スクールデイズ

『遠い?』

黄「けっこういいね、橙の部屋」

橙「そうかぁ?ま、親から金出してもらってる以上贅沢は言えねぇんだけど」

黄「でも、遠いよね……」

橙「お前の部屋と?チャリで五分くらいだろ?」

黄「だって地元にいたときは窓越えればよかったのに」

橙「あの近さは奇跡的だからな……」

黄「いつでも好きなときにってのができなくなるじゃん」

橙「大丈夫だって。なんか用があんなら呼べよ。すぐ来てやるから」

黄「……うーん、わかった」

橙「安心しろって。いつでも来いよ。絶対追い返したりしねえから」

黄「じゃあ今日泊まってく!」

橙「おう。……ってええっ!?」

黄「作戦成功♪」


『とある買い物の日』

青「赤、食器とかコップとか全然ないじゃない!」

赤「これぐらいあればどうにかなると思うんだけどなぁ」

青「なりません。ほら、一緒に色々買いに行こ?」

赤「デートっすね!」

青「あっ……!そ、そんなこともあるようなないようなそれでいてやっぱりデートな気も……」

赤「デート!デート!」

赤「へええ、意外と食器とかってこれぐらいの値段で買えるんだな」

青「一式揃えようとすると結局けっこうかかっちゃうけどね。……あ、このマグカップ可愛い」

赤「ちよっと俺が使うにはアレじゃねえ?」

青「……わ、私が使うんだからいいの!」

赤「そっか!じゃあ俺用のも一つ!青とペアがいい!」

青「しょ、しょうがないわね……」

青「どうせだし、晩御飯一緒に食べよ。何がいい?」

赤「青が作るやつならなんでもいい!」

青「それが一番困るんだけど……」

赤「だってホントだし」

青「うーん……とりあえずスーパー行って考えよ」

赤「一緒にお買い物!荷物持ちはまかせとけ!」

青「あんまり楽しそうに言うことじゃないと思うんだけど」

赤「俺が楽しんでるから問題ナシ!」

赤「なぁ青、そろそろ言っていい?」

青「何を?」

赤「俺ら、新婚みたい」

青(ぼんっ!)


『寝れない夜は』

黄「眠れない……よし」

プルルルルル……

橙『どうした?』

黄「隊長、眠れません」

橙『おっまえなぁ……今一時だぞ?』

黄「だって明日入学式だし、ちゃんと寝ておきたいのに寝れないんだもん」

橙『お前、イベントごとの前は寝れないタイプなうえに枕が変わると眠れないタイプだもんな』

黄「うん……もう三時間くらい布団の中で苦しんでる」

橙『十時に寝ようとしたのかよ……』

黄「だって……」

橙『ま、お前の考えることはわかるけど』

黄「なにそれー」

橙『羊はちゃんと数えたか?』

黄「羊は五百を超えたあたりで諦めました」

橙『そこまで数えたんかい……よし、じゃあ千まで数えてまだ眠れないならもっかい電話しな』

黄「えーなにそれー」

橙『切らなくていいから。ずっと聞いてっから、数えてみ』

黄「……わかった。羊が501匹、羊が502匹……」

黄「……874匹、羊が……」

 ピンポーン

黄「ぬおっ!?」

橙「おーす」

黄「な、なんで!?」

橙「だって、眠れねえんだろ?黄色が寝るまでここにいてやるよ」

黄「え、あ?い、いやすごく嬉しいけど……」

橙「……それにさ」

黄「……橙?」

橙「ちょっと部屋が離れてても、お前が困ってりゃすぐ来てやるぞ、っつーことを見せてやろうと思ってよ」

黄「橙……ありがと」

橙「さ、寝ろ寝ろ。今日はなんだってしてやっから」

黄「……じゃあ」

橙「何だ?」

黄「一緒に寝て?」

橙「ッ!?!」


『最優先』

橙「あ、黒じゃん。なんでここに?」

黒「せっかくの土日なんでな。白に会いに来たんだ」

橙「遠距離恋愛お疲れ様です。新幹線?」

黒「ああ。やはり速いな」

橙「高いけどな……黒、なんか痩せた?」

黒「慣れない独り暮らしだからな」

橙「でも黒って料理とかもできそうだけど」

黒「……定期的に、白に会いに来たいんだ。せめて二週間に一度くらいは」

橙「だろうな」

黒「やはりかかるものはかかる。だがバイトをしたくても、自分で望んで勉強が必要な大学に入ったから文句は言えないが、バイトまでしているとまったくついていけない」

橙「………おい、まさか」

黒「しかし金は作らなくてはいけない。だとすれば削っていくのは当然……」

橙「黒、こっち来たときは言って。飯代くらい出すよ……」

黒「それはもらえない、と言いたいが、すまん、恩に着る……」

橙「マジで、頑張れよ、黒……」


『GWだから帰省させてみた 黒×白』

白「お帰り、黒くん」

黒「ただいま、白。地元はやっぱり遠いな、東京よりも遠いとなるとなかなか大変だ」

白「あはは、お疲れ様」

黒「まったくだよ。……それで、白、悪いんだが……」

白「どうしたの?」

黒「……課題をやらせてくれ」

白「え?」

黒「せっかく、こっちにきて、白も近くにいるのに悪いんだが、とんでもない量の課題を出されてるんだ……それを片付けさせてくれ」

白「なんだ、そんなことか」

黒「そんなこと?」

白「だって、その邪魔さえしなければ、黒くんの傍にいてもいいんでしょ? ……私、それだけですごく嬉しいから」

黒「白……よし、全力で終わらせてやる」

白「え、ええ?何で? 無理に急がなくたって……」

黒「白がそういうこというからだよ。……余計に一緒にいたくなった。課題で無駄になんて出来るか。……待ってろ」

白「黒くん……うん。待ってる」

 必死な彼と、幸せそうに彼を見つめる彼女。

 充分幸せそうではあるが、彼らのもっと楽しいGWまではあと少しのようだ。

 

『GWだから帰省させてみた 橙×黄』

黄「ういーす。毎度お馴染み黄色チャンでーす」

橙「屋根つたって俺の部屋来るやつなんかお前しかいねえよ」

黄「いやあーやっぱりいいよねこの距離感」

橙「徒歩三秒。まったくもって素晴らしい」

黄「……えへへ」

橙「どうした、いきなり」

黄「すぐ会えるのって嬉しいなって思って」

橙「……まだまだだな」

黄「え?」

橙「こんなに近くなくても、っつーかもうアパートはちょっと離れってっけど。……少しくらい距離があってもお前に安心感与えられるやつになりてえ」

黄「……橙」

橙「……ま、近くにいるうちはそれはそれでお前といりゃいいよな? せっかくのGWなんだし」

黄「その通りだぜい! たいちゃーん♪」

橙「あっこら! いきなりひっつくなっての!」

黄「いーじゃん! 甘えさせろぃ!!」

橙「……ったく、しゃーねえなあ……」

 

『GWだから帰省させてみた 赤×青』

青「……はあ」

空「どうしたのお姉ちゃん? せっかく帰ってきたのに溜息ばっかりついて」

青「だって……赤が陸上の合宿で……」

空「あぁ〜かまってもらえないんだ」

青「……はぁ」

空「仕方ないなあ、お姉ちゃん、明日一緒に買い物にいか——」

 ♪〜〜♪〜〜♪〜〜

 ばっ!!!

青「あ、赤!? あ、うん。今合宿中なんじゃ……え? 自由時間? ……まったく、それで電話してきたの? 仕方ないわね……え? ……べ、別に寂しくなんかなかったんだから!! で、電話も待ってなかったし!! そ、そんなくだらないことしか言わないんなら切るわよ? ……ちょ、ちょっと、ホントに切らなくてもいいってば! も、もう少し……私も話したいし……うん、……うん」

空「……やっぱりやめた。勝手にやってろ」


『彼女の感触』

赤「何か、すげー久しぶりな気がする」

青「大袈裟ね。二週間くらいよ?」

赤「えー、青はさみしくなかったのかよ」

青「そ、それはっ!」

赤「なんだ、さみしかったんじゃん」

青「……当り前じゃない」

赤「俺もだよ。会えてホント嬉しい。……じゃ、行こうぜ」

青「うん」

 ぎゅ

赤「……うお」

青「……何よ、いいでしょ。初めてやるわけでもないし」

赤「いや、何か……青だなあって」

青「?」

赤「自分でも意味わかんねえ。なんでかなあ、俺今、安心してる」

青「赤、大丈夫。……私も、だから」

赤「青。……すげー好き」

青「赤、大好き」


『小さな努力』

白「黒くん!」

黒「白! 迎えにきてくれたのか!」

白「えへへ、ちょっとでも早く会いたくて」

黒「待たせたか? ごめんな」

白「ううん。待ち切れなかったんだもん」

黒「……ありがとな」

白「どういたしまして♪ 黒くん、行こ?」

 ぎゅ

黒「……白?」

白「あ、気づいた? どう? 嬉しい?」

黒「いや、わかったが……いきなりどうしたんだ?」

白「『当ててんのよ』をやると黒くんが喜ぶだろうって赤くんが」

黒(OK、あの馬鹿は半殺しだ)

白「も、もしかして、嫌だった!? ご、ごめんね、私、黒くんにいっぱい喜んでもらえることしたいと思って、それで……」

黒「……いや、嬉しいよ。ありがとう」

白「よかったぁ……」

黒「……本当、ありがとう」

白「黒くん?」

黒(白は白なりに、俺との時間を最大限大切にしようとしてくれてる。俺が応えなきゃ嘘だろ)

黒「行こうか、白」

 わずかな時間でも、それを宝物にするために。


『鼻歌』

 カラオケにて

青「私、この歌好きなんだ」

赤「へー」

青「……どうでもいいとか思ってない?」

赤「そ、そんなことないって!」

青「ふーん……」

 数日後

赤「♪〜〜♪〜〜♪〜」

青(……あれ?)

