メリークリスマス!

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今日はクリスマス。その日はとても寒かった。普段降らない雪が降るくらい寒かった。

みんなは外にでて雪を楽しんでたけど、あたしは行かなかった。

冬は嫌い。理由は、寒いから。ただそれだけ。

「はぁ……こんな寒い日によくあんなに遊べるなぁ……」

紫の口からは溜め息と一緒に、そんな言葉も洩れていた。

「お〜い、紫〜!こっち来なよ〜!」

赤はホントに元気ね。見てるこっちまで元気になっちゃうよ。

……色無も楽しそうに遊んじゃってるし。

色無はみんなと仲が良い。それはあたしにとってはあんまり嬉しくない事だけど……

「ん、どうした紫?みんなと一緒に遊ばないのか?」

朱色さんだ。群青さん、黄緑さんと一緒に寮のクリスマスパーティーの準備をしてくれてる。

「……そんな気分じゃないもん」

あの輪の中に入っても、色無はきっとあたしの事なんか見てくれないだろうし。

「そっか。じゃあさ、暇ならおつかい頼まれてくんない?」

「え?」

「お店にケーキ頼んでたんだけどあたしらは行く暇なさそうだからさ。頼んだよ!」

なんか勝手に行くような雰囲気になってるし……

「とは言ってもねぇ……一人じゃ可哀想だし、荷物持ちに色無でも連れてかせるか」

「!! ……あ、あたし行ってくる!」

「お、ありがと!助かるよ。……お〜い、色無〜!」

まさかクリスマスに色無と二人きりになれるなんて……

「—と、言う訳だから色無も行ってくれ」

「え〜、めんどk「あんただけパーティー出られなくてもいいのかな?(パキッパキッ)」

「い、行ってきます!ほら、紫行くぞ!」

「え?あ、ちょっと待ってよ色無!」

玄関に積もった雪で滑りそうになりながら、あたしは必死で色無の後を追った。

そんなこんなで、ケーキ屋さんに向かった。

さすがはクリスマス。街は男女の二人組みがいつにも増して目についた。

でも、傍から見ればあたしと色無も……そう、見えるのかな。

「街中カップルだらけだな……」

「! う、うん」

突然の心を見られているような言葉に思わず赤面してしまう。

「どした?顔赤いぞ?」

「な、なんでもないっ!」

顔を覗き込まれて益々赤くなる。

ど、どうしよう。一人で舞い上がってる……

「着いたぞ」

「え?……あ、うん」

た、助かった……?

二人で並んで自動ドアの前に立つと、ドアが開くとともに元気な声が聞こえてきた。

『いらっしゃいませー』

その店は街の通りに面している小さな店だったが、さすがに今日は人手が足りないのか、バイトと見られるサンタクロースの格好のお姉さんが……って!あれは橙?!

「あら?色無……と紫?!」

「オ、橙?!何やってんだよお前?」

ビックリした。朝から見ないと思ったらこんなとこに居たんだ……

「何って、バイトよバイト。どう?なかなか似合ってるでしょ?」

「ん〜……まぁ、悪くはないな」

「ちょっと、何よそれ!もうちょっと褒めなさい!」

「あはは、冗談だよ。似合ってるって」

「ふふ、ありがと」

橙はやっぱりキレイだしスタイルも良いし、似合ってるなぁ。あたしはあんなの着れないよ。

……でも、アレ着たら色無喜んでくれるかな?それだったら着てみたいかも……。

「ところで……そういうお二人さんこそ何やってるのかしらねぇ〜(ニヤリ)」

明らかにからかう気満々の橙の質問。

あたしはちょっとデート気分なんだけどな……

色無はどう答えてくれるんだろ?

「お、俺達はただおつかい頼まれただけだ!紫が頼まれたんだけど朱色さんに荷物持ちに任命されちゃったから仕方なく……」

仕方……なく……?

その色無の何気ない一言に、あたしは何故か……

「—っ!」

「?! お、おいっ!紫!どこ行くっ」

気がつくとあたしは店から飛び出してた。

よく考えてみればその通りだった。あたしがおつかいに頼まれたの。

朱色さんが色無を荷物持ちに一緒に来させたから、色無は「仕方なく」きたんだよね……。

あたしが勝手に思い込んで、一人で浮かれて、勝手に勘違いしてただけだった。

向こうからしてみれば、きっとあたしの行動は何がなんだか分からない。

……もう、色無に合わせる顔がないよ。

寮にも、今日は戻れない。戻りたくない。

でもこんな寒いのに明日まで外にいるなんて無理だし……。

「—どうすれば……いいのかな……」

一人であてもなく街をさまよってるうちに、寂しくなってきた。

傘……ケーキ屋さんに置いてきちゃった。

雪が頭に、服に降り積もる。

その冷たさは体まで伝わってくる。

手が、耳が、足が冷たい……寒い……。

今頃みんなは暖かい寮の中で楽しくパーティーしてるのかな?

そう思ったら急に寒さと寂しさが増してきて、あたしの目からは涙が流れていた。

「……グスッ……みんな……寒いよ………………色無ぃ……」

「—呼んだ?」

色無?そんなのあり得ない。あたしなんか探すはずないもん。

最初は聞き間違えだと思って、無視した。

心の中ではきっと分かってたけど、なんか分かりたくなかった。

「紫、やっと見つけた」

二言目のその声を聞き、分かりたくなかったあたしの心はどこかに消えていった。

「……色……なし……?」

色無はあたしの頭とか肩に積もった雪を手で払ってくれた。

そして、傘の中にあたしを入れて……

「探したぞ。……さ、帰ろ!みんな待ってるぞ」

暖かかった。ホントにその言葉の一語一語が暖かかった。

色無に抱きついて、泣き崩れたかった。

寂しかった、寒かった……って。

でも、あたしは素直になれなかった。

「……別に、探してなんて……頼んでない」

こんな時まで憎まれ口叩かなくていいのに……

でも、それは色無が相手だから言える。きっと色無は分かってくれてるから。

「はいはい、悪かったな。じゃ、帰ろうぜ!」

「……うん。……あ、その……ありがとぅ。///」

軽く流してくれた。

いつものあたしならここで間違いなく怒る。でも、今日はほんのちょっとだけ、短い単語だけだけど、思ってる事を素直に言えた。

帰り道、突然色無が話しかけてきた。

「—なぁ、紫。お前、冬好きか?」

質問の意味が一瞬理解できなかった。

なんでそんなことを聞くの?でも、冬は……

「……寒いから嫌い」

あたしの性格はこんなところだけ無駄に素直でホントに困っちゃう。

「そっか。俺は寒いから好きだけどなぁ」

「……??」

今度は言ってる事が理解できなかった。

けど、色無はそんな事お構い無しに続ける。

「例えばね、寒いからこんな事もできるんだ」

突然色無はあたしの左手を掴んで、色無の来ているコートの右のポケットに入れて握りしめた。

「!! なっ、なにやって……///」

「ひゃー、紫の手は冷たいな」

「や、やめ……」

そこまで言いかかって口を閉じた。

暖かい……色無の手、ホントに暖かい……

色無の体温だけじゃなくって……なんか、他にも暖かい。

「やめ……?続き言わないならこのままにしとくぞ」

そういって色無は更にギュッと手を握った。

心地良い力加減に、あたしはもう反論する気はまったくなくなっていた。

「どう?暑い夏にこんな事できないだろ?」

「……。///」

何も言い返せずに、ただ赤面してしまう。

気のせいか体の中まで暖かくなってきた。

「なぁ……なんか俺たち、カップルみたいだな」

「!!」

コイツはいつも鈍感なくせに、こんな時だけは鋭いと言うかなんと言うか……

今あたしが一番言って欲しい言葉を突然言うんだもん。

「そう……見えるかな……?///」

「あぁ、間違いなく。……まったく、今日は折角紫とゆっくりデート出来ると思っておつかい頼まれたんだけどな……」

えっ?どういう意味?

気のせいか色無の顔がちょっと赤い気がする。

聞いてみたい。それはどういう意味なの?

とりあえずキョトンとした顔で色無のほうを向いてみる。

ホントは分かってるけど、分かってない振り。

「はぁ……理解してくれてんのか、くれてないのか……」

「……どういうこと?」

分かってるよ!でも……うそじゃないよね?

自分でもだんだん顔が熱くなっていくのが分かった。

「紫のことが好きだってこと。そんで、これからは恋人同士の関係になりたいって事」

「……え?……っえぇ!!そ、それって……。///」

一片の迷いもない色無の言葉に、あたしは戸惑った。

ホントに、色無だよね?この人。

あたしの好きな色無だよね?

「ダメ……か?」

「そ、そんなことないっ!」

「そっか、良かった。……じゃあ、これから宜しくな?紫。///」

宜しく?……ってことは、えぇ?!

