スクールデイズ

『青家の会話』

空「お姉ちゃーん」

青「何?高校の広報なんか見て」

空「お姉ちゃんの彼氏さんってこの赤さんだよね?」

青「な、何で知ってるのよ!?」

空「同じクラスの陸上部の人が言ってたよ。赤さんが毎回毎回惚気出すって」

青「あ、あのバカ……」

空「とか言いつつ嬉しそうだね。流石正統派ツンデレ」

青「何よそれ!」

空「あんまり幸せそうでムカついたのでお母さんに報告しておきました」

青「え、ちょ!!!」

青母「べ、別にあんたの彼氏になんか興味ないんだから!!」

空(似たもの親子だよなあ……)


『白家の会話』

白「♪〜〜♪〜〜」

白母「なんだか嬉しそうね、白」

白「うん!だって明日は黒くんとデートなんだもん♪」

白父「な、なんだって!」

白母「あらあら。あなた達、お付き合いしてたの?」

白「うん!」

白母「よかったわねえ」

白「えへへ……」

白父「うーむ……」

白母「どうしたの、あなた?」

白父「娘のそういうことだし、反対とかをしてみたいんだが……」

白母「相手が黒くんじゃねぇ」

白父「……納得せざるを得ないというか……」


『合格発表』

黄「だだだだだだ橙!ああああああああたし!」

橙「どうどうどう。何が言いたいかは何となくわかるけどとりあえず落ち着け。深呼吸しろ、深呼吸」

黄「……すぅー……はぁー……」

橙「よし。で、何?」

黄「あたし、受かってた!第一志望!!」

橙「マジか!すげーな!!」

黄「えへん。あたしもやればできる子なんですよ。……で、橙はどうだった?」

橙「……」

黄「——う、嘘……そんな……(じわぁ)」

橙「受かったよ(けろっ)」

黄「……え?」

橙「ちゃんと第一志望に受かったぜ、俺も」

黄「……」

橙「……黄ぃ?」

黄「……こ、の……どバカぁ!!」          橙「ぬわっ!?」

黄「あたしが今っ……どれだけ不安で……悲しくなったか……ぐすっ……」

橙「わ、わりぃ……やりすぎた……反省、してる」

黄「……バカ」

橙「ごめん」

黄「……でも、よかった。おめでと、橙」

橙「ありがと。おめでとう、黄色」

白「く、黒くぅん……」

黒「どうしたんだ、白?」

白「合格発表、その……怖くて、見れないの……い、一緒に見てくれない?」

黒「構わないけど。でも、見ることに変わりはないだろう?」

白「それでもいいの。黒くんがいてくれると……何となくだけど、安心、できるから……」

黒「……わかったよ。俺のパソコンで見よう」

白「うん」

黒「……っと、あった。ここの『合格発表』ってとこだな」

白「うん……」

ぎゅっ

黒「……白、大丈夫。白は頑張ってきたんだ。絶対合格してるさ」

白「……そうかな……。……ねえ、黒くん」

黒「なんだ?」

白「もし……受かってたら、頭撫でて誉めてくれる?」

黒「……それはもう、いくらでもしてやるさ」

白「……えへへ。……よし、じゃあ……見よう」

 その五分後、幸せそうに頭を撫でられている白の姿がありましたとさ。


『愛情表現』

 1.れっつ~バカップル!

赤「青ーッ!!」

がばっ!

青「だっ、だからなんであんたはいっつもそう……」

赤「だって俺青のこと好きなんだもん」

青「ストレートすぎるの!」

赤「男は黙って直球勝負!……つーか、こういうのイヤ?」

青「そ、そんなこと……」

赤「どうなの?イヤ?(ニヤニヤ)」

青「……ゃ、じゃなぃ……」

赤「だろー♪」

赤「それにさ、青」

青「な、何よ……」

赤「どーせ今二人なんだし、甘えてもいいんだぜ?」

青「」

赤「どうする?(ニヤニヤ)」

青「……甘えるもん」

赤「りょーかい♪」

 

 2.隣に君がいる。ただそれだけでいい

黒「……」 読書中

白「……」 少し本の中身を覗いてみる

黒「……」

白「……」 字が見えなかったらしく諦める

黒「……」

白「……」 黒が入れた甘々コーヒー(白専用)に口を付ける

黒「……」

白「……」 黒に寄り添っている肩を少しだけさらに傾ける

黒「……」 それに気付いて白を見る

白「……」 幸せそうにはにかむ

黒「……」 ゆっくりと、穏やかに微笑み返す

白「……」 微笑んだまま、頭を黒の肩に乗せる

黒「……」 優しい表情で白を見て、またゆっくりと本に目を戻す

 

 3.いつも通り。それこそが幸せ

黄「よし、カビゴンげっとぉ!」

橙「ポケモンっすか」

黄「さぁサイクリングロードを下ってセキチクだ」

橙「しかも初代かよ」

黄「ファイアレッドだし」

橙「はいはい」

黄「あーピカチュウ可愛いなぁー」

橙「まぁ確かにな。アレは可愛い」

黄「……あたしとピカチュウどっちが可愛い?」

橙「断然ピカチュウ」

黄「ですよねー。……うーん、ヤツに勝つにはどうすれば……」

橙「耳でもつければ?」

黄「……橙ってそういう趣味だっけ?」

橙「冗談に決まってんだろ」

黄「お義母さんはそんな子に育てた覚えはありませんよ!」

橙「人の話を聞け」

黄「でも大丈夫!義、がついたから攻略はできるよ!」

橙「お前用のポケモンセンターねえかな。できれば頭の中まで治してくれるところ」

黄「それは一般的に精神科って言うんだよ」

橙「行くか?」

黄「パス」

橙「……つーかなんでお前俺んち来てDSしてんの?」

黄「橙の部屋でやったほうが楽しいんだもん」

橙「……あーそうですか」


『置き手紙』

 橙と黄色が小学生時の話

橙「黄色ー、遊ぼうぜー……ん?」

『家出します。探さないでください。黄色』

橙「……はあ」

 いつもの公園

黄「うぅ……ぐすっ……」

橙「はい、黄色見っけ。……帰るぞ」

黄「たいちゃん……。……手紙、読まなかったの?」

橙「お前なんか探さなくてもどこにいるかくらいわかんの。それに、探すな、とは書いてあったけど、見つけんなとは書いてなかったし」

黄「……屁理屈」

橙「るせえ。……ほら、帰んぞ。……おばさんには、俺も一緒に謝ってやるから」

黄「……ありがと、たいちゃん」

橙「いいよ。……あと、たいちゃんは止めろな?」


「そんじゃまあ、行ってきますかね」

いつも通りの様子で、その少年は玄関へと向かう。それでもやや早めの出発となりそうなのはやはり彼にも今日という日が特別であるからなのだろうか。

三年間使い続けたカバンを手にして、少し汚れたスニーカーに足を入れる。もう、何回この動作を行ってきただろう。

「赤、ちょっと待って」

ドアノブに手を掛けた赤に、母親が洗い物を止めて、その手をエプロンで拭きながら声を掛ける。

「お袋?どうしたの?」

特に忘れ物もないはず、と赤は首を傾げた。

「ふふふ」

軽く笑う。しかしその母の行動にはとても大きな、感慨、のようなものが含まれていた。

そのときの彼を見る母親の目を、彼はまだ、どうとも説明は出来なかったであろう。歓びか、安堵か、誇りか、淋しさか。

久しぶりに向けられた真っすぐすぎる母親の視線に、赤はやや恥ずかしさを感じ、目を逸らした。

「あんたがそれ着るの、最後だろうからね」

ずっと身に纏ってきた学生服。少し古いタイプかもしれない。所有者が赤であるせいか、かなりボロボロかもしれない。それでも、それを纏い、『最後の場所』へ向かう息子が彼女の目にはどう映っているのだろうか。

「お、お袋、卒業式見に来るんだろ?ここでそんなにじっくり見なくても……」

「ふふ、それもそうね」

大体の男子高校生という生きものにとっては母親の真っすぐな視線からは早くかわしたいものだ。そわそわとする赤に、母は一つ息をついてまた笑った。

「——いってらっしゃい」

息子を送り出す。けしていつもと違わぬいつもの声で。

「ああ。いってきます」

母の気持ちを知ってか知らずか、やはり赤もいつものように扉を開け、歩き始めた。

ぱたん、と扉の閉まる音がする。

「大きくなったわねぇ、赤」

きっと、多くの母親が感じるであろうそれを、彼女もまた、呟いた。

『卒業式』

三月の澄むような青空に羊雲が気持ち良さそうに浮かんでいる。

空気は暖かいとは言い難く、まだ冬を残しながらも、しかし降り注ぐ太陽の光は明るく、確かに春を感じられる。そんな晴れやかな日に、どこにでもある、しかしたった一つの式がこの高校でも行われていた。

卒業式。たとえそれが聞くのも煩わしくなるようなご立派な祝辞ばかりのものであっても、得るものがたった一枚の紙切れに過ぎないとしても、それでもなお尊い、大切な区切り。

あるものは過ぎし思い出に浸り、あるものは去ってしまった日々を悔やむ。そして彼らの前には、茫洋とした未来が待っている。それは明るいか否か。

ただ、それが行われる空間は確かに厳かな空気を纏い、三年の、いや十八年の時を経て成長した彼らをいざ送りださんと、堂々とあった。

「一同、ご起立願います」

放送が指示を告げ、体育館の片隅のグランドピアノから卒業生へと最後の旋律を奏でられる。

——仰げば尊し我が師の恩……

決まり切った、退屈な唄。しかしここで流れるそれはあまりに重い。真剣に唄う者にも、そうでない者にも今日だけの特別な音が流れる。

どこからかは擦れた声が聞こえ、やがて啜り泣く音となった。それでも、いやだからこそ、その場は最後まで厳粛だった。

桜など、まだ咲きはしない。ただ、時とは残酷で、そして何より正確に彼らに別れを告げる。

「卒業……しちゃったね」

誰よりも笑顔の似合う彼女はやや俯いて、いつものように隣にいる幼なじみにぽつりと零す。

「……黄色、お前……」

傍らの彼は、彼女の様子をわずかにうかがい、黙って彼女の頭をくしゃくしゃと撫でた。

きっと、今の彼女にはどんな言葉も野暮でしかないだろうから。

「……ッ」

彼女から零れたのは、言葉だけではなかった。俯いたまま、ゆっくりと歩いてくれる彼の隣についていく。

「……行こうぜ、きっとあいつらも待ってる」

「……うん」

彼女を決して焦らせず、ゆっくり約束の場所へ向かう。最後もやっぱり共にいたい仲間達が待っているんだ。

「……うぅ……」

「大丈夫か?」

「……うん。そろそろ、平気」

こちらも、やはり想いの強さに込み上げてくるものがあるのだろう。一度決壊したものを抑えるのは難しく、彼女が落ち着くのを彼は静かに待った。

「楽しかったなぁ……高校生活」

しみじみと思い出を想起する。病気がちだった彼女は自分がこんなにも楽しい高校生活を送れたこと自体が奇跡だと思った。

「俺もだよ」

そんな彼女の隣に居続けた彼にもまた、大きな三年間を過ごしてきた。親友を得、彼女との関わりをより良いものとし、夢へと走りだすことが出来た。

「今から高校生活を楽しくしてくれたやつらと会うんだ。……あいつらとは、笑顔で会いたいからな」

思い出に浸り、涙を流すのはここで終わり。だから、ゆっくりでも、彼女が笑えるようになるまで待つ。

「そう……だね」

「あいつらには本当に感謝してるよ」

彼女の笑顔は彼らのおかげだと思うから。

「……黒くん」

「ん?」

小さな呼び掛けに、顔をそちらに向ける。そこには目はまだ赤いものの、とても嬉しそうな彼女の表情があった。

「ありがとう。私は、黒くんのおかげでこんなに楽しい高校生活を送れました」

「……え?」

その言葉が、自分に向かうとは黒は予想をしていなかったらしく、意外そうな顔をしていた。

「赤くんと友達になれて本当によかった。橙くんと黄色ちゃんと仲良くなれて本当に嬉しかった。でも、それは黒くんがずっと傍にいてくれたからだもん。だから黒くん、ありがとう」