赤「♪〜〜♪〜〜♪〜」

青(もしかして……)

赤「♪〜〜♪〜〜♪〜」

青(やっぱり……)

赤「♪〜〜♪〜〜♪〜」

青「赤、私、その歌好きなんだ」

赤「だろ? だから最近聞いててさ。つい出ちゃうんだよ」

青(ホントはちょっと、音程がずれててヘンテコだけど……)

青「うん、私、その歌が好き」

 君が歌う、その歌が好き。


『安心』

 ピンポーン♪

青「はーい……こんな時間に誰かしら?」

 がちゃ

青「……あ、赤?」

赤「……青……」

青「ど、どうしたの? こんな時間に。く、来るなら言ってくれれば掃除とかいろいろ準備とか……」

赤「何も、いらない……疲れた……」

青「今日も練習だったんでしょ? そんなにきつかったの?」

赤「……ごめん。マジ限界……寝かせて……」

青「え、えええ!? 赤、何しに——」

赤「青の顔、見たかった……疲れたけど、会いたかった……わりぃ」

青「あ、赤?」

赤「青の顔……見ると、安心、できる……」

 どさっ

青「うわ、寝ちゃった……安心、ね。……ふふ。……あれ? 赤が私のベッド使ってるんだから、私、どこで寝ればいいんだろ?」


『群青、朱色、そして焦茶』

焦「やあ」

群「焦茶か、今日も論文か?」

焦「たくさん書いて評価してもらわないといけないからな」

群「研究者は大変だな」

焦「なに、准教授ぐらいにはすぐになってみせるさ」

群「頑張れよ。いつものでいいか?」

焦「君の淹れるコーヒーならなんでもかまわないよ。……朱色はいないのかい?」

群「少し待っていろ、すぐに来る」

焦「ふむ、じゃあそうしようか」

朱「ただいまー……まったく最近は何でも高くなって困るわ……って、げ、焦茶、来たのかよ」

群「ほら、な」

焦「げ、ということはないだろう。せっかく君に会いに来たのに」

朱「サムイからそういうこと言うなっつーの。いいからさっさと論文書いてろ」

焦「今日も手厳しいな。仕方ない、書くとするか」

群「今日はすぐ引き下がったな。何かあったか?」

焦「君は何でもお見通しだな。ふむ……あえて言うなら、青春の輝きを見てきた」

朱「……意味わかんねえぞー」

焦「恋する若者を救ってきたんだよ」

朱「……あたしはいつかあんたが警察のお世話になるんじゃないかと心配だよ」

焦「この国には変人というだけで捕まえられる法律はまだないからな、安心してくれてかまわない」

朱「その法律できたらあんた、少しは自重する?」

焦「まさか。法律なんかじゃあ私は止められんよ。私は私の意志にのみ従う」

朱「やっぱあんた一回ぶち込まれてこい」

群「……で、お前が助けた若者はお前に感謝していたか?」

焦「ああ。いい目をしていた。だからこそ助けたわけだが。ここのことを話にあげておいた。そのうち来るかもしれない」

朱「げ、仕事が増えるのかよ」

群「朱色、お前な……」

朱「さすがに冗談だってば」

焦「そういえば、他にも学生がここに来ていたな。赤君と浅葱君、だったか。彼らもいい目をしていた」

群「彼らも今や常連だよ」

朱「でもねー、あいつらいろいろめんどくさそうなのよねー」

焦「めんどくさいのもまた青春だよ」

群「……そろそろコーヒーができる。焦茶も論文に取り掛かったらどうだ」

焦「おお、そうだな。歓談ばかりしているわけにもいかないな」

朱「焦茶、今日はカーペンターズでいい?」

焦「ああ。今日はそういう気分だ」

朱「だと思った。……時間がたったらいつもの持ってってやるから」

焦「頼む」

 穏やかな空気が流れる。今ここは、三人だけの空間だ。


『フェイク』

橙「あー……頭いて……」

黄「どうしたの?」

橙「昨日合コン行ってきてさ。ちょっと飲みすぎた」

黄「へ、へー。そうなんだ……」

橙「? ……(ニヤリ)」

黄「どーせ調子にのったんでしょ」

橙「まーなー。可愛い子いっぱいいてさー」

黄「よ、よかったじゃん」

橙「そっちの子たちもノリがよくてさ、つい飲んじまったんだよな。楽しかったぜー」

黄「へー……」

橙「気ぃ合う子もいいからかなり話も盛り上がったしー」

黄「……」

橙「……なんてな。黄ぃ、お前今妬いてた?」

黄「っ! ま、まさか……わざと?」

橙「あたり。最初の反応が面白かったからつい」

黄「ついじゃない! このバカ橙!!」

橙「おー、可愛い可愛い」

黄「茶化してごまかすなー!」

橙「……でもさ、合コン行くたび思うことがあるわけよ」

黄「……何さ?」

橙「可愛い子はいくらでもいるけど、好きな奴はここにしかいねえんだなってさ」くしゃ

黄「……くさすぎ」

橙「だめ?」

黄「だめ。……でも、許したげる」


『and I love you』

焦「……」

朱「ブラック淹れたぞー……つーかなんでアンタは毎回うちで論文書いてくわけ? わざわざPALLET来んのめんどくさいでしょ」

焦「ここなら小腹が空いたときに軽食を頼める。おいしいコーヒーも飲める」

朱「そりゃうちとしてみりゃアンタはお得意サマだけど」

焦「好みの音楽も耳障りではない程度の心地よい音量で作業もはかどる」

朱「なんたってあたしと群青のセンスだからね」

焦「それになんたって、ここは落ち着く」

朱「……そ。じゃあ、今日も頑張りなよ」

焦「ああ。……そうだ、忘れてた」

朱「何さ」

焦「ここにいつも来る理由。君がいるからだ」

朱「……はいはい」

焦「む、せっかく言ったのに連れないな。君がいると論文も頑張れるんだよ」

朱「わかったから続きでもやってろ。……今日もアンタが一段落つくまでは待っててやるから」

焦「助かる」


『扇風機』

白「あ゛〜」

黒「……」

白「あ゛〜」

黒「……」

白「あ゛〜」

黒「……白、いつまでやってるんだ?」

白「え゛〜、だの゛じい゛よ゛〜? 黒ぐん゛も゛や゛ろ゛〜?」

黒「あのなあ……」

白「ね゛?」

黒「……」

白「あ゛〜」

黒「……あ゛〜」

白「あ゛〜♪」


『風鈴』

 ちりんちりん

赤「この音、いいよなあ」

青「涼しくなる気がするわよね」

 ちりんちりん

赤「まさに日本の夏、って感じだ」

青「あはは」

 ちりんちりん

赤「あー……今日、ずっとこうしてたいなあ」

青「珍しいわね、あんたがどこにも行きたがらないなんて」

 ちりんちりん

赤「だってさー」

青「うん」

 ちりんちりん

赤「今、すっげえ幸せなんだもん」

青「……うん」

 ちりんちりん


『冷やし中華、始めました』

 ちょっと未来の橙×黄色

橙「今日も暑かったな、マジ疲れた……ん?」

 冷蔵庫の扉に、手書きの手書きの張り紙『特製☆冷やし中華始めました』

橙「黄ぃ、何、これ?」

黄「えっへへえ、本日のお勧めです♪」

橙「ふーん。お勧めなんだ」

黄「そりゃあもう。暑い一日に涼やかな美味しさを、黄色チャンの愛情付きで召しあがれるんですから♪」

橙「じゃあ、カレーライス一つ」

黄「えええええええ!?」

橙「……」

黄(しょんぼり)

橙「冗談だよ。冷やし中華お願い。……できれば愛情多めで」

黄「まっかせなさい! ……でも、愛情はいつでも特盛りですよ?」


『レモンスカッシュ』

焦「学生が図書館でテスト勉強しているせいで、私の居場所がいよいよもってPALLETしかなくなってしまった」

群「大学生もテスト勉強か、暑いなか精が出るな」

焦「彼らにはその後の輝かしい夏休みが待っているからな。意気も上がる」

朱「夏ねえ……。暑っ苦しいだけなのにねえ。ま、ビールは旨くなるけど」

群「お前……」

焦「いやいや、朱色なりに夏を楽しんでいる分いいじゃないか。夏とはいいものだよ。青春がそこかしこに転がっている」

朱「もう青春なんて歳でもないだろーに」

焦「何を言うんだ。青春に歳など関係ない。心が走り出せばいつだって青春はそこにある!」

朱「はいはい」

焦「わかっていないな。だいたい、君だって私がいるんだから青春真っ盛りじゃないか」

朱「恥ずかしいセリフばっか吐いてんじゃない、この減らず口が」

焦「ひみはほんほうひへへやはんはああ」

群「ほら、今でも青春中の焦茶、いいもの持ってきたぞ」

焦「ん? なんだ? まだ何も頼んでいないはずだが」

群「レモンスカッシュだ。爽やかな夏を楽しんでくれ。——ああ、あと今日は早めに閉めるから、朱色とどこかへ行ってくるといい」

朱「お、おい! 聞いてないぞ!」

焦「そうかそうか! じゃあデートの一貫、というわけでもないが、レモンスカッシュをあと二つくれないか」

群「わかったよ。……ありがとな」


『花火』

赤「やっぱ夏って言ったら花火だよなあ!」

青「ふふ、綺麗よね」

赤「……青青ー! 見てろよー」

青「? どうしたの?」

赤「へっへーん」

 しゅっしゅっ(花火を振っている)

青「何書いてんのよ」

赤「当ててみてー」

青「まったく……青……女……子……?」

赤「まだ終わってねえって!」

青「き……だ……? なんなの? ……あ!」

赤「……へへ」

青「……もう。ばか」


『テスト前』

浅「ノートをちゃんと取ってある科目がゼロ……バ赤は顕在だなあ」

赤「るせえ! 俺は陸上しに大学入ったんだ!」

浅「はいはい。それでもいいけど単位を取れるレベルの努力くらいしなよ」

赤「だから今頑張ってる」

浅「人のノートを写す作業を?」

赤「……あとでラーメン」

浅「大盛りに半ライス餃子付きで」

赤「なっ……バイトもしてない俺にそんな出費は……」

浅「私もしてないから、ここぞとばかりにたかるわけだよ」

群「俺の立場としてはここのケーキセットを頼む、という案を提供しておきたい」

赤「ぐ、群青さぁん……」

浅「じゃあケーキセットとピザトーストでいいよ。あ、群青さん、コーヒーおかわりお願いします。いいでしょ、赤?」

赤「お、鬼……」

 

赤「青ぉ〜……」

青「な、なんでいきなり家に来るのよ! 来るんだったら先に電話とか……っ」

赤「飯ぃ〜……」

青「……は?」

赤「予想外の出費、財布空、ATM終わった、冷蔵庫空……飯がないです」

青「そういうこと……わかったわよ。でもちょっと待ってて今洗濯物とかが……」

赤「(きゅぴーん☆)お邪魔しまーす!」

青「だから入るなぁあ!!」

青「……で、私もテスト前なんだけど」

赤「勉強すればいいじゃん」

青「……この状態でできるわけないでしょ!! 」

 赤、後ろから抱きしめ、青を膝に乗せている

赤「いやあ、せっかく青んち来たしスキンシップはかりたいじゃないすか」

青「うるさい! もう、バカ!! 」

 結局この日は勉強がまったくできなかった青さんであった。

 

黄「れっつ、勉強会!」

橙「大学違うし、受けてる講義の内容も違うのに勉強会とかまったく意味ないよね」

黄「つまりは会うための口実図作りなのだよ!」

橙「わかってるっつーの。でもな、俺、明日のテストやばいんだよね。経済学とかもうね。っつーことで……」

黄「……(ジー)」

橙「それにレポートの期限も……」

黄「……(ジー)」

橙「……ああ、もう、ホントに勉強するんだからな!」

黄「当然!」

黄「沈黙だとなんかアレだね。音楽流していい?」

橙「ああ」

黄「あーこれなんだっけ、聴いたことある」

橙「映画の主題歌だった気がする」

黄「それだ!あたしアレ見たことないんだよね」

黄「面白かったね」

橙「けっこういい映画だったな」

橙「……あれ?」


『みんなで遊びに行こう!』

赤「夏休みが終わり? 何をバカなことを言ってるんだ!!」

橙「そりゃ俺らは九月まで夏休みだけどよ」

赤「つーことでみんなで遊びに行こうぜ!」

黒「……お前、陸上部の練習はいいのか」

赤「……それは言わないお約束♪」

黄「ねーどこ行くのー?」

白「わーい! 皆で遊ぶの久しぶりー♪」

青「そうね、私も今日は楽しみだったわ」

赤「うーん……じゃあどこに行こうかなっと……」

 

『その1 ボ ウリング』

赤「よっし!ストライク!」

黄「いえーい!!」

橙「やっるー」

青「すごいね……」

赤「へっへー♪」

 みんなとハイタッチ

黄「やた! あたしスペア!」

黒「上手いな」

橙「ひゅーひゅー♪」

 みんなとハイタッチ

白「なんでボウリングだとみんなハイタッチするのかなあ」

黒「よくわからないが、喜びを表現してるんじゃないか?」

白「ふーん……」

黒「あ、ほら、次白だぞ」

白「ホントだ、よーし、今度こそ……」

黒「さっき教えた通りにやってみな」

白「うん♪」

 がしゃーん!