どうやら間違いはなさそうだ。

頭の中が混乱しつつも、あたしは精一杯の返事をした。

「あ、あたしも色無のこと好きだったの!ずっと……ずっと。……こ、こんなあたしだけど……良ければ宜しく……ね。///」

自分でも何言ってるか分からなかったけど、こんな言葉しかでなかった。

ホントはもっと言いたいこともあるはずなのに……

でも、何故だかこれ以上の言葉はいらない気がした。

色無と繋がった手から、想いがみんな伝わってくれたような気がして……

それからはなんだか恥ずかしくって話もできず、お互い無言であっという間にあたしたちは寮に着いた。

—ガチャッ

「ただいま〜!遅くなってごm

「ケーキきた〜!!」「おかえり〜!」「遅いぞ!」「何してたんだかねぇ〜(ニヤニヤ)」「腹減ったよぅ……」

リビングのほうからみんなの声がする。

みんながあたしと色無の帰りを待っててくれた。

暖かい……。何だろう……この暖かさは。

いつもよりみんなが……この空間が暖かい。

隣にはいつもと変わらない色無がいる。

いつもと変わらないみんなの声もする。

でも、今日はなんだか違う。

あたしだけしか分からないんだろうけど……

そんなことを思っていると、朱色さんが玄関まで出迎えてくれた。

「お帰り、遅かったな。……ん?その手はなんだ、色無?」

手……?あ、ポケットで繋いだまま……///

咄嗟に二人とも手を離した。

「!! こ、これは……紫の手が冷たかったから暖めてあげたんです!///」

「ふ〜ん……。ま、上手くやれよ。(ニヤリ)」

朱色さんはお見通しみたいだね。

「「……///」」

二人で赤面してしまう。

そして朱色さんがあたしに近付いて耳元でささやいた。

「良かったな。この次の段階からはもう手は貸せないから自力で頑張りなよ」

「っ!///」

結局、最初から全部この人のおかげだったみたい……。

—この日からあたしは冬が好きになった。

冬の寒さも、雪も、クリスマスも。

みんなと騒ぐのも良いけど……来年は、色無と二人で過ごせたらいいなぁ。


無「寒い……」

黒「最近冷え込んできたからね」

無「独り身にはつらい季節だな……」

黒「色無でも独り身ってことを気にするんだ」

無「一応な」

黒「……そういえば今年のクリスマスはなにか予定ある?」

無「ぜんぜん。今年も一人寂しく家ですごすと思う」

黒「そうか……学校のだれかと一緒にいるものかと思った」

無「俺はそんな人気者じゃないよ」



黒「なら、今年のクリスマスはどこか一緒にいかない?」

無「ん?いいけど、まだ随分先の話だな」

黒「こういうのは早いもの勝ちっていってね」

無「俺のクリスマスなんてそんな争って奪うようなものでもない気がするんだがなぁ」

黒「ともかく、今年のクリスマスは私と一緒にいるの!!わかった?」

無「わかったわかった。クリスマスの予定ぐらいでそんなにテンションをあげなくても」

黒「色無と話すときじゃないとここまで必死にならないわ。他の人には負けたくないしね」


赤「さて、クリスマスが近付いてきましたね」

青「ええ、そうね。まだ先の話だけど」

赤「今年は私がなにかもらう番だね」

青「断る」

赤「なんでさぁ」

青「去年のクリスマスで赤がなにをしたと覚えてる?」

赤「なにかしたっけ?」

青「サンタのコスプレをしたじゃない」

赤「ああ、そういえば」

青「それでねサンタのコスプレはいいのよ。ただね、サンタの格好してなんで顔にジェイソンマスクをかぶってたの?」

赤「そりゃ顔がみられたら夢がぶち壊しじゃない」

青「世界のどこにサンタの赤い服を着たジェイソンがいるのよ!!あれをみた空はショックで寝込んだのよ!!」

赤「じゃあ今年は般若のお面で……」

青「ふざけるな!!」

赤「ちっ……」


男「ぐー……ぐー……」

どさどさっ        ぼとん

紫「っ〜〜!!い……いった〜い……」

男「……ん?なんだ猫か?」

紫「……やば」

男「……人影……泥棒!?誰だっ!!警察呼……」

パチ

紫「あ」

男「……」

紫「……」

男「子供……?」

紫「ちっちゃいゆーな!」

男「!!」

紫「あ」

男「あの……どちらさまですか?なんで家にいるんですか?」

紫「……サンタです」

男「……サンタ?」

紫「煙突で足すべらしちゃって……腰が痛い」

男「いや……その……?」

紫「うぅ……地味に痛い……」

男「……うちの暖炉は見せかけで、煙突はないはずだけど……」

紫「え……」

男「……」

紫「……グス」

男「えっと……コーヒ……いや甘いココアでもどう?」

紫「ちっちゃいゆーなぁ……」


赤「よし準備完了!!」

白「赤、寒くないの?そのミニスカサンタの衣装……」

赤「全然!!白こそそんな丈の長い衣装で歩きにくくない?」

白「すごく、暖かいです」

茶「寒いよ……くちゅん!」

赤「茶色、トナカイの衣装似合ってるねー!」

白「鼻のかみすぎですでに鼻が真っ赤だね……じゃあこれはいらないか」

赤「さて、じゃあ行きますか!」

白・茶「おー」

無「お前等そんな格好でどこ行くんだ?」

白「私のお世話になった病院の小児病棟に」

空「サンタさん、はやくこないかなー」

青「ばかねーサンタさんなんているわけないでしょー」

空「いるもん!サンタさんはいるんだもん!」

青「はいはい」

空「ぐす……サンタさんはいるもん……」

赤「さてと……着いたはいいけど……どうやって入ろうか」

白「普通に入ればいいんじゃない?」

赤「今時、普通に入ってくるサンタなんていないよ!」

茶「でも屋根に登る必要は無かったよね……」

白「確かに……」

赤「じゃあ降りようか」

茶「ここから……?」

赤「大丈夫だって雪積もってるし死にはしないよ!」

茶「ちょ、ちょっと押さないでよ!アッー!」

ボスッ

白「茶色!!」

赤「あっ!白待って!!」

空「おそとでなんかおとがしたよー?」

青「きのせいでしょ」

空「みてくるー!」

青「あ!あぶないからだめだって!」

空「!?」

青「なにこれ……?」

空「トナカイさん?……わっ!!」

赤「茶色!」

白「全然動かないよ……」

赤「とりあえず引っこ抜こう!」

赤「良かった生きてる……」

青「あんたたちだれなの!」

赤「ん?」

白「さ、サンタでーす☆」

空「……」

赤「あははは……」

空「……いたんだ」

茶「?」

空「おねえちゃんサンタはほんとにいたよ!」

青「……トナカイ人間じゃん」

茶「えーと……その……」

白「トナカイは人の姿にもなれるんだよ」

青「……ほんとに?」

茶「はい……」

青「でもサンタさんはおじいさんなんじゃ……」

赤「うっ……(いちいち鋭いツッコミをどっかの女にそっくりだ……」

青「はっくしゅーん!」

空「風邪?」

青「……違うわ、あの馬鹿が私の悪口言ってるに違いない……」

白「私たちはサンタ見習いなんだよ」

赤(ナイスフォロー!!)

青「ほんとに?」

赤「そうだよ」

青「じゃあ!魔法も使えるんだよね!」

白「魔法……?」

青「わたしのよんだほんにかいてあったの!」

赤(なんてもん読んでんだよ……でもやるしかない)

茶「寒いよ……くしゅん!」

ゴチン

茶「ふぇー痛いよ……なんでこんな所に木があるの!もう!」

どしーん

茶「え?」

赤「よーく見てなよ……(奇跡よ起これ!!」

ドサドサ

白「え?」

青「すごい……いっしゅんで雪だるまができた……」

赤「ま、まぁね!サンタだからね!(奇跡起こったぁ!!助かったぁ!!」

青「サンタさんはほんとにいたんだね!」

こうして私たちのクリスマスは成功した

赤「茶色どこに行ったんだろ?」

白「先に帰ったのかな?」

茶「お姉ちゃん……雪の中……すごく……暖かいです」


紫「じゃーん!」

無「自分にリボン巻いて、なんのつもりだ?」

紫「あたしがプ・レ・ゼ・ン・ト♪」

無「お前にはまだそれは早ぇよ」

紫「ち、ちっちゃいゆーなぁ!……ぅう……ぐすっ……」

無「よしよし。その気持ちだけ貰っといてやるよ。ありがとな(なでなで)」

紫「えへへ……どういたしまして!」


あみあみぁみぁみ……

黄緑「あら?どうしたの青ちゃん?」

青「あ、黄緑さん。今マフラーを編んでいたのですが、なかなか上手くいかなくて……」

黄緑「それじゃあマフラーじゃなくてタオルケットよ……」

青「……黄緑さん!一生のお願いです!マフラーの編み方教えてください!」

黄緑「あらあら、もう少し細くてもいいのよ?あとここをもうすこしこうすれば……」

青「黄緑さんありがとうございます!」

黄緑「色無君にプレゼントするんでしょ?がんばってね」

青「なっ!!! べ、べつに違いますよ!これは自分で使うんですよ!!!」

黄緑「じゃあなんで“色無LOVE”なんて刺繍がされてるのでしょうねぇ」

青「!!」

黄緑「あらあら照れちゃって……うふふ」


本屋にて

緑「色無君へのプレゼント、どんな本がいいかしらね。日本文学……小説もいいわね……学問系は色無君には少し難しいかしら。う〜ん……なかなかいい本が決まらないわ。……あら?あれは色無君。何を立ち読みしているのかしら」

無(今週のFLASH結構凄いな……おぉっ!この人とうとう脱いだのか!!うーん、エロイ……)

緑「色無君。君が本屋に来るなんて珍しいわね。何読んでるの?」

無「!?!?!?!?みっ、緑!あ、あぁなんでもない!なんでもないよ!!」

緑「怪しいわね……見せなさいっ!」サッ!

無「アッー!!」

緑「……」

無「……ど……どぉ?」

緑「!!!どぉ? じゃないわよバカーっ!!!変態!変態!変態ーっ!!!」

ビターン!!!

無「オツゥフッ!!!」

緑「色無君なんてもう知らないっ!!バカっ!」

無「な、なんでこうなるの……」


駅前のデパートにて〜

橙「アイツへのプレゼントは〜なににしよっかなぁ〜っと。♪」

桃「あれオレンジちゃ〜ん。どうしたの?」

橙「お、桃ちん!いまねぇ、色無にクリスマスプレゼント選んでるところ」

桃「え〜、何〜? くりt」

橙「ク・リ・ス・マ・スっ!」

桃「えへへ〜聞き間違えちゃったw」

橙「わざとでしょ……まぁそれよりアイツへのプレゼント何がいいかなぁ……」

桃「私用意できてるよ〜♪」

橙「え?何用意したの?見せて見せて!」

桃「アロマキャンドル〜♪」

橙「ほ〜。アロマキャンドルかぁ……いいね〜♪」

桃「真っ赤でおっきかったからこれにしたの〜♪」

ごそごそ……

桃「ほら。おっきいでしょ〜!」

橙「ちょwwwwそれSM用のローソク!!www」


白&黒 編〜

白「えと……このイルカのペンダントください……」

店員「はい、わかりました。どうぞ〜」

白「ありがとうございます……」

黒「そのペンダントは色無へのプレゼントか?」

白「いいえ・・これは違いますw」

黒「では誰に向けてのプレゼントなんだ?」

白「秘密です……♪」

白 (黒さんへのプレゼントなんですもの……)

黒「じゃあ私はそのリボンのペンダントと太陽のペンダント、それにそのクロスペンダントを頼む」

店員「わかりました。お買い上げありがとうございます♪」

白「黒さんは、誰にプレゼントするんですか?」

黒「クリスマスまでのお楽しみだ」

白「お互いに秘密ですね……♪」

黒「そうだな……秘密だ」

黒(……ひとつは大切な妹に、ひとつはかけがえの無い友に、ひとつは世界一好きな男にあげるんだ)

白「クリスマスが楽しみですね……」

黒「そうだな……」


無(スヤスヤ……)

茶「メリークリスマース!」

無「うわっ!……お姉ちゃんもしかしてサンタさん?」

茶「そう、良い子にプレゼントをもってきました〜♪」

無「……でも今日もう27日なんだけど……」

茶「!!ホントだ……日にち間違えちゃった……うぅ、ごめんなさい……ぐすん」

無「ちょっ、な泣かないで!でも嬉しいよボク、今年はプレゼントないのかと思ってさみしかったもん」

茶「ごめんね、お詫びの気持ちもこめてとっておきのプレゼントをもってき……あれ?……プレゼントを袋に詰めてくるの忘れちゃった……うぅ、また失敗ばっかり……ふえぇぇん」

無「わー!!ぼぼくプレゼントなんかいらないよ!!サンタさんに逢えただけで充分だよ!(トホホ……なんで子どもがサンタに気をつかわなきゃならないんだろう……)」


無(スヤスヤ……)

?「……」

無「……ん……(誰かがボクの部屋にいる……泥棒!?)

?「……」

無「あ、あのー」

?「……」

無「……もしかしてサンタさん……?ていうかそれボクの本……」

緑「……あらごめんなさい、懐かしい本が沢山あったからつい読みふけってたわ」

無「……」

緑(再び読書に没頭)

無「……あのー、催促するみたいで悪いんですけどプレゼントは……?」

緑「ああ、はいこれ」

無「わーいありがとー何だろう?……これは……ドスト……エフ……スキー全集?……あのー、もう少し子ども目線でのセレクトを……」

緑「甘いわね、私は小3の時に読破したけど?さて、私は読書の続きをするから君は先に寝てていいわよ」

無「……帰ってください」


無(スヤスヤ……)

紫「メリークリスマース!!」

無「うわっ!……あれ、お穣ちゃんどこから来たの? 迷子になっちゃったの?」

紫「ママ〜ママ〜どこいっちゃったの、うわーん……って小さいゆーな!! おまえの方が子どもだろ!!」

無「ご、ごめんなさい……お姉ちゃんもしかしてサンタさん?」

紫「そうだよ、悪い!? プレゼントもってきてやったんだよっ」

無「そ、そんな怒らないで……でも怒った顔もかわいいぜ?」

紫「バ、バカ! ……ってだーかーら!設定無視するな!」


無(スヤスヤ……)

白「メリー……クリスマス……」

無「わっ!お姉ちゃんもしかしてサンタさん?」

白「そう……良い子にプレゼントを……もって……き……」(バタッ)

無「サンタさんが倒れた!どどどうしたの?」

黒「白!!」

無「!?サンタさんがもう1人きたー!?」

黒「医者に絶対安静にしてなきゃ駄目って言われたのに何をしてるの!!

あんたは今サンタの仕事なんてできる身じゃないのよ!」

白「黒……ごめんなさい……でも……サンタを信じてプレゼントを待ってる……子ども達を裏切りたくなかったの……

子ども達の悲しむ顔を……見たくなかったから……」

黒「ばか!子ども達なんてどうでもいい!私にはあんたの方が大切なの!」

無(サンタのくせにさりげなくとんでもないこと言ってるな……)

黒「あんたの身にもし何かあったら……悲しむ人間がここにもいるってことを……忘れないで頂戴……!」

白「……黒……」

黒「さあ、帰りましょう、ほら背中にのって」

白「……ふふ、黒におんぶしてもらうの……久しぶり……」

黒「もーう、いくつになってもあんたは甘えん坊なんだから」

白「黒の背中……あったかーい……」

無(ポカーン)

「……なんだったんだ一体……あっ!プレゼントもらってねー/(^o^)\」

灰「おじゃましま〜す……」

無(……また新しいサンタがきたー!?ってことは今度こそプレゼント!!)

