メイン複数SS

ー昭和49年夏

私の名前は黒

親の仕事の都合で住み慣れた土地を離れてこの村に越してきた。

今日から私が通うことになる学校は村に唯一ある学校だ。

まぁこの村には子供が少ないので仕方ないことなのだが…

ぼんやりと回りの景色を見ながら歩いているとその学校が見えてきた。

木造のこじんまりとした校舎

「私の前の学校より小さいな…」

そう思いながら校門を通ろうとした時、不意に声をかけられた。

「ようこそ~転校生さん」

声がした方を振り向くとそこには自分と同じ制服を着た同い年位の子がいた。

「どうして私が転校生だって分かるの?」

「この学園に通ってる生徒は少ないからね。だから同じ制服を着てる見知らない顔がいれば転校生ってこと」

そう言ってその子は笑った。笑ったというより微笑んだ

「アナタの言う通り私は転校生で名前は黒って言うのよろしくね」

「私は黄緑っていいますよろしくね~黒さん~私これから日直の仕事があるからまた後でね」

そう言って黄緑は校舎の方に向かって行った。

「お母さーん、私の制服はー?」

「あぁ、それが業者さんが少し遅れるって」

「ええっ?じゃ、じゃあ何着て学校に行けばいいの?」

「前の学校の制服、かしらね…大丈夫よ、先生には話してあるから」

「もう…」

私の名前は水色。今日から虹色学園に転校することになった。もうすぐ夏休みも近いのに転校することになったのは、お父さんの急な転勤のため。

「ああ、水色。早くしないと遅刻しちゃうわよ」

「あっ、そ、そうだね。じゃあ行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

あれが私のお母さんの黄緑。凄くおっとりしてて優しいんだけど…たまにちょっと…ううん、凄くうっかりさんなところがある。でも私の自慢のお母さん。

「えー、今日からこの学校に通うことになった水色だ。親御さんの仕事の都合でここにくることになったらしい。皆、仲良くしなさいよ」

「み、水色です。よ、よろしくお願いします!」

ここが新しいクラスかぁ…なんだか緊張しちゃうなぁ

「さてと、それじゃあ…どっか空いてる席はある?」

「あっ、センセー、ここ空いてまーす」

「ん、そか。じゃあ水色、あの席に座って」

「はい」

そう言って案内されたのは真ん中右よりの席だった。

「えと、水色さんだっけ?よろしくね」

「あっ、は、はい。よ、よろしくお願いします」

「アタシは黄色って言うんだ。それと同い年なんだし敬語じゃなくていいよ」

「ご、ごめんね」

「おーい、そこー。授業するから静かにー。黄色、教科書見せたげて」

「はい」

「あ、ありがとう」

うん、大丈夫。上手くやっていけそうだ…

「えーっと、じゃあしばらくはその服で登校することになるのか」

「は、はい」

「まぁ他になんか困ったことあったら職員室に来なさい。たいていはここにいるからさ」

「わ、わかりました。では失礼します。さようなら、朱色先生」

「気をつけて帰りなよー」

よかった、担任の先生もいい人みたいだし。

「あれ…?」

今…誰かがいたような…

「…いってみようかな」

何故こんなに気になったのか…それは私にもわからなかったけど…でも…行かなきゃいけない気がした…

「あ、あの…」

「…?誰…?」

「こ、こんにちは…」

「…こんにちは」

わぁ、綺麗な子だなぁ…なんだか大人っぽいし…上級生かな…

「…貴方は?」

「あっ、え、えとこの学園に転校してきた水色です」

「…そう…貴方が…」

「え…?」

「ようこそ、『転校生』」

そう…思えばこの時からだったのだろう…

「この学園は呪われているの」

私が…この学園の『呪い』に巻き込まれたのは…

「呪われている…?それって…」

「いずれわかるわ、さようなら」

「ま、待って!」

「何?」

「貴方は…」

「…黒よ。じゃあ、またいずれ…」

「あっ…」

なんだったんだろう、今のは…それに…呪いって…?

