今日も退屈な一日だったよ」

「灰はどうなの? こんなところでごろごろしてるくらいなら、貴方の好きなゲームでもやってる方がまだ有意義だと思うけど」

「ゲームは最近新しいの買ってないからやるものがなくてさー。こんな暑い日はごろごろするに限るよ」

 姉たちの険しい声にもまったく動じず、溶けたアイスみたいになっている空と灰。これは本格的なお小言が必要と、青と黒が腰に手を当てて仁王立ちしたときでした。

 カタン。

「あ」

「お」

 かすかな物音がしたかと思うと、突然二人ははじかれたように身を起こしました。

「な、何、どうしたの? あ、ちょっと空、待ちなさい!」

「灰、まだ話は終わって——」

 二人の制止の声も聞かず、空と灰は一目散に玄関へ向かって駆けていきます。

「ただいま——おわっ!! なんだなんだ、二人して?」

「お帰りなさい、色無先輩! 聞いて下さい、今日学校でとってもおもしろいことがあったんです!」

「色無、遅い〜。暇〜、かまえ〜。ねえゲームしよ、ゲーム。一人じゃどうしても先に進めないところがあってさー、手伝ってよー」

「分かった、分かったから! ゲームしながら話を聞くから! だからまずは着替えさせろって!」

 帰ってきたばかりの色無にまとわりつく空と灰の変わりように、あとを追ってきた青と黒はあきれ顔です。

「何であの子たち、色無が帰ってきたって分かったのかしら」

「さあ……ところで唐突だけど、実家で飼ってる猫を思い出したわ。餌をねだるときにしか私に近寄らない、ちっとも可愛くない猫なんだけど」

「奇遇ね。うちの実家では犬を飼ってるんだけど、どういうわけか私の言うことは聞かなくて、空にばっかり懐いてるのよね」

 色無に妹たちを取られたみたいな気がして、ちょっぴりおもしろくない青と黒でした。


緑「なぜ私たち——いや、私がこんなことを……」

無「しょうがねぇだろ、頼まれた時に断らなかったんだから」

緑「掃除するしか聞いてなかったの。青には騙されたわ」

無「まぁいいじゃないか。これから水泳の授業が始まるんだぜ。楽しみでしょうがない」

緑「泳げない私は苦痛でしょうがないわ。はぁ……」

青「ほら色無と緑! しゃべってないで手を動かして!!」

無「うーい」

緑「もうやだ」

茶「ふぇぇ」

 ステン

黄「よーし! 茶色ちゃんこっちまで滑って滑って」

 ゴシゴシゴシ

橙「いや無理だから。茶色でカーリングをやろうとしないの」

黄「だって飽きてきたし。あ、そだ、あれがあるじゃないか! あとよろしく」

橙「ちょっと待ちな──はやっ! もうあんなとこまで」

茶「橙さん、手を貸してくださぃ」

橙「あ、ごめん。忘れてた」

青「さて、そろそろ終わりにしないと。ホースは……」

黄「あたしの出番ね! さぁいくわよー!!」

青「え!? 黄色なんであなたがホースを持ってるの!?」

水「ご、ごめんなさい。黄色さんの勢いに負けてとられちゃいました」

青「水のせいじゃないわ。とりあえず被害が大きくなる前に捕まえなきゃ」

黄「色無くらえー!!」

 プシャー

無「はぁ? ってあぶねえ!!」

黄「ちっ、よけられたか。だけど逃がさないよ」

緑「その前に言うことがあるんじゃない?」

黄「おりょ? 緑さっきのかかっちゃった? 災難だね」

緑「へぇ、その一言ですませる気?」

黄「あはは。ごめんねー」

緑「同じ目に合わせてあげるからホースをかしなさい」

黄「嫌だねー、さぁ私を捕まえて。なんちゃってあははは」

 パシッ

青「はい残念。もうあなたに持たせないから」

緑「貸して。じゃさっきの仕返し」

 プシャー

黄「あははは。冷たくて気持ちいいー」

青「全然効いてないわね。あら? 色無どうしたの? さっきから黙ってるけど」

無「ん? なんでもない」

緑「その緩みきった顔でなんでもないことないでしょ。どうせ私たちの透けた服でも見てたんじゃないの」

無「いや。せっかくだし」

緑「天誅」

 プシャ!