灰「はひ〜疲れたー、どっこらしょっと」

無(ワクテカワクテカ)

灰「……」

無「……」

灰「……なにか?」

無「あのープレゼントくれるんじゃ……」

灰「えっ、私この家の担当じゃないし……私はただ仕事がめんどくさくなってきたから一休みしようと思っただけだけど? あっ大丈夫、お茶くれとかそんな厚かましいことは言いませんのでおかまいなく〜」

無「ヒトんちに勝手にあがってる時点で十分……そんなことよりさっき白いサンタさんと黒いサンタさんが来たのにプレゼントもくれずに帰っちゃったんだけど!」

灰「ああ、お姉ちゃんが白さんを連れ戻しにきたのね……まぁしょうがないわね、今年はあきらめなさい」

無「ちょっw代わりにプレゼントくれないの?」

灰「だって余ってないもん。というわけで寝るから30分たったら起こしてね」

無「……ボクも茶色サンタさんみたいに泣いていいですか?」


「あ、あれ……上手くいかないなぁ……」

「お姉ちゃん何やってるの?」

「マフラー編んでるんだけど……意外と難しいのね……」

「白さんへのクリスマスプレゼント?」

「……そうよ、悪い?」(///)

「あれ?否定しないんだ」

「い、今更否定したって仕方ないでしょ……」

「な−るほど。で、間に合いそうなの?」

「わからないわね……こんなに難しい物だとは思わなかった……」

「でもきっと白さん喜んでくれるよ。ほら想像してみて」

「想像……」

「わぁ、ありがとう黒!」

「き、気に入ってくれた?は、初めてだったんだけど……」(///)

「え?じゃあこれって黒の手編みなの?」

「う、うん……」(///)

「そっか……じゃあ大事にしないとね……本当にありがとう」

「……えへへ……」(///)

「お姉ちゃん顔すっごい緩んでる」

「!う、嘘!」

「鏡持ってこようか?」

「……やめて……」(///)

「まぁとにかく頑張って!」

「う、うん」


男「サンタさん信じてる?」

橙「まっさかー。ウチらん中で信じてるとしたら紫ぐらいじゃない?」

男「やっぱりそうかー。この歳で信じてるような純粋ちゃんはいないよなー」

紫「私だって信じてないよ!サンタさんはお父さんお母さんだって知ってるよ!」

男「はいはい、悪かったな。水色ちゃんは?」

水「ウチは、もとからサンタさんじゃなくて両親からクリスマスプレゼントもらってましたから……」

橙「そういうお家もあるよね〜」

紫「黄色は?」

黄「ん?サンタさんているでしょ?」

橙「はいはい」

黄「ちょっとぉ!流さないでよ!いるんだって、私んとこはちゃんと来るもん!」

男「はいはい」

黄「信じてない人には来ないんだよっ!」

紫「はいはい」

黄「うー……!!紫にまで……屈辱!!」


無(スヤスヤ……)

青「メリークリスマース!」

無「わっ!お姉ちゃんもしかしてサンタさん?」

青「そうよ、良い子にプレゼントをもってき……」

無「どうしたの?」

青「ち、違うわよ!別にあんたが良い子だから来てやったんじゃないわよ!」

無「えぇっ!?」

青「つ、ついでよ!他の子どもにプレゼントあげるついでなんだから!勘違いしないで!」

無「そんな……僕良い子じゃなかったんだ……うわぁぁぁんごめんなさーい」

空「ちょっとお姉ちゃん!なんで子どもを泣かせてるのよ!?あぁほら泣かないで、よしよし」

青「(あ、あれ?どうしちゃったんだろう私……)ご、ごめん冗談よ。ほらプレゼント」

無「わーいありがとう、やったやったー」

青「あ、あんたにあげるんじゃないわよ!隣の家の子に渡しておいてちょうだい!」

無「わぁぁぁんやっぱり僕良い子じゃなかったんだ〜」

空「だからお姉ちゃん!」

青(な、なんでだろう……この子の前だと……素直になれない)


無(スヤスヤ……)

ヒュ〜ガッシャァァァァァン

無「わー!?窓ガラスが!!なな何!?」

赤「メリークリスマース!」

無「はい?……もしかしてサンタさんですか?」

赤「そうだよ!」

無「……なんで窓ガラスつき破って来るんですか?」

赤「棒高跳びで来からさ!そんなことより、やったよ!ボク自己記録更新したよ!」

無「……それは『おめでとう!』とでも言えばいいんですか?」

黄緑「あらあら赤ちゃんダメじゃないの、ごめんなさいね坊や、ウフフ」

無「は、はい……(なんて素敵な笑顔のサンタさんなんだろう……まるで天使みたいだな)」

黄緑「はい、プレゼントどうぞ♪」

無「わーいありがとぉぉぉぉぉぉぉお、重!な、中身何!?」

黄緑「ダンベルの詰め合わせセット(計30�)よ♪これで鍛えてたくましい子に育ってね」

赤「よかったね少年!」

無(今笑顔で……軽々と……ガクガク)


赤「ふぅ……今日の朝練も終了! さて、どうしようかなぁ……」

?「もしもし、そこの旦那」

赤「灰? なに、その旦那って」

灰「いや、特に気にしないで。それよりも、橙が赤を呼んでって言ってたから」

赤「え、橙が? わかったけど……なんで?」

灰「さぁ? ……とりあえず私はごろごろ〜」

赤「……橙がボクに? なんのようなんだろ?」

〜数十分後〜

無「橙、面白いものがあるってなんだよ」

橙「まぁまぁ、そう慌てなさんな。とりあえず私の部屋に来てよ」

無「まぁいいけど……橙の部屋にあるのか?」

橙「そうそう、とっても面白いものが、ね♪」

ガチャ

無「……」

赤「……」

橙「じゃーん! 赤ということでミニスカサンター! どう、色無!?」

無「……」

赤「……」

橙「あ、あれ、色無? おーい、もしもーし?」

無「……かわいいな、赤」

赤「!? あ、あぅ……」

橙「おーい、そこのふたりー。私を無視しないでよー」


 それは十一月の半ば、天気予報が『今年一番の冷え込み』と伝えた、寒い日のことだった。

「でさ、今年も寮のみんなで集まってクリスマスパーティするんだと。朱色さんは『彼氏彼女のいる奴はそっち優先しろよ』って言ってたけど、結局全員参加するみたいだ」

「……そうなんだ」

「群青さんも『当日の予定がキャンセルになっちゃったから、こっちに参加させてもらうわ』って言ってた。どこまでホントか分かんないけどな。それで、その……白も参加、するよな?」

 見舞いの席で、色無は面会時間終了ギリギリになって、ようやく本題を切り出した。

「うん……ごめんなさい。やっぱり私、参加できないと思う」

「なんでだよ? 最近元気そうだったし、白だって体調いいって言ってたじゃん。退院は無理でもさ、一時帰宅とか、どうしてもだめならパーティの時間だけでも……」

 説得にかかった色無だったが、悲しそうな笑みを浮かべて首を振る白を見て、続ける言葉を失った。

「あのね……急に、手術することになったの」

「手術? いつ?」

「……明日」

「明日!?」

 ガタン! 立ち上がった拍子に椅子を蹴倒してしまう。びくっと身をすくませた白に、色無は自分が声を荒げていたことに気づいた。

「あ……ごめん。でも、何でそんな急に」

「だいぶ前、血液検査に異常が出たの。精密検査を受けようってことになったんだけど、機械が順番待ちでなかなか使えなくて……このあいだようやく検査できて、それで——」

「なんだよそれ! 順番待ちって何だよ! そのせいで病気が進んで、それで緊急手術が必要になったのかよ! そんなの……そんなのあるか!」

 ふるえる色無の握り拳を、白は両手でそっと包み込んだ。

「しかたないんだよ。病気を治したくて、検査を待ってる人は私だけじゃないんだもの」

「……それにしてもさ。明日手術ならクリスマスには間に合うんじゃないか? まだ一ヶ月以上あるし……よく知らないけど、手術から退院まで、普通二週間くらいだろ?」

「そうだね……手術が成功すればね」

 言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。

「ちょ……白、お前何言って——」

「ちょっとね、難しい症例で、成功率が低いんだって。担当のお医者様が言うには……五分五分ぐらいでしょう、って」

「五分五分……成功率50%ってことか。何だ、全然高いじゃん。野球の打率なら超メジャー級だぜ」

 それはつまり、失敗率50%ということだった。

「ふふ、そうだね。それでね、実はこんなのを用意したんだけど……はい」

 白は枕元をごそごそとあさり、色無にかわいらしい封筒をつきだした。

「これは……手紙?」

「うん。一足早いクリスマスメッセージ。あ、でも恥ずかしいから今読まないで! 明日……手術が始まったら読んでいいよ」

「白……それじゃまるで——」

 『遺言状だろ』——のど元まで出かかった言葉を、色無は何とか飲み込んだ。

「……分かった。なんて書いてあるのか楽しみだな。手術、絶対成功させてパーティに間に合わせようぜ。来てくれなかったらみんなの前でこれ読んじゃうからな」

「ちょっと、やめてよ〜」

 看護士が面会時間の終了を知らせに来たとき、二人はいつもと何も変わらずふざけあっていた。

 

 雲がゆっくりと流れていくのを、色無は公園のベンチに座ってぼーっと眺めていた。あの日の寒さは、今では日常だ。

「今日はパーティ当日だぞ〜。もうすぐ始まっちゃうぞ〜」

 独り言を呟く色無を、寒さに負けずにはしゃぎ回っている子供たちが怪訝そうに見つめた。

「……」

 ポケットから、あの日白にもらった手紙を取り出す。何度も何度も読み返したせいで、封筒はもちろん、中の便せんもずいぶんくたびれていた。

「……『まずは、ごめんなさい。手術の成功率、五分五分って言ったのは嘘です。ホントは二割あるかないからしいです』……ったく、そういうことはちゃんと言えっての」

 色無の指が、分厚い便せんの束をぱらぱらとめくっていく。そこには白の丁寧な字で、寮のみんなと初めて会ったときのことから、本人も忘れているような小さな思い出まで書き連ねてあった。

「ホント、何度読んでも笑える。そのまんま走馬燈だよな、これ」

 最後の便せんに到達し、色無の指が止まった。

「……『たぶん、もう会えないと思うから、お手紙で気持ちを伝えるね。私は色無くんのことが』——」

「あーーーーーーーーーーっ!!! 何読んでるの!? 読んじゃだめーーーーーーー!!」

 耳をつんざく悲鳴が脳を右から左へと貫き、色無は顔をしかめて振り返った。

「おせーよ、白。パーティに間に合わなかったら読み上げるって言ったろ……朱色さん、群青さん、お疲れ様です」

 車椅子に乗った白が猛然とダッシュしてくる。やれやれといった顔の群青さんと、軽く手を振る朱色さんに頭を下げ、色無は立ち上がった。

「しょうがないでしょ、道が混んでたんだから! それにほんとはまだ外に出ちゃいけないんだよ。朱色さんたちが一生懸命お医者様に頭を下げてくれて……」

「分かってるって、ちょっと顔出してすぐ戻るんだよな。それでもいいさ。白がいなくなったら改めて手紙を読ませてもらうから」

「だめ!! もう、返してよ!」

「おっと! 手紙ってのはな、いっぺん出したらもう受取人のものなんだよ……送った気持ちも含めてな。手術成功おめでとう。さあ行こう、みんな待ってるぞ」

「……ありがとう、色無くん。うん、久しぶりにみんなに会うの楽しみ!」

 色無は白と笑みを交わすと、車椅子を押して仲間の待つ寮に足を向けた。


「ふわぁ……おっきい。かわいいなあ、欲しい……でも今月ピンチだし……う〜ん、お昼をおべんとにすれば何とかなるかな? あ、でもみんなにもクリスマスプレゼント買わなきゃだし……」

 たまたま誰とも都合が合わなくて、一人で下校していたその日。ライトアップされた町並みを見物しようと寄り道していた紫は、ファンシーショップの店頭で運命の出会いを果たした。

「ふわふわもこもこで、抱いたらきっと気持ちいいんだろうなあ。う〜ん、どうしよう……」

 紫の視線の先にあるもの、それは熊のぬいぐるみ。紫が抱いたら両手が回らないほどで、その大きさに比例してお値段もキングサイズだった。

「……」

 言葉もなく、ショーウィンドウにおでこまでくっつけてぬいぐるみに見入る。ガラスが汚れるのを気にしてか、店員が嫌そうに見ているがまったく気づかない。

「……はあ。やっぱりどう考えても足りないや……諦めよう」

 がっくりと肩を落として重いため息をつく。もう帰ろうか、もう少し見ていようかと迷っていると、背後から肩を叩かれた。

「よっ、紫」

「わっ!! い、色無!? 急に声かけないでよ、びっくりしたでしょ!」

「こんなとこで何してんだ? もうよい子はおうちに帰る時間だぞ」

「子供扱いするな! 同い年でしょ! 別にあたしが何してたって色無には関係な——あ、ちょっとなにすんのよ、離せ!」

 視界をさえぎろうとする紫の頭を押さえ込み——押さえ込まなくてもまったく邪魔にはならなかったが——色無はショーウィンドウをのぞき込んだ。

「何だ、ぬいぐるみか……って高っ! なんだこの値段!? いくらでかいっつっても、毛糸と綿の固まりでこの値段はぼったくりだろ」

「夢のないこと言わないでよ! ぬいぐるみにはね、綿じゃなくて女の子の夢が詰まってるんだから……なに笑ってんのよ、このバカ色無!!」

「いてっ、やめろって! いや悪い悪い、あまりにも柄じゃないこと言うからさ。そうかあ、夢が詰まってるんじゃしょうがないなあ……ぷぷっ」

「むっか〜!! いちいち人のことバカにして〜!! 成敗してやる!」

「おっと! ほほほ、つかまえてごらんなさ〜い」

「きー!! 逃げるな!」

 頭から湯気を出す紫の攻撃をかわしつつ、色無は人混みをかき分けて逃亡した。

 

 あたりに漂う香ばしいチキンの香りを振り切り、ケーキを売りつけようとするミニスカサンタの誘惑をはねのけ、色無はファンシーショップの前に仁王立ちしていた。

(バイトのシフトを詰めまくり、店長に頭下げまくって前借りしたなけなしの諭吉さん二枚……今日の俺はひと味違うぜ!)