翌日、私は昨日あったことを黄色さんに話してみた。

「呪い?」

「う、うん。昨日黒って子に言われて…」

「黒が?」

「知ってるの?」

「うん。となりのクラスの子だよ。そっか、黒が…」

「ど、どうしたの?」

「ん、別に。あの子この学校の歴史を研究してる部活の部長だからね」

「そ、そうなんだ…じゃあ…ここって結構古い学校なのかな」

「詳しくは知らないけどそうらしいよ」

「そうなんだ…」

でも呪いか…気になるなぁ…

「呪いと関係あるかはわからないけど七不思議ならあるわよ」

「七不思議…?」

「そう。この学園にはね、虹と同じように七不思議があるの…」

黄色ちゃんに詳しく話を聞いてみることにした。

「まず最初は『赤と青のちゃんちゃんこ』」

「聞いたことがあるような…確か…トイレとかで聞かれるんだよね?」

「そそ。赤いちゃんちゃんこと青いちゃんちゃんこを選ばされるの」

「赤は…首を切られて…」

「そう。首からの血で真っ赤なちゃんちゃんこを着せられる」

「でも…青は?」

「そっちは逆に血を抜かれて…真っ青なちゃんちゃんこを着せられるの…」

「………」

「おや?水色ちゃんすでに青いちゃんちゃんこを着てますねぇ」

「き、黄色さん!」

「ごめんごめん。で、次は『黄昏時の鬼』」

「お、鬼?」

「そう。夕暮れになって学園からみんな帰ったとき、鬼が出るんだって」

「そ、そうなんだ…」

「それから…『女王蜂』ね」

「へ?蜂?」

「昔この学園にそんなあだ名で呼ばれた人がいたんだって。その人すっごい綺麗だったらしいんだけどね…ものすごくプライドの高い嫌な人でもあったんだって」

「そ、それで?」

「ある時ライバルだった女子が彼女を罠にはめたのよ。どうやったかはわからないんだけど…蜂の大群に襲わせたみたい」

「なんだか…皮肉だね…」

「やった女子もそれを狙ってたんでしょうね。で、その時大量の蜂に刺されたせいで死んじゃったんだって」

「そうなんだ…」

「でもそれで終わりじゃないのよ…何ヶ月か後、そのライバルの女子と仲間の女子全員が蜂に刺されて死んだの」

「え…?」

「それ以降もこの学園では美人が蜂に襲われるようになったんだって。で、皆が『これは女王蜂の呪いだ』って言い出した、と」

「呪い…」

「えーっと後残ってるのは…そうそう、『校舎裏の林』ね」

「林?」

「ほら、ウチの学園結構広いでしょ?で、裏に林があるのよ」

「そういえば…あれ、でもあの林って…立ち入り禁止って聞いたけど」

「なんでだと思う?」

「え…」

「実はあの林…昔から自殺者が大量にいるのよ」

「じ、自殺!?」

「しーっ。声が大きい。学園としてもそんな話は黙っておきたいんでしょう。でもね、不思議なことに…林からは一体も痛いが出てきてないのよ」

「どういうこと…?」

「さぁ?でもそのせいであの林は『人食い林』って呼ばれてるのよ」

「ひ、人食い…」

「あと残ってるのは…『紫鏡』ね」

「あっ、それなら知ってる。確か二十歳になるまでに忘れないと不幸になるんだよね」

「そそ。なんか明らかにスケールちっちゃいけどねー」

「…あれ?でもまだ六つしか聞いてないけど…」

「ああ、最後のはアタシは知らないのよ。ゴメンね」

「そうなんだ…」

「多分黒なら知ってるんじゃないかな」

「ありがとうね、黄色ちゃん」

でも黒さんかぁ…なんだかちょっと聞きにくい…

「あら…貴方は…」

「こ、こんにちは、黒さん」

「こんにちは『転校生』さん」

「…私には水色という名前があります」

「あら失礼。それで、水色さんが私に何の用?」

「聞きたいことがあるんです…七不思議について」

「…いいわ。答えられる範囲で答えてあげる」

「…それが貴方の聞いた話?」

「は、はい」

「…なるほど…今はそうなってるんだ…」

「え?」

「あぁ、なんでもないわ、こっちの話。でも残念ながら私も七つ目の不思議…藍色の話は知らないの」

「そうですか…ありがとうございました」

「ところで…どうして貴方…そんなことを?」

「え?そ、それは…黒さんが初対面の時怖いことを言うから…」

「そうだったかしら?」

「と、とぼけないで下さい!こ、この学園は…呪われてるとか…」

「あぁ、そういえばそんなことも言ったわね」