白「やった! ストライクだ!!!」

赤「すっげー!!」

青「白すごい!!」

白「やったよ! 黒くん!」

黒「ああ、すごいな——」

 ぎゅ♪

黒「し、白!?」

白「えへへ、すっごく嬉しかったから、ハイタッチじゃ足りないかなって」

青・黄「……」

橙「……やるなよ? 恥ずかしいから」

黄「なぜわかった!?」

 

赤「はあ……はあ……」

橙「ぜえ……ぜえ……」

黒「……ふう」

青「だからなんであんたたちは毎回毎回そんなにクタクタになってるのよ」

黄「今日もアツかったねー」

白「なんで三人ともあんなにストライクが出るのかなあ」

赤「あ、ゲーセンあるぜ。ちょっと寄ろうぜ」

黄「UFOキャッチャー!!」

橙「お前なぁ……前も取ってやったろ?」

黄「もっと欲しいんだもん」

赤「仲がよくて羨ましいですなあ〜(ニヤニヤ)」

橙・黄「そ、そんなんじゃ……」

青「ねえ、プリクラもあるよ!」

白「それもいいなあ」

赤「飯も食べたいし、遊ぶのはどっちかにしたいなあ……さて……」

 

『その2 UFOキャッチャー』

赤「青ー、どれがいい?」

青「UFOキャッチャーかぁ……初デートを思い出すなあ……」

赤「青ー!?」

青「はいぃ!? 」

黄「うーん……どのぬいぐるみが可愛いかなあー……」

橙「……お前、ああいうの好きじゃなかったか?」

黄「え? あ! ホントだ! アレ可愛い!」

橙「だと思った。ちょっと待ってろ」

 ごとん

橙「ほら」

黄「……なんか悔しい」

橙「は? なんでよ?」

黄「あたしの好みが完全にわかってて、しかもそれをさらっと取っちゃう橙が悔しい」

橙「惚れ直した?」

黄「バカ」

橙「ちぇー」

黄「むしろ惚れっぱなしってカンジですよ」

橙「……」

黄「……」

橙「……真っ赤になるくらいなら、んなこと言うなっつーの」

黄「……橙だって真っ赤じゃん」

白「あ! あのクマさん黒くんに似てる!」

黒「……俺に?」

白「ううん、黒くんにじゃなくてクマの黒くんにあのクマさんが似てるってことで……」

黒「は、はあ……」

赤「なあ、なんでお前ら揃って顔が真っ赤なわけ?」

橙「聞かないでくれ……」

黒「……」

白「わーい! 黒くんが増えたー!!」

 ぎゅ♪

青「……(ぬいぐるみに向かって)赤くーん……なんちゃって……」

赤「青? 呼んだ?」

青「ひゃう!?」

 

赤「あー腹減ったー! 飯にしようぜー」

青「そうね、もうお昼だし」

黒「近くで済ませたいな」

赤「ラーメン屋があるぜ。とんこつ! とんこつ!」

橙「ラーメンか、悪くねえな」

黄「えー! カレー屋さんもあるよ!」

白「カレーもおいしそうだね」

橙「うーん……どっちがいいかな?」

『その3 ラーメン屋』

赤「とんこつ大盛りに炒飯と餃子20個!!」

橙「さ、さすがに多すぎるだろ……」

黒「お前なぁ……」

赤「安心しろ! 餃子はみんなで分けるつもりで頼んだんだ」

白「赤くん、優しいね」

青「あいつ、意外と気がきくのよね」

黄「随分嬉しそうだね、青?(ニヤニヤ)」

青「き、気のせいよ!」

白「ねえ、黒くんが食べてるのって何?」

黒「これか? 激辛ラーメンっていうらしい」

白「おいしいの?」

黒「旨いが辛いな」

白「辛いんだー……」

黒「……食べてみたいのか?」

白「ちょっとね」

黒「仕方ないな、ほら、ここの部分ならそこまで辛くないはずだ」

白「ありがとう!」

赤(言っちゃダメなんだろうけど……)

青(あの二人ってホントに……)

赤・青・橙・黄(親子だよなぁ……)

赤「ん? なんで女の子チーム餃子食べねえの?旨いよ?」

青・黄・白「……」

橙「……ったく。黄ぃ」

黄「何?」

橙「耳貸せ……」

 ボソボソ

黄「ホント? ありがと!」

橙「はいよー」

黄「ね、青、白、食べよ?」

白「え、でも……」

青「うーん……」

黄「大丈夫、ね?」

青「わかったわ」

赤「?」

橙「お前さ、知らねえの? ここの餃子、かなりニンニクがキツイんだよ」

赤「知ってっけど? だから俺ここの餃子好きなんだよね」

橙「バーカ、女の子は匂いとか気にするに決まってんだろ」

赤「ああ、お前は匂い対策みたいなのを……」

橙「そ」

黒「これが赤との差だろうな」

赤「るせえ」

橙「ってことで、はい」

赤「え、俺にも?」

橙「つーかお前が一番必要だろ」

黒「馬鹿食いしてたからな」

赤「……もしかして俺今」

黒・橙「うん、臭い」

赤「ぎゃー!!!」

 

赤「青、大丈夫? 俺、臭くねえ?」

青「大丈夫。……たぶん」

赤「たぶん!?」

橙「次はどこ行く?」

黄「カラオケ!」

橙「……お前好きだよなー」

黄「だって楽しいじゃん、歌うの」

黒「個人的には少し本屋に寄りたいんだが」

橙「本屋? 別にいいけど……」

赤「本屋行っても俺漫画のとこしか行かねえからなー。バッティングセンターなんてどうだ?」

白「久しぶりに行ってみたいかも!」

橙「いいかもな。どこにしようか……」

『その3 バッティングセンター』

 かきーん かきーん

赤「いやぁ、かっ飛ばすと気持ちがすかっとするよなー」

橙「すかっとさせるような悩みがお前にもあったんだ」

赤「……前々から思ってたんだが、お前らとは今度じっくり話し合う必要がありそうだな」

青「悩み……」

白「悩み、か……」

黄「すかっとする、ね……」

青「時間を守れ! 家に来るときは連絡しろ! 洗濯物を漁るなー!!」

 かきーん かきーん かきーん!

黒「……赤、お前……」

橙「さすがに最後のはないわ」

赤「……ごめんなさい」

黄「女の子とばっかりいるな! 合コンも少し控えろ! もっとあたしをかまえー!!」

 かきーん かきーん かきーん!!

赤「ほぉ……」

黒「よくないな」

橙「……反省しております」

白「もっと会いたいよぉぉぉぉ!!!」

 かきーん!!

黄「し、白ちゃんがクリーンヒットだと!?」

黒「白……」

赤「……なんか納得がいかないんだけど」

橙「日頃の行いの差だろうな……」

 

赤「遊んだなぁ」

白「楽しかったね」

黄「でも明日は筋肉痛の予感……」

青「かなり運動したからね……」

橙「ふぁああ……けっこう疲れたな」

赤「さて……これからどうする?」

黒「どうするって?」

赤「できればこれから上がり込んでいい家を募集!」

青「お泊り会ね。いいけど、そう都合よく……」

橙「そう都合よくウチの親がいないんだなー、今日」

赤「よくやった! ……あ、でも」

橙「どうした?」

赤(もしかして今夜、そういう予定だった?)

橙「ぶっ殺すぞ!?! 」

黒「その馬鹿はほっとくとして……いいのか?」

橙「いいぜ。せっかくみんなで集まったんだしな」

青「晩ご飯はどうするの? 前みたいにまた作ってもいいけど」

赤「青の手料理も捨て難いけど、作る人の手間を考えたら出前とか食っていったほうがいいよな……さて……」

『その4 みんなで晩ご飯を作ろう!』

青「橙、フライパンってどこにあるの?」

橙「右の棚の上だ」

黒「白、包丁、指切るなよ」

白「うん、大丈夫!」

黄「見よ! 黄色チャンの華麗な皮むきを!」

赤「負けねえ! 俺はキャベツの千切りだ!!」

黒「食べ物で遊ぶなよ……」

橙「つーか赤、何作るつもりでそんな大量のキャベツを切ったんだ?」

赤「……お好み焼き?」

橙「ノープランかよ……」

青「こっちはパエリア作る気だったんだけど……」

黄「パエリアとお好み焼き……斬新な組み合わせだね」

黒「無駄にするのももったいない。それで行こう!」

白「私どっちも好きだよ!」

赤「そ、そうだよな、どっちも旨いよな!」

青「あんたは反省しなさい」

橙「……くそう、悔しい」

青「まったくね……」

赤「どーよこの焼き加減!」

白「赤くんお好み焼き焼くの上手いね」

赤「だろ? けっこう自信あるんだぜ」

黄「意外な才能だね」

赤「これで汚名挽回だな♪」

黒「汚名返上、な」

赤「そう、それ!」

橙「ま、旨そうだからいいか」

黒「意外に悪くなかったな」

青「そうね、赤、お好み焼き美味しかったわ」

赤「へっへーん♪」

橙「んじゃ次は何やる?一応ゲーム系はそれなりに揃ってるぞ」

赤「王様ゲーム!」

橙「ふざけんな」

黄「人生ゲームもあったよね? あれも楽しいよ!」

橙「そうだなー……よし」

『その5 カードゲーム〜そして花火へ〜』

赤「ウノ!」

黄「簡単には上がらせないぜぇ! 4枚引けやあ!!」

赤「くう……またしてもかあ!!」

橙「何でカードゲーム系になると毎回あの2人で競り合うんだ?」

青「いいんじゃない? 楽しそうだし」

白「なんだか早く上がった方が損した気分だよね」

橙「あ、そうだ、確か花火があるんだよ。やろうぜ」

黒「夏の終わりの花火か、風情があるな」

黄「花火だとぅ!?」

橙「お、決着ついたのか?」

黄「まだまだ赤じゃあたしには勝てんね」

橙「2人で10分争っといてよく言うよ」

赤「おっしゃあ! 打ち上げんぞー!!」

白「あ、赤くん! それ持っちゃいけないやつだよ!」

黒「まああいつなら大丈夫だろ」

橙「男子だけならチャリにロケット着けまくったりするんだけどなー」

青「男子ってバカよね……」

黄「いつか絶対怪我するよ」

 ばーん! ばーん!