無「おわっ!! ばか目にっ目にはいった! ゲホッ顔は止めろ、鼻に入る!」


灰「いろなぢぃ〜」

無「何しに来たんだよ……」

灰「あづいよぉ〜」

無「俺だって暑いよ……」

灰「でも黄緑さんは怖いよ〜」

無「まぁこの寮のこの人数、ただでさえ電気代食ってるからなぁ……」

灰「扇ぎっこしようぜ」

無「それいいね。やっぱ人にやってもらうと涼しく感じるもんな」

灰「よっし。せぇーの」

ぱたぱた……

無「……なぁ、こう、お互い位置をずらさないとさ、これ相殺してるよ風が」

灰「……おぉ。そっか」

無「……暑さでやられてるな?」

 

青「き〜! 何よあの二人! 見せつけてくれちゃって!」

空「お姉ちゃん……」

青「別にうらやましくなんかないんだからね!」

空「(分かりやすい)じゃあ二人で扇ぎっこしよっか」

青「そ、そうね」

 ぱたぱた……

空「やめよっか」

青「そうね、何か悲しいし……けどたまには姉妹でこういうのもいいかもね?」

空「お姉ちゃん……」

 

 ぱたぱた……

無「これでいいんだよこれで」

灰「あぁ〜……なんとなく自分でやるよりも涼しい……」

無「あぁ〜……」

灰「……」

無「……」

灰「……」

無「……おい、ちょっと弱まってるぞ?」

灰「……んー? 気にしない気にしないー……」

無「俺暑いじゃねぇか……くっそ」

灰「……あー、弱めたなー? 私そこまで弱くしてないのに……」

無「目には目を、だ」

灰「色無のくせにハンムラビ法典を引き合いに出すなんてぇ……こっちだって」

無「あ……また弱くしたな? 負けてたまるか!」

灰「それほとんど動いてないじゃんかー! くそぅ、もっとスーパースローにしてやる」

無「まだまだぁ!」

灰「こうなったら……最後の手段! やめる!」

無「俺もやめる! どうだまいったか!」

無「……なぁ、もう一回最初からやり直さないか?」

灰「……そだね……お互いおとなげなかったね……」

 

赤「よーし! ボク達も扇ぎっこで涼しくなろう!」

黄「その話、ノッたぜ赤の旦那!」

青「オチが見えたわね」

空「じゃあ止めたら……?」

 バタバタバタバタバタ!!

黄「あっははー! すーずしーぜー!」

赤「まだまだ! まけないよ!」

黄「ねえ、扇ぎすぎて逆にあっついんだけど……」

赤「ありゃ? 作戦失敗かなー? やっぱり暑いときは走った方がいいよ! 一緒に走ろう!」

黄「ねーよ。そんなことより暑いときはやっぱりカレーだよ!」

赤「ねーよ。やっぱり走った方が……」

黒「暑いときはやっぱりアイスよね」

赤・黄「!?」

 

 ぱたぱた……

無「ふぃ〜……」

灰「ふぃ〜……」

無「……なぁ、もっと効率よく涼しさを得られないかなぁ?」

灰「どういうこと?」

無「例えば……扇ぐ箇所を変えるとか」

灰「なるほどね……それならほら、やっぱり足だよ。第二の心臓とも呼ばれるぐらいだから」

無「足か……よし、やってみるか」

灰「どうすんの?」

無「こう……お互い頭逆にして横になるんだよ……よいしょっと」

灰「そっか……んしょっと」

無「……あ、これいいかも。結構涼しいね」

灰「……色無やっぱ脛毛はえてるんだ」

無「そりゃ男ですからね……痛でっ! 抜くなよ!」

灰「あ、ごめん、つい……」

無「……ふー……」

灰「……あ”ー……気持ちいい〜……」

 ガチャ

黒「ちょっと色無どういうこと!? 薄黄ちゃんが泣い……っ!!」

無「黒?」

黒「……このばかぁぁぁぁぁ!!!」

 バタン

灰「……お姉ちゃん? どうしたんだろう……」

男(もしかして……この体勢か?)

 