「あ、あんなこと言われたから怖くて…」

「…確かに初対面の貴方にあんなことを言ったのはまずかったわね、ごめんなさい」

「い、いえいいんですけど…」

「…そうね、貴方私の部に入らない?」

「へ?」

「貴方も興味ない?七つ目の不思議に…」

「で、でも…」

「そう怖がらないで。それに私もちょうど部員が欲しかったのよ。どう?」

そう言ってにっこりと笑いかけてくれた黒さんは…とても綺麗で…つい見とれてしまった…

「え、えと…じゃあせっかくですし…」

「決まりね。じゃあ早速皆に紹介するわ。付いてきて」

「ここが私たちの部室よ。さ、入って」

「お、お邪魔します…」

ここが部室かぁ…どんな人がいるんだろう…

「…あら、緑だけ?他の二人は?」

「あっ、黒。二人はまだ来てないよ…その人は?」

「新入部員よ。水色、紹介するわ。彼がここの副部長の緑」

「み、水色です。よろしくお願いします!」

「こんにちは、水色さん」

「いい事教えてあげる。彼結構成績いいから頼めば勉強とか教えてくれるわよ」

「ちょっ、黒。やめてよそういう事言うの」

「いいじゃない。彼女は転校生なんだし」

「あっ、そうなんだ」

「は、はい」

「大抵図書館にいるから困ったら行ってみなさい」

「は、はぁ…」

「それにしても遅いわね…」

「ごめん、遅れた!」

「すいません、遅れました」

「あらちょうどよかったわ。二人とも、紹介するわ。新入部員の水色さんよ」

「へ?新入部員?」

「…こんにちは」

「水色。この二人が残りのメンバーよ。青と紫の姉妹」

「こ、こんにちは」

「で、青のほうは緑の彼女だから「なっ!」緑には手出ししないように」

「こ、こら黒!な、何勝手なこと言ってんのよ、誰がこんな本の虫なんか…」

「そ、そうだよ、黒。あんまりからかわないでよ…」

「あら?でも貴方達毎日屋上でお弁当一緒に食べてるわよね、青が作ってきた」

「えっ!?そうなんですか!?」

「そ、それは…その…し、仕方なくよ!お、幼馴染だし…」

「あれでもお姉ちゃん家でかなり練習してたよね」

「紫!アンタは余計なことを言わないの!」

「否定はしないのね」

「うっ…」

「…ふふ」

「?どうしたの水色」

「あっ、いえ…でもなんだか楽しそうな部活で安心しました」

「…ありがとう、水色。じゃあ改めて…」

「ようこそ、『怪奇研究部』へ」

「…はい、よろしくお願いします!」

「あっ、それとこの部活はまたの名を『寒色部』と言うのよ」

「か、寒色部?」

「ほら皆名前が寒色系の色でしょ?だからよ」

「は、はぁ…」

私の学園生活…どうなるんだろ…


「転校生の黒さんだ。席は…そうだな…色無の横に座ってくれ」

私は言われた通りの席についた。

「みんな黒と仲良くしてやってくれ。HRは以上!」

先生が教室から出ていくとすぐに周りの生徒が話かけてきた

「俺は色無っていうんだ。よろしくな」

「私は橙っていうのよろしくね!」

「みっ…水色って言います……よろしくおねがいします」

その後、みんなのおかげで私はあっという間にクラスに馴染めた

あれ?もしかして…ううん…まさかね…でも…

そして放課後

「色無くん…」

「どうした?」

「昔、東京に住んでいなかった?」

「やっぱりお前か」「隣に住んでた黒だろ?」

「やっぱり…そうだったのね…久しぶりね」

「こんな所でまた会うなんてな」

それから私達は帰りながら昔の話で盛り上がった

ー次の日

「だっ…だから…ホントなんですよ…」

「どうしたの?」

「あっ…黒おはよう」

「おはよう。何かあったの?」

「はい…昨日のことなんです…私が『独房部屋』の前を通った時のことなんです…」

「独房部屋?何よそれ?」

「あぁ、黒はまだ知らないのか…『独房部屋』っていうのはな……」

色無の話によると『独房部屋』とは昔からずっと閉じたまんまの部屋…いわゆる開かずの間みたいなものだと言う

「なんだそんなのどこの学校でも似たような話があるわよ。で、何があったの?」

「はい……昨日その部屋の前を通り過ぎた時……」

ー「図書室の掃除で遅くなっちゃった…」

カリカリ…

「?」

カリカリ…

「なんだろう?」

カリカリ…

「この部屋から…?」

ガリガリ!ガリガリ!