橙「おーいったいった!」

白「きれー」

青「最近は市販のでもすごいわよね」

黄「うん、綺麗」

黒「やっぱり締めは線香だよな」

青「なんかしんみりしちゃうな……」

橙「夏が終わるな……」

白「今年も楽しかったね♪」

黒「ああ、そうだな」

黄「ああ! 落ちた!」

赤「しゃあ! 俺の勝ちー!」

黒「騒がしいやつらだな」

赤「しんみりしてばっかじゃもったいない! せっかくみんないるんだしもっと楽しもうぜ!」

黒「……それもそうだな」

青「じゃあもう一回、みんなで線香花火やりましょ!」

白「今度は競争だね!」

橙「負けねえぞ〜」

 

赤「俺らも大学生だし、酒ぐらいいいよな?」

橙「ほどほどならいいんじゃね?」

黄「しゃー! 飲むよー!」

白「私あんまりお酒強くないな……」

黒「無理して飲むこともない。ジュースを飲んでいればいい」

橙「家に全然酒なかったな」

黒「なくなったな」

青「あんたたちが一気に飲んじゃうからでしょ」

赤「こんぐらいじゃたんねーよ! かいにいこーぜ!」

橙「すでに若干酔ってるじゃねえか……でも確かに買いに行きたいな」

黒「じゃあ行くか」

青「ちょっと! 男の子たちはもう少し酔っ払ってるんだから危ないわよ。私たちで行ってくる」

橙「そっちのが危ないっつーの」

黄「大丈夫だって! すぐそこで買ってくるからさ」

黒「さて、どうするか……」

『その6 ノロケ大会』

黄「なんか何も飲んでないと寂しいね。家から何か持ってくる」

青「そっか、隣だっけ」

白「いってらっしゃい」

黄「意外といっぱいあったよ。チューハイを多めに持ってきたけど……これも!」

青「日本酒?」

黄「お父さんがせっかくだから持ってけって言ってさー」

白「私日本酒は飲んだことないなー」

黄「あたしもー。じゃあ今ちょっと飲んでみる?」

青「じゃあ私も飲んでみようかな……」

黄「お、いいねえ。んじゃ、かんぱーい」

白「えへへぇ……それでねぇ……くろくんってばほんとおにやさしーんだよぉ」

黄「へえぇ」

白「わたしのぎゅってして、ちゅってしてくれるのぉ……」

青「だったらあかだってしてくれるもん。すきだーっていってくれるよぉ」

黄「たいちゃんはてれやさんだからあんまりいってくれないけど、たまにぼそっといってくれるんだぁ」

白「たいちゃんって?」

黄「だいだいだよ〜」

青「そんなふうによんでるんだ」

黄「たまにだけどね。そうよぶとたいちゃんてれちゃってかわいーんだー」

青「わたしもよんでみようかなぁ」

白「あーくん、とか?」

青「あーくん、あーくんかぁ……えへへぇ」

白「わたしもいっかいくーちゃん、よんでみたことあるんだぁ」

黄「どうだった?」

白「くろくんもすごくてれてた!」

青「かわいー!」

白「でもね、そのときはあさまでずーっとぎゅーってしてくれたんだよ。だからすごくうれしかった」

黄「あさまで?」

白「うん。それにね、くろくんはわたしがいつもさみしいのしってるから、あいにきてくれたときはいつもいっしょにねてくれるの!」

青「いつも?」

白「うん! それでね、ねるときはくろくんのとくん……とくん……っておとをききながらねるの。くろくんのむね、とってもあったかいしすごくあんしんできるの」

黄「いいなぁ……あたしはあまえたいのにたいちゃんはずかしがるんだもん! でもあまえさせてくれるときはほんとにとってもやさしーんだよ!」

青「どんなふうに?」

黄「いくらすりすりしてもおこんないし、あたまなでてくれるし、……えへへ、あいしてるーっていってくれるんだぁ」

青「……わたしもそれくらいすなおになりたいなぁ」

白「あかくんにあまえたいの?」

青「そうおもうときもある……。でも、あかがいつでもまっすぐすぎててれちゃうの」

黄「いつもすきだーっていってくれるの、うらやましいけどなぁ」

青「……わたしがすなおになれないとき、あかがまっすぐにあまえてくれてうれしいときもたくさんあるよ。……ほんとはもっともっといってほしいくらい」

白「あかくんはわかってるよ、きっと」

青「うん。……だから、そんなあかがわたしはだいすき」

橙「あぁあぁあああ!! 体中がむず痒いぃいいい!!」

黒(言葉にならないほど恥ずかしいらしい)

赤「青可愛すぎ! いますぐ押し倒し——」

 がんっ!

橙「自重しろ」

赤「いてぇなたいちゃん!」

橙「だ、だれがたいちゃんだ! 黙ってろあーくん!」

赤「こ、の、やろ……」

黒「お前らなぁ……」

赤・橙「うるさいくーちゃん!」

黒「……」

 

黄「あーたいちゃんだぁ、おかえりぃ〜」

白「くろくぅ〜ん♪」

青「あ……あ……ぁーくん……」

橙「……完全に出来上がっちまいやがって。こりゃあ俺らが飲んでる場合じゃねえな……」

黒「介抱が先だろうな」

赤「いーじゃん、これはこれでさ。俺らも楽しんで飲んじゃおうぜ」

橙「おっまえなー……」

『その7 介抱』

黄「た〜いちゃ〜ん♪」

橙「(ナデナデ)はいはい、大丈夫ですか、酔っ払いさん?」

黄「だいじょーぶだもぉん!」

橙「酒臭ぇ息で言われてもなー」

黄「……たいちゃん、またあたしにかまってくれないんだ」

橙「今めちゃくちゃかまってるだろ!」

黄「あいがかんじられないぃ〜」

橙「……ったく。……わかってるっつーの、お前が甘えたがってることくらい。俺だって恥ずかしいときもありゃ、抑えなきゃやばい時もあるんだっつーの」

黄「むぅ?」

橙「……甘えたきゃ甘えろ。いっくらでも相手してやる。……でも、今度からは二人っきりのときにな?」

黄「なんだかよくわかんなけど、あまえていーの?」

橙「どーぞ」

黄「わーい♪すりすり〜」

橙「(ナデナデ)……ったく俺も惚れてんなぁ」

白「くろくん♪」

黒「……嬉しかったよ。ずっと白がさみしがってないか不安でたまらなくてさ。充分なんて思わないけど……よかった」

白「だいすきだよぉ〜」ぎゅ

黒「ああ、俺もさ。これからも、ずっと」

青「あかぁ〜……なんだか……きもちわるいかも……」

赤「なんか前にもあったな……とりあえずトイレいこうぜ。人の家汚すわけにはいかねえし」

青「うぅ……ごめん……」

赤「気にすんな♪ ほら、ついた。出しちゃいな。背中さすってやるから」

青「……」

赤「吐け。みっともないなんて思ってないよな?」

青「でも……」

赤「でもじゃねえよ。ずっと付き合ってく相手をこういう場面ぐらいで嫌いになったりしねえよ。だから、楽になれよ」

青「うぅ……っ……げほっ……」

赤「……もっと信頼してくれよ。青が俺のこと大切に思ってくれてんの、すげーわかった。俺も、もっともっとお前を大切にしてぇんだ」

青「ごほ……けほっ……」

赤「汚いとこも、情けないとこも見せ合っていこうぜ。……なんてな」

 

黄「……すー……すー……」

橙「……ふぅ、寝たか」

黒「黄色も寝たか。赤、そっちはどうだ?」

赤「落ち着いた。こっちも寝てるよ」

黒「それじゃあ……少し飲むか」

橙「え、飲むのか?」

黒「少し、だよ。……お前らとしんみり話でもしたい気分なんだ」

赤「俺も。ゆっくり飲んで、ぐだぐだ話そうぜ」

橙「それなら俺も入れてくれ」

黒「ああ。……いい夜だな」

 いつになくしんみりとして、けれど楽しい会話で、彼らの夜は過ぎていった。

 夏の終わりの、彼らの一日。

 きっとまたやろう。想い人たちの幸せそうな寝顔を見ながら彼らは、そう笑いあった。


『足りない』



黒「…足りない」

白「うん。…私も、足りない」

黒「またすぐ、会いにくるから」

白「うん。…でも、もうちょっとだけ」

黒「ああ」

白「…時間、もうすぐだね」

黒「あと5分ある」

白「みんなに見られてるね」

黒「…知るか」

白「…えへへ」

黒「好きだよ」

白「私も」



どんなにしたって足りない。

だからもう少しだけ、この抱擁を。


『赤の噂』



「えーっ、しちゃったの?」

「…う、うん。この前、先輩の家で」

友達同士での恋バナのなかで「どこまでいったか」というのも定番なわけで。私たちの現在の話題は、目下それだった。

「家でかぁ、定番だね。…で、青はどうなのよ」

そういうのに積極的な友達が、獲物を見つけたような目をしながら私に話を振ってきた。

「どっ、どうって何がよ!!」

少し予想はしていたとはいえ、直球すぎる質問に慌ててしまう。

「愛しの赤クンとはやっちゃったのか、って聞いてんのよ♪」

…こいつは本当に、ストレートだ。わたしは一度こほんと咳払いをしてからしっかりと答える。

「してません」

「うっそー?!」

「し、信じられない…」

な、何?この反応?もしかして、そういうのって、してなきゃおかしいものなの? で、でも私たちはまだ高校生で、不純異性交遊はいけないことで…あうあう。

「顔赤くしちゃって可愛いんだ♪ってことじゃなくて、ふーん、あの赤くんがねえ…」

「意外…」

…え、さっきの二人の反応は、私の恋人が赤だから驚いたってことなの?何で?

「…だってあの赤くんだよ?」

「赤と言えば、学年でも有数のオープンスケベじゃないっすか」

…え?

「だって、AVの話とかクラスでしてんじゃん」

「けっこう大きな声でね」

そうだっけ?

「あーはいはい、恋する青ちゃんの耳には愛しの赤クンの悪い部分は聞こえないようになっていたんだねー」

「な、何よそれ!」

と必死に言ってみたものの、赤のそういう一面を知らなかったのは事実で、正直今何とも言えない感情が芽生えていたりする。

「青ちゃん、一応、気を付けた方がいいよ…。男の子ってそういうとき、ホントにいきなりだから」

「おっとこはおおかみなのーよー♪気をつけなさーいー♪」

経験者の言葉に、赤はそんなんじゃない、と思いながらも、今までの行動から赤がいきなり私を求めてくることも否定できなかった。 …ちょっとだけ、怖かった。





「青—、今週の日曜暇?」

そんなことがあった矢先、赤がいつものように気楽に私をデートに誘いにきた。

…意識しないように。赤はいきなり豹変するような男じゃない。…はず。たぶん。きっと。おそらくは。

「う、うん。特に予定はないけど」

きっと赤は普通にデートに行こうとしてるだけ。変に考える方が間違ってる。

「じゃあさ、今度俺んち来ねえ?」

…………へ?



き、来てしまった。赤の部屋。男の子の部屋。そ、その…性行為が行われる定番の場所…。

やっぱり、赤はそういうつもりなんだろうか。私とそういうことがしたくて、私を部屋に呼んだんだろうか。

…赤は、オオカミになっちゃうんだろうか。

「…青、どうかした?なんか今日変じゃねえ?」

「そ、そんなことない!あー私いつも通りだなー!」

完全に変な人だった。

覚悟、ってものを作ってくるつもりだった。

私は間違いなく、赤のことは大好きだし、そ、その…初めてをあげたっていいとも思ってる。

けど…なぜだか恐怖が拭いきれない。それが初めてのことに対する恐怖なのか、赤がいきなり乱暴になったりするかもしれない、というところから来るものなのかは自分でもわからないが、とにかく…怖いんだ。

「マジでなんかあった?」

赤が、自然と私の肩に触れた。その時———

びくっ!