これくらいじゃ足りない、感謝の言葉。それでも伝えたくて、彼女は必死に言葉を探す。

——彼女は、本当に強くなった。

「ありがとう、は俺の台詞だよ」

彼もまた、強さを得た。それは一人で先に行くものではなく、大切な人と共に、二人で歩いてゆくための『信頼』の強さ。

それを気付かせてくれたのは間違いなく彼女だから、彼もまた感謝を告げる。

——そしてそれは、これからも続いていくものだ。

「行こうか」

「うん」

手を繋いだ。二人を繋ぐのはきっと手だけではないだろう。

彼らは二人で、約束の場所へと向かった。

「俺らが一番乗りかよ」

「意外よね。黒たちがもっと早く来てると思ったけど」

校門の近く、大きな桜の木の前。そこが彼らの約束の場所だった。

「この桜も空気読んで満開とかになんねえかなー」

「さすがに無理よ。まだ三月の頭だもの」

ドラマや漫画のような、桜吹雪とはいかない。でも、だからこそよいのだ。

「それに、桜じゃすぐ散っちゃうでしょ?」

旅立ちの日だからこそ、そこにあるのは『これから』花をつける桜の木こそがふさわしい。

「なるほどね」

わかっているんだかいないんだか、はっきりしない顔で赤は相槌を打つ。

「俺さ、青、泣くんじゃねえかなーって思ってたんだけど」

しっかり者のくせに、けっこう涙もろい。そんな彼女だから、もしかしたらと赤は考えたらしい。

「泣きたくはなったけど……。……私、まだ決まってないしなぁ」

う゛、と赤が声を詰まらせる。国立大学の前期の合格発表はまだである。式を終えても、受験が終わっていないのだ。

「だ、大丈夫!青なら絶対受かってるって!」

完全にやってしまった赤。必死になるがしょせんは彼には専門外の話だ。

「……ならいいなあ」

不安がる青に、あたふたする赤。

「それにほら、折り鶴がついてるだろ!」

願いを込めた六羽の鶴。不細工ながらも、彼なりの思いやりが詰まっている。

「そっか……そうよね」

アレを見るたび、彼女は勇気が湧いてくる。それはおそらく、彼への恋心のせいだけではないだろう。

「だから、万事おっけー!今日は笑顔で卒業しようぜぃ!」

それこそ満面の笑みで、赤は親指を上へ突き出した手を掲げた。

彼女から、笑みが零れる。こんな明るい彼と、この三年間は出会わせてくれたんだ。

「そうね。……ありがと」

「おー」

二人の間に、春風が駆け抜けた。その暖かさはいつかを思い出させるようなそれで、二人はまた、笑いあった。

卒業、それは別れであり、始まり。

「楽しかったね」

咲き誇るのは思い出。

「うんうん!サイコーだったよ!」

舞うのは言の葉。

「けっこうこのメンバーで遊んだよなー」

彩るのは十人十色の未来への期待。

「海に行ったりね。いい思い出ね」

門出の日に、過去を振り返るのは愚かもしれない。

「また行きてえー!!」

過ぎし日々は多くありすぎる。

「また行こうよ」

善き日もあり、共に笑いあった。

「そうだよ!またみんなで集まってさ!」

嫌な日もあり、一人悩んだ夜があった。

「つーか春休みあんだろ。青と黒が決まったらどっか行こうぜ。俺、そのつもりでいたんだけど」

ただ、そのすべてが輝かしくて

「おぉ!橙、気が早いね!」

青臭くて、格好悪くて

「卒業ですべてが終わるわけじゃない。また遊ぶことぐらいできるだろ」

誇らしくて、恥ずかしくて

「そうよ。連絡取って会いましょう」

そして確かに美しくて

「だよな!またちょくちょくみんなで会えるよな!」いつもは考えもしない、永遠なんてものを考えてしまう。

「我らの友情は不滅だー!ってね♪」

時は流れる。

「あはははは」

その残酷さは平等に訪れ

「なあ、写真撮ろうぜ」

永遠に信じたい『今』を薄れさせる。

「いいわね」

形が変わり、風化あるいは美化されるかもしれない。

「誰が撮るんだ?」

でも、『今』は間違いなく今そこにあって

「あ、カモ見っけ。色無ー!写真撮ってー!」

それが宝物にしたいほど大切だから

「……だぁっ!バカ赤、てめぇ押すなっつーの!」

『今』を全力で楽しんでいく。

「ガキ」

それを積み重ねていくうちに

「だからなんでお前らはそんなに……」

未来と呼ばれるものがだんだんとやってきて

「あ、ほら赤くん、色無くんが撮っちゃうよ!」

『今』で繋がる道ができていく。

「色無ーしっかり撮ってよねー」

それは、『今』を感じている間には、なかなかわかりづらいけれど、

「よし、俺、アレ言っちゃうもんね。……一足す一は?」

いつか、思い返す。ああ、あれは——

「「「「「「にぃー!」」」」」」

——青春、だったのだと。


『お泊り会』

赤「いやー、みんな無事大学決まったなー」

黒「そうだな」

赤「と、いうことで」

橙「ということで?」

赤「お泊り会だ!」

黒・橙「はあ?」

赤「お泊り会だよ! 今日明日と俺んち親いねーんだ。ってことで各自家に連絡するように!」

青「それは私たちもなの?」

赤「当たり前じゃん。六人みんなでだぜ!」

橙「女子が混ざるのは色々まずいんじゃね?」

赤「? なんでよ?」

白「わぁ! 私やりたいなぁ! みんなでお泊り!!」

赤「だろー」

黄「いいじゃん! 面白そうだし」

橙「……危機感のない奴ら……」

黒「メンバーが俺たちなんだから大丈夫だろう。……白、おじさんたちには連絡するんだぞ?」

白「うん!」

橙「……まぁいいか。楽しそうだし」

赤「よし、決まり! 今日はみんなでお泊り会だ!」

 

『連絡の仕方』

橙「あー今日友達んち泊まってくっから。んじゃ」

赤「テキトーだな」

橙「フツーこんなもんじゃね?」

黒「ああ、迷惑はかけないようにするよ。大丈夫、挨拶くらいは俺がしておくから。じゃあ」

赤「ん」

橙「……どーせ俺は育ちが悪いよ」

青「うん。ただ友達の家に泊まってくるだけだから。……そういうのじゃないから。うん、安心してよ。うん、じゃあね。……ふぅ」

黄「長かったね」

青「うちの親心配性なのよ」

黄「いいじゃん。うちなんか『どこにでも行ってこい』だよ? 放任主義すぎだし」

青「そっちのほうがいいわよ。さっきだって男の家に『泊まってくるんじゃないか』ってうるさくて」

黄「間違ってないけどね。しかもカレシの家だし」

青「……あ……」

 ボン!!

黄「あ、青!?」

白「友達のお家に泊まってくるね。大丈夫、黒くんも一緒だし! ……うん、じゃあね」

橙・黄(白の親、それで許しちゃうの!?)

 

『買い出し』

赤「ジュースは決まったし、あとはお菓子か。量があって安上がりなやつで選ぼうぜ」

黒「それが妥当だろうな」

橙「りょーかい」

赤「……で、なんでアーモンドチョコとチョコボールが入ってんだよ。高いじゃん」

黒「白が好きなんだよ」

橙「……黄色が……」

赤「……」

赤「あ、青? 青さ、なんか食べたいお菓子とかある?」

橙「惚れてんなぁ」

黒「俺たちに言えることじゃないがな」

 

『夕食準備』

青「何を作ればみんな喜んでくれるかしら?」

黄「人数も多いしね」

白「六人分となるとやっぱり多いよね……」

青「……パスタなんてどう?」

黄「おお! 色んな種類を選んでもらう感じで?」

白「楽しそう!」

青「パスタなら湯がくだけで楽だしね」

黄「じゃああたしカレーソース作る!」

青「い、いいんじゃない? ……私はキノコクリームソースを作るわね」

白「私ミートソース!」

青「よし、赤たちが帰ってくる前に頑張るわよ!」

黄・白「おー!」

赤「ただいま〜」

青「おかえり。もうちょっとでご飯もできるところよ。少しだけ待っててね」

赤「おぅ。……なんか、新婚みたいでイイ……」

黒「とりあえず一人で浸ってないで進め。邪魔だ」

 

『夕食』

赤「パスタ旨え!」

黒「上手く考えついたもんだな」

橙「うん、旨いよ」

黄「やったね!」

白「大成功!」

橙「おい赤、お前取りすぎ!」

赤「だって腹減ったんだもん」

黒「他のやつことも考えて取れよ」

青「パスタならまた湯がけばいいから、好きに取って」

黄「おー、なんかお母さんだ」

白「青ちゃん、きっといいお母さんになるよね」

赤「いやー嬉しいなぁ」

青「な、何言ってんのよ!」

橙「カルピス+コーラ+オレンジジュース……まぁこれくらいなら可愛いもんだろ」

黒「お茶+カルピス+マンゴー……さすがにきつそうだな」

赤「牛乳+ジンジャーエール+マンゴージュース+家にあった青汁……地獄の予感だ……じゃあいくぞ」

橙「おー」

黒「恨みっこなしだからな」

じゃんけんぽい!