白「あつ……」

黒「白、大丈夫? 無理しちゃダメよ。こういう暑い日は気をつけなきゃ」

白「大丈夫だよ、黒ちゃん。心配しなくてもいいよ」

黒「私が扇いであげるから、横になってなさい。クーラーは体に悪いんだから」

白「ごめんね、黒ちゃん……私がこんなんだから……」

黒「白。こういう時に言う言葉は『ごめん』じゃなくて……」

白「そうだね……ありがと、黒ちゃん!」

黄「アッチー! 別の意味でアッッッチーーー!!」


青「色無、顔にご飯粒ついてるわよ」

無「え? こっち?」

青「違うわ、ここ(ひょい)これでキレイになった(ぱくり)」

無「あ……ありがとう……」

青「ふふふふふ、こっちこそ」

橙「色無、顔にご飯ついてるよ」

無「え? マジで?」

橙「(ひょい)マジよほら(ぱくり)」

無「あ……ありがとう……」

橙「どういたしまして。ところで色無(ひょい、ぺた)、私の顔にもついてるみたいなんだけど?」

黒「色無、顔にご飯ついてるわよ」

無「あん? どこに?」

黒「鼻の頭。どうしてこんなところにつくのかしら?(ひょい)」

無「なんか悪いな」

黒「別に。ほら、あ〜ん」

無「え?」

黒「これは色無のでしょ。ちゃんと食べなさい。あ〜ん」

無「……(ぱくり)」

黒「どう、おいしいかしら?」

無「……ああ。う、美味い、ぞ?」

黒「(ちゅっ)確かに、今はこの指が美味しく感じるわ」

群「あら色無くん、お弁当が顔についてるわよ」

無「えっと、こっちですか?」

群「反対側よ。顎の辺りについてるの」

無「あ、本当ですね。ありがとうござ——」

群「あ〜ん」

無「群青さん?」

群「それ、食べさせてくれないかしら。あ〜ん」

無「え、えっと……」

群「あ〜〜〜ん」

無「ど、どうぞ」

群(ぱくり……こり、こりこり)

無「ぐ、群青さん。指を噛まないで下さい」

群「あらごめんなさい。でもとっても美味しかったわ」

黄「色無、顔にご飯粒ついてるよ。あはは、アホっぽい」

無「五月蝿いな〜、どこだよご飯ついてるの」

黄「私がしてあげるから動かないで。えいっ!(ぺちゃ)」

無「……なにしやがる」

黄「ご飯粒にカレーをつけてみました」

無「食い物で遊ぶなよ」

黄「へへへ、ごめん」


『ある夏の日の色鉛筆』

無「ふぁああ……おはよ、黄緑。今日も早いね」

黄緑「もう習慣ですから。夏の朝は清々しいですよ」

無「かもね。打ち水するの?」

黄緑「はい。これをするだけで日中だいぶ涼しくなりますからね」

無「毎朝お疲れ様、ホント助かる」

黄緑「ふふ。それに色無さん、水を撒いていると涼しいですよ」

無「あ、なるほど。俺もやりたいかも」

黄緑「じゃあ、やりますか?」

無「うん。黄緑はちょっとゆっくりしてて」

黄緑「ありがとうございます」

無「おう。……今日も、暑くなりそうだな」

 

朱「あっちぃ……」

無「うわ、朱色さん! もう起きてるんですか!? まだ8時半ですよ!?」

朱「暑くて寝てられねえってばよ……あーだるい」

群「というかあんたは8時半に起きてて驚かれてることを恥ずかしく思いなさいよ!」

黒「朱色さんはまだいいわ……ウチのバカなんか……」

無「灰は暑さに負けずにまだ寝てるのか?」

黒「……灰の場合はこの時間にだんだん暑くなってくることを見越して、エアコンのタイマーセットしてるのよね……」

無「快眠を続けるためにタイマーセット? うわぁ……ダメ人間だ」

朱「よし! 明日からはそれだ!」

群「やめなさい」

 

 さー

紫「♪」

黄「あー紫、アサガオに水やってるー」

紫「種をもらったから育ててみようと思って」

黄「……なんか小学生みたい——」

紫「ちっちゃいゆーな!」

黄「ごめんごめん、でも、紫の背でアサガオ育ててるとか、どう見ても小学生——」

紫「ちっちゃいゆーな!!」

水「あ、アサガオ育てるの、いいことだと思います!」

紫「あ、水ちゃん! でしょでしょ! もっとこのカレーに言ってやって!」

黄「うう……なんだかあたしが悪者だぞ? あ、あたしもアサガオ育てるぅ!!」

水「じゃ、じゃあ、三人でこのアサガオ育てませんか?」

紫「さんせーい! 私観察日記つけるー♪」

黄「負けない! あたしは絵日記だ!! ……ってアレ? これじゃあたしまで小学生じゃん。……ま、いっか♪」

 

橙「桃ーこの水着なんてどうかな」

桃「あー可愛いー♪ いいねそれ」

橙「でっしょー」

桃「あ、橙、見て見て! これも可愛くない!?」

橙「いいじゃん! 桃に似合いそうで!」

青「あ、あんたたち……なんでそんなキワドイのばっかり選んでるわけ?」

桃「えー可愛いのにー」

橙「少しぐらいキワドくたっていいじゃん、夏なんだし♪」

青「あ、あのねぇ……」

橙「そ・れ・に♪ こんぐらいの方が色無だって夢中になってくれるってもんよ [heart]

青「い、色無が、私に、む、夢中……(ほわほわほわほわ)」

桃「あ、青ちゃーん……」

橙「あー、もうこりゃダメね、妄想モード入ってる」

桃「青ちゃんこうなると長いもんねー」

橙「ま、ほっときましょ」

桃「さんせーい」

 