体を触れられる、という行為に、異常なまでな反応をしてしまった。

「ご、ごめん…わ、私別に……」

もう、嫌だった。

こんなことに無意味に悩んでしまっていることや、自意識過剰なまでに自分の体のことを考えてしまうこと。そして、赤を信じきれない自分がたまらなく嫌だった。

「…なんかあったんだ。よかったら、俺に言ってくれない?できれば力になりてえし…青が何で悩んでんのか、知りてえからさ」

…言えるわけない。こんな、自分のことしか考えてない自分の考えなんて。

私は俯いて、ひたすら無言を守った。

「ん〜悪いけど、今日の俺はしつけえよ?ぜってえ何で悩んでのか聞くかんな。…そのためなら、いくらでも待ってやる」

優しい声だった。

その声のおかげで、私はようやく赤の顔を見ることができた。赤は、笑っていた。

「ようやくこっち見てくれた。な、なんかあったなら話してくれよ。俺、バカだから言ってくれねえとわかんねえんだ」

…馬鹿なのは、私だった。あの時、決めたはずだったのに。自分の気持ちは隠さないって、この人の傍にいるために、素直になるって。

言おう。どんなに恥ずかしくても、自分が思ってることを、赤に分かってもらうために。



「…正直言うとさ、確かに今日、そういうことも少しは考えてた」

私がすべてを話すと、赤は申し訳なさそうに頭をぽりぽりと掻きながら白状した。

「でもさ、そういうふうに青が思ってんなら、俺はしない」

少し照れながら、赤は真面目な顔をしている。

「心配なんだったら、どうにかなっかもしれねえけど、青が嫌だっていうのは、俺じゃどうしようもないからな。青がいい、って言うまで俺は待つし……青が心から安心できるようなやつになれるように頑張るよ」

私は、何を心配していたんだろう。赤がこんなに私のことを思ってくれていたのに、なんで私は彼を信じてあげられなかったんだろう。

頑張らなきゃいけないのは、完全に私の方だった。

あの話だってきっと何かの間違いだったんだ———

「でも、キスならいーよな♪」

がばあ!!

ほっぺに紅葉を作った赤を見て、あの話は本当であることは確信した。


『橙家の父親』



橙父「おう、橙に黄色ちゃん、いたのか」

橙「親父、いたんだ」

黄「お邪魔してます」

橙父「いやあ黄色ちゃん、このバカの彼女になってくれてありがとさん。仲良くやってる?」

橙「ちょ!親父!」

黄「あ、はい。大丈夫ですよー」

橙父「そりゃよかった。ところで…お二人さんはどこまでいったんだ?」

橙・黄「ッ?!!」

橙父「はっはっは、聞くまでもねえか。大学生だしなあ。そりゃあもうwwwwって感じだろ」

橙「おい!クソ親父!!!」

橙父「若いんだから一日二回は当たり前ってかあ?」

黄「///」

橙父「俺が若いころは母さんと一日三回は———」

橙母「黙れそこぉ!!///」

橙「…俺、ああはならないようにするから ///」

黄「うん…///」





『白家の父親』



白父「黒くんか」

黒「お邪魔してます」

白父「白は母さんと一緒に台所か、ちょうどいい。男同士の会話でもしよう」

黒「はい」

白父「白のこと、どう思ってるかね?」

黒「…とても大切な人です」

白父「ほお」

黒「小さい頃から一緒にいて、ずっと俺が守ってやらなくちゃいけないと思ってました。でも、それは間違いだったって気付きました」

白父「………」

黒「白はとても素敵で、強い女性です。俺が彼女に支えてもらうことだってままあるんです。…いや、いつでも支えてもらってる、という方が正しいですね。

  俺たちは互いに支えあうことで互いに高めあうことができるようにこれからも努力していくつもりです。

  …俺からすれば、白はとっくにそういう意味でも最高の相手なんですけど」

白父「………」

黒「おじさん?」

白父「……娘をよろしくお願いします!!」

黒「ええ?!」



白父「ああいうしかないだろう…っ!」

白母「まあまあ、黒くんなら白を幸せにしてくれますって」





『青家の父親』



空「はぁーあ、お姉ちゃんは今頃あっちで赤さんといちゃいちゃしてるのかなー」

青父「何?!青に男がいるのか?!!」

空「…お父さん、何今頃そんなこと言ってるの?高校二年生の頃からいたよ?」

青父「し、知らなかった…青は教えてくれないからなぁ…」

空(当たり前じゃん…)

青父「…で、その男はどんな奴なんだ?」

空「去年のインターハイで準優勝したツワモノです」

青父「な、なんだって…」

空「あと、お姉ちゃん曰く、『とってもカッコよくて、とっても信頼できるの(はぁと)』だそうです」

青父「あのしっかり者の青がそこまで言うなら、信頼できる人物なのだろうか…」

空(それはどうかなー?)


『焦茶と朱色の夏休み』

焦「ふぅ……ここはいい風が来るな」

朱「さっきまでバイク乗って風を散々浴びたじゃんか」

焦「バイクに乗っているとき感じられる風と、この爽やかな風はまた別モノだよ」

朱「あたしにゃよくわからんがね〜」

焦「さて、次は砂浜にでも行くとしようか」

朱「泳がねえぞ。水着も何も持ってきてないし」

焦「それは残念だ」

朱「砂浜か……あっついし、人多いし行きたくねえなあ……よいしょっと」

焦「……嫌だというのに、ついてきてくれるんだな」

朱「……なんとかして満喫しないと、店をわざわざ休みにした群青に悪いだろ。それだけだ」

焦「そうか……君は本当に可愛い奴だな」

朱「だからそういうの気持ち悪いからやめろっつーの」

焦「あと、今から行く砂浜は遊泳禁止だから、人も少ない静かな場所だ」

朱「……あ、そ」

焦「悪くはないだろう?」

朱「……ぎりぎり及第点」

焦「近くにいい居酒屋もあるんだ」

朱「バカ、それを早く言えっつの! ほら、行くぞ!」


『デジカメ その後』

 橙がデジカメをおいてトイレに行ったとさ。

黄「あいつ、最近けっこうデジカメ持ち歩いてるけど、あたしの他はどんな写真撮ってるんだろ? ……見ちゃえ」

黄「えーっと……っ! え、ええっー!!」

橙「あ、勝手に見んなよなー」

黄「け、消して! 今すぐ! そこら辺の写真まとめて!!」

橙「やーだね♪ こんなお宝ショットなかなか撮れねえし」

黄「い、いつの間に撮ったんだよぅ……」

橙「いかにお前が無防備か、よくわかるよなー。この写真なんか……」

黄「うわあああああぁああ!! 見せるなあああああ!!! 消してえええええ!!!」

橙「だーめ♪」


『ブルマ』

赤「ブルマっていいよな〜……」

青「……この場合私はどう対応すればいいの?」

赤「できれば履いてほしい」

青「嫌よ。それにブルマ持ってないし」

赤「だよなあ……今時ブルマなんて」

橙「うちの中学ブルマだったぜ」

赤「な、なんだってー!!」

黄「あれ、嫌だったなあ」

赤「橙……なぜお前ばかりがそんないい目に……」

橙「そ、そんなにうらやましいか……」

赤「当たり前だ!!」

青「赤……」

黒「赤、青も若干引いてるぞ」

赤「ウソぉ!? ブルマは男の夢だぜ!?」

青「あ、あの……っ」

黄「黒、違う違う。青は今引いてるんじゃなくて、『私、そんなに赤がみたいなら、二人っきりのときに見せてあげるワ☆』って言おうと思ってたんだよ!」

橙「……おいおい、それはいくらなんでも……」

青「……」

橙・黒「え、マジ!?」

赤「いやっほおおおおお! サンキュー青!!!」


『橙・黄、PALLETへ行く』

黄「戻ってきちゃったねぇ」

橙「そろそろ学校も始まるし仕方ないべ」

黄「むぅ」

橙「今日さ、行ってみたいとこあるんだけどいい?」

黄「どこ?」

橙「PALLETっていう喫茶店」

黄「へぇー、いいよ。行こ」



 からんからん

橙「……へぇ、けっこうイイカンジだな」

群「いらっしゃいませ。二名様ですか?」

橙「あ、はい」

群「でしたらこちらへどうぞ」

黄「……けっこうカッコイイ店員さんだね」

橙「そうだな、大人な感じだ。……ん、あれ? 焦茶さん?」

焦「……ん? おお、橙君、だったかな」

橙「お久しぶりです。本当に常連なんすね」

群「なんだ焦茶、知り合いか」

焦「前に話しただろう? 私が助けてあげた恋する若者だよ」

黄「……橙、この人が前言ってた優しい変な人?」

群「なかなか的確な表現だ」

焦「うぅむ、何故私はそういう評価ばかり受けるのか……」

群「普段の行動のせいだろう。さて、橙くんと……」

黄「あ、あたし黄色っていいます」

群「黄色ちゃんか。初めてだろうから、うちのオススメのメニューを披露したいんだが、それでいいかな?」

橙「あ、はい」

群「……たぶんもうすぐ君たちと同じくらいの歳のうちの常連が来るから、彼らも紹介する。それまで焦茶とでも話していればいい」

橙・黄「はーい」


『素直』

 赤・浅葱中学時代

男「なぁ赤、浅葱、明日部活休みだろ? 部活のみんなで海行くんだけど一緒に行かない?」

赤「行く行く!」

浅「もちろん」

 当日

赤「……浅葱、なんでお前スク水なの?」

浅「だってオレ、水着持ってねえし。……だいたい、オレが可愛い水着なんか着たって」

赤「似合うと思うけどなぁ。浅葱、可愛いし」

浅「なっ……! お前、何言って……」

赤「思ったこと言っただけなんだけど」

男子一同(それが言えるお前はすげぇよ)

浅「茶化すなっつーの、バ赤!」

赤「けっこうマジなのにー」

浅(……だってオレ、可愛いなんて言われたこと……)

赤「ただもうちょい胸があった方がいいけどなー」

 ばしっ!