赤「ぎゃー!!!」

青「男子って馬鹿よね」

黄「アレは危険だと思うよ、さすがに」

 

『れっつ銭湯!』

赤「家の近くに銭湯があるんだ。今日の風呂はそこで、ってことで。じゃあ行くぞ」

赤「あーやっぱでっかい風呂はいいわー!」

橙「うっせえ」

黒「他の人もいるんだからそんなにはしゃぐな」

赤「ちぇー。人いるから泳げねえしな」

橙「だからお前は何歳児だよ」

赤「……お約束の覗きイベントはナシ?」

黒「やろうとしたら容赦なく風呂に沈めるから覚悟しろよ?」

赤「黒、目がマジすぎるよ……」

白「……」

黒「白? どうしたんだ?」

白「青ちゃんと、黄色ちゃんが……」

黒「二人がどうかしたのか?」

白「……美脚と美乳ってああいうことを言うんだね……」

黒「……そ、そんなこと気にしなくても」

白「でも……(自分の体を見て)……はあ」

黒「……白、人の体なんだから差があるのは仕方ない。白は自分の色んな所にコンプレックスがあるかもしれないけど、俺はそういう白の全てをひっくるめて白が好きだよ」

白「黒くん……」

青「……なんだか熱いのはお風呂上りだからかしら?」

黄「黒もよくああいうことをさらっと言えるよね……」

赤「なあ白」

白「何、赤くん?」

赤「さっきの話、あとで詳しく——」

 ずかーん!!

黒「死ね。俺に言えるのはそれだけだ」

白「?」

橙(……あいつ、美乳なのか? 知らなかった……)

 

『トランプ』

赤「右か……左か……」

黄「ふふん♪」(おもむろに右のトランプを取りやすいように上げる)

赤「なっ……心理戦か、面白い!」

黄「さぁ、勝負!」

赤(まさかそのまま目立つほうがババなんてことは……いや、あえてウラをかいて、ということも……)

黄「早くとりなよ〜」

赤「くっ……だが俺は決めた! 右を取るッ!」

黄~ニヤリ

赤「なっ……」

橙「二人だけで盛り上がりすぎだから。早く終わらせろっつーの」

黄「負けたー……」

青「あーもう!ダイヤの九止めてるの誰よ! 早く出しなさいよ!!」

黒「悪いな」

青「く、黒?」

赤「黒はドSだからなー」

黒「クラブの四も俺が持ってるがな」

赤「えっ? ……あってめぇ出せよ! 俺出せなくなるだろ!」

黒「ふふふ……」

橙・黄(笑顔が怖い……ドSだ……)

橙「ストフラ!!」

黄「うぇー……橙強い……」

赤「ギャンブラーっぽいもんな」

橙「褒められてんのか微妙だな……」

白「ねえ黒くん、私八が四枚とジョーカーがあるんだけど」

黒「ファイブカード!?」

橙「はぁ!?」

 

『ゲームの後は罰ゲーム(笑)」

白「えーっとね……じゃあ、好きな人を言う!」

青・橙・黄(小学生だ……)

黒「白、ここにいるのはみんな付き合ってる奴らだし……」

赤「俺が好きなのは! もちろん青!!」

青「そ、そんな大声で……」

橙「お約束乙」

赤「ビリは橙か……よし、志村けんの物真似!」

橙「無茶振りすぎる!?」

(橙のプライバシーのため省略)

   全員爆笑♪

青「あははははは……お腹痛い!」

黄「橙ー、写メ撮るからもう一回ー!」

橙「やるかぁ!! もう二度とやんねぇからな!!!」

青「相手は黄色かぁ……じゃあ……携帯の画像フォルダ見せてもらおうかな♪」

赤「それが罰ゲーム?」

青「いいからいいから♪」

黄「え……ちょっと待ってね(フォルダを確認)……だ、ダメ! 見せられない!」

青「ダ〜メ♪ 見せてもらうわよ」

白「わぁ、プリクラだ!」

橙「……まぁ一応付き合ってるし」

赤「別にこれくらいみんな撮ってんだろ」

青「でも可愛いじゃない」

黄「その次はホント無理! 見ないでー!!」

黒「橙の寝顔?」

橙「ちょ、お前いつの間に!」

黄「……可愛くて、つぃ……」

赤「つーかほとんどに橙写ってんじゃん。橙、愛されてんね」

橙・黄「……」

黒「青」

青「何?」

黒「青のフォルダも同じようなもんなんじゃないか?」

青「な、な……」

黒「予想できたから黄色のを見せてもらったんだろ?」

青「う、う、うぅ……」

 

『オンナノコのお話』

 男軍団は飲み物を買いに行きました

青「ねえ黄色、白、橙や黒を好きになったのっていつ?」

黄「と、突然だね……」

青「幼なじみで付き合ってるじゃない? いつ頃好きになったのかなって思って」

黄「……あたしが意識したのは高二の時かな。ああ、あたしアイツのこと好きなんだなぁって」

青「きっかけとかあるの?」

黄「……あるけど、ノーコメント。ごめん」

青「いいわよ。無理矢理聞くようなことじゃないもの」

白「私は……いつかな? 私ね、青ちゃんには悪いんだけど、最初は赤くんが好きなんだったの」

青・黄「えぇ!?」

白「……でも、こういうことがあってね——」

白「赤くんがいなくなって、寂しくなったときも黒くんはずっと傍にいてくれたの。優しい言葉をくれたの。近くで笑っていてくれたんだ。だから……少しずつ、好き、になっていったんだと思う」

青「そんなことがあったんだ……」

黄「知らなかった……」

白「だから黒くんと赤くん、仲いいでしょ」

黄「なるほど……」

青「……」

黄「……さて、青チャンよ、あたしたちに話させておいて、自分は言わないなんてことはないよね?」

白「青ちゃんはいつ赤くんを好きになったの?」

黄「さぁ、お腹いっぱい聞いてやるってばよ♪」

青「あ、あぅ……」

 

『DSでマリカー』

赤「ぶっちぎるぜ!!」

橙「後ろから行ったほうがいいアイテム出るけどな」

赤「そんなの関係ねぇ!」

黄「ということで赤こうらー♪」

赤「ぐわっ!」

青「私にも当たったし!」

黒「……サンダー」

全「ぎゃー!!!」

橙「ケツから二番目の俺がここでキラーでトップに!」

赤「させるかよ! トゲこうら!!」

橙「くっそ! ゴール目前なのに!!」

黒「巻き込まれたか……」

黄「あたしまで!?」

赤「よっしゃやっぱ俺が一ば……」

 びゅーん!

白「やった! 王冠被ったキノコ使ったら勝っちゃった!!」

赤「さ、最後の最後で……がくっ」

白「……すー……すー……」

青「白、寝ちゃったわね」

黄「けっこう遅くなってきたからね」

黒「遊び疲れたのもあるだろう。寝かせてやってくれ」

赤「……っつーか、なんでお前はそれで平然としてんの!?」

 白、黒の膝枕で寝ている

橙「……もう突っ込んでも仕方ないと思うぞ」

黒「珍しいことでもないんでな」

赤「ああそう……」

 

『男の座談会』

 女の子は隣の部屋で就寝しました

赤「さて、女どもが寝たところで……」

黒「アルコールか」

橙「わかりやすいね」

赤「家にある分だからたいした量はねえけどな」

赤「つーかよ、やっぱ若い青少年としてはこう……したい、ってのは当然あるよな」

橙「まぁなぁ」

黒「仕方ないよな」

赤「正直今日の銭湯の帰りとかもやばくなかったか?」

橙「あー……風呂上がりな感じがか」

赤「濡れた髪とかさー」

黒「ふと見えるうなじとかな」

赤「そうそう! かなりクルものがあるわけだ。……あとよ、白が言ってたことだけど……」

黒「美脚、美乳がどうこう、か?」

赤「悪いけど青の脚はホントスゲーぞ。あれだけでそそられるっつーか……」

橙「……意外とアイツもスタイルいいんだよな。一緒にチャリ乗ると背中がすごいことになるし」

赤「してえ、って思わねえの? いつもそばにいるし、チャンスも多そうだけど」

橙「……アイツにとってベストなように、って考えちまうんだよな」

赤「あー……でもわかるよ。大切にしてぇもんな」

橙「あぁ」

赤「そこいらへんはどうよ、ミスター過保護」

黒「……悪いんだが、俺は……」

赤「う、嘘!?」

橙「ま、マジで!?」

黒「……」

赤「……で、どうだった?」

橙「さすがにデリカシーなさすぎだろ……」

赤「だって気になるだろ? ……どんな感じだったんだ?」

黒「なんというかだな……」

赤「うんうん」

橙(ゴクリ)

黒「……冗談だ」

赤・橙「は?」

黒「俺たちもまだそういうのはしてない。言ってみただけだ」

赤「なんだよ……黒」

黒「なんだ?」

赤「もしかして若干酔ってる?」

黒「かもな」

 男たちの雑談は空が明るくなりはじめるまで続いたという……。

 

『男たちをさらに酔わせてみた』

赤「青ってさ、ホント可愛いんだぜ。照れながらちっちゃな声で『……好き』とか言われたときはよっぽど押し倒そうと思ったね!」

橙「ほーぉ」

赤「しかもあいつ、ふたりきりになると意外と甘えんぼなんだ。そんときのギャップがたまんなくてさ〜」

黒「確かに意外だな」

赤「ま、つまり、青が一番可愛いっつーことだ!」

橙「はぁあ!?」

黒「それは肯定できんな。一番は白だ」

赤「んだとぉ?」

黒「白はなぁ、いつだって優しく微笑んでくれるんだ。あの笑顔を守るためなら俺はなんでもできる!」

橙「黒が言うと大袈裟に聞こえねぇし」

黒「加えてあの優しさ! 誰にでも優しく、いつも人のことを考えてしまうような白を、俺はずっとずっと支えていくんだ!」

赤「ひゅ〜♪ 言うじゃん♪ ……で、橙は?」

橙「……は?」

赤「もしかして口に出せるほど黄色のこと好きじゃねえの?」

橙「ざっけんなよこの野郎! アイツが一番可愛いに決まってんだろ!!」

赤「へーぇ?」

橙「太陽みたいな笑顔! 聞こえるだけで明るくなるような声! アイツと一緒にいることが俺にとっちゃ何より大切なもんなんだよ!!」

黒「俺もだな」

橙「俺らは幼なじみだ! ずっと一緒にいたし、これからもそうだ! アイツ以上の女なんかどこにもいねえ!」

赤「ずいぶんとはっきり言い切るじゃん。でもなぁ青なんかなぁ……」

黒「それなら白のほうが……」

橙「黄色はなぁ……」

青「さ、さすがに止めない……? 私、もう顔から火が出そうなんだけど……」

黄「も、もうちょっとだけ……」

白「く、黒くん……」

 