空「みーんみんみんみんみん」

白「みーんみんみんみんみん」

黄「つくつくぼーしつくつくぼーし」

無「……何してんの?」

空「セミさんごっこです!」

白「みんなでやったら楽しいかなって」

黄「つくつくぼーし」

無「いや、楽しくはないだろ……」

空「えー結構楽しいですよ。ね、白先輩?」

白「うん。色無くんも一緒にやろ?」

無「あ、あのなあ……」

空・白「ね?」

無「……はいはい」

男「色無さんは3人の女の子を同時に鳴かしているわけですね、わかります」

侍黒「お主は黙っておれ」

 

黄緑「今日のお昼は素麺ですよー」

緑・黒「素麺といえば」

緑「わさび」

黒「からしね」

緑「……またしても」

黒「貴女とは相いれないようね……」

緑「将棋?」

黒「受けて立つわ」

白「く、黒ちゃん……せめてご飯が終わってからにしようよぅ」

黄「二人とも! カレーにすれば万事解決——」

緑・黒「カレーは引っ込んでろ!」

紫「あー! 私のに色つきの麺が入ってる! やったー!」

無「……ほんっとお前はいちいち……」

紫「い、いいでしょこれくらい! ちっちゃいゆーな!」

水「ね、ネギ……」

赤「あれ? 水ちゃんネギ苦手だっけ? じゃあボクが食べたげる! ねーおかわりー!!」

朱「……まったく、騒がしいやつらだ」

群「傍観してないであんたも手伝いなさいよ」

 

 しゃー……

黄「あれ? 色無何してんの?」

無「見ればわかんだろ、水まいてんだ、水」

黄「じゃあさ……」

無「カレーは撒かんぞ」

黄「ちがうよ! そんなことするわけないじゃん!」

無(お前ならやりかねん)

黄「失礼なこと考えてたでしょ……そうじゃなくて、ビニールプール用意してよ! せっかく暑いんだし!」

無「何歳児の発想だよ、そりゃ……」

紫・黄・空「きゃっきゃっ!」

無「まったく、このお子さまーズは……」

黒「そういうことは、そのにやけた顔をどうにかしてから言うべきね」

無「っ! 黒、いたのか!」

黒「こんだけ騒いでいたら気付くわよ」

無「で、そんな格好しているということは……」

黒「私も入りたいのよ。……ああそうだ、あなたも一緒に入る?」

 

 しゃー……

桃「あー! 色無君涼しそーなことしてるー!」

無「お前なぁ……この炎天下の中、立ってるだけで意外とつらいんだぞ」

桃「えぇ! たってるって……」

無「エロイセリフ禁止!」

桃「じゃーあ、あたしが代わりにお水まいてあげる♪」

無「え、いいって、おれの仕事みたいなもんだし……」

桃「いいから貸して!」

無「わわ! 急にひっぱんな!」

 ばしゃー!

桃「えーん、水思いっきりかぶっちゃったよぅ……」

無「ああ、悪い、急にひっぱられたもんだから……ハッ!(夏だから生地の薄い服、大量にかけられた水、そこから導き出される答えは……!)」

桃「いやーん! 色無君のエッチ♪」

無「待て! 俺は無実だ! っていうかお前最初から狙ってた——ぶげらっ!!」

 

 しゃー……

無「まったく、エロイ目に……いやいや、えらい目にあった」

緑「……自業自得ね」

無「お、今度は緑か。つか人聞きの悪いこと言うなよ。俺はだな……」

緑「黙って水まいてなさい……涼しそうだから私はここで本読んでようかしら」

無「へ〜いへい……緑、ここで本読んでたら水しぶきで本塗れちゃわないか?」

緑「構わないわ」

無「さいで……」

緑(あなたが側にいてくれたら、それでいいもの……)

 

 しゃー……

水「あ、色無さん……」

無「お、水ちゃんは花の世話か。この暑いのに大変だな」

水「そ、そんなことないです……もう習慣ですし……それで、その……」

無「ああ、そっか。水あげなきゃならんもんな。待ってな、今じょうろに入れて持ってくから」

水「え、いいですよ、そんなわざわざ……」

無「俺がやりたいからやってんの。それでいいだろ?」

水「はい……あの、ありがとうございます」

無「ん」

水「すいません、結局最後まで手伝ってもらっちゃって」

無「いいってことよ。水まいてるだけじゃ退屈だし、それにせっかく水ちゃんが大切に手入れしてきれいになった花壇だし、たまには俺らも世話してあげないと、な?」

水「いえ、もともと私が勝手にやり始めたことですし……」

無「理由はどうあれ、こんなきれいな花が咲いて、皆も、そしてきっとこいつらも感謝してるぜ? もうちょい自分に自信を持っていいと思うけどな、水ちゃんは」

水「え? あの、それってどういう……」

 