 自動ドアが開いた瞬間、店内から溢れる女の子たちの嬌声に圧倒される。周囲の視線を感じながら、色無は一直線にレジに向かった。

(……しかし、やっぱこういう店は最高に居心地が悪いな……)

 全員が『何こいつ、男一人? キモッ』『あらあら、プレゼントかしら? 若いっていいわねえ』という目で自分を見ているような気がする。

「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」

「ええと、あのショーウィンドウにあるでかい熊を下さい。プレゼントで」

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 応対してくれた店員が店内清掃していた別の店員に声を掛け、二人がかりでよたよたと熊をレジに運んでくる。はっきり言って、おそろしく目立つ。晒し者だった。

「お待たせしました。お会計が……あら? お客様、まことに申し訳ございません。こちらの手違いで外税表記になっておりまして……18900円になります」

「え!?」

 ちっとも申し訳なさそうな様子もなくニコニコしている店員の言葉に絶句する。内心舌打ちしつつ、色無は数十分前に手にしたばかりの万札をレジに置いた。

「あ、それとこちら大きさが大きさですので、梱包が特別になりまして、別途1000円いただきます。あと宅配料金ですが、元払いでよろしいですか?」

「な、なにーーー!? 梱包? 宅配?」

 ぬいぐるみの代金を用意するのにいっぱいいっぱいで、そこまで頭が回らなかった。もう財布を逆さにしてもほこりしか出ない。背後には精算を待つ女子高生たちが長蛇の列をなしていた。

「あー、えーと、そのー……リボンだけ首んとこにかわいく巻いてくれますか? サービスで。あと、梱包用のビニール紐とかもらえます?」

「……は?」

 接客業としてあるまじき間抜けな声が、店員の口から漏れた。

 

「毛糸と綿の固まり、とは言ったものの、こんだけでかいとさすがに重いな……何より超恥ずかしい。全速で漕いで帰ろう」

 ビニール紐で熊を背中にくくりつけ、色無はよたよたと自転車にまたがった。一見すると色無の方が熊に羽交い締めにされてるようで、すれ違う人が一人残らず振り返る。

「よっ、ほっ、はっ……うーん、ハンドルもろくに切れねえ。これじゃゆっくり行くしかねーな……これお巡りに見つかったら二人乗りで怒られるんだろうか」

 背後から笑い声が聞こえるたび、何でこんなとしているのかと我に返りそうになる。だが紫の驚く顔を思い浮かべ、色無は必死でペダルを踏んだ。

「あいつ、びっくりするだろうな〜。『かついで帰ってきたの!? バッカじゃないの!?』って絶対言うな。そんでそのあと泣いちゃったりしてな。はは、楽しみだぜ」

 

 実はその日、地元ケーブル局がクリスマスの町並みを生中継で放送しており、カメラが色無をばっちり追っていたりとか。

 そのころ寮のみんなは食堂でパーティの準備をしており、全員がそれをテレビで見ていたりとか。

 あわてる様子を見てすべてを悟ったみんなにからかわれたりうらやまれたりフォローされたりして、真っ赤になった紫がパニックになったりとか。

 本人の関与しないところで事態は進んでいたのだが、にやけながら自転車を漕いでいる色無がそれを知るのは、十分ちょっとあとのお話。

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男「なぁ緑ー」

緑「……なに?」

男「サンタクロースって信じてた?」

緑「……」

男「……あ、ごめん怒った?いやちょっと緑がどう思ってるか気になってさ。そうだよな、いるわけないよなー」

緑「……いる」

男「……へ?」

緑「サンタは、いる」

男「……あぁあのサンタ協会とかいう厳しいテストを受けるやつ?」

緑「そうじゃない。いるわ、サンタ」

男「……?」

緑「私の目の前に」

男「……え……」

緑「一緒にいるだけで楽しいもの。幸せを運んでくれるなら、私にとってその人はサンタよ」

男「……ば、何言ってんだよ緑!俺は……俺だって……あぁもう!!じゃあな!」


『白×黒』

「ほらこれ、これなんか色無君に似合うんじゃないかな? モノトーンの服とか好きっぽいし」

「ええ……でもちょっと予算オーバーかも」

「う〜ん、そっか。じゃあこっちは?」

「悪くないけど、ピンとこないわね」

「も〜、だめ出しばっかり。ちゃんと見てくれてる? 黒ちゃんのために選んでるんだよ?」

 ふくれっ面をして別の品を物色しに行った白を、私はため息とともに見送った。なぜ私はこんなところでこんなことをしているんだ……。

 

「黒ちゃん、出かけるの?」

 靴を履いているところに声をかけられ、心臓が口から飛び出そうになった。いつもなら白が一時退院してきたときには四六時中一緒にいるのだけど、今だけは見つかりたくなかった……。

「え、ええ。ちょっと駅前のデパートまで、その、買い物にね……」

「デパートにお買い物? 珍しいね、たいていのものは商店街ですませちゃう黒ちゃんが……あっ、分かった! クリスマスプレゼント買うんでしょ!」

 心臓のビートが最高潮に達する。気づいて欲しくないときに限って、白は異様に勘がいい。

「誰のを買うの? みんなの分?」

「いえ、みんなには簡単なものですませようかと思ってるけど……さすがに十人以上にあげるとなると予算も苦しいし」

「そうなんだよね〜、お小遣いだけだと、あんまりたいしたもの用意できなくて困っちゃうよね。ん〜じゃあ誰のを……あ、もしかして……」

 バレた!? できれば当日まで内緒にしておきたかったけど、こうなったらせめて一緒に行って本人の希望通りのものを買って——

「色無君の分でしょ?」

「え? あ、いえ、ちが——」

「いいよ、隠さなくたって。いいなあ、クリスマスに男の子にプレゼント……ロマンチック〜。あ、わたしもついてっていい? 一緒に見立ててあげる!」

 体調がいいのか、白は私の返事も待たずに喜々として出かける用意を始めた。ずっしりと気が滅入る……気づいて欲しいときに限って、白は異様に鈍感なのだった。

 

「結局、いいプレゼント見つからなかったね」

 一時間ほどメンズの服や小物の売り場をうろついたあと、白に疲れが見えてきたので買い物を打ち切って帰ることにした。

「ごめんね、勝手についてきたのに私のせいで……」

「別に白のせいじゃないわ。二人で一時間探してだめなら、一人で来ていても同じことよ。このデパートはやっぱり品揃えが悪いわね」

 フォローの言葉が聞こえたのか、すれ違った店員ににらまれてしまった。心の中で詫びを入れておく。色無向けの品は豊富でしたよ……私には無用ですけど。

 エスカレーターを降りきったところで、白の視線が正面から逸れた。その先にあるものは見なくても分かった。高級百貨店の一階には必ずある売り場。

「白、もう少し大丈夫そうなら、ちょっとのぞいていきましょうか」

「え? い、いいよ。わたしあんまり身につける機会もないし……」

「見るだけでも見てみればいいじゃない。それで店員に嫌な顔をされることもないわ」

 遠慮する白を半ば引きずるようにしてショーケースの前に行く。店員はご婦人方の応対で忙しいようで、金を落としそうにない女子高生二人を無視することにしたようだ。

「ほら、これなんかどう?」

「だ、だめだよう、こんな派手なの……似合わないもん」

 白にならシックなのからゴージャスなのまで、どんなものでも似合うと思うけど……そう口にすべきかどうか迷っていると、白の目が一つのアクセサリーに釘づけになった。

「わあ、かわいい……こんなの、触るだけで壊れちゃいそう……」

 それは細いチェーンの先に小さな無色の宝石をつないだネックレスだった。ダイヤモンドのようにも見えるが、値段からしてたぶんジルコニアね。

「いつか、こんな大人っぽいのが似合う女の人になれるといいな……」

「……白ならきっとなれるわ。でも、まずは体を丈夫にして、ちょっとはしゃぐとすぐ子供みたいに熱を出しちゃうところを直さないとね」

「もう、黒ちゃんの意地悪〜!」

 白とふざけあいながら、宝石売り場をあとにする。ちょっと、というかだいぶ予算オーバーになっちゃうけど……みんなにはポストカードで我慢してもらいましょう。

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『赤×青』

「さてと、いろいろ悩んだけど、やっぱり赤にプレゼントするならここよね」

 クリスマス前の最後の日曜日。プレゼントを買いに行くなら、実質今日がタイムリミット。私はとりあえず町に出てぶらぶらしたあげく、結局ここに来てしまった。

「何にするかは、中に入ってから決めればいいわね。まああいつのことだから、ここにあるものなら何をあげたって喜ぶだろうけど」

 どうも赤のことを考えると独り言が多くなる。お店から出てきた人に変な顔をされてしまった。気をつけよう……。

 私はちょっと反省して、そのお店——スポーツ用品店の自動ドアをくぐった。

 

「うーん、リストバンド……じゃちょっと安すぎるか。タオル……お中元みたいね。プロテイン……消耗品はプレゼントっぽくないわね……」

 さっきの反省をもう投げ出して、私はぶつぶつ呟きながら店内を物色した。この方が考えがまとまるんだからしょうがない。

「なかなかいいのがないわね……まったく、テニスとか剣道とかやってればラケットなり竹刀なり、すぐ決まるのに!」

 だんだんイライラしてきた。無茶苦茶な理屈? いいや、陸上なんて地味なスポーツやってる赤が悪い。そうに決まってる。

「しかも長距離の選手だもんね。走るだけ。ランナーなんて、ユニフォームは部の支給品だし、あとはシューズくらいしか——」

 シューズ!! やっとそれにたどり着いた私は、まっすぐ専用コーナーめがけて突進した。

「そういえば、あいつのシューズってずいぶんくたびれてたっけ。よかった、思い出して……やっぱり口に出しながら考えるといいアイディアが浮かぶわ」

 『普通、最初に思いつくのでは?』と頭の中で冷静な私が突っ込んできたが、努めて無視する。結果オーライ、最終的にいいプレゼントが見つかればいいのよ。

「長距離用は……ここか。確か今使ってるのはこのメーカーだったわね。サイズは、っと」

 同じメーカーでもびっくりするくらい種類が豊富だったけど、赤が今履いてるのと似てるのした。値段も手ごろ、これなら他のみんなにもちょっとしたものが用意できそう。

「あとはこれを包んでもらって……あっ!」

 ほくほくしながらレジに向かう私の前に、予想もしてなかった障害が立ちはだかった。

「え!? あ、青!? 何でここに!?」

 私の声に気づいて振り向いた赤は、私以上にびっくりして、手に持っていた何かを背中に隠した……そうだ、私もシューズを隠さなきゃ!

