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 色無狼と灰羊

「きみも羊なのに狼が怖くないなんて、変な子だね」

「あんたに言われたくない」

「それと、オレの尻尾は枕じゃないよ」

「だって気持ちいいんだもん」

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「あんまり狼と一緒にいると、みんなに怪しまれるよ」

「もういろいろ言われてるもん」

「まずいんじゃない?」

「いいよ、べつに」

「……」

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 次の日

「色無……いろなし? ……なんでいなくなっちゃったのよ……」

 

「やっぱり、狼と羊が一緒にいるなんていけないよな。ごめんね……灰」

「勝手なこと言わないでよ」

「灰!?」

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「一人で勝手にいなくなって……あたしがどんな気持ちかも知らないで!」

「灰……」

「ひとりにしないでよ! 一緒にいてよ……」

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「オレ、狼だよ」

「知ってる」

「みんなのところには……」

「もう、戻らない……あたしも、一緒に行く」

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「ふたりきりだね」

「うん」

「ちょっと怖くなってきた」

「大丈夫、灰はオレが守るよ。だってオレは狼だから」

「たよりない」

「本当は強いんだぞ」

「知ってる」

 ずっとずっと、一緒にいてね。


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「色無ー、こっちに木の実がいっぱいあるー」

「はいはい」

「もー、先に取ってるからね」

「……気付いてたか」

「殺気を抑えてくれないと話もできませんよ。焦茶さん」

「単刀直入に言う。群れに戻れ」

「いやです」

「あの羊か」

「手を出したら焦茶さんでも容赦はしません」

「ボスに歯向かう気か」

「あなただから言ってるんです。他の奴なら話し合いなどしない」

「……」

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「……もう少し利口だと思ってたんだが」

「オレは馬鹿な男ですよ」

「……勝手にしろ。そういうところも好きだった。伴侶にするならお前しかいないと思ってたが」

「すいません」

「謝るな。みじめになる。……最期まで守ってやれ」

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「色無、いっぱいとれた。これあげる……色無?」

「うん、ありがとう、灰……大好きだよ」


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 色無狼と灰羊が新しいおうちを見つけました。

「ここが新しいおうち?」

「うん、やっと落ち着けるね」

「疲れた……」

「じゃ、今日はもう寝ようか」

「うん……って一緒に?」

「夜はまだ寒いよ。それにオレの近くにいた方が安全だ」

「うー……わかった」

「ぐう……」

「……ってしっかり寝てんじゃないの……」

「むにゃ……灰……」

 ぎゅっ

「ふえぁ!?」

「……ぐう」

(寝ぼけて抱きつくなー!! ……ちっとも眠れないっ!)

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無「おはよ、灰。あれ? 顔色悪いね、眠れなかった?」

灰「誰のせいだと……馬鹿色無!」

無「???」


「よし、今日もいっぱい木の実がとれたぞ。これなら灰も喜んで……あれ?」

「あ、お帰りー色無」

「ただいま。はい、おみやげ」

「うわあ、木の実いっぱい。ありがと、色無」

「今日は珍しいものもみつけたよ」

「なに? ……やだ、この木の実悪くなってるよー」

「ふふ、ところがこれ、食べられるんだよ。おいしいよ」

「えー? ……どれ……」

 ぱく

「たまにこうして発酵した実が……灰? 灰?」

「ふええぇ〜〜……色無がいっぱい〜? 目が回る〜」

「灰ー!? うわ、酔っ払っちゃったか」

「きゅー……」

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「灰色の羊なんて」

「白くない羊なんて」

「変な子」

「仲間にもよりつかないし」

「変な子」

「変な子」

「あんな子仲間じゃない」

「……っ!」

 落ちるような感覚で目が覚めた。

「夢……か」

 まだ鼓動が速い。

 色無と出会う前の、羊の群れの思い出。

 ひとりぼっちだったときの思い出の夢だ。

「色無……いろなし」

 暗闇の中で、隣で眠る色無にすがりつく。

 規則正しい寝息、心音。色無の暖かさ。

 ようやく安心して、うとうととまどろむ。

 色無が、ぎゅっと抱きよせてくれた。

 もう一人じゃない。

 仲間の中でも一人ぼっちだった私は、色無に出会えた。

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 この時が永遠に続きますように。

 祈りながら、眠りに落ちた。


「ただいまー、おみやげ」

「おかえりー。今日はなに? なんか甘い匂いする」

「ふふふ、なんとハチミツ」

「うわ、蜂の巣まるごと、すごいすごい」

「はいはい、あわてないの。あーん」

「あーん」

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 ぱくぱく

「甘ーい♪ 色無、もっとー」

「はいはい、あーん……あっ」

「ふや? あーあ、こぼれちゃった」

「ああ、垂れちゃうよ……じっとして」

「ふえ!? い、いろなし?」

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 ぺろ……

「うん、甘いね」

「……馬鹿色無!」


「いちまーい、にまーい」

「あ、灰、髪の毛に」

「んー? さんまいめ」

「はい」

「きれいだねー」

「きれいだよ」

「……お花だよ?」

「きみもだよ」

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「馬鹿色無!」


「ふあ……朝か」

「くう……」

「(小声)おはよ、灰……」

「むぅ……すー……」

「ふふ、かわいいなあ……ん?」

 もぞもぞ

「……指?」

「はむ」

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「ちょ」

「あむあむあむ」

「〜〜〜!!」

「ちゅぱ……ぐう……」

「……オレ、いつか灰に食べられちゃうんじゃないだろうか」


「さむうっ! 寒いよ色無」

「はいはい、こっちおいで」

 ぱさぱさ

「はあ〜……色無の尻尾あったかーい♪」

「じゃオレも」

 もふっ

「ふゃーっ! け、毛皮に顔埋めるなーっ!」

「ふわふわして気持ちいいよ」

「馬鹿色無!」

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「灰さんごめんなさいだから尻尾かじるのやめていててて」

「まったく、いきなりあんなところに顔つけるから……」

「じゃ、この手首のふわふわは?」

「んー……いいよ」

 もふっ

「あー……幸せ」

「……」

「灰の手はちっちゃいねー」

「……」

「……ちょっと噛んでいい?」

「だめっ!」


「灰さん」

「んー」

「オレ向こうの木の実を取りたいんですが」

「取れば」

「膝の上からどいてくれないと取れないんだけど」

「やだ」

「……」

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「うわ、ちょっと首ねっこくわえたまま歩かないでよ!どくから!」