「でもこの部屋って………」

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ


赤の憂鬱

僕には女の子らしいところなんて1つもない

スカートも持ってないし、胸もない

落ち着きもない、料理もできない、勉強もできない

ない、ない、ない、ない、ない、ない、ない

『ない』ものばっかり

こんな私に彼は振り向いてくれるわけがない

それに彼を振り向かせる自信も『ない』

僕に少しの女の子っぽさがあれば……

青の憂鬱

私は全然素直じゃない

苦しいくらい好きなのに、言うのはいつも逆のこと

そして、いつも大ゲンカ

そんなつもりは無くっても口から出てくる買い言葉

それを周りは仲がいいと言うけれど

仲が良ければケンカなんてしないと思う

私にほんの少しでも素直になれるチャンスがあれば……

黄の憂鬱

私はすごーくお馬鹿さん

勉強ができないのもあるけど、チャンスを上手に生かせない

話は合うし、気も合うけれどいつまで経っても友達止まり

チャンスがあっても前に一歩も踏み出せない

今が崩れるのが怖くてたまらない

私にほんの少し前に踏み出す勇気があれば……

橙の憂鬱

私は彼が大好きだ

だからずっーと側にいたい

死ぬまでずっーと一緒にいたい

だからいつも彼の側にいる

最初は照れていた彼も、今ではすっかり普通の顔

どんなに抱きついても前のようには照れてくれない

いつの間にか私は彼の空気になってた

いるのが当たり前

そこに元々あるもの

あまりに自然にありすぎて近くにいるのに気づかない

私に今の状況変える方法があれば……

紫の憂鬱

小学生の時から背の順はいつも1番前

私はすごく子供だ

見た目も、中身も

アイツと並んで歩いていても、兄妹にしか見られない

頑張って背伸びをしてみても身長の差は全く縮まらない

頑張って大人ぶって接しても全く距離は縮まらない

どんなに頑張ってもアイツは振り向かない

私に大人の魅力が足りないから

私が少しでも大人になれれば……

白の憂鬱

私は生まれつき体が弱い

学校も欠席ばかり

だから彼にもほとんど会えない

でも時々彼は私に会いに来てくれる

でも彼はきっと迷惑に感じてる

優しいから言わないだけできっと迷惑に感じてる

時々、元気になって学校に行っても

具合が悪くなって

結局、彼に迷惑をかけっぱなし

彼に迷惑をかけないようになれれば……


空「明日から何をして過ごそうかな?」

 夏休みに入りこれからをどう過ごしていこうかをぼんやり考えていた時。

灰「暇そうだね。それなら……」

 灰ちゃんの「みんなで怪談話で盛り上がりたい」との提案で寮のみんなを誘って怖い話をすることになった。

 最近はテレビでも怖い番組を放送することもなくなったので私はそれなりに楽しみにしている。

 そういうわけでワクワクしながら必要ものの買出しや準備などをしているとすっかり外は暗くなっていた。

 夕食も終わりみんなで片づけをして全員が広間に集まる。

 私と灰ちゃんに加え2年の先輩たちに加えて朱色さん・群青さんに色無先輩・緑男先輩といった男性陣を含めた寮の全員が集まった。

灰「さぁ、始めようか!」

茶「やるのは賛成なんだけど……私はする怖い話がないんだけど」

空「なら茶色先輩は聞いてるだけで大丈夫ですよ」

無「俺を含めて全部で17人いるけど話すのは何人だ?」

 色無先輩がそういうと6人の手が上がった。

青「黒に橙、黄緑、紫、朱色さん、群青さんの6人ね」

灰「意外と少ないね……まぁいっか。じゃあ話の進行役は空に任せようかな」

空「私がやるの?」

 聞くことに専念しようと思っていたのだけれど仕方ない。進行役だからといって聞けなくなるわけではないし。

空「わかった。具体的には何をすればいいの?」

灰「話を聞く順番を決めるだけでオーケー」

 それなら私でもできそうだ。

 さて……誰から話を聞こうかな?

 

空「最初の話は紫先輩がお願いします」

紫「わかった!」

桃「えらい意気込んでるね」

紫「とっておきの話を用意してきたからね!」

 そう言ってるけれど、普段から怖がりな先輩のとっておきじゃそんな期待できない気がする。

 そういう意味もあって私は紫先輩を最初にした。

 指名したときに灰ちゃんがこっちを見て頷いたのは同じ考えだからだろう。

紫「それじゃあ話すね……」

 紫鏡って知ってる?