「私は、その、部活に必要なものを買いに来たのよ」

「青は弓道部でしょ。だったら向かいの弓道具店に行けばいいじゃん」

「い、いいでしょ別に! こっちのお店の方が安いのもあるのよ! 赤こそ何してるのよ!」

「ボ、ボクがこのお店にいるのは別に変じゃないよ。しょっちゅうここで買い物してるんだから。ボクも部活にいるものを買いに来たんだよ」

 うかつだった……このあたりで一番品揃えのいい用品店なんだから、赤がひいきにしてることくらい気づくべきだった。

「それで、何隠してるのさ……部活に使うものなら隠さなくたっていいでしょ」

「ちょ、ちょっと見ないでよ! 赤こそ何でこそこそしてるのよ!」

 二人で時計回りにじりじりと回りながら、相手の背後に回り込もうとする。レジのお兄さんが困った顔をしてるのが見えたが、そんなのかまっていられない。

「……ふんだ、別に青が何買ったかなんて興味ないもんね。じゃ、お先に〜!」

「あ、ちょっと待ちなさいよ!」

 回ってるうちに自動ドアの正面に来た赤は、隙をついて一瞬のうちに走り去っていった。大きな包みを持ってるのが見えたけど、中身が何かまでは分からなかった。

「どうしよう……走って赤に追いつけるわけないし……」

 赤が何を買ったか……それはとても重要だ。もし自分で新しいシューズを買ったのなら、別のプレゼントを用意しなきゃいけないし。

 ちょっと考えた末、さっきからちらちらとこっちの様子をうかがっているレジのお兄さんに尋ねてみることにした。

「あの、さっき出てった子が何を買っていったか、教えてもらえませんか?」

「え? いやあ、そういうのはちょっと……」

「私あの子、赤のクラスメイトで青っていいます。実はこのシューズを彼女に贈りたいんですけど、もし彼女も自分で買ったのなら別のにしようと思って……」

 ダメモトできちんと事情を説明したら、お兄さんはそういうことか、と納得したような笑顔を浮かべてあっさり教えてくれた。

「そういうことなら心配ないと思うよ。買っていったのは弓道で使う胸当てだから」

「……え?」

 でもその答えは、私の想像をはるかに超えたものだった。

「うちは普段そういうの扱ってないから、お向かいの弓道具店に行くよう勧めたんだけどね。どうしてもうちでって、メーカーや型番まで調べてきたから特別に取り寄せたんだ」

「……」

「たぶんあれも誰かへのプレゼントじゃないかなあ。弓道具店なんてここらじゃお向かいだけだから、ばったり贈る相手に会うのを避けたかったんだろうね」

 そのあともお兄さんは、常連らしい赤のことをいろいろ話してくれたけど、半分も耳に入らなかった。そういえば、私の胸当てもずいぶん痛んでたっけ……。

「ホント、馬鹿なんだから……いつもいつも、最後の最後で詰めが甘いのよ」

「え? 何か言った?」

「いえ、こっちの話です……あの、長距離用のシューズで、このメーカーので一番いいやつってどれですか?」

 まあ、今履いてるのよりグレード高いやつにしなくちゃ、贈ったこの青の名がすたるもんね。他のみんなには悪いけど、ここは奮発しよう。あくまで私のために、ね。


『黄×橙』

「これ! これ可愛くない?」

「どれどれ? あ、いいかも!」

 今日発売されたばっかりのブランド商品情報誌を、橙ちゃんと二人でベッドに寝っ転がって見る。ページをめくるたびに歓声を上げ、値段を見てため息をつく。

「うーん、やっぱりいいやつはお値段もお高めよねー」

「そうだねー。あっ、でもこれ見て! さっきのに似てるけど、こっちなら買えるんじゃない?」

「ん〜? あーだめだめ! こんなの去年の流行じゃん! いくら安くても型遅れのバッグなんか持って街歩けないよ!」

 あたしの提案は橙ちゃんに一蹴された。ホントおしゃれのことになると、橙ちゃんは見る目が厳しい。

「そうなんだ。私には全然同じに見えるけど」

「黄、そんなことじゃだめ! もっと見る目を養わなきゃ! 男とブランド品はハズレをつかむと大損するよ!」

「あはは、それは言えてる」

 そりゃああたしも女の子だし、服とかアクセとか、おしゃれに興味津々だけど、橙ちゃんほどはのめり込めないなあ。それに、男に関しては橙ちゃんだって……。

「あ〜あ、そうは言ってもクリスマスに買ってくれる彼氏もいないんだから、こんな本ばっか見て目が肥えてたってむなしいだけよね〜」

「あれ? 月曜日に告られたって言ってなかったっけ? ほら、サッカー部の……」

「あーあれ、あれね……名前何ってったっけなあ……」

「覚えてないの!? ていうか、まさかもう別れたの? 早すぎじゃない?」

 さすがに非難がましく言うと、橙ちゃんはベッドからがばっと身を起こして力説した。

「だって聞いてよ! ちょっとかっこいいかなーと思ってOKしたらやたらベタベタしてくるし、束縛するし、人の話聞かないし、要するにすごいウザいやつだったのよ!」

「あいたたたた……そーなんだ。人は見かけによらないねえ」

「ホントあったまくる! どうも私に告ってくる男って、私のこと軽い女だと思ってるっぽいのよねえ……男の気を引きたくて可愛いカッコしてるわけじゃないのにさ!」

 腹立ちまぎれに枕をボスボスと殴りつける橙ちゃん。それあたしのなんだけど……。

「でもさー、告ってくる男の子に片っ端からOK出して、そんですぐ別れちゃうから誤解されちゃうんじゃないの?」

「だってつきあってみなきゃどんなやつか分かんないじゃん。そりゃこっちから好きになるようなのがいれば別だけど、今んとこいないし」

「そういうものかなあ」

「そういうものなの。そういう黄はどうなのさ? あたしとは逆に、告ってくる男を片っ端から撃墜してるらしいじゃん」

 !! な、何でそれを知ってるの!? 口をぱくぱくさせて真っ赤になってると、橙ちゃんはあきれたようにため息をついた。

「もしかして、ばれてないと思ってたの? 女の子の情報網なめすぎ。てか、学校で告られておいて、内緒にできるわけないでしょうが」

「それもそうか……その、なんていうかな……まだ男の子とつきあうってピンとこないんだよね。女の子同士でわいわい騒いでる方が楽しいんだもん」

「あー、分かるような気もする。あたしも当分男はいいかなー……なんてね。そんなこと言えるほど深いつきあいしたことないんだけどさ」

 二人で目を合わせ、ぷっと吹き出す。大笑いしていると両隣の緑ちゃんと黒ちゃんがドンドンと壁を叩いてきたけど、私たちはかまわず笑い転げた。

 もう声も出なくなるまで笑うと、橙ちゃんが涙を拭きながら何気ない調子で聞いてきた。

「あー、お腹いたい……それで黄は、色無のこともふっちゃうの?」

 !! さっきよりもさらに顔に血が上る。そういえば色無はあたしのこと、いろんな人に相談してたんだっけ。橙ちゃんには気づかれて当然か。

「色無は……分かんない。なんか今までの男の子とは違う気がするし……橙ちゃんはどう思う? 色無のこと」

「あたし? そーだねえ……確かにいい男だとは思うけど、寮で毎日会ってたら家族みたいなもんだしね。彼氏としては対象外かな。それにあいつ、黄ひとすじじゃん」

「そーだよね……」

 ホントは花火大会のときの告白、はっきり聞こえてた。聞こえないふりをしてずるずると友達のままできたけど、いつかは気持ちに応えないと。

「ま、急ぐことないんじゃない? 焦ってもいいことないよ。自分の気持ちに素直が一番! ほーら、いつもの黄みたいに笑って笑って!」

「ひゃあ! いひゃい、いひゃいよりゃいりゃいひゃん!」

 あたしの唇の端に指を突っ込んで、橙ちゃんが無理矢理笑顔を作ろうとする。もみ合ってるうちに、また二人して笑いがこみ上げてきた。

 やっぱり、今年のクリスマスは一番の大切な友達に捧げよう。お洒落で、耳年増で、だけどあたしのことを真剣に考えてくれる、一番の友達に。


『緑×桃』

「み〜どりちゃん! なにやってるの?」

 そーっとお部屋に忍び込んで、姿勢よく机に向かってる緑ちゃんを背中からぎゅーっと抱きしめた。

「……読書。桃、人の部屋に入ってくるときはノックするべきじゃないかしら」

「え〜、ちゃんとしたよお。本に夢中で気づかなかったんじゃないの?」

 ホントはしてないけど、緑ちゃんにはこう言えばたいてい大丈夫。ほら、黙っちゃった。集中すると周りが気にならなくなるって自覚はあるんだよね。

「まあ、それはいいわ。ところで、そろそろ離してくれない? 胸を頭に載せられると重いんだけど」

「いいじゃない、女の子同士なんだし」

 小さくため息をつくと緑ちゃんは本のページをめくった。でも、そのほっぺたがちょっと赤くなってる。

 スキンシップに慣れてないから、手をつないだりぎゅうってしたりするとすごく照れる。クールな緑ちゃんがあたふたするのが楽しくて、ついかまいたくなる。

「女の子同士だからって、あんまりベタベタするのもどうかと思うけど。そんなにくっつきたいなら、以前みたいに紫にすればいいのに」

「う〜ん、それがね〜。あんまりかまいすぎて、最近は近づくだけで野良猫みたいにぴゅーって逃げちゃうんだよね」

「自業自得ね……」

「それに、誰とでもベタベタしてるわけじゃないよ。これは愛情表現なんだから、好きな人にしかしないの。ぎゅ〜!」

「……あんまり適当なことばっかり言ってると、友達なくすわよ」

 緑ちゃんの細い指がページをめくる。ほっぺたがさっきより赤くなってる。ふふ、確かにからかい半分だけど、好きな人にしかしないって言うのはホントだよ。

 振り払われないのをいいことに、私はしばらく緑ちゃんの感触を存分に楽しんだ。

 

 さすがに飽きてきたので解放してあげて、緑ちゃんのベッドに寝ころんだ。そのまま背中をぼっーと眺めてると、しきりに眼鏡を直しているのに気づく。

「緑ちゃん、眼鏡が合わないの?」

「そうみたい。近視が進んだようね。また買い換えないと……安いものでもないのに、困ったものだわ」

「あ、じゃあさ、次はコンタクトにしようよ。前から思ってたんだ。緑ちゃん可愛いのに、眼鏡で隠れちゃってもったいないな〜って」

 無言。あれ、反応なし? そのまま本を繰る音だけが響いて、怒らせるようなこと言っちゃったかなーと心配になってきたとき、ようやく緑ちゃんがぼそりと呟いた。

「……別に、私は可愛くなんてないし……コンタクトにして可愛くなったって、誰に見せるわけでもないし……」

 !! 胸がきゅーっとなる。あ〜もう、緑ちゃん可愛すぎ!!

「そんなことないって! 女の子はみんな可愛いんだよ! そして女の子には可愛くなる権利と義務があるの! ちょっと待ってて、すぐ準備してくるから!」

「え、準備!? 何の? あ、ちょっと桃!」

 部屋を飛び出した私の背中を、緑ちゃんのあわてた声が追いかけてきた。

 

「きゃあ! ちょっと桃、痛い痛い、やめて!」

「暴れないで緑ちゃん、危ないから! ほら、動かないで前見て!」

 抵抗する緑ちゃんを何とか椅子に座らせて、頭をぐいっと前に向ける。ゴキッて手応えのあとで緑ちゃんが悲鳴を上げたけど……たぶん大丈夫よね。

「眼鏡を外して、と。前髪がちょっと長いから、ヘアピンで留めておでこ出しちゃおう。襟足をブラシで外跳ねにして……」

 髪はショートだからあんまりいじりようがないなあ。ウィッグでもあればいろいろ遊べるけど、今日のところはこんなものかな。

「あとはメイクを……緑ちゃん素材がいいから、ほんのちょっとだけね。はい、できあがり! どう?」

 憔悴しきった様子の緑ちゃん。ぐったりした体をのろのろと起こし、鏡にぐっと顔を近づけて——

「……眼鏡がないと何にも見えない。眼鏡返して」

 がっくり。そりゃそうか……。

「う〜ん、眼鏡かけちゃうと、せっかくお洒落したのに全体のバランスが崩れちゃうなあ。やっぱりコンタクトにしよ? するって約束してくれたら返してあげる」

「そんな無茶苦茶な……」

「じゃあ返してあげなーい」

「ああもう、分かったわよ! コンタクトも試してみるから!」

 よし、約束ゲット! にんまり笑いながら、私は緑ちゃんの顔に眼鏡をかけてあげた。

「はい。じゃあ今度の日曜日ね。セールしてるお店知ってるから、連れてってあげる!」

「もう好きにして……」

 ふふ、今度の日曜日が何の日か、気づいてないのかな。内緒で買ってあげられたらよかったんだけど、こればっかりは本人がいないと度が合わせられないもんね。

 ああでも、可愛いフレームの眼鏡もいいかも……ちょっと奮発して、両方贈っちゃおうかな。

「じゃあね、約束忘れないでよ!」

 鏡に見とれていた緑ちゃんがあわてて髪を元に戻すのを見て、私は笑いをこらえながら部屋をあとにした。


『茶×水』

「水色ちゃん、いる? あれ、いない……お庭かな」

 水色ちゃんが部屋にいないときはたいてい土いじりだ。私は食堂に面した寮の庭に向かった。

「あ、やっぱりここだった。水色ちゃん!」

「ひゃっ! あ……茶色ちゃん」

 玄関から庭に回り込むと、思った通りそこに水色ちゃんがいた。日が差してるとはいえ午前中の冷たい空気の中、軍手と移植ごてで固い土と格闘している。

「今日も寒いね! こんな朝から何してるの?」

「あ、えと……お庭の手入れと、寒さに弱い花や植木を鉢に植え替えようと思って……」

 ジャージに長靴で身を固め、私には何に使うのかさっぱり分からない園芸道具を一式用意して、水色ちゃんは熱心に土を掘り起こそうとする。

「ほんとは、もっと早くやらなくちゃいけなかったんだけど……学校の花壇の世話に時間を取られちゃって……遅くなっちゃったの」

 ああ、どうりで。地面がこんなカチンコチンになってからやるなんて変だと思ったんだ。

「寒さにやられて、みんな少し元気がないの……ごめんね……」

 水色ちゃんは悲しそうに木々に手を触れ、立ち枯れた枝や葉を申し訳なさそうに取り払った。

「う〜ん、そっか。よし、じゃあ私も手伝うよ! 二人でやれば半分の時間でできるよね!」

「え!? い、いいよ、私が好きでやってることだし、茶色ちゃんに迷惑かけるわけには……」

 予想通りのお返事。もう、いつまでたっても遠慮してばっかりなんだもんなあ。ここは少し強引に行かないとね!