『宴のあと』

 男子軍、完全沈黙……

青「うわっ、酒くさっ!」

赤「ぐがー……すかー……」

青「……まったく。でも、私のことあんなに大事に思ってくれてたんだね。……ありがと」

黒「……」

白「黒くん、私、そんなすごい子じゃないよ? ……黒くんがいるから笑顔になれるの。だから……これからもよろしくね」

黒「……」

白「(きょろきょろ)……ちゅ」

橙「すー……すー……」

黄「えへへ〜太陽だって〜♪ 聞くだけで明るく、だって〜♪ そんなふうに思っててくれたんだぁ♪ 嬉しいなぁ」

橙「すー……すー……」

黄「……ずっと、あたしたちらしく、仲良くやってこうね」

青「さ、屍と化してる男たちの目も覚めるようなおいしい朝ごはん、作ろっか!」

白・黄「おー!」

 

『またやろうね!』

橙「……眠い」

赤「せっかくあんなにおいしい朝飯なのに、だるさのせいでお代わりができんとは……一生の不覚……」

青「あんたってホントいちいち大袈裟よね」

黒「白、おじさんから連絡だ。そろそろ帰ってきなさいだとさ」

白「えー……もう帰らなきゃいけないの……」

黄「お泊り会のあとに帰るのって後ろ髪引かれるよね……」

赤「またやろうぜ! 今回めっちゃ楽しかったし!」

橙「お泊り会じゃないにしても近いうちにまた遊ぼうぜ。まだみんな出発まで時間あるだろ?」

青「そうよね。せっかくの春休み、思いっきり遊びましょ!」

白「そうだよね!」

赤「もちろんだぜ! さ、今度はどうする?」


『空の日記』

 最近、お姉ちゃんがめちゃくちゃ楽しそうだ。

 このあいだは友達とお泊り会をしてきたとはしゃいでいたし、今度また女の子たちで買い物に行く約束もしてきたらしい。

 さらにはデートの予定もあるらしく、とてもwktkした様子を見せている。

 勘弁して欲しいのは、お姉ちゃんは毎日のように彼氏の赤さんとメールをしているらしいのだが、定期的に「ふふ♪」とか「……まったくもうw」とか呟きながら転がりまわっていることだ。

 ……リア充死ね。

 あんまり羨ましいから、お姉ちゃんの『blue cherryのブログ』とかいう厨二ポエムで詰まったブログをクラスのみんな、……あわよくば赤さんに晒そうと思う。


橙「お前ってさ、ちっさい頃からずっとその髪型だよな」

黄「そうかも」

橙「なんかこだわりあんの」

黄「ん〜……」

(橙・黄幼少時)

黄「……くすん」

橙「あ、きいろ、かみきったの?」

黄「……ながいほうがすきなのに。こんなのへんだ」

橙「そうかなぁ。きいろ、かわいいよ?」

黄「たいちゃん、ほんと?」

橙「うん」

黄「じゃあ、あたしもすきになる」

黄「……なんとなく、かなぁ」

橙「何だよ。理由ねえのか。……でもまあ」

黄「何?」

橙「……似合ってるし、いいか」


『だから、今はもっと』

 〜WHITE SIDE〜

 いつも整っている黒くんの部屋が、最近よりこざっぱりしているように感じます。

 また、机の上に折り畳まれて置いてある地図はここから遠い、黒くんの新天地のもので、ああ、黒くんはここへ行くんだな、なんてずっと前に覚悟したことを思い返したりしちゃいます。

 そんなとき、偶然にも黒くんと見ていたテレビでは黒くんが引っ越す先を紹介する旅番組が流れ始めました。そこはとても魅力的な場所に思えました。

「黒くんは、ここに住むんだね」

 私はいつものように、隣にいる黒くんに話しかけます。

「ここは俺が住むところからは少し遠いけどな」

 黒くんは私をちょっと訂正するように笑って、テレビが写しているところがどこにあるのかを教えてくれました。

「……やっぱり、遠いね」

「新幹線に乗ればすぐだよ」

 私が零した言葉が何を指すのかを黒くんはすぐにわかったみたいで、すぐに答えてくれます。

 私は挑戦のつもりで受けた東京の大学に合格し、黒くんの進学先とはそれこそ新幹線にさえ乗ればあまり時間をかけずに会いに行くことができる距離となりました。

「それに、みんなも東京にいるじゃないか」

 そう、実は黒くん以外の赤くんや青ちゃんたちはみんな東京の大学に進学するんです。

 きっと黒くんは、私の比較的近くにみんながいることで少し安心しているだと思います。

「よかったじゃないか。また、みんなで遊べるぞ?」

 もちろん、それは嬉しいことです。赤くんたちのこと、私は大好きだから。

 でも……私は、私が一番大切なのは……。

「ねぇ、黒くん。私、我慢するって言ったし、もちろんするつもりだけど……」

 私が一番傍にいてほしいのは貴方だから。

「ホントは、黒くんと一緒にいたいんだよ?」

 〜BLACK SIDE〜

「し、白?」

 彼女が何を言い出したのかよくわからなかった。

 甘えも、我が儘の色も見えないその言葉からはまっすぐに……彼女の想いだけが伝わってきた。

「私は……私は……」

 俯く彼女を見て、俺はようやく理解できた。彼女は今きっと

「……何か、心配なのか?」

 ——不安でいっぱいなのだろう。

「……ずっと近くにいたのに、遠くに行っちゃうし……それに……」

 ぽつりぽつりと白は話し始める。

「それに?」

 極力急がせるニュアンスは出さないように言った。俺は白が考えてることを知るためならいくらでも待っているつもりだった。

「……私、魅力ないから……」

 長い沈黙のあと、白はとても小さな声でそう零した。

 なんだ、全然問題ないじゃないか。

「白は充分すぎるほど魅力的だよ。心配ない」

「そんなことっ……!」

 彼女の短所は自己評価が低すぎることだ。俺はもちろん、赤や青たちも白のいいところを知っているし、彼女が魅力的であることも当然のように語ってくれるだろう。

 それでもなお、白にとっては自分のコンプレックスは大きなものなのだ。

「少なくとも、俺は白が誰より好きだよ。……俺のこと、信じられないか?」

 ——だから、俺が彼女の魅力を彼女に教えるんだ。

「そうじゃないけど……」

 俺の言葉を否定しきることができない彼女も可愛らしくて、俺は彼女の髪を撫でた。

「俺は、俺に触れてくれる白の手が好きだ。俺と一緒に歩いてくれる白の脚が好きだ。俺の目に留まる白の髪が好きだ。俺に向けてくれる白の表情が好きだ」

 伝えたい、「好き」はこれくらいでは全然足りない。

「白こそ、もっと自信を持つべきなんだよ。白は俺が世界が一番好きな女性なんだぞ? そんな白が魅力がないわけないじゃないか」

「く、黒くん……」

 だからせめて、俺は一度も口にしたことのない言葉を使ってでも、この気持ちを白に伝えよう。

「なあ、白。——愛してる」

 赤面した白に俺は軽く口付けた。

 言葉で足りないと言うのなら、行動でだって示してやる。それくらい、俺だって白への想いは自信があるのだから。

「もう少しで遠くになるのなら、今もっと傍にいよう。いくらでも一緒にいよう。な?」

 愛しい彼女の体中にキスをして、愛の言葉を囁いた。どんなに彼女が大好きか伝え続けた。

 俺たちはその夜、いつまでも抱きしめあっていた。


『春休みですから、デートをしましょう!』

1.赤×青

赤「せ、セーフ……」

青「一分前……ホントギリギリね。でも、時間前に来てくれたからいいよ」

赤「よかったぁ……」

青「ふふ♪」

赤「なんか青、今日機嫌よくねえ? いいことあった?」

青「え、えっとね……あ、あえて言うなら……」

赤「あえて言うなら?」

青「……な、なんでもない!」

赤「なんだよそれー、ぶー」

青(い、言えない……デートなんてもう何回もしてるのに、ただ今日が楽しみだっただけ、なんて……)

赤「ま、俺は青とデートする日はいつでも機嫌最高だけど」

青「えっ……」

赤「照れんな照れんな」

青「赤……あの……わ、私もだから……」

赤「……か」

青「か?」

赤「可愛いー!!!!!!」

 がばっ!

青「きゃあ!?」

 

2.黒×白

白「お花が咲いたりしはじめたね。綺麗」

黒「春だなあ」

白「あ、黒くん、あそこにクローバーがあるよ!」

黒「シロツメクサか」

白「ねえ黒くん、四つ葉のクローバー探さない?」

黒「ああ。一緒に探そう」

白「うーん、なかなか見つからないね」

黒「そうだな……白、人が歩いていそうな場所の辺りを探してみよう」

白「え、なんで?」

黒「人に踏まれたりしているクローバーのほうが四つ葉になりやすいんだそうだ」

白「そうなんだ……。この辺かな……あ、あった!」

黒「本当か? よかったな」

白「やったね!」

黒「……白、せっかく見つけたのに取らないのか?」

白「いいの。だって、せっかく一杯大変なことを我慢して四つ葉になったのに、私が欲しいからってちぎったりしたら可哀相でしょ」

黒「そっか。白がそう思うなら、それがいいと思う」

白「……ねえ、黒くん」

黒「なんだ?」

白「……ううん、なんでもない。もうちょっと、クローバー見ながらお散歩しよ?」

黒「ああ、いいよ」

 

3.橙×黄

黄「ね、あの服可愛くない?」

橙「あーいいじゃん、似合うと思うし」

黄「ちょっと着てみていい?」

橙「いいぜ。待ってっから」

黄「うん!」

黄「どう?」

橙「似合う似合う」

黄「……可愛い?」

橙「かっ……! ……可愛いよ 」

黄「えへへ 」

黄「ここのパフェ、美味しいんだって」

橙「うわ……甘ったるそう……こんなの絶対胸焼けするし……」

黄「えー美味しそうじゃん」

橙「俺はレアチーズケーキでいいわ」

黄「あ、でもそれも美味しそう(ジー)」

橙「……やらねえぞ? つーかそんだけあれば充分だろ、フツー」

黄「レアチーズ美味しそうだなあ……」

橙「……一口だかんな」

黄「やったあ!」

黄「あー88点かあー、自信ある曲だったのに」

橙「充分うまいって」

黄「ね、橙、BABYBABY歌ってー」

橙「え……む、無理! ぜってー歌わねえ!!」

黄「いいじゃんいいじゃん! 文化祭のときみたいにさあ」

橙「それが無理だ、って言ってんの! あれは勢いっつーか、暴走っつーか……」

黄「じゃあ暴走してない橙のBABYBABYが聞きたいなあ」

橙「だからあ……」

黄「98点だって、上手かったよ♪」

橙「だあー……もう……」

黄「橙」

橙「なんだよ 」

黄「大好き♪」

橙「プリクラ取んの?」

黄「春休みの思い出だし!」

橙「ま、いいけど」

黄「ほらもっと近づいて!」

橙「毎回思うけどかなりハズいよな、これ……」

黄「これがいいんだよー」

橙「ったく……」

黄「ほら、撮るよー」

 パシャ!