 しゃー……

橙「あんたまた水まいてんの?」

無「これやったらちょっとは涼しくなんだろ? 俺にできることは、これぐらいだ」

橙「ふーん……じゃ、あたしとデートしよっか?」

無「どっから『じゃあ』になるんだよ……」

橙「色無さあ、みんなのこと思ってやってくれてるのはとーっても嬉しんだけど、たまには自分のことに時間使ったら? そんなんだと、いつか疲れちゃうよ? 青春は一度っきりだよ?」

無「(こいつ、俺のこと心配して……)……そうだな! たまにはぱーっと遊びに行くか! デートにでも何でも行ってやらあ!」

橙「よ! そうこなくっちゃ! じゃ、準備してくるから、ちょっと待ってて!」

無「……ありがとな、橙」

橙(うっひゃー! こんなにうまくいくとは! 日頃の行いのおかげかしら? ま、嘘の気持ちは言ってないし、別にいいよね! 久しぶりだし、たっぷりおめかしして、骨抜きにしてやる!)

 

 しゃー……

赤「ふー、今日の分はこれでおしまい!」

無「赤……お前は真夏でも走りっぱなしなんだな……畏怖の念すら憶えるぜ」

赤「はは! ボクはいつでも走ってないと死んじゃうんだよ!」

無「サメかお前は」

赤「それより色無、涼しそうなことしてんじゃん」

無「ああ、これか。これはだな……!(きゅぴーん!)こうすればもっと涼しいぜ!」

 ばしゃー!

赤「わぷ! やったなあ! この! この!」

 ぴゅんぴゅん

無「おわ! お前その水鉄砲どこから出した!? なんの、量では負けん!」

赤「ふ、当たらなければどうということはない」

 しゅっしゅっ!

黄緑「遊ぶのもいいですけど、ほどほどにして下さいね?」

赤・無「は〜い」

 

 しゃー……

朱「暑い〜色無〜どうにかしろ〜」

無「だからこうして水まいてんでしょうが……」

朱「もっとこう、瞬間的にだな……あ、そうだ!」

無「何かいい方法でも?」

朱「やっぱりこの季節といえばビールだろ、ビール! ほら、飲み行くぞ!」

無「まだ未成年ですので」

朱「っか〜! つまんねー野郎だな。ま、お子さまにはまだこの季節のビールのうまさはわからねえだろうな」

無「普通そういうのって『仕事帰りの一杯』とかじゃないんですか?」

朱「あー、ダメだ! もう我慢できん! そうと決まればまずはつまみ買ってこなきゃな!」

無「聞いてねえし」

群「あ〜、たまにはビール飲みたいなー」

朱(ビクッ)

群「やっぱり仕事終わったあとのほうが美味しいわよね〜。ましてや仕事もしないでビールなんて言語道断よねー」

朱「おい色無、てめえチクリやがったな——」

群「人の話聞いてるの!?」

朱「はいぃ!? すいませんすぐ買ってきます!」

群「お酒の話だけじゃなくて仕事の話をしてんのよ私は!!」

朱「仰るとおりです! 申し訳ございません!!」

 

 しゃー

無「情熱が音を立てて〜♪ 崩れ落ちる瞬間を〜♪」

灰「色無〜、おはようございました」

無「何言ってんだお前? それにしても珍しく早起きだな、どうしたんだ?」

灰「やだな〜、この私が早起きする理由なんて一つしかないよ」

無「ん?何かあったっけ?」

灰(じ〜っ)

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無「……」

灰(じ〜っ)

無(どきどき)

灰「さ〜て、プ○キュア見よ〜っと」

無「プリ○ュアかよ! せめてゲームって言おうよそこはお前らしくさ! 何のために見つめてたんだよ! ちょっとドキドキした俺がバカみたいじゃん! つか朝っぱらからツッコミが長えよ!」

黒「ところでどうしてあんなに早い時間に起きられたの?」

灰「ふっふっふ、ちょっとだけ違うんだなコレが。早い時間に起きたんじゃなくって、早い時間に起きてたんだよ!」

黒「? ……! あなたもしかして、ずっと起きてたの!?」

灰「ぴんぽーん、せいか〜——ギブギブギブ、許して許して!」

 