浅「蹴るぞテメェ!」

赤「け、蹴ってから言うなよ……」

男子一同(ただ、あそこまで素直に言うのはバカだ)


『PALLET、賑わう』

 からんからん

赤「群青さーん、腹減ったー」

浅「いつものお願いしまーす」

焦「お、来たぞ、うちの常連コンビだ」

橙「へー……って、赤ぁ!?」

赤「あ、橙と黄色じゃん。お前らもここ知ってたんだ」

群「なんだ、知り合いなのか」

赤「友達っす」

焦「世の中も狭いものだな」

浅「そうですねー」

橙「……赤、その子は?」

赤「陸部の浅葱。中学のときの友達」

橙「ふーん……」

黄「赤、あのさ……」

浅「あ、ご心配なく。このバカに彼女さんがいるのは知ってるんで。そういうアレじゃないです」

黄「なんだ」

赤「お前らまさか、浮気してるとでも思ったのかよ」

橙「思った」

黄「うん」

赤「信用ねえなあ俺……」

橙・黄(……まあ、青がいるんだから浮気はないか。こいつに限って)

浅「……」

群「(浅葱の方を見て)……まったく」

朱「なんだか騒がしいな、何事?」

焦「おお朱色。今青春真っ盛りの若者が増えて、賑やかになっているところだ」

朱「おーおー、青臭ぇのがまた増えたのか」

群「赤と浅葱の分の注文も増えたから厨房に戻れ」

朱「うぇー……また仕事増えんのか……」

赤「朱色さん! 俺腹減ったんたんで早めにお願いしまっす!」

朱「うるせぇ! おとなしく待ってろ!」

焦「……ふむ、ここもだいぶ賑やかになりそうだな」


『橙の合コン体験記』

男「今日合コンあんだけど、来るだろ?」

橙「お前な……俺彼女いんだからあんまり誘いにくんなよ。女の子にも悪いだろ」

男「頼むよ! お前がいると女の子たちも喜ぶからさ! 頼む! このとーり!!」

橙「……ったく、今回だけだぞ」

男(よし! 今回も成功だ!!)