 照れた彼と、笑顔の彼女。これが彼らの春の思い出。


『安らげる場所』

橙「次、どこ行く?」

赤「カラオケ!」

黒「却下。お前、前の三連続の罪を忘れたわけじゃないだろうな?」

青「あれはキツかったわね……」

黄「赤ってカラオケいくとやたら張り切るよね」

橙「上手くもねえのにな」

赤「……ちょっと頑張っちゃうだけじゃん」

白「赤くん、独り占めはよくないと思うな」

赤「し、白まで……」

黒「ということで、どうする?」

青「ファミレスにする?」

橙「ちょっと遠くねえ?」

白「私、あんまりお金持ってないんだ……」

黄「うーむ、個人的にはどこかでぐだぐだしたいなあ」

赤「じゃ、俺んちでよくね? 飲み物くらいあった気がする」

橙「いいじゃん、コンビニでちょっと何か買ってさ」

赤「とりあえず俺には黒に大貧民でリベンジするという使命があるしな」

黒「返り討ちにしてやるよ」

青「ホント仲いいわよね」

黄「見てて楽しいしね」

赤「楽しいことはいいことだぜ!」

橙「なんなんだよ、いきなり」

赤「なんとなく。言いたくなった」

黒・橙「意味わかんねえ」

赤「ひっでえの……」

白「あははは」

 ありふれた、彼らのやりとり。こんなフツウが、きっと幸せ。


『シンプル』

 ったく、つまんねえ意地張っちまったなあ。

 久々に黄色との大ゲンカ。付き合い始めてからは初めてだ。

 喧嘩の理由なんて、それこそ下らない。デートでボウリングに行くか、映画を見に行くかの言い争いからだし。

 ……苦手なんだよ、恋愛モノ。映画だとアイツ、そっちに集中して、全然こっちを気にしねえしさ。……せっかくデートすんだし、喋りてえじゃん。二人きりなんだし。

 それにしたって、俺がボウリングにこだわる理由も特になかったわけで。

 お互い、無駄に意地を張って、退かなくて。しかも、トドメをさしちまった。

「たまには俺の行きてえとこ行ってもいいだろ!」

「何それ! いっつも自分は我慢してますみたいにさ! 嫌々なら、別にデートなんかしなきゃいいじゃん!」

「っ! 俺はお前がしてえっつーからわざわざ!」

「やっぱり嫌々なんだ。いいよもう、無理に付き合ってくれなくても」

 ……思い出してみてもつくづくサイテーだな、俺。

 つーかアイツとのデートが嫌々なハズねえじゃん。売り言葉に買い言葉とは言え、一度も思ったことのないことまで出てくるとは思わなかった。何がわざわざだ。

 会話も、メールもほぼしないまま一週間くらい経つ。クラスメートや赤たちまで心配しだすし、ますます居心地が悪い。

 謝ればいいんだろうけどさあ……。

 中途半端な意地がまだ残っている。というより、恥ずかしさとか、みっともなさのほうが上回ってるかもしれないけど。

 ……いつもの公園にでも行ってみるか。謝りに行くならそれこそ屋根をつたって三秒で行けるくせに、それを避けたのも逃げだとは自覚しつつ、俺はふらふらと公園に向かった。

 

 ……毎度毎度都合よくここに黄色がいるはずもないわけで。

 俺はベンチに座って、無邪気に遊んでる子供たちのほうをぼんやりと眺めていた。

 ぽむっ!

「っ!?」

 あまりにもぼけっとしていたらしい。子供たちがサッカーで使っていたらしい、塩化ビニルの柔らかいボールが俺の頭に直撃した。

「ご、ごめんなさい!」

 慌てて当ててしまった子供が謝りにきた。小学校に入るか入んないか、それぐらいの男の子だった。

「いいよ、大丈夫。ほら、ボール」

 当たってもまったく痛くなかったから、別によかった。俺はその子にボールを手渡してやる。

「ほんとうにごめんなさい。あ、あと、ボール、とってくれてありがとうっ!」

 無邪気にそういう男の子。なんだか微笑ましい。

「素直だな。ありがとうとか言えるの、偉いぞ」

 ちょっと今の自分を反省しつつ、そんなことを言ってみる。

「? わるいことしたら、ごめんなさいっていうんだよ? うれしかったら、ありがとうっていうんだよ? ようちえんでせんせいにいわれたでしょ?」

「——っ! ……ああ、そうだな」

「へんなの。じゃあね、おにいちゃん。ボールとってくれてありがとう」

 ぱたぱたと走っていく男の子を眺めつつ、溜息をついた。

 

「……おっす」

「……何か用?」

「ん。映画の前売り券買ってきた。今度一緒に見に行こう」

「……見たくないんじゃなかったの?」

「あんまり興味はねえな」

「じゃあいいよ。別に無理しなくたって」

「一人なら行かねえけど。……お前となら、見に行きたい」

「……何、いきなり?」

「この前はごめん。思ってもいないことまで言っちまった。お前とのデートを、わざわざ、とか思って行ったことなんて一度もねえのにさ」

「……」

「俺、お前のこと、好きだから。デートするだけですげえ嬉しいし。だから、映画、行こうぜ」

「……なんでさあ、先に謝っちゃうの?」

「……は?」

「悪いのあたしじゃん。……あたしから謝んなきゃダメだったのに」

「……悪いことしたな、って思ったから。だから、謝った。んで、お前のこと、好きだな、って思ったから好きって言った。……単純でいいだろ?」

「じゃあ……ごめんね、橙。それに……大好き」

「ありがと」

「え?」

「言われて、嬉しかったから」

「な、なんか今日の橙、一段と恥ずかしいよ!?」

「一段とってなんだよ。いいじゃん、シンプルでよ」

「なんか調子狂うよ……。それにさ、前売り買ってきたのはやりすぎ」

「なんでだよ」

「……あたしも、ボウリングの割引券貰ってきたのに」

「マジで?」

「マジで」

「いいじゃん、デートの回数が増えるんだしよ。あ、そうだ」

「何?」

「ありがとな。俺のために」

「っ! ああもう! 恥ずかしい!」

「好きだぜ、黄色」

「……あたしも」

 シンプルに行こう。ありがとうやごめんなさい、そして大好きを伝えられるように。


『ラムネ』

 中三な橙と黄色

橙「あっ……ちぃ……」

黄「夏だもんねえ」

橙「やってらんねえ、さっさと用事終わらすぞ」

黄「いいじゃん、あたし、こういう日もけっこう好きだよ? 夏! って感じがして」

橙「そーかもしんねえけど」

黄「あ、橙! ラムネ売ってるよ! 飲も!」

橙「お、マジで? いいねえ」

黄「青い空! きらめく日差し! 冷たいラムネ! いやあ、夏っていいねえ!」

橙「バッカじゃねえの。……でも、ま、確かに、なんかいいかも」

黄「でっしょお!? じゃ、乾杯しよーよ!」

橙「おっけ。……じゃあ、夏に、乾杯!」

黄「かんぱーい!」

橙「……黄ぃ」

黄「何?」

橙「やっぱ、こういう日も、いいな」

黄「うん、うん♪」


『打ち水』

 橙、黄色幼少期

橙母「橙〜、ちょっと水まいてきて〜」

橙「は〜い」

黄母「黄色、家の前にお水まいてきてくれない?」

黄「わかった〜」

橙「あ、きいろ」

黄「たいちゃんだ。たいちゃんもみずまき?」

橙「うん。きょうもあついね」

黄「そうだね〜。……みず、つめたくてきもちいいよね」

橙「うん」

橙母・黄母「で、なんであんたらは全身びしょ濡れで帰ってくるの?」

黄「えへへ〜きもちいい〜」

橙「ぱんつまでぬれちゃった……」

橙母「だー、もう! 二人まとめてタオルで拭いてやるから服を脱ぐ!」

橙・黄「はーい」

黄母「ふふ。私はトウモロコシでも茹でてこようかな」

黄「トウモロコシ!」

橙「やったあ!」

橙母「いいからとりあえず脱ぎなって!」


『水鉄砲』

 高三の夏休みということで

赤「おらあ!!」

橙「ちょ! お前マジで狙いすぎ!」

赤「男の勝負はいつだってマジ——」

 びしゃ!!

黒「その通りだな。油断はよくない」

赤「てんめえ……」

橙「うわっ! 冷てえ!!」

黒「やったな……」

赤「わっ! ちくしょう、やられた!」

青「ホント子供ね」

黄「楽しそうだけどね♪」

白「私たちも、あっちに行こ」

黄「そうだね。……お〜い」

 すたすた

赤「喰らえ橙! 秘儀! 横一文字撃ち!!」

橙「そんなの下に避ければ——」

 びしゃ!!

赤・橙「へ?」

青・黄・白「……え?」

赤「……薄緑」

橙「……水色」

黒「……白。——赤、死ね」

赤「ええええええ!? 悪いの俺だけええええ!?」


『夏の体育 赤×青』

 高校三年生のとき

赤「あー……疲れたー……あっちぃー……」

青「この猛暑のなか、あんな全力でバスケやったらそりゃそうなるでしょ」

赤「ですが燃えないわけには!」

青「はいはいわかってます」

赤「だー……それにしてもあちい……こんなもん着てらんねー!!」

 ばっ!