 しゃー……

白「おはよう、色無君♪」

無「おはよう、白。今日は調子よさそうだな」

白「うん、今日はなんだか涼しいし。色無君のおかげかな?」

無「はは、俺の水撒きで白の調子までよくなるなら、幾らでもまいてるよ」

白「ふふ、ありがとね、色無君♪」

無「お!いい笑顔だ! これで今日もがんばれそうだ!」

白「もう、色無君たら♪」

黄「涼しいのに熱いぜ!」

無「やっぱ出たなお前!」

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 しゃー……

無「きっとあなたの風が吹くから〜♪」

焦茶「こんな朝早くから水撒きとは、殊勝だな、色無」

無「は!? 焦茶さん、いつのまに背後に!?」

焦「? そんなの、君がそこにいるからに決まってるだろう?」

無「微妙に答えになってない!?」

焦「あぁ、しかし君はやはりすばらしいな、皆のためを思い水撒きとは。さすが私の惚れた男だ」

無「いや、黄緑さんに頼まれただけですけど……」

焦「なるべくなら君のする行動は全て私のためであってほしいのだが、それはいくらなんでもわがままというもの。それに他の誰かのために行動ができるというのも君の魅力の一つだしな」

無「あの、俺を買いかぶりすぎのような……」

焦「何を言う! これでも少し謙遜して言っているのだぞ! 本来なら君の優しさを母なる海に例えてもいいというのに。いや、君は男性だから父と言うべきか」

無「え〜と、もういいっすか?」

焦「まだまだ! 君のいいところを語り尽くすにはあと三日三晩あっても足りない! 君には優しさ以外にも好きになるポイントなぞ山ほどある!」

無「……」

焦「いつもの優しい顔とは打って変わって悪事を見かけたときのあの激烈な怒り顔! 全てにおいて秀でていると思わせておいてたまに見せるそのあどけなさ! 未熟さ! 思わず抱きしめたくなるほどだ! あぁ、言ってたら君を今すぐにでも押し倒したくなってしまった、こんな私を許してくれ……」

無「あの、もういいんで帰って下さい。お腹一杯です」

 

 しゃー……

無「涙のキッスもう一度〜♪」

青「あんたも飽きないわねー」

無「む、青か。飽きる飽きないの問題じゃないだろ。それにやってみるとだいぶ違うんだ、これが」

青「ふーん、そんなもんなの?」

無「ああ、そんなもんだ」

青「……」

無「……」

 しゃー

青「……」

無「……なんだよ、俺に何かついてるか?」

青「え!? な、何でもないわよ!」

無「なーんかさっきからじろじろ見られてるような気がしたんだがな」

青「だから何でもないって! 自意識過剰なんじゃない!? それに見られてたからってどうだっていうのよ!?」

無「見てたんだか見てないんだかどっちだよ! それにじろじろ見られてたらいい気はしないだろ!」

青「別にいいじゃない、減るもんじゃないし! 器のちっちゃい男ね!」

無「やっぱり見てたんじゃねえか!」

青「う、うるさい! こ、このエロ無!」

無「な!?」

青「あ〜あ、何ですぐ喧嘩になっちゃうんだろ……完璧に私が悪いのに……もっと愛想良くできないのかな、私……」

空「見つめ合ーうとー♪ すなーおにー♪ おしゃーべりー♪ できーなーいー♪」

青「!?」

 

 しゃー……

紫「お! 色無、この前はありがとねー!」

無「どうした紫、こんな時間に起きて、ラジオ体操か?」

紫「なにそれ? 私が小学生に見えるってこと? ……ちっちゃいゆーな!」

無「はは、悪い。それにしても、お前がビニールプールに入ってる様はもはや……」

紫「ちっちゃいゆーな! ……うぅ、いいんだ、どうせ私なんて一生ロリっ子なんだ……」

無「(やべっ)まぁまぁ、ほら、冷やしておいたスイカ食うか?」

紫「……食べ物で釣ろうとしてる……そんだけ幼稚に見えるんだ……」

無「(このパターンは)はぁ、わかったよ、俺に何をしてほしいんだ?」

紫「! へへ、さすが色無! 話がわかるね!」

無(お前が分かりやすすぎなんだよ)

紫「んとねー、今度はおっきいプールに入りたいなー、ビニールじゃなくて!」

無「はいはい、じゃあ今日にでも行きますか、ちっちゃいお姫様?」

紫「ちっちゃいゆーな!!」

 

 しゃー……

空「う〜暑い〜」

無「お? 元気っ子の空もさすがにダウンか?」

空「む〜、何で色無先輩はそんなに平然としてられるんですか?」

無「毎日こうやって水撒きしてたら慣れたよ。ま、クーラーに当たってばかりの空にはわかんないかな?」

空「む! (そうだ!)ね〜え、お兄ちゃん?」

無「な!? なんだ、空?」

空「(揺らいだ!)どうしたのぉ、お兄ちゃん? 汗だらだらだよぅ、お兄ちゃん?」

無(止めろ! 俺の抑えていた妹萌パワーが解き放たれる……!)