「そんなこと気にしない気にしない! さあ、ちゃっちゃとやっちゃおう! そうだ、お水をあげてから掘り返せば、少しは土も柔らかくなるんじゃないかな?」

「え!? あ、だめーーーーーーー!!」

「うわ、ひゃあああああああ!!!」

 水道の蛇口をひねってホースを植木に向けたとたん、水色ちゃんが普段からは想像もできない勢いでタックルしてきて、私たちは二人してずぶぬれの泥まみれになってしまった。

 

「ごめんね、結局邪魔しかしなかったね、私……へぷしっ」

「ううん、知らなかったんだもん、しかたないよ……でも、寒い時間にお水を撒いちゃうと、根が傷んじゃうから……くちゅん」

 湯船につかりながら、二人してくしゃみを連発。はあ……またやっちゃったよ……どよーんとした重い空気がお風呂場に漂う。

「あの、もうよけいなことしないから、あとでまた手伝ってもいい? 今度は水色ちゃんにやること指示してもらって、その通りにするから」

「え……うん、それなら……ごめんね、気を遣わせちゃって……」

「もう、気を遣うとかそういうのじゃないよ。水色ちゃんが頑張ってるから、友達としてお手伝いしたいの。分かった?」

「……うん。ありがとう……」

 いつも通りうつむいてはいたけど、水色ちゃんはようやく少しだけ笑ってくれた。それを見ただけで胸の真ん中あたりが暖かくなる。よし、今度こそ頑張ろう!

 

 汚れを簡単に洗い落としてもう一度湯船に浸かったときに、私はようやく本題を思い出した。

「そうだ! ねえ水色ちゃん……終業式が終わったらすぐ実家に帰っちゃうって聞いたんだけど、ホントなの?」

「え? うん……そのつもり……」

「だって、クリスマスイブの夜には寮でパーティがあるんだよ? それに参加してからでも遅くないんじゃない?」

 すると水色ちゃんは、いつにもましてうつむきながらぼそぼそと呟いた。

「もう寮に入って一年近くになるけど、結局みんなとあんまり仲良くなれなかったし……私がいない方が、みんなも楽しめるんじゃないかと思って——」

「そんなことないよ!!」

 思わず大きな声が出ちゃった。びくっと水色ちゃんが震えたけど、かまわず続けた。私、怒ってるんだから。

「自分でそんなこと言っちゃだめだよ! みんな水色ちゃんのこと大切な友達だって思ってるし、いてくれた方が楽しいに決まってるよ!」

「で、でも……私、寮のお掃除とかご飯の準備とかもしてないし……」

「朱色さんだってしてないよ!」

 朱色さん、ごめんなさい。でも朱色さんはもうちょっと頑張ってもばちは当たらないと思います。

「学校でも、部活とか委員会とかで活躍してるわけでもないし……いてもいなくても、あんまり変わらないと思う……」

「私だってちっとも活躍してないよ!」

 う、自分で言うとちょっとへこむ……。

「それに、水色ちゃんは活躍してるよ。教室や寮の玄関に季節のお花飾ったり、夏の暑い日に草むしりしたり、今日だって寒いのに植え替えしたり」

 一つ一つ、指折りながら水色ちゃんの行いを数え上げる。

「みんな何にも言わないけど、すごく癒されてるんだよ。みんなそれが水色ちゃんのおかげだって知ってるよ。目立たなくても、水色ちゃんはちゃんと活躍してるよ」

「茶色ちゃん……」

「あとちょっとだけ勇気を出したら、もっともっとみんなと仲良くなれるよ! だから、ね、クリスマスパーティに参加しようよ」

「……うん……うん……茶色ちゃん……ありがと……ありがとう……」

 しがみついてきてぽろぽろと涙をこぼす水色ちゃんを胸に抱きしめる。二人とも裸だから、ちょっと妙な気分。

「明日さ、学校終わったらプレゼント探しに行こう? お花とかどうかな? 水色ちゃんなら、みんなにぴったりのを探せると思うんだ」

「うん……うん……」

 うなずくばっかりの水色ちゃんが泣きやむまで、私はずっとその髪をなでてあげた。二人とも風邪引かないように、あとできちっと気をつけないと。

 

 水色ちゃんへのプレゼントもお花にしよう。種を買って、門柱にもバラとか這わせて、寮のお庭にいんぐる……いんぐ……なんとかかんとかガーデンを作ろう。

 ちょっとお財布の中身が心配だけど、二人で頑張ればきっと大丈夫!


『紫×黄緑』

「きみどり〜、どこ? ご飯だよ〜。きみどりったら〜」

 きみどり用のお茶碗をチンチン鳴らしながら廊下をうろうろしてたら、台所から黄緑が顔を出した。

「は〜い。どうしたの紫ちゃん? お昼ご飯ならもう少しでできるから、もうちょっと待っててね」

「わっ! ち、違うよ! 黄緑じゃなくてきみどりを探してたんだよ!」

「……はい?」

 ぽやーっとした顔で首をかしげる黄緑の頭の上に、『?』がいっぱい浮かんでるのが確かに見えた。

 

「ああ、私じゃなくてこの子を探してたのね。それならそうと言ってくれればいいのに……」

「だから言ったじゃん! きみどりを探してるんだって!」

「ニャー」

 はぐはぐと猫缶をがっついてても、呼べばちゃんと返事してくれる。そういうところは可愛いんだけど、いっつも私の部屋じゃなくて黄緑んとこにいるのは気に入らない。

「なんできみどりは黄緑の部屋が好きなんだろ?」

「名前が同じだからかしら。ねえ?」

「ニャ〜ン」

 黄緑が指を差し出すと、きみどりは甘ったれた鳴き声を上げて頭をこすりつけた。む〜……飼い主のあたしにだってあんなことしないのにぃ。

「あ〜あ、こんなことならきみどりなんて名前にするんじゃなかったよ」

「そうね、名前が同じだといろいろ不便だし。あら? そういえば、何できみどりって名前をつけたの?」

「! わ、忘れちゃったよ、そんな昔のこと!」

 ホントは覚えてる。拾ってきたばかりのころ、この子に黄緑の話ばっかりしてたら自分の名前だと思いこんじゃったんだよね……でも、そんなこと言えないよ!

「……黄緑はクリスマスの日、なんか予定ある?」

「そうね、パーティのお料理は群青さんがやってくれるって言うし、特にないわね。のんびりしようかしら」

「そっか……みんなにあげるプレゼントはもう用意したの?」

「だいたいは用意したけど、まだ決まらない人も……そうそう、紫ちゃんのもまだなのよ。紫ちゃん、何か欲しいものない?」

 まったく、黄緑ときたらこっちが聞きたくても聞けないことをさらっと聞いてくるんだから……。

「そ、そういうのは本人に内緒で用意するからいいんでしょ! 自分で考えてよ!」

「あら、そうね。ごめんなさい。じゃあ当日楽しみにしててね、すごいの用意しちゃうから」

 うう……この会話の流れじゃ、とても黄緑に欲しいものなんて聞けない……。

「どうしたの、ため息なんかついちゃって?」

「なんでもない!」

 

 きみどりが猫缶を食べ終わって、お皿をペロペロなめるのをぼーっと眺める。

「きみどりはお気楽でいいねー」

「え? 私そんなお気楽に見える? これでも人並みにいろいろ考えたり、悩んだりしてるつもりなんだけど……」

「も〜、違うったら! 黄緑じゃなくてきみどりに——」

 そうだ! 私は起死回生の策を思いついて、コタツから身を起こすときみどりを抱え上げて黄緑に押しつけた。

「え、なに?」

「えー、ゴホン……きみどりはクリスマスプレゼントに何が欲しい?」

「え? さっき紫ちゃん、そういうのは内緒の方がいいって……」

「それは黄緑の話でしょ! わたしはきみどりに聞いてるの!」

 我ながら苦しい。まっすぐ黄緑の方を見られなくてうつむいてしまう。黄緑はしばらくぽかーんとしてたみたいだけど、すぐに私の言いたいことを分かってくれた。

「ああ、そういうことなのね……ええと……『ワタシは紫ちゃんからもらえるならなんでもいいニャー。猫缶とコタツがあれば毎日ハッピーニャ!』」

 がっくり。全然分かってなかった……それじゃホントにきみどりにアテレコしてるだけでしょ! やり遂げたー、みたいな顔すんな!

 作戦が失敗してぶすくれていると、黄緑はクスリと笑ってベッドの脇に置いてあったクマのぬいぐるみを取り、私に押しつけた。

「……なに?」

「『こんにちは、ワタシはきみどりにゃー。クマさんの名前はなんて言うのかニャ?』」

「え? ええと……『ボ、ボクの名前はむらさきだ……クマー』」

 黄緑の前足を取ってノリノリで声を当てる黄緑。それにしても、黄緑もよくおとなしくつきあってるなあ……私がやったら絶対逃げるくせに。   

「『むらさきちゃんか〜、いい名前だニャ。ねえむらさきちゃん、むらさきちゃんにクリスマスプレゼントをあげたいんだけど、何が欲しいかニャ?』」

「だ、だからそういうのは内緒で……」

「あら? 今のは私じゃなくて、きみどりちゃんがクマのむらさきちゃんに聞いてるのよ?」

 やられた……黄緑にはやっぱりかなわない。私はクマちゃんの後頭部に顔をすっぽり隠して、消えるような声で言った。

「……『ボクは……クリスマスの日にきみどりと一緒に過ごしたい、クマー。一緒にいられたら、他に何もいらない……クマ』」

「あら……うふふ。『そうニャんだ。じゃあ、クリスマスの日は朝からお出かけニャ。お買い物しておいしいもの食べて、一緒にイルミネーションを見ようニャー』」

「うん……うん! 黄緑、大好き!!」

「ミギャア!!」

「きゃ、ちょっと紫ちゃん……あらあら」

 私と黄緑の間に挟まれちゃったきみどりが、悲鳴を上げて飛んでいった。ごめんね、きみどり。そしてありがとう、全部きみどりのおかげだよ!