 合コン会場

女「ねー橙くーん、アド交換しよ?」

橙「あー……わりぃんだけど、実は俺カノジョいるからさー……ごめんな」

女「別にそれくらいいいし。そんなのこっちにもいるよ」

橙「んー……でも、わりぃ」

女「真面目なんだー、意外。ね、カノジョの写メとか見せてー」

橙「んなの見てどーすんだよ」

女「いーじゃん、見せて」

橙「……ほら」

女「……あれ? なんか、思ったよりフツー!」

橙「……は?」

女「めちゃくちゃ可愛い娘なのかと思ったのに。これならウチラのほーが……」

橙「帰る」

女「え?」

橙「帰る。おい男、急用。先帰るわ」

男「あ、ああ……」

黄「……で、ウチに来たんだ」

橙「当然。あんなのと一緒にいたって時間の無駄」

黄「可愛いとこあるじゃん」

橙「るせ。つーかあんなケバ女よりお前の方が千倍、いや一億倍は可愛いっつーの」

黄「う、嬉しいけど、過大評価じゃないかなぁ……」

橙「んなことない。お前は可愛い」

黄「……酔ってる?」

橙「ちょっと。でも、マジだから」

黄「……バーカ」

橙「バカでもいーよ。黄ぃ、こっち来て」

黄「はいはい」


『青、浅葱と出会う』

赤「な、青、俺が最近けっこう行ってる喫茶店あるんだけど、今日行かない?」

青「喫茶店? いいわよ」

 からんからん

赤「ちわーす!」

青「へえ〜……」

朱「なんだ、お前かよ。隣の子は彼女か?」

赤「朱色さんこんちわー。そうっすよ、青っていうんす。可愛いでしょ」

朱「お前に釣り合わないくらいな」

赤「ひっでぇの……」

青「赤、店員さんと仲いいんだ」

赤「まあね。この人は朱色さんっていうんだ。あと群青さんっていう男の人もいる」

青「へえー」

朱「ま、せーぜーゆっくりしてけ」

赤「ゆっくりしてきまーす」

朱「……あ、浅葱も来てるぞ」

赤「マジすか?」

青「中学が一緒だった陸部の子だっけ?」

赤「ああ。イイやつだから、青にも紹介しとくよ。おーい、浅葱ぃ、いんだろ?」

浅「なんだよバ赤ぁ……、って……その子が赤の彼女さん?」

青「あ、はじめまして」

浅「はじめましてー。あたし浅葱っていいます」

青「私は青です」

赤「……なんでそんなかしこまってんの?」

青「だって初対面なんだし……」

浅「みんながあんたみたいに礼儀知らずなわけじゃないの」

青「そう、これが普通よ」

浅「だいたいあんたはいつも遠慮ってもんを知らないし」

青「場所や時ってものも関係なし」

浅「いつまでも子供じゃないんだから」

青「少しくらいそういうことも考えてよね」

浅「全く」

青「ねー」

赤「……何この一体感」

朱「二人が仲良くなったみたいでよかったじゃんか」

赤「釈然としない……」


『出会いのその後』

浅「……群青さん」

群「どうした?」

浅「青ちゃん、いい子でしたね」

群「……ああ」

浅「バ赤がいつも自慢してる通り、可愛かったですね」

群「そうだな」

浅「……」

群「……」

浅「……」

群「……あまり遅くなると最近は冷えるぞ。早めに帰ったほうがいい」

浅「……そうですね。そうします」

群「……何かを誰かに言いたくなったら、我慢しなくていいんだからな」

浅「ありがとうございます。大丈夫ですよ?」

群「……」

朱「赤も空気読めない奴だ。……それにしても、あの子もめんどくさいねえ」

群「盗み聞きか」

朱「聞こえただけだって。……あーあ、青臭いねぇ」

群「……」


『橙と黄色の平穏な一日』

橙「……ぁあ〜ぁっと」

黄「……えへ、おはよう、橙」

橙「……お前さ、先に起きたからって寝顔見んのやめろよ。朝っぱらからこっ恥ずかしい……」

黄「む、橙前やったじゃん。お返し!」

橙「あーはいはいわかったわかった、俺まだねみぃんだからあんまりでかい声出すなって」

黄「でも今日橙が朝食当番だよ? あたしちょっとおなかすいた」

橙「……ウソ?」

黄「ホント」

橙「俺昨日作んなかったっけ?」

黄「作ってない」

橙「……昼まで寝れば朝飯はいらない」

黄「ダメ! 起きろ!」

橙「チーズトーストと牛乳」

黄「あたしは昨日オムレツにサラダ、コーンポタージュもつけたのに」

橙「……ハムエッグ付き」

黄「まあよしとしよう!」

橙「……つーかコンポタは粉末にお湯掛けただけじゃん」

黄「……バレたか」

黄「あのちーへいせーんー♪ かあがーやくのはー♪」

橙「……」

 シャカシャカ

黄「どこかーにきみーをー♪」

橙「……」

 シャカシャカ

黄「かくしてーいるーかーらー♪」

橙「(ヘッドホンを外して)なんでお前さっきから熱唱してんの?」

黄「いいじゃんジブリ」

橙「確かに俺も好きだけど。歌うことねえだろ、あんな大声で」

黄「じゃあ一緒に聞こ?」

橙「……あーそういうこと」

黄「やっぱり歌いたくなったわけですが」

橙「今カラオケ行ったら、お前絶対アニソンしか歌わないべ?」

黄「アニソン祭り、決行!!」

橙「……りょーかい」

黄「……結局橙のほうが盛り上がってたじゃん」

橙「アニソンは燃えるね」

黄「むう、なんだかアレなのでジブリを借りて帰ります」

橙「えー前も見たじゃんか」

黄「違うの借りるからいーの!」

橙「じゃあナウシカとトトロと魔女宅とたぬきともののけと千と千尋とハウル以外だからな」

黄「……だいぶ限定されちゃうじゃん」

橙「毎回毎回ジブリを借りてくるお前が悪い」

黄「せめてトトロはありで!」

橙「ダメ。今月でもう二回見たぞ?」

黄「だぁって好きなんだもーん。ね、いいでしょ?」

橙「ダメだっつーに」

黄「ね?ね?」

橙「……」

黄「おねがーい!」

橙「……はあ、わかったよ」

黄「わぁい!!」

橙「晩飯は黄色だかんな」

黄「わかってるって。カレー——」

橙「カレー以外」

黄「じゃあハヤシライス」

橙「ほぼ同じじゃねえか」

黄「クリームシチュー」

橙「その形態のものから離れろ」

黄「仕方ないなあ。まあ、今晩はハンバーグの予定ですよ」

橙「お、いいじゃん。おっきいやつがいいな」

黄「任せとけ! おっきなハンバーグをご期待ください♪」

橙「……でかすぎね?」

黄「フライパンがいっぱいになるくらいのを作ってみました。でも、おいしそうでしょ?」

橙「うん。ま、いいか。じゃあ食おうぜ」

黄「ハンバーグは半分ずつだからね!」

橙「はいはい。よし、いただきまーす」

黄「いっただきまーす!」

黄「さあ! ジブリを見よー!! まずはトトロ!!」

橙「今月三回目のな。飽きない?」

黄「全然」

橙「……はぁ、いつかセリフまで覚えちまいそうだ」

黄「えぇ! まだ覚えてないの?!」

橙「覚えてんのかよ!」

黄「続きましてー紅の豚——」

橙「元気だなあ」

黄「これはむしろ男の子のほうが喜びそうなもんだけど」

橙「確かに好きだけど。ぶっ続けで見るもんじゃないっしょ」

黄「あともう一本見るんだよ?」

橙「……明日にしねえ?」

黄「やだ。今日見る」

橙「わがまま」

黄「可愛いもんでしょ?」

橙「自分で言うな、バカ」

橙「終わったぁ〜……なあ、もうちょっとまったりと見たいんだけど」

黄「最後は耳すまだよ!」

橙「人の話を聞け。つーかもう十二時過ぎだぞ?」

黄「前は朝までゲームしたじゃん」

橙「……したけど。俺、寝てていい?」

黄「え〜、一緒に見ようよぉ〜、耳すまだよぉ〜?」

橙「なんだってあんなむず痒い青春を眠い目こすって見なきゃなんねえんだよ」

黄「そういう映画だからこそ橙と一緒に見たいんだよ〜」

橙「……ったく。お前、ずりぃぞ」

黄「何が?」

橙「何でもない。さっさと見るぞ」

黄「は〜い」

黄「う〜ん、やっぱりいいねえ」

橙「甘酸っぺえな」

黄「いいなあいいなあ、あんな青春」

橙「お前ロマンチストだもんな」

黄「……橙に言われたくない」

橙「じゃあ、この自然と俺にもたれかかってるこの姿勢は何よ?」

黄「こ、これはこう……見ててこうしたくなったというか何というか……」

橙「……ま、いいけどよ」

黄「……えへ。このまま、寝ちゃおうかなあ?」

橙「風呂入ってからにしようぜ」

黄「……空気読んでよ」

橙「るせえ、上がってからでいいだろ」

黄「え! あがったらしてくれるの?!」

橙「バっ、そういうことじゃなくてだな……!」

黄「わぁい! 入ってくるねー♪」

橙「……あぁもう! わかったよ!! 覚悟しろよ!!」

黄「えっ!?」


『黒と白の電話な会話』

 プルルルルルル……

黒『もしもし?』

白「こんばんわー♪」

黒『こんばんは。夕食は終わったか?』

白「うん。今日はドリアとカルパッチョを作ったんだよ」

黒『すごいな。誰かに作り方を教わったのか?』

白「うん。料理がすごく上手な子がいてね、けっこう教えてもらってるんだ」

黒『よかったな』

白「うん、今度黒くんにいろいろ作ってあげるからね!」

黒『はは、期待してるよ』

白「ねえ黒くん、そっちは最近寒くない?」

黒『うーん、さすがに朝夕はだいぶ冷えるな。そっちこそ寒いだろう。風邪、ひいたりしてないか?』

白「大丈夫……なはず」

黒『はず?』

白「べ、別にちょっと前まで喉が少し痛かったりしたけど、黒くんに言ったら心配するだろうから言わないなんてことないよ!」

黒『……気をつけろよ。これからだんだん寒くなってくるから』

白「それは黒くんもだよ?」

黒『ああ、わかってる』

白「あ、でも、紅葉が綺麗になってきたよね!」

黒『そうだな。もうすぐこっちは景色がすごく綺麗になるぞ』

白「わあ♪」

黒『白はそういうの好きだからな』

白「ね、絵はがきとか、写真とか送ってくれたら嬉しいな」

黒『……というよりも、白にこっちに来てもらおうかと思ってたんだが』

白「え?」

黒『白がこっちに来ることはなかったからな。紅葉が綺麗な季節だし、一緒に見て回ろうと考えてたんだが……どうかな?』

白「い、行く! 絶対行く!」

黒『はは、だと思った。白の予定もあるだろうし、詳しい日程とかは後にしよう』

白「うん! 楽しみだなぁ〜……」

黒『こっちもいいところだよ』

白「……ね、黒くん、今のうちに言っておくけど」

黒『なんだ?』

白「迎えに来るのは、そっちの駅からでいいからね」

黒『……』

白「やっぱりこっちまで来ようとしてたんでしょ」

黒『……バレたか』

白「もう!」

黒『わかったわかった、そっちまでは行かないよ。こっちで待ってる』

白「えへへ。……ねえ、今日はいい天気だったよ」

黒『こっちも晴れてたな』

白「風が気持ちよかったんだ」

黒『そうか』

白「明日も晴れるといいね」

黒『雨は嫌だからな』

白「じとじとするもんね」

黒『歩いて大学行くと靴の中も濡れるしな』

白「雨の日は寒いし」

黒『そうだな、羽織るものがいる』

白「コートはまだちょっと早いよね」

黒『……白にはそれでもいいのかもしれないけど』

白「あ、また心配してる口調だ」

黒『……最近すぐ気付かれるな』

白「どうだ!」

黒『でも、心配になる俺の気持ちもわかってくれよ?』

白「あ、うん。大丈夫、気をつけるから」

黒『ありがとう』

白「こちらこそ。……あ〜明日も学校だ〜」

黒『そうだな。明日は何時限目からだ?』

白「明日は二限からだよ」

黒『少しゆっくりできるな』

白「えへへ。黒くんは?」

黒『一限』

白「うわぁ、じゃあ今日は早く寝ないと!」

黒『二限からはうらやましいな』

白「でも、黒くんは朝は強いもんね」

黒『白も弱くないだろ?』

白「そうだけど。黒くん遅刻とか絶対しないでしょ」

黒『まあな』

白「すごいよね」

黒『そんなことないだろ』

白「すごいと思うよ」

黒『じゃあそう思っとく』

白「あはは。……明日も、がんばろ」

黒『そうだな。頑張ろう』

白「なんか不思議。黒くんとお話してると眠くなってくるの」

黒『退屈なのか?』

白「そ、そうじゃなくて! ……安心、してるのかな」

黒『俺もだよ』

白「そうなんだ」

黒『ああ。なんだかほっとする』

白「へえ、黒くんもなんだ」

黒『そうだよ』

白「じゃあ私たち、今日はぐっすり眠れるね!」

黒『寝過さないように気をつけないとな』

白「あはは。……じゃあ、また電話するね」

黒『ああ』

白「うん、おやすみなさい、黒くん」

黒『お休み、白』

白「ばいばい」

黒『ああ』

 耳元に感じた愛しい声を抱いて、今日もおやすみ。


『友人たちの悲劇 橙編』

 Aの部屋で飲み会中

A「誰か呼ばねえ?」

B「橙なら来るんじゃねえか?」

A「ああ、あいつなら来るな。呼ぶべ」

橙『悪いけど、今カノジョと一緒にいるからよ……』

A「じゃあカノジョも連れてこいよ」

橙『はぁあ!?……ちょい待って。……なあ黄……だけど……くか? ……ああ、行くから待ってろ。何か欲しいもんある?』

A「つまみとお前が飲みたいやつ買ってくればいいよ」

橙「うーす」

黄「はじめましてー」

A「うおっ! 可愛いじゃん!!」

B「名前、何だっけ?」

黄「あ、黄色です」

A「よろしくー」

B「ちくしょう橙、羨ましいぞ」

橙「だったらさっさとカノジョ作れ。んじゃ、飲むか」

 十分後

黄「あははは」

A「うわー黄色ちゃん超いいコじゃん」

黄「またまたぁ♪ そんなこと言ってぇ♪」

B「マジだって。さすが橙のカノジョだ」

黄「えっへえええ」

橙「……お前ら、そんなそいつを甘やかすなよ」

A「ホントのことなんだからいいだろー」

B「そーだ」

黄「そーだそーだ!!」

橙「黄色……少し入ってきたな……」

黄「大丈夫だよぉ!」

 三十分後

黄「ふぅ……ん……だいだーい……ぎゅう〜」

橙「ほーらこうなった」

黄「でもきもちいいんだよぉ〜えへ〜」

橙「あーもうほら、抱きつくなっつの」

黄「だきしめられるのやなの〜?」

橙「そうじゃねえけど。今はだめだって」

黄「やだぁ〜、はなれないぃ〜」

橙「……ったく、こいつはホントに……。あ、わりぃ、こいつもうこんなんだから俺送ってくわ。せっかく呼んでくれたのに悪いな」

A「……ああ、どうぞどうぞ」

B「お気をつけてー……」

黄「だいだい〜ちゅーしてぇ〜」

橙「だめだって!」

A「……なんで飲んでてこんな気持ちにならなきゃならないんだ」

B「俺、頑張ってカノジョ作ろ……」


『恋愛論』

朱「浅葱もあの馬鹿のどこに惚れたのかねぇ」

焦「人が人を好きになるのに、理由がいるのかい?」

朱「……何? あんた次の論文、恋愛論でも書くの?」

焦「それは面白いな。だが私の専攻は生憎心理学や人間学ではないからな」

朱「……はぁ。あんたに恋愛語られちゃおしまいよ……」

焦「ふむ。では、なぜ君は私のもとにいてくれるのか、明確な理由を言えるかい?」

朱「……なんででしょーねー」

焦「まあ、私はそばにいてくれるのであれば理由などなくてもかまわないよ」

朱「バーカ」


『おはよう』

 最近の朝はとても冷える。布団から出るのもめんどくさくなる。1コマからの授業の存在が本気でうざったい。……サボろうかな。

「だーいだい♪」

 朝っぱらからの明るい声の主は間違いなくあいつだろ。

「うっせーよ……」

 寝起きがそんなによくねえ俺は低い声で応える。

「朝だよー!」

 あいつの声は止まらない。薄く開いた目にあいつの顔が入ってくる。予想通りでいつも通りな笑顔がそこにある。

「おはよ、橙!」

 ……ったくさ、こっちの身にもなってほしい。俺は朝に弱いけど……こいつの声にはもっと弱いんだ。

「ん゛ー……」

 今日も大好きな声が俺を呼ぶから。そりゃ、朝だろうが起きてやるさ。

「ああ、おはよう」


『大事』

赤「あ、青」

青「赤。偶然ね、何してたの?」

赤「普通に部活帰り。いやぁ連絡してもいないのに会えるなんて、運命を感じますなぁ」

青「な、何言ってるのよ……って赤、そのマフラー……」

赤「おう! 高校んとき青からもらったやつだぜ!」

青「まだ使ってたの? もうボロボロなのに……」

赤「何言ってんだよ。言っただろ、『一生大事にする』って」

青「赤……」

赤「へへ。な、せっかく会えたんだし、どっか飯食いに行こうぜ」

青「うん……赤、でもやっぱりマフラーは変えよ?」

赤「は?」

青「新しいの、編んでくるから!!」


『何度も』

橙「さみーなー」

黄「さっむいよねー」

橙「……」

黄「……ふふ」

橙「どうした?」

黄「あたしたちさー、この会話何回したんだろーね」

橙「今日?」

黄「んーん、ずっと」

橙「そりゃあ……千回以上とか」

黄「まじすか」

橙「そんくらいいってそうだけどな」

黄「かもねー」

橙「どうしたよ急に」

黄「んー……冬だから?」

橙「わけわかんねえ」

黄「あたしらしいっしょ?」

橙「そりゃそーだけど」

黄「あ、肉まん買って帰ろ!」

橙「話に脈絡がねーぞ」

黄「あたしらしいっしょ?」

橙「はいはい。あ、おでんもついでに買おうぜ」

黄「橙もあたしのこと言えないじゃん」

橙「お前のカレシだし」

黄「あーじゃあしょうがないね」

橙「だろ。……あー、さみーなー」

黄「さっむいよねー」

pencil_1686.jpg

『扱い方』

浅「あけましておめでとうございます」

朱「浅葱かー」

浅「あれ?今日は群青さんと焦茶さんはいないんですか?」

朱「なんで焦茶の野郎もここにいるのが普通みたいな言い方なんだ」

浅「だってそうじゃないですかー」

朱「……まったく。あいつのことは置いといて。群青は今日はオンナに呼び出されてた」

浅「群青さんって彼女いたんですか?」

朱「よくわかんないけどね」

浅「ですよねー、群青さん、かっこいいですもん」

朱「そうかねえ」

浅「そうですよ。きっと彼女さんも素敵な人だと思います。いいなぁ、みんな幸せで」

朱「……あんたさ、自分の恋愛はどうなんだ?」

浅「……え?」

朱「だってそうじゃないか。悪いけど、あんたの赤への恋は終わってるようなもんだろ? 直接フラれてこそいないけど……あんなに惚気てばっかのやつへの思いが届くわけないってわかっちまうだろ?」

浅「……」

朱「しかもあんたは人から奪えるような性格でもないし、そのために動いてるようにも見えない。だからいい加減——」

浅「わかってるんです」

朱「……ほぉ」

浅「たぶん報われないことも、絶対実らないだろうってことも……でもダメなんです」

朱「……」

浅「消えて、くれないんですよね。あたし、これが初恋なんです。これ以外の想いを知らないんです。それに、この想いの扱い方も……どうしたら忘れられるのかとか、こんなに大切な想いをなかったことにできるのかとか……」

朱「あんた……」

浅「だから、いいんです。あいつの惚気を何度聞くことになったって。もし、それを聞いてあたしが傷ついて……それを繰り返してくうちにいつか忘れられるんなら、それでいいんです」

朱「……ごめん、余計なこと言ったね」

浅「大丈夫ですよ……自分で、決めたんですから」

朱「なんか……あんたやっぱり、めんどくさいね」

浅「……わかってます」


『とあるハンバーガーショップの一日』

 朝

黄「ん〜! いい朝ですねぇ〜」

橙「そりゃあ睡眠をお取りになられた黄色サンにとっちゃあいい朝だろうよ」

黄「む〜まだ言うし〜」

橙「だってお前がいきなりカラオケ行きたいっつーから11時過ぎにフリータイムで入れたのに2時に誰かさんは寝るんですもの」

黄「橙だって寝ればよかったのに」

橙「半端にテンション上がってて寝れなかったし。寝れそうになった頃にお前起きるし」

黄「黄色チャンの寝顔がじっくり見れたんだからプラマイゼロってことで!」

橙「バーカ……少しマイナスぐらいだ」

黄「でも見たんじゃん」

橙「るせ。その分でマフィン一口よこせ」

黄「あ、こら!勝手に食べるなぁ! ……じゃああたしも橙の一口貰う!」

橙「それじゃ俺がマイナス分取り返したことになんねえだろ! もう一口よこせ!」

黄「また食べるしー!」

店員(朝っぱらから……)