青「なっ……! あ、あんた何脱いでんのよ!?」

赤「べっつにいいだろー上ぐらい」

青「よくない!! 早く着なさい!!」

赤「ちぇー……ぷは、これでいい?」

青「まったく……」

赤「……ちょっと気になった?」

青「ば、バカじゃないの!? そんなわけ……」

赤「ふーん……(ニヤニヤ)」

青「な、なによ……」

赤「あ、そーだ。青、なんか飲みもんねえ? 喉乾いて死にそうなんだけど」

青「飲みかけのよければあるけど」

赤「むしろそっちの方がいいです!」

青「ば、バカ……」

赤「じゃあいただきまーす」

桃「あー! 赤くんと青ちゃんが間接キスしてるー!」

生徒「な、なんだってー!!」

青「きゃああああああ!? も、桃おおおおおお!!!」

赤「るせえ! 俺と青はらぶらぶなんだ! これぐらいやって何が悪い!」

青「ちょ! あ、あんたも何言ってんのよ!!!」

橙「あっついねえ」

黒「夏だからな」


『夏の体育 黒×白』

 高校三年生のとき

黒「白、今日もだいぶ暑いが、大丈夫か? 熱射病は本当に怖いからな」

白「大丈夫、わかってるよ。わたしより黒くんのほうが激しく動いてるんだから危ないと思うよ?」

黒「俺は大丈夫だよ。それより……」

白「それよりじゃないよ。はい、スポーツドリンク」

黒「……え?」

白「喉乾いてるでしょ?」

黒「あ、ああ」

白「あ、それにタオルだよ。ちゃんと汗吹かないとだよ」

黒「わ、わかった……」

白「ふふん♪」

黄「? なんか白ちゃん嬉しそうだね」

白「えへへ。一度やってみたかったんだよね」


『夏の体育 橙×黄』

 高校三年生のとき

黄「橙、なんであんたって体育のとき頭にタオル巻いてんの?」

橙「だって髪邪魔じゃん、バスケすんのに」

黄「かなり本気だもんね」

橙「そっちのが楽しいしな」

黄「ふーん……」

橙「んで、もしかしてこれ、似合ってない?」

黄「そんなことないけど。カッコイイよ♪」

橙「!(やべ、自爆した)」

黄「?」

橙「……ところでさ、お前こそそのカッコ、どうにかなんねえの?」

黄「へ?」

橙「……その……ポロシャツの下にTシャツとか着た方がいいじゃねえの?」

黄「……えっち」

橙「仕方ねえだろ! 見えるんだから!」

黄「でもそれだったら着ない方がいいじゃないの?」

橙「……は嫌だ」

黄「え?」

橙「他の奴にお前が見られんのはヤなんだよ!」

黄「だ、橙……」

橙「……ダメか?」

黄「ううん、今度から気をつけるね……橙」

橙「ん?」

黄「気にしてくれて、ありがと♪」

赤「あの二人も充分あついと思うんだけど」

黒「あそこは無自覚だからなあ……」


『返り討ち』

 高校生時、まだ二人が付き合っていないころ

橙「色無があそこのファミレスでバイトしてんだって」

黄「へえ〜、ちょっと冷やかしに行こうよ」

無「……いらっしゃいませ、ご注文は?」

橙「おいおい、こっちは客だぜ? もっと愛想よくしろよ」

黄「色無〜、とりあえずスマイル1つ〜」

無「ここは某ハンバーガーショップじゃねえ。つーかマジであんまり邪魔するなよ?」

橙「わかってるって。だから、な?」

黄「お願い♪」

無「はいはい、オゴリね……安いやつだからな」

無「ったく、あいつらは……そうだ(ニヤリ)」

店員「お待たせいたしました」

黄「あれ? 色無じゃないね?」

橙「他の人に頼んだんだろ」

店員「こちらが『らぶらぶ☆メロンソーダ』になります」

橙・黄「なっ……!!」

無 (*^ー゚)b

橙・黄(い、色無いいいいいいいいい!!!)

 らぶらぶ☆メロンソーダ……お約束の、ハート型の一つのストローで互いに見つめあいながら飲むアレだよ♪

橙「あの野郎……」

黄「う、うわあ……み、みんな見てるよぉ……」

男1「うわー、見せつけてんなあ」

男2「バカップルだバカップル」

女1「あれ? あの人たち同じ学校の人じゃない?」

女2「ホントだー、ハズかしー」

橙・黄「……」

無「またのご来店、お待ちしております♪」

橙「……もう来ねえよ」

黄「ご馳走様でした…… 」

 カランカラン

無「ありがとうございましたー……結局、残さず飲むのかよ。ゴチソウサマはこっちの台詞だ」


『文化祭でシンデレラ』

 橙・黄中学時代

 〜ORANGE SIDE〜

「はぁあ!? 王子役!?」

「そ。やっぱ王子はお前だろって女子の満場一致で決まったそうだ」

 文化祭恒例の演劇。うちのクラスは今年、シンデレラをやることにやったらしい。

「……やだよ、めんどい」

 俺は正直、そういう主役とか責任がかかりそうなことなんてやりたくなかった。大道具とか、台詞の少ない役に立候補しようと思っていた矢先にこんなことを言われ、俺はもちろん拒否った。

「んなこと言うなよ〜。俺だってそう伝えろって言われてきてんだから」

「っつーかなんで中学生になってまでシンデレラなんだよ。内容なんか誰でも知ってんだろ」

「そこは女子の緑がものすごい脚色をして感動超大作なシンデレラにするんだと」

 ……ああ、いたな、そんなのも。文芸部のエース、ってなんなんだって感じだが、とにかく緑の文章力はすごいらしい。……それにしたって。

「……くだんねえ。パスパス、俺はぜってーやんねえよ。無理やり決められても本番サボるって女子に言っといて」

 ……とは言うものの実際は逃げられないと思うけど。ザ・ハッタリ。

「……ふ〜ん、い〜のかなぁ〜、そんなこと言っちゃって〜」

 すると急に伝令役の男子が態度を変えた。

「シンデレラ役、黄色ちゃんなんだぜ〜? ほ〜ら、やる気になっただろ〜?」

 ……またこの冷やかしかよ。小学の頃からのもので多少慣れてるとは言え、ことあるごとに言われるとさすがにウザい。

 必死に否定するつもりもないが、少し腹が立ったので冷たい口調を意識して言ってみた。

「んなこと知るかっつーの。俺とあいつは付き合ってるわけじゃねえし。他の奴にやらせとけば?」

 だが、こいつの追撃はまだ終わらなかった。

「え、マジで!? いいの、本当に!? やったね! 実は今回の劇、キスシーンとかあるんだぜ! 寸止め、って言われるだろうけど、うっかり当たっちゃったら仕方ねえよな! よっしゃ、他の皆に報告してこよ。黄色ちゃん狙ってる奴けっこう多いから争奪戦だろうな〜♪ ……実は俺もだったりして」

 ……ウザってえ。半分くらい本音も混ざってるんだろうが、俺に当てつけるような言い方に本気でムカついた。

「勝手にしろよ」

 それだけ言うと、俺は早足にその場を去った。

 

 〜YELLOW SIDE〜

 シンデレラですよ! シンデレラ!!

 お姫様の代名詞みたいなシンデレラの役を今回あたしが演じるんです!!

 もう、これだけでテンション上がるよね。だってさ、あたし、実はずっとこういう「お姫様」やってみたかったんだ。

 あたしは普段はクラスのムードメーカーだったり、おちゃらけ役だったりするわけですよ。

 別にそれに不満はないけど、そのポジションはなかなか「女の子」としては見てもらえない。

 ……あたしだって、シシュンキのオンナノコ。スポットライトに当たるお姫様に憧れたっていいじゃんか!

 ……という話を、このテンションで、例の幼なじみに話してやったわけですよ。すると……

「……バッカじゃねえの、劇ぐらいでそんなにはしゃぎやがって」

 ときたわけですよ。何? 反抗期? 何事にも拗ねたいお年頃?

「はっはっはっは、今日の黄色チャンは寛大だからそんな連れない態度も許してやろう。なんたってシンデレラだもんね♪」

 そんな最高にハッピーなあたしを見ると、橙は呆れたように溜息をついた。

「へーへー。で、そのシンデレラちゃんのお相手の王子様は決まったのかよ?」

 ……王子様? あ! そうじゃん! シンデレラってことは、当然王子様と結ばれるはっぴぃえんどなわけで! カッコいい王子様といちゃいちゃらぶらぶなわけで! ……えへへへぇ。

「何夢見た顔してんの? 王子も所詮うちのクラスのやつだぞ?」

「あ、考えてみればそっか。……う〜ん」

 クラスのなかにだってちょっとカッコいい子とかはいるけど、なんだかその人たちと「王子様とお姫様」なイメージをしてみてもなんだかピンとこない。まあ、所詮クラスの演劇なんだから仕方ないんだけど。

 そのときふと、とあることが頭をよぎった。

「橙は王子様、やらないの?」

「はぁあ!?」

 冷めていた幼なじみの声が急に荒くなった。

 

 〜ORANGE SIDE〜

「なんだよ〜、結局やるのかよ〜」

「やっぱり嫁の相手は譲れねえ! ってか?」

「たまには俺たちにも夢見させろよ〜」

 後ろから散々冷やかしや野次が飛ぶ。とりあえず、

「るせえ! 頼まれたからやるだけだ!」

 と大声でうるさい男子群を追い払っておく。……実際はまったく追い払えず、こそこそといろいろボヤいているがそこはスルーを決め込む方向で。

「ふ、あたしの相手を務めるからには完璧な演技が必要だぞ、橙クン?」

「なんだそのキャラ。お前こそちゃんと自分の台詞覚えられんだろうな?」

 こんなもん、劇の中身がただシンデレラなだけなんだ。

 余計なことなんか考えずに演技だけしてりゃ何も——。

「じゃあ、まずはダンスシーンのワルツの練習から始めましょうか」

「「えええええええええ!?」」

 脚本家、緑のいきなりの指示に俺と黄色は図らずも同時に驚きの声を上げた。

「普通、台本に沿って台詞言い合ったりとかじゃないの?」

 黄色の当たり前すぎる主張だ。

「ダメ。台詞の暗記なんか家でもできる。ここではそれよりも難易度の高いワルツの練習をすべき。本番では一糸乱れぬ踊りを披露してもらう」

 淡々と、なんだか説得力ありそうに言う緑。……というかだな。

「だいたいなんで、中学の劇でワルツ踊んなきゃならないんだよ」

 しかも緑の眼が本格的じゃないと許さない、と訴えている。

「中世ヨーロッパの優美な感じを追及した。正直、ミュージカル形式にしようとも考えたけど、時間の関係上、泣く泣く諦めた」

 ……諦めたのはこっちだ。どうやら俺たちは文句を言うどころか、ミュージカルではないことに感謝しながらワルツを踊らないといけないらしい。

「はやく練習を始めよう。難しいシーンはここだけじゃないんだ」

「「まだあるのかよ!!」」

 二度目のハモリも仕方ないとは思うが、周りの連中にはやっぱり夫婦だ、息ぴったりー♪ などとほざいていた。

 

 〜YELLOW SIDE〜

 文化祭、当日。正直、ヤバい。

 ダンスシーンや緑が勝手につくった王子のライバルとの決闘アクション、昼ドラも真っ青なシンデレラと継母・義姉妹との決別シーンなど、緑のこだわりのシーンの練習に時間をとられて、肝心の流れの中での台詞回しの練習が足りないのだった。

 せ、台詞は覚えてる。あそこで、あの動作をしながらあれを言って……ああもう! 緊張で暗記力も下がってる気がする!!