『グランドフィナーレ〜女々しい色無の詩』

 がらりとベランダのサッシを開け、庭に出る。サンダル履きのつま先が急速に冷えて痛いくらいだが、気にしない。

「……いい月だ」

 空は雲が多く、星はほとんど見えなかった。だが、月の周りだけぽっかりと穴が空いたようになって、青い光で地上を染めていた。

「……」

 無言で立ちつくす。こんなとき、大人ならタバコを吸ったり酒を飲んだりするのだろうが、あいにく俺は未成年。どちらに逃避することもできない。

「……どこで、間違っちまったんだろうな」

 サッシの向こうはパーティ真っ最中。暖かい部屋の中で、12人の同級生たちがクリスマスイブを堪能している。

「バイトして、生活を切りつめてプレゼントを用意して……普段の言動にだって充分気をつけていたのに……なんで……」

 答えのでない問いが頭の中をぐるぐると回り続ける。

「俺へのプレゼントが、全員……一人残らずメッセージカード一枚きりなんて……あんまりだよ神様……」

 夢ならさめて欲しかった。しかし、手にしたカードが嫌でも俺に現実を見せつける。

「フフフ………12人とも……いや、『6組』とも、かな……楽しそうだな……フフフ……」

 何人かは申し訳なさそうにしていたし、『ごめんね』といってくれる子もいた。しかし、全員がそうだったわけじゃない。

「……青なんか完全にシカトだし……いや、青はまだましか。白に話しかけたら、黒に面と向かって『邪魔』って言われたしな……」

 携帯電話を取り出す。もしかしたら俺と同じ境遇なんじゃないかと思って、あいつの電話番号を表示してみる……そして、発信直前に思いとどまった。

「そんなわけ、ないよな……あいつはきっと侍黒と仲良くやってるさ」

 いつの間にか、空からちらちらと雪が降ってきた。やがて室内の彼女たちも気づいて歓声を上げるだろう。

「……そのとき、ここにいたらみんなの視界に入っちゃうな……部屋に戻って寝るか」

「今年も一人か……」


男「久しぶり、白」

白「あ、色無さん……」

男「はい、クリスマスプレゼント」

白「あ、ありがとうございます」

男「それにしても寒いな。手袋なかったからマジで凍傷になるかと思ったぞ」

白「くす……それは貴方が悪いに決まってるじゃないですか。冬に防寒対策しないなんて小さい子供のすることですよ?」

男「ハハハ……。これはやられたな」

男「で、そろそろ時間だから帰るけど大丈夫だよな?」

白「……」

男「……?」

白「雪……」

男「あ……」

白「私があの中に入ったらとけてなくなってしまいそうですね……」

男「無くなったりはしないさ」

白「え……?」

男「たとえあの中に白が紛れ込んだとしても俺なら見つけられる。愛の力でなw」

白「……///」

男「……///」

白「……///」

男「……///」

白「綺麗ですね……」

男「あぁ、綺麗だな……」


 パーティで夜更かしした夜。

 あの娘と二人、肩を並べて歩く。

「楽しかったねぇ」

「そうだな。たっくさん遊んだよ。ホラ、冬だって言うのに、もう夜明けだ」

 見上げた空は蒼、紫、ピンク、橙、白。

 たくさんの色がとんでもないグラデーションで空を彩っていた。

「す……ごい……ね。夜明けの空って……こんな色なんだぁ……」

 立ち止まって、見とれる二人。

 吐息が白くたなびく……今なら、言えるかもしれない……。

「なぁ、橙。俺……」

「ん?」

「俺……」

「……」

「……」

「ん、もう。そこで黙ったらダメじゃない」

「すまん……」

「……ばかね。謝るトコでもないよ。もう……不器用なんだから……」

 ファースト・キス。震える唇。歩み寄る君と俺との夜。

 朝焼けのなかで……二人で思い出を一つ重ねた。

 いつか、懐かしく思い出す日がくるだろう。

 この朝焼けの中で……


紫「今日はクリスマスかぁ」

無「今日はイブだぞ」

紫「……し、知ってたもんっ!」

無「プレゼントは用意してないぞ?」

紫「そ、そんなの期待してないし!びんぼー色無なんかのプレゼントなんかいらないし!」

無「むっ……金はかかってなくても心はこもってるぞ?」

紫「えっ?」

無「あっ……(言っちゃった。秘密にしとこうと思ったのに……)」

紫「く、くれるの……?」

無「ぅ……あー……あ、明日のお楽しみだ!」

紫「……そっか、じゃ楽しみに待ってる……ね」

無(うわぁぁぁなんかすごい期待の眼差しで見られてる……)

橙(なにあのラブラブ空間……入り込む隙間がないんですけど……)


橙「今日はクリスマスかぁ」

無「だから今日はイブだって」

橙「別にプレゼントはイブにあげてもいいんじゃない?」

無「は?プレゼントなんて用意してないけど?」

橙「そんなこと言っちゃって、ホントは用意してあるんでしょ?」

無「ねーよ」

橙「(ガーン)……そ、そう……べ、別にがっかりしてなんかないんだからねっ!!」

無「それなんてツンデレ?」

橙「うわぁぁぁぁん!色無の馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!!(ダッ)」

無「……ふぅ、橙にはちょっと酷だけど、なんとか明日まで紫以外には秘密にできそうだな」

 その頃の紫

紫「〜〜♪」

黄緑「あら、紫ちゃんなんか嬉しそうね?」

紫「そ、そそんなことないよっ!?」

黄緑「うふふ、クリスマスが楽しみね」

紫「……うん!」


 いよいよこの日が来た。イブの夜、ボクたちトナカイはサンタさんの家の前に集まっている。

 サンタのソリを引けるのは大勢の中から選ばれた選りすぐりのトナカイだけで、選ばれることは栄誉だ。仲間内では英雄扱いされる。

「いや〜みんな待たせたね」

 ようやくサンタさんが出てきた。キャーっと歓声が上がる。

 いつの時代もサンタは人気者だというけれどこのサンタさんは特にそうで、カッコ良くて優しいとみんなに評判のサンタさんだ。

「キャー☆ 色無く〜ん☆」

 うるさいなぁ……。ボクの横で歓声を上げたのは桃といって、トナカイ仲間の内でも人気の高い子だ。

 なぜなら、その……出るとこは出てて、引っ込んでるところは引っ込んでるというか……うぅ……ボクとは大違いだ……。

 ざわざわざわ。

 辺りがざわつく。

 名前で呼んだからだ。

 人気者のサンタさんを名前で呼ぶということはそれだけ親しいということ。実際サンタさんとは仲が良いらしく親しげに話しているところを時たま見かける。くそう……。

くやしいけど……でもボクだってこの日のために頑張ってきたんだ。良いところを見せて一杯褒めてもらおう。えへへ。

「準備はいいかい?」

「はい!」

 サンタさんの声にボクたちは一斉に元気良く答える。ソリを引っ張る準備は万端だ。

「君は……」

「え?」

 先頭のボクにサンタさんが話しかけてきた。

「君は能力検定で一番になったトナカイだね? 確か……赤といったかな」

 能力検定はこの時期に行われる試験で、毎年成績上位者がこうしてサンタさんに選ばれる。

「は、はい!」

 憶えててくれた。そのことが嬉しかった。それだけじゃなくて——

「期待しているよ」

 そう言って頭を優しく撫でてくれたんだ。

「は、はい〜」

 ボクは力無くそう答えてしまった。だって嬉しかったんだもん……。気をつけようと思うのだけれどどうしても頬が緩んでしまう。

「赤ちゃん」

「……ん?」

 そんなボクに隣にいる桃が話しかけてきた。

「負けないんだからね!」

「あっ……」

 その言葉で正気に返る。桃はこう見えて今年の成績上位者。優秀なトナカイだ。

「ボ、ボクだって!」

 慌てて意を正す。そうだ、今日の仕事はこれからだった。よ〜し、桃には負けないぞぉ。

「そうれ」

 出発の合図だ。

 シャンと鈴が鳴り、ボクたちは星空へ向かって一斉に走り出した。

 一軒一軒回っているけど流石に疲れてきた。

「ふぅ、ふぅ……」

 隣の桃も息が荒い。ずっと走り続けているから無理も無いけど……。

「さぁ、急がないと夜が明けてしまうよ」

 ぴしりとムチが入る。

「うっ……」

 頑張って子供たちにプレゼントを届けなきゃ……。そしてサンタさんに認めてもらうんだ……。ボクはスピードを上げた。

 ぴしり。またムチが入る。

「痛っ!」

 ぴしっ。またムチ。

 サンタさん急いでいるのかな……うぅ……でもこれ以上スピードは上げられないよぅ……。

 ぴしっ。

「ひん、痛いですっ! もうちょっと優しくしてくれませんか!?」

「ふはは、何を言っている。トナカイなどサンタの下僕に過ぎんのだよ!」

 え? サンタさん?

 ぴしぴしっ。

「い、痛っ! 非道いですこんな……」

 ぴしぴしぴしっ。

「それ〜走れ走れ〜!」

「きゃぁん!!?」

 ああ、サンタさん非道いよう……。くやしい……! ああでも何故だか感じちゃう……! ビクッビクッ……。

 

「って、そんなわけあるかぁあああああああああああああ!!!!」

 ぜはー、ぜはーと息をしながらボクは目を覚ました。

「夢か……」

 現実ではないことに安心する。うぅ……アイツだ……アイツがあんな本持っているからいけないんだ……ぐすん……。

「赤! どうした!?」

 ドタドタドタ、と部屋に駆けてくる音が聞こえる。

「凄い声だったぞ!? 怪我でもしたのか!? 大丈夫か!?」

「お前のせいじゃああああああああ!!!!!」

「ぐぎゃああああああああああ! 赤に殴られたぁああああああ!!!!!!」

 もんどりうって色無は倒れたかと思うと騒ぎを聞きつけて集まった他の色たちに、『ねぇ、俺赤に何かした? 何で殴られたの?』と聞いている。

きっと思い当たるところが無くてわけがわからないんだろう。ふふん、ボクの捜索能力を甘く見るなよ?

 しかし……。まったく……。せっかくのイブの朝だっていうのにこんな夢を見るなんて……。

 中途半端なプレゼントだったら許さないんだからな


黒「は、はいこれ」

白「わぁ、ありがとう黒!」

黒「そ、それでそっちは?」

白「うん。色々考えたんだけど……これ」

黒「ロケット……?」

白「うん……気に入らなかったかな……?」

黒「……そんなことないわ。ありがとう、大事にするから」

白「……もうちょっと身体が丈夫だったらなぁ……」

黒「だから私は気にしてないから」

白「でも……」

黒「……私は白と一緒に入れるだけで充分だよ」

白「……うっ……ひくっ……」

黒「ちょ、ちょっとなんで泣くのよ……」

白「ごめんね……くーちゃん……」

黒「……もう……」


 ガッシャーン!