空「(あと一押し)もう、しょうがないなぁ、私が拭いてアゲル♪」

無「止めろ! 俺に近づくなぁぁああぁぁ!!!」

 だっだっだっだっだっだ!

空「あ〜、楽しい♪」(うっとり)

 

黄「色無!」

無「ん?」

黄「水撒きもいいけど……」

無「んー」

黄「豆まきもね!」

 どーん

無「……」

黄「……」

無「……」

黄「……お、鬼はーそとー……ってね(ぱらぱら)」

無「……」

黄「……」

無「は、半年前の話やないかー……」

黄「あー、あれ? そっかー! あははは……」

黄「勝った!!」

黒「負けてるわよ」

 

 しゃー……

薄「しーちゃん、毎朝お疲れ様♪」

無「水撒き自体にはもう慣れたよ(皆の相手をするのは慣れないけど……一生無理か)」

薄「? どうしたの、しーちゃん?」

無「あぁ、何でもないよ。それにしても、よく朝起きれたな。薄黄も朝弱いだろ?」

薄「そ、そんなことないよ!? 失礼だな、しーちゃんは!」

無「そんなことあんだろ。昔は『しーちゃん何で起こしてくれなかったの〜!?』とか言ってたくせに」

薄「そ! それは昔の話ですー! 今は大丈夫だよーだ! もうしーちゃんの助けがなくても全然平気!」

無「ほう、言ったな?」

薄「ほえ?」

無「もう黄や赤あたりに襲われても俺は助けないぞ?」

薄「えっと……それは……」

無「きっと俺がもう助けないことがばれたら、集中攻撃くらうだろうなー」

薄「ふ……ふぇ……しーちゃんの意地悪……」

無「はは、嘘だよ。俺がお前を助けない訳ねーだろ? ったく、昔っから泣き虫は直んねーな」

薄「しーちゃん……ふふ、だからしーちゃんってだぁい好き♪」

無「おわ!? バカ、抱きつくな!(今日はいつにも増して甘い匂いが!)」

 

 しゃー……

黄緑「色無さん、お疲れ様です。毎朝ありがとうございますね」

無「なんのなんの、これぐらい。少しでも黄緑の負担を減らせるならね」

黄緑「そんな、いいんですよ。私が好きでやってることですし」

無「俺も好きでやってるだけだよ。あれ? これ誰かにも言ったな?」

黄緑「ふふ、みなさんも最近は早起きしてくれているようですね」

無「ああ、赤や緑はともかく黄色とかまで起きてくるもんな。何かあんのかな?」

黄緑(みんな色無さんのためだと思いますが)

無「まぁ、この水撒きで皆が少しでも快適に過ごせたら、それでいいさ」

黄緑(優しい人……みんなが好きになるのもわかりますよね……私も含めてですが♪)

黄「よく言った色無!」

無「!?」

赤「最近はボクと同じくらいに起きてるんだもんな、すごいよ!」

青「べ、別に感謝なんてこれっぽっっっっちもしてないんだからね!」

黒「あなたのおかげで白も随分楽そうだわ。ありがとう、色無」

橙「けど、私が言ったことも忘れんなよ!?」

朱「色無……いつか殺す……!」

群「あんたは黙ってなさい(ゴスっ)私からも礼を言うわ。ありがとね、色無君」

黄緑「今回のことだけじゃなくて、みなさんいつもあなたに感謝してるんですよ?」

無「みんな……別に俺はたいしたことしてないよ? けど、感謝されるのは悪い気はしないな」

 

 てってってってって……

茶「ふぇえ、みんなどこ行っちゃったんだろ……寮の中には誰もいないし……」

無「お? 茶色もいたのか」

茶「あっ! 色無君! それにみんなぁ! もう、私だけ仲間はずれ〜?」

 てってってってって……こけっ

茶「あっ!」

全「あっ」

 ずしゃあぁ! ごっ! ばっしゃーーーー!(水道大噴水)

茶「ふえぇ……」

焦「……さすが我が妹だ」

無(こ、このパターンは桃のときと同じ! ということは!)

全(ドドドドドドドドドッ)

無「いやー、一気に涼しくなってよかったね? ……ね?」

全『いや〜ん!色無(君、さん、先輩、しーちゃん)のエッチ〜♪』

無「いや今回は明らかに俺のせいじゃない!」


黄(しゃくしゃくしゃくしゃくしゃく……!)