 みんなで一生懸命練習した劇だ。シンデレラのあたしの失敗で台無しにするわけにはいかない。

 そう思えば思うほど、プレッシャーばかりが強くなってくる。手汗ヤバい。膝の震えヤバい。

 ギリギリまで台本見なきゃ……緊張を解くには掌に人人人だっけ? ああああああ〜あたし完全にテンパってるぅ〜……。

「……しょぼくれたツラしてんなあ」

 後ろからの声は聞きなれたもの。あたしと同じくらいのプレッシャーがかかっているはずの橙だった。

「だって、緊張するんだもん……」

 台詞も演技ももちろん一番多いシンデレラ役。責任だって重いんだ。

「……最初はシンデレラシンデレラってのんきにはしゃいでたくせに」

「あれはまだ、練習とかも始まってなかったし、それに」

「お前があんだけ楽しみにしてたお姫様役だ。楽しんでやりゃいいだろ」

 あたしの気弱な言葉を遮って、橙はいつもみたいなトーンで、いつもみたいな言葉をくれた。……あ、なんだか少し、いつもみたいな気分になってきた。

「お前はいつもみたいにテキトーに笑ってりゃいいの」

「何よそれー!」

「だいたいドレスも無駄に気合入ってっけど、どっからどうみても馬子に」

「誰が豚に真珠だって!?」

「それは怒ると思ったからわざわざ別の表現したのになんでお前はそうやって」

「結局バカにしようとしたんじゃない!」

 もう、完全に普段のこいつとのバカ話になっちゃった。でも緊張なんて、もうどこにも残ってやいなかった。

「ったく、ようやく。バカ黄色が戻ってきたよ」

 にかっと笑った橙の表情に、言い返す言葉もなくて、仕方ないから素直に、

「ありがと」

 って言ってやった。

「おう」

 そう言って、親しみ易すぎる王子は背を向けて……もう一度こっちを振り返った。

「お前さ、今日の俺が王子様だって忘れてんだろ。……安心しろよ、シンデレラがいくらミスったって全部フォローしてやる。姫を守んのが王子の役目だ」

 ホントは、あの時決めてたんだ。

 今、初めて思った。

 黄色のあんなに無邪気にシンデレラを喜ぶ表情を見て、こいつの王子役、他の奴らになんか任せられるかって。

 こんなに優しく、あたしのことをしっかりわかってくれる橙が王子様で、本当によかったって。

 緊張のない、自然なこいつの笑顔はまさにシンデレラ。

 しっかりあたしをリードしてくれるこいつの仕草はまるで王子様。

 ワルツのリズムに、体が滑らかに動く。

 ステップを踏むたび、だんだん楽しくなってくる。

 こんな気持ちになるのも、こいつとだから?

 こんなに安心できるのは、こいつとだから?



 舞台は、クライマックス。

 王子とシンデレラは、めでたく結ばれ、結婚することとなる。

 その、結婚式。

 神の見守る教会のもと、神父が囁く。

「さあ、新郎新婦は永遠の愛を誓う口づけを!」

 お互いの顔が近づいていく。吐息も感じる、あと僅かな距離。

 ——こいつとだったら……——

 

「いやあ、大成功だったねえ」

「女子生徒で倒れた子いたらしいよ」

「マジ?」

「確かに橙の王子はハマってたからなあ」

「でも、今日で黄色ちゃんファンも増えたよな」

「可愛かったもんな〜」

「……まあ、でも、大半は今日で諦めただろうけどな」

「そりゃそうだ。あんなの見せつけれたら」

「橙、黄色、お前らの夫婦伝説もついに全校公認のものとなったな」

 飛び交う、感慨の言葉やその他諸々。いつもの冷やかしに、彼らはいつも通り返す。

「うるせーなー」

「劇なんだから仕方ないじゃん!」

 ただ——。

「ところで……」

「「「「「「「キスの感触はどうだった?」」」」」」」

「「触れてない!!!!」」

 真っ赤になって否定する二人はいつもとは少し違うようだった。


『キミのこと』

女1「ねえ白ちゃん、白ちゃんは黒君とつき合ってるんだよね?」

白「うん、そうだよ」

女1「黒君さ……怖くない?」

女2「それ私もちょっと思ってた。目つきとか鋭いし、色々ストレートに言うし……」

白「黒くんは優しいよー」

女1「えーホントー?」

女2「なんか信じられない」

白「それに……」

女1「それに?」

白「……ううん、なんでもない!」



黒「白、今帰りか? 一緒に帰ろう」

白「うん。待っててくれたの?」

黒「まあな」

白「……黒くん」

黒「なんだ?」

白「私はちゃんと知ってるからね」

黒「え?」

白「だから、いいんだ」

黒「何がだよ?」

白「何でもなーい♪」


『バレバレ』

 橙と黄色が付き合い始めた翌日

橙「あ……おはよ……」

黄「お、おはよ……」

 なんとなく目線をそらす

橙「……(チラ)」

黄「……(チラ)」

橙・黄「ッ!」

 目が合い、お互い顔をそらす

橙・黄「……」

 学校

男「おーす、橙。今日も黄色ちゃんと仲いーねぇ」

女「黄色おはよ。橙くんと登校なんてうらやましーぞ」

橙・黄「……」

男「……え? 何その反応?」

女「ま、まさかあんたら……」

男・女「おーいみんなー! ついに橙と黄色がつき合い始めたぞー!!」

橙「お、おい!」

黄「こらー!!」

黄「なんでバレたんだろうね」

橙「わっかんね……」


『堂々』

 赤と青がつき合い始めた直後

男「なんか最近赤と青さん、かなり一緒にいるけど、ましかして付き合ってんの?」

青「そ、それは……あの、その……」

赤「うん(きっぱり)」

青「あぅあ!?」

男「やっぱりかー、うらやましいぜー」

赤「だろー」

青「あぅぅ……」

赤「なぁ青、俺らさ、ちゃんと好きなもの同士なんだからさー、もっと堂々としてようぜー」

青「だ、だって恥ずかしいじゃない……」

赤「俺が青を好きだって気持ちのどこが恥ずかしいんだ! だから俺は青と堂々といちゃいちゃするぞ!」

青「それとこれとは別!」

男「……おーい、俺の存在を無視すんなー」


『友人たちの悲劇 黒編』

 高校時代、橙と黒がまだあまり仲良くなっていないときの話。

橙「なあ、黒ってどんなやつなんだ?」

A「黒? 頼りになるいいやつだと思うけど?」

B「真面目だし、頭もいいしな」

橙「へえ」

A「ただ……」

B「白ちゃんが関わったときの黒は……」

A・B「「魔王だ」」

橙「……魔王?」

A「体育のドッヂで間違って白ちゃんに当てちゃった時は……」

B「俺なんか掃除サボろうとして注意してきた白ちゃんをつい泣かせちゃって……うわぁ思い出したくもない!!」

橙「……よ、よくわかんねえんだけど」

A・B「……」

黒「お前ら何してるんだ?」

A・B「ひぃ!?」

橙「……黒を怒らせない方がいいってことはわかったよ」


『友人たちの悲劇 赤・青編』

 高校時代

青「ねえ赤、あそこのお店においしいケーキがあるんだって」

赤「へえ、そうなのか」

青「それでね、あたし食べてみたいなーって思うんだけど……」

赤「食べれば?」

男A(どうみてもデートに誘って欲しがってるんだろうがあああぁ! 空気読めよおおおぉお!!)

青「え、っと……そういうことじゃなくて……その……今日……」

女1(誘っちゃえ! そこまで言ったんだから誘っちゃいなよ!!)

赤「あ、そっか! ダイエット中なのか!!」

男B(なんでそういう考えになるんだよっ!!)

青「そ、そう! だからケーキは控えなきゃな〜って……」

女2(な、なんでそこで乗っちゃうの!? 照れ隠し!?)

赤「ダメだぞー。食欲に負けたら太るからなー」

男C(違うだろぉ! そういう会話じゃないだろおお!!)

青「……そうね。気をつけないとね」

女3(あーあ、今日も失敗か。青ちゃんかわいそ)

赤「じゃあさ、今日俺と一緒にランニングしようぜ」

男・女(っ!?)

青「え?」

赤「食べた分動けばいいんだろ。んで、走ったらケーキ食べに行こうぜ♪」

青「う、うん!」

男「……なんであいつらの会話って俺らの予想の斜め上をいくんだ?」

女「それなのに結果オーライなのよね……」

男・女「聞いてるこっちが疲れるよ……」


『友人たちの悲劇   真 赤・青編』

 や、どうも。橙っす。

 秋も深まるある休日に俺は電車で買い物に行った。そこで、いつものバカップル、赤と青の二人に会ったんだ。

「おーす。相変わらず仲いいね」

「お、橙」

 元陸上部のエース、赤は俺を見つけると学校で会った時のような表情をした。……が、なんだか少し困っているようにも見える。

「……橙」

 そのカノジョである青は綺麗な顔を少し落ち込ませて、声もややおとなしめに俺の名前を呟いた。……ははあ。

「……赤、またなんかやらかしたんだろ」

 青は今拗ねてるとか、少し怒ってるとかそんなところだろう。どうせ鈍感な赤が変なことを言ったりしたに違いない。

「べ、別に、何もしてねえよ!」

 赤は否定する。今回も気づいてないだけなんだろう。仕方のないバカップルだ。

「……いいよ、もう。覚えてないなら」

 青が拗ねながらもごもごと口を動かしている。ふーん、「覚えてない」ね……。

「赤、お前らがつき合い始めたのっていつからだった?」

「は? えーと……去年の……あ、今日だ」

 ビンゴ。俗にいう一周年記念ってやつだ。女の子はそういう記念とか好きだからなぁ。

 青の反応を見てもその通り。顔を赤くして、俯いてしまっている。

 これで赤がつき合いだした日を忘れていたことを青に謝って、仲直りしてはい終わり……と、俺はなると思っていたのだが。むしろ事態は赤の一言で、悪化に向かうのだった。

「なんだ、そんなことか」

 ……唖然とした。た、確かにその通りだ。つき合いだして一年たつからなんだと言われればそうなのだが。赤が青の言葉にそう答えるなんて俺は予想もしていなかった。

「……赤、私、帰る」

「……は? なんでだよ! そんなに気にしてんのかよ」

 お、おい、赤、そこでその台詞はないぞ……。

「気にしてないから。でも……ごめん、帰るね」

 どう見ても気にしてます。本当にありがとうございました。

 傷ついたような表情を一瞬見せて青は俺たちに背をむけて走り出した。

「……何なんだよ」

 赤がくしゃ、と頭を掻いた……んな場合じゃねえだろ!