 このことを20歳まで覚えていると不幸にあったり、死んでしまうという話なんだ。

 小学生の頃にはいくつもそんな話があったよね。

 私の小学校にも同じような話があってさ。

 うちでは名称が違って「イルカ島」って名前で呼ばれてたんだけど……

 不幸の内容が少し他のものと違ってて20歳までに忘れられなければ手か足を切られてしまうといった話になってるの。

 所詮、噂だしあまりに根拠もない話だから私も信じていなかったんだけど。

 つい最近、いとこにその話をしちゃったんだ。

 いとこはまだ10歳だから問題ないと思ってさ。だけど、その子にはJっていうお姉さんがいてね……

 いとこがお姉さんにその話をしたんだって、Jさんは小学生の弟の言うことってこともあるし話の内容もあって全く信じなかった。

 その後も何もなくていとこもJさんもその話は忘れていたの。

 けれど、Jさんの20歳の誕生日が間近にせまった日の夜。

 ふとその話を思い出してしまったんだって。

 いつもは寝つきがよくて眠れないことなんて無かったJさんがその日に限って全く眠れない。

 寝苦しいから水を飲みに行こう。

 そう思って起き上がろうとするけれど、なぜだか体が動かない。

 必死になって動かそうとするのだけど上から何かに押さえつけられているようでビクともしなかった。

 そのとき部屋の前の廊下を何かを引きずりながら歩く足音が聞こえたんだって。

 それが段々とこちらに向かってきているのがわかる。

 案の定そいつはJさんの部屋の前で立ち止まった。

 Jさんにはそいつが部屋の様子を伺っているように思えたそうなの。

 何時間、たぶん数分のことだったんだろうけどJさんにはひどく長く感じたんだって。

 そいつはしばらくするとまた家の外に向かって歩いて行った。

 その途端Jさんの体は動くようになったけれどJさんは水を飲みに行くのを止めてそのまま朝まで布団に包まって震えていたそうなの。

 翌朝、部屋から出てリビングに行くと家族が騒いでいる。

 どうしたのかと思って聞いてみると母の趣味で集めている西洋人形の肘から下が切り落とされていたんだって。

 それだけでなくどれも胴をくの字に曲げれていてその姿はイルカのようにも見えたそうだよ。

紫「結局、変質者のしわざということになったそうだけど、家中どこの鍵を見てもこじ開けたような形跡はなかったんだって。これで私の話は終わり」

緑男「少し変わった話だね」

黒「確かに。20歳のところ以外はあまり共通項はないわね」

緑男「不幸になるっていうのを殺されるというように解釈することができるけど……」

黒「『何か』が直接手を下すってところが紫鏡とは別物ね」

緑男「うん。でも、そもそも紫鏡って話自体が特殊な話だね」

桃「どういうこと?」

緑男「これは僕の勝手な考えだけどいわゆる『学校の七不思議』と呼ばれるような話は先生たちが最初に流したと思うんだ」

無「どういう根拠で?」

緑男「大抵、どこの学校も同じような場所に話が集中しているんだ。一番多い例だと理科室かな」

無「確かにホルマリン漬けが動くとか人体模型がって話は聞きますね」

緑男「うん。それは理科室には危険な薬品が多くあるから近づけさせないようにするために流したんじゃないかって」

無「なるほど……そう考えると筋が通る所もありますね。でも、それ以外は?」

緑男「大抵、物置として使っているような開かずの間だったり、校舎の地下室みたいな所から話が出てくるのは『わからないからつけられた理由』って解釈ができると思うよ」

桃「……?」

黒「つまり『正体不明のままでは怖いからとりあえず納得できるような理由が欲しい』ってことね?」

緑男「さすが黒だね」

桃~(むー……どうせ私は理解力ないもん……)

緑男「人間は『意味の分からないもの』に恐怖したり負の感情持つものなんだ。昔は科学なんてなかったから時には説明のつかない現象もあった。それの理由付けが『妖怪』だと思うんだ」

黒「だから科学の発達とともに妖怪はいなくなったのね」

無「じゃあ幽霊は?」

緑男「断言できないし、かなり信憑性もない話になるけど幽霊は『脳の解明されてない部分』に理由を付けるものだと僕は思ってる」

桃「でも、それだと紫の話を説明できないよ?」

緑男「そうなんだよ……安易に夢で片付けることもできるけど人形の説明がつかないしね……」

桃「い、一緒に考え——」

黄「待った!!」

桃「ちょっと人がせっかく勇気を出して……!」

黄「そういうのは終わってから二人でゆーっくりすればいいじゃん! 難しい話ばかりでぜんぜんわからないしさ!」

桃「(二人で……ゆっくり……)うん! そうする!」

赤「早く次の話を!!」

灰「ほら! ちゃんと進行させて!」

空「そうだった……じゃあ、次の話を……」







トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-10-21 (日) 13:07:15