無「だぁ! ぼろぼろこぼすな! スイカもったいないだろ!」

黄「早食いせずに何がスイカか!」

紫「お〜いしい♪」

無「食べてる姿がなんとも……」

紫「ちっちゃいゆーな!」

無「かわいらしいなって言おうとしたんだが」

紫「え……」

黄緑「やっぱりスイカには塩ですよね♪」

橙「最近の人はあまりやらない……ぃぃいだだだだだ!」

黄緑「あらあら♪ へ・ん・け・ん♪ ですよ♪」

白「おいしい♪」


白「ありがとう黒ちゃん、日曜なのにお見舞い来てくれて……」

黒「何言ってるの。私は別に毎日来てるでしょう?」

白「うん。でも……今日はお祭りの日だし……その……誘ってくれる男の子だっていたでしょ?」

黒「私はそんな軽い男と行くより、白と一緒に行きたいわ」

白「もう……嬉しいけど、黒ちゃんも女の子なんだから。それに、黒ちゃんを誘うのってすごく勇気のいることだと思うけど……」

黒「……どうかしら」

白「たまにはデートとかしないと、行き遅れちゃうよ?」

黒「よ……余計なお世話よ。そんな心配する暇あるなら、さっさと治して私とデートしなさい」

白「あはは……そうだね」

黒「梨、剥けたわよ」

白「ありがとう」

黒「……(しゃくっ)」

白「……金魚すくい、なつかしいなぁ……(しゃくっ)」

灰「お姉ちゃん? 何やってんの?」

黒「見てわからない? ふくらませてるの。あんたも手伝いなさいよ」

灰「……じゃあ、ビニールプールで何するつもりなの?」

黒「……白のためよ」

灰「……あぁー、そういうことか。……でもそれは違うと思うなぁ……絶対……」


桃「ん〜♪ 暑い日に海! 最高〜♪」

橙「そうね〜。桃、その水着似合ってるわよ」

桃「そう? 今日の為に新しく買ったんだ♪」

橙「あんたじゃなきゃそのビキニは着こなせないわね」

桃「そんなことないよ〜。オレンジちゃんもすっごく似合ってるわよ♪」

紫「む〜」

青「別にうらやましくなんかないんだからね!!」

無(あの二人のビキニ姿はもはや凶器だ……!!)

紫「!見るなー!!(ズビシッ!!)」

無「ほあ!? 目が、目が〜!!」

黒「バカみたい……」

緑「そう言いながらやっぱり自分の胸気にしてるみたいね」

黒「!! ……あなたもね」

緑「!!」

黄「桃〜! こっち向いてー! 写真撮ったげる!」

桃「ありがと〜。そうだ、紫ちゃんもこっちきて一緒に撮ってもらお?」

紫「な! なんで私が桃と一緒に写んなきゃなんないのよ!」

桃「え〜、いいじゃ〜ん。それとも、何か気になる事でもあるの〜?」

紫「あんた、それわざと聞いてるでしょ……!」

無「お〜い、撮るから早くしてくれー」

紫「う!なんで色無が……」

桃「ほら、せっかく色無君が撮ってくれるんだから、スマ〜イル♪」

紫(うぅ、いつかぎゃふんと言わせてやる……!)

 カシャッ!


 朝。寮で

黄緑「スイカ切りましたよー」

黄・紫「わーい」

 シャクシャク

黄「夏といえばスイカだよね」

紫「ねっ!」

 昼。買出し中

紫「黄色ー。暑いんだから早く帰ろうよ」

黄「アイス買っていかないとやっていけないよ。コンビニ寄ってこ」

紫「あ、いいね」

店員「ありがとうございましたー」

紫「アイス最高!」

黄「だよねー」

 夜。風呂上り

黄「お風呂上りといえば」

紫「ジュース!!」

黄・紫「ゴクゴク……プハーッ」

 翌日

紫「うーん……お腹痛いよー」

黄「スイカとアイス食べてジュースがぶ飲みしてればそりゃね」

紫「なんで黄色は平気なの?」

黄「いやあ、あたしバカだからさー」

紫「理由になってないよ」


無「……暑くて寝れない……」

灰「同感……」

無「いやお前、暑いならどけよ。お互いマイナスしかないじゃん! 乗っかられても!」

灰「もはや定位置と化してるもんで……」

無「……まぁいいや。アイス枕とってくるよ。いくらかマシでしょ」

無「……お、あったあった。いっぱいあったのに最後の一個か。結構みんな使ってるんだな」

紫「ストーップ!」

無「……紫?」

紫「ストップ!」

無「……」

紫「……」

無「これは俺のものだー!」

紫「あ! 待てー! 私だってほしい!」

灰「すー……」

紫「くー……」

無「……くっそー、二人で使いやがって……暑い……」







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 12:59:17