「追いかけろよ、バカ!!」

 つい声を荒げてしまった。

「絶対青傷ついてんだろ、行けよ!」

「……青、なんで傷ついたんだろう?」

「ああ、もう! そんなん二の次だろ! さっさと追いかけろ!!」

 俺はバカの背中を押してやった。こいつならすぐに追いつくだろう。走りだした赤の背中を見て、これでどうにかなるだろうと息をついた。

 ……やっぱ、心配かも。

 今度はひとつ溜息をついて、二人がいるであろう方向へ俺も向かうことにした。

 

「だから気にしてないって言ってるでしょ!!」

「どう見たって気にしてるだろ!」

「……っ! もういいから放して!」

「放すかよ! 理由くらい言ってくれよ!」

「だから! なんでもないの!!」

 俺が二人がいる場所——人通りの多い駅前に着いたとき、二人は人目を引きまくりながら大声で言い合っていた。

「おいおい……」

 いい加減にしてくれ。白昼堂々痴話喧嘩なんてうんざりすること、頼むからしないでくれ。

「何でもないわけないだろ! いいから話してくれよ!」

「しつこい!赤なんて——」

「はいストーップ!!」

 好奇の目を向ける人たちをかきわけて俺は二人の仲裁に入った。二人は驚いたように俺を見る。

「……ここは人も多いから。とりあえず移動して話し合おうな?」

 少し冷静になったのか、青は周りを見回すと俺の指示におとなしく従った。赤も不服そうにしながらもすごすごと青に続いた。

「……あーもう。ご迷惑おかけしました!」

 バカップルの代わりに周囲のみなさんに謝っておく。

 二人を連れていく俺の背中に「頑張れー」などと声が送られた……頑張るのは俺じゃないでしょ、普通は。

 

「カラオケなら個室だから、好きに大声出してもいいよ、ってね」

 ということで二人をカラオケボックスに連行……それでは。

「じゃ、俺は帰るから」

 もうつき合ってらんねえ。

「あ、あのさ……」

「橙……」

 嫌な予感がする。二人の声に、反応したくないと少し思いながらも、何だ? と聞き返す。

「「……いて、くれない?」」

 ハモりやがった……ったく、頼まれると弱いんだよなあ。

「……赤、俺の分出せよ」

「えー!」

「えー、じゃない!!」

 

「……ホント、俺、バカだからさ、青の気持ち、気づけなくて……」

「……」

「ごめん、俺、青の気持ち、傷つけた。ホント、ごめん」

「……なんで、あんなこと、言ったの?」

「……え?」

「私、寂しくて……最近、お互い忙しいからあんまり遊べないから……だから、今日は……」

「……そっか。そうだよな、デート、久しぶりだったもんな」

「一年だから、って、ちゃんと遊びに誘えるって思って……」

「ごめん。気づけなくて。俺、バカだ……」

「……」

「そりゃそうだよな。青がそんなこと思ってるのに、あんなこと言ったら、傷つくよな……ホント、バカだった」

「……私も」

「……へ?」

「私も、逃げだすこと、なかった。今みたいに、ちゃんと言えればよかったのに、さっきは逃げちゃった。私も、ごめんなさい」

「いや、悪いのは俺だって!」

「ううん、私も……」

「……」

「……」

「……はは」

「……あははは」

「青、仕切り直しさせて?」

「……うん」

「一年たったけど、一年前より、俺は青が好きだよ」

「私も……大好き、赤」

「……赤、俺、帰るわ」

もう勘弁してくれ。

「おう、お疲れー」

 ……一度、ぶん殴ってやろうか。

 

 カラオケボックスから出てすぐ、俺はケータイを忘れてきたことに気がついた。……戻りたくねえ。

 もう、いい! どうにでもなれ! キスでもハグでも知るか!

 そう俺は自分に言い聞かせ、あの桃色空間に飛び込むことにした。

「わりい、忘れ物——」

 扉を開けた瞬間、俺の眼に入ってきたものは……。

「だ、橙!?」

「ち、違うの! これは!!」

 ソファーに倒れこんで、向き合っている二人……どう見ても、これは……。

「い、い、加減に……しろおおおおおおおお!!!!!」

 このバカップルが!! 俺の時間を返しやがれ!!!

 ……そのあと俺はとりあえず、黄色に電話して、これから家に行くことを伝えた。


『友人たちの悲劇 橙のその後』

橙「おーす」

黄「どしたの? 急に家に来るなんて」

橙「ダメだった?」

黄「そんなことないけど」

橙「よかった……悪いんだけど、ちょっと好きにさせて」

 ぎゅー!

黄「え!? ええ!? な、何いきなり!?」

橙「だってさぁ……あんなに見せつけられたらさぁー」

黄「何のこと?」

橙「何でもない……たまには、俺が甘えてもいいでしょ?」

黄「え、ええ!?」

橙「あ、膝枕もされたい」

黄「……もう」

橙「ちょっと喜んでるっしょ?」

黄「そ、そんなことないもん!」


『おジャ魔女』

黄「大きな声でピーリカピララ♪」

橙「懐かしいな。Youtube見てんの?」

黄「うん。よく見たなあ」

橙「朝早かったけど」

黄「子供の頃はアニメを見るために早起きできたのにね」

橙「今は日曜の朝は寝てたいって思うもんな」

黄「ぴ〜りぴりららぽぽりなぺんぺると!」

橙「……は?」

黄「今日のご飯が炒飯になあれ!」

橙「ああ、魔法の呪文か。はいはい」

黄「ついでにぱらぱらになあれ!」

橙「……努力はするよ」


『アリスSOS』

白「SOS♪ SOS♪ ほーらほーら呼ーんでいるーわー♪」

黒「懐かしい曲だな」

白「NHKでやってたよね」

黒「ああ。一緒に見てたもんな」

白「ねえ、黒くん」

黒「なんだ?」

白「黒くんも狼になるの?」

黒「ぶッ!?」

白「? だってほら、おっとこはおおかみなのーよー♪ って」

黒「(……たぶん狼の意味をわかってないんだろうな)……白が望むなら、なってもいいが」

白「じゃあなってなって〜♪」

黒「!!(しまった! むしろこの結果は予想できたじゃないか! 何してるんだ、俺!!)」

白「ねえ、狼さんになって!」

黒「……がおー」


『ハロウィン 橙×黄』

ぴんぽーん

橙「はーい」

 がちゃ

黄「とりっくおあとりーと!」

橙「……なぜ猫耳?」

黄「ハロウィンだから!」

橙「お菓子をあげるのでぜひお帰りください」

黄「もう! たいちゃんの照れ屋さん♪」

橙「……」

黄「うわーん! せっかく準備してきたんだからそんな目で見ないでよぉ!!」

橙「はいはい、黄色の心意気はわかったからさっさと入りな」

黄「うぅ……そっけない」

橙「うわ、お前しっぽまでつけてんのかよ」

黄「だって、ハロウィンだし。あ、鞄のなかに手も入ってるよ!」

橙「気合入ってんなあ」

黄「そうだ、橙用の狼の耳もあるよ」

橙「俺のもあんのかよ」

黄「一緒にやろうと思って。ほら、つけたげる」

橙「はいよ。……どう?」

黄「似合う似合う。可愛いよ、たいちゃん」

橙「たいちゃん言うな。……!」

黄「どうしたの?」

橙「trick or treat?」

黄「え?」

橙「お菓子はねえの?」

黄「持ってないけど……」

橙「じゃあ、悪戯していいんだろ♪」

黄「え、ちょ、きゃあっ!」


『贈り物』

 偶然、街で白に似合いそうなニットの帽子を見つけた。

 普段の俺ならそれに目をやるだけで済ますのだが、今回は何故かそれがとても気に入った。

 暖かそうだし、本当に白に似合うと思ったんだ。

 俺はそれを購入し、白へと送った。白はなんでいきなりプレゼントなんか、と驚くかもしれないが、俺は勝手に自己満足に浸っていた。

 そして数日後、そろそろ帽子が白に届くだろうと考えていた俺の部屋に、宅配便が届いた。

 親が食品でも送ってきたのかと思ったが、それは違った。送ってきた相手は白。そしてその中身は……

「……帽子?」

 俺が白に贈った帽子の色違いのそれが包まれていた。よく見慣れた白の文字で「寒いよね。体に気をつけてね」というメッセージを添えて。

「……はっ……」

 こんなこと、あるのかよ。そう思いながら俺は携帯に手を伸ばした。

 贈られたものは帽子よりも暖かいものだと思った。


『意地悪』

 橙・黄色、中学時代

女1「橙くん、カッコイイよね〜」

女2「他の男子みたいにガキっぽくないし〜」

黄「そう? アイツけっこうガキだよ?」

女1「黄色はいつも一緒だから気づかないんでしょ」

黄「べ、別にいつも一緒なわけじゃ……」

女2「あ〜うらやましいなぁ〜」

黄「絶対みんなアイツを買い被ってるって」

 橙、黄色を足掛け

黄「きゃっ!」

橙「ダレが誰を買い被ってるって? 女みたいな声出しやがって」

黄「あーもう! みんなが、あんたをだよ! てゆーかあたし女だし!!」

橙「マジで? 気づかなかったわー、わりぃわりぃ」

黄「……ほら、全然ガキじゃん」

橙「は?」

黄「橙さ、なんであたしにばっかり悪戯するの? 他の子の前では大人ぶるくせに」

橙「んなつもりねーけど」

黄「じゃあどーしてよ」

橙「……さぁ?」

黄「はぁ?」

橙「お前にそーゆーことすんのが楽しいからなんだけど、なんかしっくりこねー」

黄「意味わかんない」

橙「俺も。……でも楽しいからってことにしといて。とりあえず」

黄「とりあえず?」

橙「そ、とりあえず。お、黄色、お前身長縮んだ?」

黄「橙が伸びたのっ!」

 その「とりあえず」がそうでなくなるのには、まだまだ時間がかかりました。


『いいこと』

 赤・青高3受験期 ベランダにて

女「あー毎日勉強ばっかりで退屈ー。楽しいことしたいー」

青「たまには遊びたいよねー」

女「青も赤くんとデートもできないでしょ?」

青「そ、そんなこと……たまに一緒に帰ったりするし……」

女「またまたー、物足りないでしょ」

青「確かにそうだけど……でも」

赤「おーい! 青ー!!」

青「あ、赤!」

赤「じゃーなー! 勉強頑張れよー!」

 手を振る

青「うん!!」

 手を振る

青「いいこと、いっこ(ニコニコ)」

女「……あー、彼氏欲しー」


『iPod』

 橙・黄高校生時

黄「何聞いてんの?」

橙「んー?」

黄「な・に・き・い・て・ん・の!?」

橙「ほら」

 イヤホンを片方渡す

黄「あー、これかぁ。いいよね、このアルバム」

橙「今度弾いてみてぇ」

黄「へー」

男「……何お前ら教室でナチュラルにイチャついてんの?」

橙・黄「「え?」」


『落ち葉』

 橙・黄小学生時

 かさっかさっ

黄「ふっふふーん♪」

橙「なー、はやくいこーぜー」

黄「えー、待ってよー」

橙「落ち葉なんか踏んで歩いて楽しいかよ」

黄「楽しいよ? かさっかさって」

橙「そうかぁ?」

黄「うん♪(ニコニコ)」

橙「あーもう、少しだけだからな!」

黄「ありがとう!」



橙「はっくしょん!」

黄「あれ? たいちゃん風邪?」

橙「……結局昨日ずっと外にいたからな」

黄「うわ、ごめんね」

橙「いーよ別に……ぐすっ」

黄「……えへへ。ねえ、たいちゃん」

橙「なんだよ?」

黄「だーいすき♪」

橙「……るっせーよ、バカ」






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Last-modified: 2012-10-21 (日) 12:15:53