 昼

白「わぁ、何か久し振り」

黒「あんまり来ないからな」

白「ねえ黒くん、私ね、一回あのおっきなハンバーガー食べてみたかったんだ」

黒「あれはだいぶ大きいぞ?」

白「食べてみたいな〜」

黒「……食べきれるのか?」

白「うぅ〜……そうだ! 黒くん、半分こしよ?」

黒「仕方ないな、いいよ。一緒に食べよう」

白「わーい♪ でも最初の一口は私からね!」

黒「はいはい。あ、飲み物も頼んでおきな」

白「はーい」

店員(なんか親子みたいなカップルだな……でもバカップルだ……)

 夕方

青「私そんなにお腹空いてないんだけどなー」

赤「俺が空いたんだもん。腹が減っては戦はできぬってね」

青「戦じゃないでしょ?」

赤「何言ってんだ! 青と一緒に楽しい時間を過ごせるかどうかは戦いだ! でっどおああらいぶの勝負なのだ!」

青「はいはい、それで、何を頼むの?」

赤「セットにすべきか、単品を二つ頼むべきか……」

青「け、けっこうしっかり頼むつもりなのね……じゃあ私もフルーリー頼もうかな」

赤「あ、それ俺も食べたい! あーんね、あーん」

青「ば、バカじゃないの?」

店員「……ご注文は以上ですか?」

青「ふ、フルーリーは二つで!」

赤「えーやだー! 一個であーんで食う!」

青「だ、だからあ……」

店員「……どちらになさいますか?」

赤「一個! 一個!」

青「う、うぅ……じゃ、じゃあ……一個で……」

赤「いやっほーぅ!!」

店員「かしこまりましたー……はぁ」


『いちゃいちゃ☆あにばーさりー』

黄「ケーキ、美味しかったね♪」

橙「お前の本気を見たよ。マジ美味かった」

黄「はっはっは、褒め称えたまえ」

橙「すげーすげー。黄色はよく頑張ったよ(くしゃ)」

黄「むぅ。えへへ」

橙「嬉しそうだな」

黄「嬉しいっすよー。もっと撫でてくれてもいいよぅ」

橙「ほらよ(くしゃくしゃ)」

黄「へへ。頑張った甲斐があったってもんだね」

橙「単純なやつ」

黄「それで幸せになれるんだからいいじゃんか」

橙「そりゃそうだ……ホント、可愛い奴だよ、お前は」

黄「て、照れるじゃん。いきなりそういうこと言わないでよぉ」

橙「しゃーねーじゃん、そう思ったんだし」

黄「……もう……じゃあさ、ごほーび、ちょうだい?」

橙「ごほーび?」

黄「うん……んー(目を瞑る)」

橙「あー、そういうこと」

 頬にキス

黄「……違くない?」

橙「違うの?」

黄「違うよ! もう一回!」

橙「はいはい」

 おでこにキス

黄「……だからぁ!!」

橙「わかってますって(ニヤニヤ)」

 耳にキス

黄「もー!! 意地悪しないでよぉ!!」

橙「じゃあココ?」

 まぶたにキス

黄「違うぅ!! く、唇に……」

橙「ケーキ作りを頑張ってくれた手にもごほーびあげないとなー」

 手の甲にキス

黄「う、嬉しいけど! でもそこじゃないんだってばぁ!」

橙「んー」

 髪にキス

黄「だ、橙ぃ!!」

橙「はーい?」

 首筋にキス

黄「う、うぅぅ……」

橙「どーしたぁ?(ニヤニヤ)」

 鎖骨にキス

黄「もぅやだぁ……」

橙「えー?」

 うなじにキス

橙「はい、ごほーび終わり♪」

黄「え!?」

橙「いっぱいキスしたっしょ?」

黄「違うもん! あたしは唇にキスしてほしかったのに!!」

橙「えー、でももういいじゃん?(ニヤニヤ)」

黄「うぅう……記念日なのにぃ……唇にいっぱいキスしてよぉ……」

橙「……いやー、もう無理。我慢できね」

 ちゅ♪

黄「!?」

橙「あんまり黄色が可愛いからさ、つい……好きだよ、黄色」

黄「……橙のバカ。いっぱいごほーびもらうんだからね」

橙「いくらでもあげますとも」

 さぁ、大好きな人とキスをしよう。


『ツンデレ?』

橙「青ってさ、ツンデレじゃん」

赤「まあ、そうだな」

橙「ツンデレっつーと『べ、別にあんたのためにやったわけじゃないんだからねッ!』みたいな台詞を言うわけじゃん」

赤「何、今の気持ち悪い裏声」

橙「うるせえし。で、そんなイメージなんだが」

赤「うーん、間違ってはないかな?」

橙「でもお前ら、もう付き合って2年じゃん。さすがにそんなやり取りは出尽くしただろ?」

赤「かもなあ」

橙「じゃあもうふつーにデレデレなのか?」

赤「……二人っきりのときは」

橙「ほう」

赤「お前らとか、他の人がいる前でイチャつこうとすると恥ずかしがるっつーか、嫌がる」

橙「そらそうだろ」

赤「でも家に帰ると『さっきはごめんね……だって恥ずかしかったし……』みたいな感じになるわけですよ」

橙「それは興味深いっすね」

赤「つまり『人前だとツンツン、二人っきりだとデレデレ』になったわけだ」

橙「……ということで」

黄「いうことで?」

橙「ここに赤の部屋の鍵があります」

黄「ほほう」

橙「青が全力でデレてるとこ、興味ない?」

黄「あります。ぜひ見てみたいっす」

橙「よろしい。じゃあ、行くか(きゅぴーん♪)」

黄「いえっさ!(きゅぴーん♪)」

青「赤ぁ〜(つんつん)」

赤「どした?」

青「……何でもないけど」

赤「なんだよ」

青「いいじゃない」

赤「いいけどさ」

青「……(ぴと)」

赤「青?」

青「ふふ、赤の手、あったかいよね♪」

赤「そうかぁ?」

青「あったかいのは手だけじゃないけどね(ぎゅ)」

橙・黄「……(絶句)」

赤「うおっ! お前ら何してんだよ!?」

青「えっ? えっ!?」

橙「お、お邪魔してます……」

黄「……してます」

青「み、み、み、見てた……?」

橙「……」

黄「……あははは」

赤「あっちゃぁ〜……」

橙「ま、まあ、いいと思うよ?」

黄「う、うん……」

青「ち、違うの! さっきのは見間違い! 勘違い!! 私は別にいつもあんなことをしてるわけじゃ……ッ!!」

橙「……なんかごめんな」

黄「邪魔、しちゃったね……」

青「ああもう! 違うのぉぉぉぉ!!!」


『日常の一コマ』

青「……」

赤「だからぁ、謝ってんじゃん!機嫌直してくれよぉ!」

橙「何?ケンカ?赤がまたやらかしたのか?」

黄「ううん、なんかさっきゲームやっててね……」

橙「青が負けて拗ねてんのか?」

黄「赤がわざと負けたのが気に入らないんだって」

赤「そーしねえと青勝てないじゃんかよぉ!」

青「……(つーん)」

橙「い、意地っ張りなやつ……」

 

橙「お、このケーキ旨そう」

橙(黄色に買っていってやったら喜ぶかな?)

橙「すみませーん、このケーキ下さい」

橙「……なんでお前も同じケーキを買ってくるんだよ」

黄「このケーキなら、橙も喜ぶかなぁって思って……」

橙「……で、どうする? このケーキ2ホール……」

黄「食べきれないよね……」

 

黒「白、準備はできたか?」

白「大丈夫だよ!」

黒「そうか。……わ——」

白「『忘れ物はないか?』」

黒「……む」

白「あたりでしょ? 大丈夫だよ♪」

黒「予想されてしまったな。大丈夫ならいいんだ。……の——」

白「『飲み物は持ってるか?』」

黒「……」

白「えっへへえ。水筒を用意してますよ♪」

黒「……もう何も言わないことにするよ。じゃ——」

白「『じゃあ白、行こうか』でしょ?」

黒「……」

白「うん、行こ、黒くん♪」

黒「何か釈然としない……」


『傍目には』

橙「ただいまー」

黄「お久しぶりです」

橙母「あ、橙に黄色ちゃん。今帰ってきたんだ」

橙「思ったより電車が混んでなくて助かったよ。黄色んちのおばさんとかが今ちょっと出かけてるみたいだから、こいつ上げさせてやって」

黄「お邪魔しまーす」

橙母「どうぞどうぞ。邪魔なのが一人いるけど気にしないでね♪」

橙父「誰が邪魔だってぇ?」

黄「あはははは」

橙父「二人もすっかり大学生って感じだな」

橙「もう2年だしな。慣れるって」

橙母「黄色ちゃんは今も橙と仲良くしてくれてるみたいだしね」

黄「それは、まあ、えへへへへへ 」

橙母「若いっていいわねえ」

橙父「というかアレだな、もはやもう黄色ちゃんがうちの娘って感じもするな!!」

橙「ぶっッ!!(お茶を吹く)」

黄「そ、それは……」

橙父「あっはっはっはっは!いいねえそういう反応!!」

橙「こんのクソ親父!黄色もそんな真に受けて素直に顔赤くすんな!!」

黄「だ、だってぇ……」

橙母「こらぁ、黄色ちゃんの責めるんじゃないの!」

橙「ったく……」

橙父「……とは言ったものの」

橙母「……(チラ)」

黄「あーこういうクッション欲しいかもー」

橙「今度買いに行くか?」

黄「うーん、でもカーテンも変えたいんだよねえ……」

橙「模様替えしたいって言ってたもんな」

黄「手伝ってね?」

橙「えー」

黄「むー……」

橙「ウソウソ、手伝うからそんな顔すんなって」

黄「ありがと!あ、あとね、スピーカー新しいやつにしたいんだ」

橙「お前のやつ高校から使ってるしな。選んでやるよ、一緒に行こうぜ」

黄「うん!」

橙父「アレを見てるとあながち冗談でもないんだがな……」

橙母「娘ができるのもあんまり遠くはないかもよ?」


『増殖』

 大学1年生GW明け

友1「あ、リラックマや」

友2「黒ってそんなストラップつけるんだ」

黒「まぁな」

 大学1年生夏休み明け

友1「増えとる……」

友2「す、ス〇ィッチ……だと……」

黒「いいだろ、別に」

 大学2年生GW明け

友1「また増えとるかな?」

友2「アレ、彼女の趣味でつけてるんだろ?」

友1「だろうね」

友2「お、黒だ」

 もでーん。

友1「……もう驚かんわ」

友2「でもやたらデカイな、そのカピバラさん」

黒「……ここを引っ張ると、動く」

 ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる……

友1・2「……」

黒「……どうだ?」

友1「なんで嬉しそうやねんっ!!」

友2「止めろー!! お前はそんなキャラじゃないはずだぁー!!!」

白『黒くん、これ一緒につけよ?』







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 12:18:21