「ひゃーほれはほれれ(いやーこれはこれで)」

「馬鹿色無!」


 それは、突然のことだった。

「色無ー、待ってよー」

「こっちだよー、灰。……灰?」

 いつもならすぐに駆けてくる灰が、来ない。

 振り返った目に入ったのは、倒れている灰だった。

「灰!?」

 元々の性格なのか、あまり動きたがらない灰だったが、ここ数日は外に出るのも億劫そうだった。

 寒くなってきたからだと思っていた。

「なまけものだなあ、灰は」

「うっさい」

 そんなことを言って笑っていたのがつい昨日のこと。

 本当は、小さな身体には、故郷を離れた地での無理が過ぎたのだ。

 気付かなかった自分を殴りたいくらい後悔した。

 二人の小さなねぐらで、灰は苦しそうに浅く息をしている。

「いろ……なし……」

「灰……」

 灰の身体は火がついたように熱かった。

「ありがと……今まで……本当に、たのし……」

「馬鹿言うな! ……オレを置いていかないでくれ!」

 灰の小さな手をきつく握る。

 羊は嫌いだった。

 真っ白な、輪郭さえも曖昧な群れは、「色無」の自分を思い知らされるから。

 「色無」は、群れの中でもただ一匹の、色のない狼。

 周りに合わせて生きてきて、本当はいつでも一人ぼっちだった。

 初めて灰を見たときから、心奪われた。

 白い白い、色のない羊たちの中で、たった一匹の灰色の羊。

 色のない羊たちに混じらず、まっすぐに見返してきた。

 自分と同じようで、全く違う灰色の羊を、いつしかこんなにも大切に思うようになっていた。

 置いていかないでくれ。

 オレを本当の一人ぼっちにしないでくれ。

 ねぐらの外に出て、駆け出す。

 いつか、焦茶が教えてくれた熱病の草。

 具合の悪くなったときにそれを食べて治すのだという。

 灰に効くかどうかは分からないが、今はじっとしていられなかった。

 岩が足を切り、枝が毛皮を裂く。

 それでも走り続けた。

「……あった!」

 ねぐらに戻って、灰の頬に触れる。

 熱いくらいだが、今はさっきより穏やかに息をしているようだ。

「……効いてくれ」

 口の中で噛み切った薬草を灰の口に流し込む。

 狼には苦すぎる草だが、今はただ灰を助けたかった。

 一晩中、灰を抱いていた。

 眠ったらいなくなってしまいそうで、ずっと灰の寝顔を見つめていた。

 しかし、いつしかまどろんでいたらしい。

 はっと目を覚ましたときにはねぐらに光が差し込んでいた。

「灰……灰!」

 腕の中の羊に呼びかける。

 動かない。

 灰の頬は、昨日の熱が嘘のように冷たくなっていた。

「……っ!!」

 こらえきれない嗚咽が漏れた。

 灰を抱きしめる。

「灰……っ!!」

「ー……ろな、し?」

「!?」

「痛いよ、色無……」

「灰!」

 もぞ、と灰色の綿毛が動く。

「おはよ、色無……うわ、何で泣いてるの!?」

「はは……ははは」

「ちょっと、どっか痛いの? 色無?」

 愛しい灰色の姿が滲まないよう、馬鹿のように流れる涙をぬぐった。

「うん、大丈夫……大丈夫だよ。おはよう、灰」

二人の上には、暖かい光が差していた。

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 水猫と緑ねずみ

「にゃあ、ねずみを捕まえました。これでようやくごはんが食べられます」

「……つかまっちゃった」

「邪魔者はいません、覚悟ー」

「あなた一人?」

「そうです、一人です……」

「私も一人ぼっちだった。つまらない人生だったけど、最後にだれかをお腹いっぱいにできるならいいかもね」

「……」

「どうしたの? 食べないの?」

「うえ……ごめんなさいぃ……やっぱり食べられません」

「おかしな猫。ああ、でもこれで私たち、一人ぼっちじゃなくなったのね」

「うええぇん」

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 白猫黒猫

 ここはとあるペットショップ。二匹の子猫が買われるのを待っています。

「おきゃくさん、こないねー」

「そうね」

「くろちゃんとおなじおうちがいいなー」

「むりね」

「わかんないよー?」

 一人の紳士がやってきました。白が買われていくようです。

「……やっぱり。いっしょになんていられないのよ」

「くろちゃん、またあおうねー」

「むりよ。さよなら、しろ」

 一人の婦人がやってきました。黒が買われていくようです。

「どこでもおなじよ……しろはいないもの」

「お父さん、お母さん、おかえりなさい! ……え? プレゼント?」

「あっ!」

「あっ!?」

「うわあ、かわいい猫、二匹も! ありがとう!」

「うふふ、くろちゃん、いっしょのおうちになったね」

「うん」

「よかったね」

「うん」

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 ここはとある少年の家。二匹の子猫は、今日も一緒に過ごしています。







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 19:15:12