「何事!?」

 窓ガラスが割れ、見知った女の子が現れた。

「ご、ごめん……割っちゃった……」

 そうやって申し訳なさそうに詫びる彼女の姿はミニスカサンタで。

「あの……そのね……びっくりさせたくて……」

「……だからって窓割っちゃ駄目だろ……」

 そう言うとますます彼女は小さくなって、

「あぅ……」

 涙目になっている。

「でも、喜ばせたかったんだよな?」

「あ……う、うん!」

 居た堪れなくなった俺がそう言って頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑んだ。

「色無が寂しくしてると思って来てやったんだからな!」

「はいはい」

「う〜」

 今年も寂しいクリスマスかと思っていたところに来てくれた事は素直に嬉しかった。でも、赤が唸ったってちっとも怖くない。むしろ可愛いし。

「で、プレゼントは? サンタさん」

「うっ……」

 そう言うと赤は黙ってしまった。なんだよ、ちょっとからかってやっただけなのに。プレゼントなんか無くたってお前といられればそれで——。

「ボ、ボク……」

「へ?」

 耳を疑った。いや、あの赤がこんなカッコしている時点で気付くべきだったんだ。赤は顔を真っ赤にして俯いている。

「ボクじゃ駄目……かな……?」

 そう言うと指をもじもじし始めた。

「……そんな事言ったら、それこそ俺なんかでいいのか?」

「何言ってるんだよ! そんなの良いに決まって……」

 とたんに歯切れが悪くなり、

「……いいに決まってるじゃないか……」

 消え入りそうな声でそう呟く。そんな赤が愛おしくてたまらなくて——。

「うわっ!?」

 思わず抱き寄せる。赤の腕や身体は思いの外細くて、軽くて。簡単に腕の中に納まってしまった。勝気で強がってばかりの赤だけど、

こういったところでやっぱり女の子なんだなと改めて実感する。

「な、何するんだよ……」

 耳まで朱に染まった赤がそう呟いた。

「……嫌か?」

「……嫌じゃないけど……」

 そういって俯く頬は桜色。

「……ねぇ色無?」

「うん?」

「……ボクのこと好き?」

「もちろん」

「じゃ、じゃあ……」

 そういうと赤は上目遣いに俺を見つめる。その仕草は何かをねだるようで。ああ、わかったよ。

「ん……色無……好き……」

 そうして二人は唇を交わした。ありがとう赤。おかげで素敵なクリスマスになったよ。


男「お、珍しく起きてくるの遅いじゃんか。どーした」

緑「……おはよ。本読みすぎた」

男「そか。もう昼だからみんなほとんど出かけちゃったぞ?」

緑「ん……わかってる」

男「どしたのそのカーディガン?」

緑「……起きたらあった」

男「……サンタさんってやつか」

緑「オレンジに聞いてみたらブランド物だ、って」

男「へー。いいなぁ女の子はプレゼントもらえて。俺ももらいたいなー」

緑「……ったく白々しい」

男「何が?」

緑「あんたでしょ」

男「サンタさんだろ?俺は知らないよ」

緑「……目の下くまできてる」

男「あー……灰とゲームやりすぎたかな」

緑「……」

男「どうせ図書館だろ?年末年始閉まっちゃうもんな。俺も借りてやるよ。5冊じゃ足りないっしょ」

緑「……ばか」

男「早く顔洗ってきな」

緑「うん。……ありがと」

男「図書館ぐらい礼には及ばんよ」

緑「そっちじゃなくて」

男「……何の話かな?」


白「……ん……んみゅ……」

ある意味、見慣れた天井。外は残念ながら雪化粧はしていなかった。

白「……朝、か……」

一昨日から検査の為に入院している白はもの哀しくなっていた。

白「昨日は楽しかったな……」

検査とは言え、入院している白を思って昼間は寮のみんなと、夜は小児科棟の子ども達と、X'masパーティーを楽しんだ。

白「明日には帰れる。って言ったのに……」

寮のみんなから貰ったX'masプレゼントを見ながら微笑んでいた。

白「赤ちゃんは、プロテイン……緑ちゃんは……あ、この本読んでみたかったんだー。みんな優しいなぁ……」

包装紙を丁寧に外し一つ一つ、確かめていく。

 コンコン……ガチャ

看「白ちゃーん。おはようー」

担当の看護師が入ってきた。彼女とはある意味姉妹みたいな関係になっていた。

白「おはようございます。いつも元気ですね」

看「だって私達が暗かったらみんな不安でしょ?」

白「ですね」

看「あ。それから、深夜の王・子・様から預かってるのよー」

白「えっ!?いや、あの、王子様じゃなくて友達——」

看「全く妬けるわよね〜昨日の夜、消灯直前に来て『寝てるだろうから』って預けていったわよ。私もあんな彼氏、欲しいわ〜」

冷やかされながら渡されたのは、少し大きめのX'masラッピングされた袋。

看「じゃね〜」

顔を真っ赤にした白は一人残された。

白「お姉さん、あの性格が治れば彼氏さんなんかすぐ出来ると思うのに……何だろうな?」

独り言の様に文句を言いながら袋を開ける。

白「あ……暖っかそうなマフラーと手袋だ」

真っ白な女性物のマフラーと手袋。恥ずかしそうになって購入する王子様の姿が想像できる。

 パサッ

白「……ん?メッセージカードが入ってた」

 Merry X'mas!寮のパーティーに白がいないのは残念。でも、年越しは叶うなら二人っきりで過ごそうな……

愛しそうにメッセージカードを読み終えた白は、病室の窓から遠くの空に単車に乗ったサンタが見えた気がした……


『さんた? があらわれた!』

 いい子なんだけど、ちょっとバカなんです編

男「ぐか〜」

赤「(ガンガンガン)め〜りぃ〜くりぃ〜すまぁ〜す!! あ〜け〜て〜ぇ〜!!」

男「もうちょっと忍んで来い」

黄「メリクリ〜!!」

男「おう、メリー」

黄「うぇ!? 何で起きてんのっ!?」

男「真昼間に来て何言ってんだ」

男「ぐか〜」

水「し、失礼します……」

男「すぴ〜」

水「そーっと、そーっと……よしっ」

男「んぅ? ……何だこれ?」

水「ぁ……あ、朝まで見ちゃ駄目ですっ!!(グキッ)」

男「あがっ!? く、首がぁっ!?」

男「ぐか〜」

桃「メリークリスマース♪」

チュンチュン

男「ん? 何だこの紙?」

桃『サンタ参上☆ 欲しい物があったら教えてね?』

男「……遅すぎじゃね?」

 常識? そんなにありません編

男「ぐか〜」

紫「……人の苦労も知らないで。憎たらしいぐらい熟睡してるわね」

男「すぴ〜」

紫「ちょっと、起きなさい(ぺちぺち)」

男「むぅ……ん? 紫?」

紫「はいこれ」

男「?」

紫「ぼけっとしてないで、人に物をもらったら何て言うの?」

男「……ありがとうございます」

紫「よし。私があげたんだからね、忘れたら許さないから」

男「忘れられる訳ねぇだろ」

橙「おっじゃましま〜っす」

男「ぐか〜」

橙「よく寝てるねぇ。じゃあ今のうちに……」

男「……んあ? 何してんのお前?」

橙「後はこのCDと——あ、起きた? ちょっとよいこの私のためにプレゼントをね」

男「帰れ逆サンタ」

男「ぐか〜」

黄緑「あらあら、気持ちよさそうですね。それじゃあ今のうちに……」

男「すぴ〜」

黄緑「よし、完璧。起きて下さい、起きて下さい(ゆさゆさ)」

男「ん〜……へ? き、黄緑さんっ!?」

黄緑「はい、プレゼントのケーキです。とっても美味しく出来たんですよ? あ〜ん」

男「あのさ、夜中に叩き起こされたりとか寝起きに甘い物は勘弁とかそもそも何してんのとか色々言いたいんだけど」

黄緑「あ〜ん」

男「聞いてる?」

黄緑「あ〜ん」

男「……あ〜ん」

 朝帰り(性的な意味じゃなくて)編

男「ぐか〜」

白「ふふっ、よく寝てる。はい、メリークリスマス」

男「すぴ〜」

白「……私も眠くなってきちゃった。この部屋あったかいし、帰る前にちょっとだけ横になっちゃおうかな?」

 チュンチュン

男「お、プレゼント——の横に白さんっ!?」

白「……すぅ〜」

男「い、生きてる? 生きてるよね!? 返事してぇ〜!!」

男「ぐか〜」

茶「お、おじゃましますっ。えっと、プレゼントプレゼント……」

男「すぴ〜」

茶「(ゴソゴソ)あれ?~これじゃなくって——あれ? これでもなくって——あれ?」

 チュンチュン

男「……」

茶「うぅっ、これも違う〜。どこに入れちゃったのぉ〜?」

男「……ぶっちゃけ、どれでもいいって言ったら怒る?」

男「ぐか〜」

緑「さて、と。はいプレゼント」

男「すぴ〜」

緑「これって私も読みたかったのよね……」

男「すか〜」

緑「ちょっとぐらい大丈夫——よね?」

 チュンチュン

男「……えっと、何してるんですか?」

緑「読書中。邪魔しないで」

男「無残に破かれた包装紙を片付けてから言ってくれ」

 ベタにベタベタ編

男「……」

青「死んでるんじゃないって勢いで寝てるわね……ま、プレゼント置いて行くのに楽でいいけど」

男「……」

青「……寝てるのよ、ね?」

男「……」

青「べ、別にキ、キスとかじゃなくてこいつがちゃんと息してるかどうか確認するだけなんだから……(チュッ)」

男「……う?」

青「っ!?(ドスッ)」

男「ゲフゥッ!!(ガクッ)」

 チュンチュン

男「あたた……口は押さえられるわボディは殴られるわ、最近のサンタは暴力的になったもんだ」

男「ぐか〜」

黒「やっぱりバカみたいに寝てるわね——よいしょっと(ゴソゴソ)本当、私って友達思いだわ」

 チュンチュン

男「ふわぁ〜あっと」

白「すぅ〜」

男「なっ!? し、白さん、何で俺のベッドに入ってんの!?」

黒「ちょっと、白が起きるじゃない。もうちょっと静かにして」

男「黒もかよ!?」

黒「だから声のトーン落としなさいって」

男「女の子が一緒にベッドに入ってて落ち着けるかっての! 何してんだよお前!?」

黒「クリスマスプレゼントなんだから、今日ぐらい大目に見なさい」

男「プレゼントって——白さんが?」

黒「何であんたに白をあげないといけないのよ。あんたが白へのプレゼントよ」

男「人を勝手に物扱いすんな。ってか、俺には無しかよ」

黒「誰が無いって言ったの? あんたの目の前にいるじゃない」

男「目の前って……お前?」

黒「正解、私があんたへのプレゼント。さぁ、今日はあんたの物なんだから好きにしていいわよ?(ぎゅっ)」


「う〜ん朝か……」

 クリスマスの朝。昨日はイブだっていうのに何にも無かった。

「ふぁ〜」

 おもむろに伸びをしてベッドから降り、カーテンを開ける。朝の光が差し込んで眩しい。

「っと……?」

 そこで俺は何やら見てしまった。綺麗にラッピングされた巨大な箱を。……見てはいけないようなものを見てしまったような……。

「どうしたもんかなこれ……」

 開けてみたい。でも開けてはいけないような気がする。

「う〜ん……」

 迷った末に俺はリボンを紐解いた。

 別にいいよね。俺の部屋に置いてあったんだし。不味かったら戻せばいい。っていうかこれ、プレゼントだよね……?

 ついに俺のところにもサンタがやって来たか。日頃の行いが評価されたのかもしれないと喜び勇んで箱を開けると——

「ばあ! 桃ちゃんです☆」

 ——桃が出てきた。かと思うと——

「桃!? わあっ!?」

 ——飛びついてきた。なんて危ないことを……吹っ飛ばされる形で俺は桃と一緒に後ろのベッドへダイブ。

「めりぃくりすますっ☆」

 桃は俺の上に伸し掛かりながら心底嬉しそうにはしゃいでいる。だが……。

 むにむにむに。凶器と化した桃の胸が容赦なく俺に襲い掛かってくる。

「あの、桃さん……?」

 柔らかくてふかふかで。思わず理性が飛んでいってしまいそう。

「あぅ……」

 思わず声を上げると、

「えへへ、気持ちいい?」

 桃が尋ねてきた。

「あっと……」

「ふふ、だって気持ち良さそう」

「う……」

 本心を見抜かれたようで恥ずかしくなった。気持ちいいのだ、実際のところ。女の子の胸がこんなに気持ちいいものだったなんて。

いや、桃の胸だから気持ちいいのか……?

「えへへ、プレゼントだよ?」

「……はい?」

 思いもかけない言葉に俺はわけがわからない。

「だから、プレゼントは……桃なの……」

 恥らうようにそう答える桃の頬はピンク色。

「桃……?」

「好きにして……いいんだよ……?」

 脳が蕩けてしまう。その言葉で俺の理性は飛び——

「きゃん♪」

 立場逆転。俺が上になる。っと……?

 じーっ。

「……え?」

 嫌な気配を感じて視線を向けたその先には——

「あ、お構いなく〜」

「ほらね、男なんて皆こんなもんだって言ったでしょう?」

「……」

 ——ビデオカメラを回している灰と、黒に話しかけている緑、そして刺すような視線を俺に向ける黒がいた。

「ごめんね、色無くん」

 ペロッと舌を出して笑う桃。頭が真っ白になってしまった。

「なんだよ、これ……」

「さ、いいからいいから、続けて」

「続けられるかっ! てか何でカメラ回してるんだよ! ……あ、おいっ!」

 言い合っている俺と灰に構わず黒が踵を返す。

「何よ。続けてればいいでしょ?」

「続けてればって……おい、待てって!」

 制止を振り切って黒は行ってしまった。

「残念だったわね」

 呆然としている俺に向かって緑が話しかけてくる。

「……何が?」

「……あの子、あなたに気があったみたい。あ〜あ、フラグ折っちゃった〜」

「……お前……」

 黒が俺に気があっただって? 何だそれ。そんな話は聞いてないぞ!?

「さぁて、みんなにこの動画見せてきましょうか灰ちゃん」

「うん」

「ちょ、ちょっと待てお前ら! 何企んでるんだ!?」

「なぁ〜んにも。ねぇ灰ちゃん♪」

「うん♪」

 嘘だろそんなの……何考えてるんだ一体……。

「……そうね、今度一日図書館に付き合って頂戴。次の週末で良いから」

「……は?」

「それで無かった事にしてあげるわ」

「お前なぁ……」

「私も新作ソフト三本で許してあげる〜」

「……お前もか……ってか三本!?」

 何というかもう……。俺はガックリとその場にうなだれた。

 ん?

「……そういや桃は何で参加したんだ?」

「えへへ、楽しそうだったからです☆」

「……ああ、そう……」

「それにね」

「ん?」

「……ううん、何でもない」

「……なんだよ、言えよ」

「えへへ〜秘密なのです」

「……なんだかなぁ〜もう……」







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 15:20:04