家具選びで、ベッドコーナーでなんとなく照れる。
「わ……私、向こうでタンスとか見てきますね」
一緒にテレビ。わからないなりにサッカー中継を目で追う。
まだまだ『愛してる』とは言ってくれないけど、代わりに幸せだと言ってくれる。
「お仕事頑張ってください」
モミモミ。
「そうだ……名字変わったんだったぁ……エヘヘ」
「確かに家事は分担するって言ったけど……やっぱり洗濯物は恥ずかしいよぉ……」
「というわけで新婚旅行にやってきました」
「布少なすぎだよ……常識的に考えて……」
「え〜、いいじゃん。一緒に遊ぼうよ〜」
「えっ……あの……(オロオロ)」
「!! ……帰るぞ!!!」
「恥ずかしい……けど……好き」
「やっぱりちょっと恥ずかしいですね」
「新婚っていう大義名分がないとあまりできそうもないな」
「そ、そうですよね……やっぱり」
「ねぇ、水。こっち向いて話してくれない?」
「そ、それは無理です!! 恥ずかしくて死んじゃいます!!」
「まぁ、それは俺もだけどさ」
「……」
「水の髪っていつ見てもきれいだよな」
「え? そうですか……って、色無君! くすぐったいですよ!」
「ごめん、ついな。でもサラサラだ」
「あぅ」
「……チュ」
「!!!!」
「み、水!? のぼせたのか!?」
「こんばんわ」
「いらっしゃ……い、色無君。どどうしたんですか?」
「いや、仕事が早めに終わったからさ。ちょっと水の仕事の様子でも見てみようと思って。迷惑だった?」
「いえ、そんなことないです! 私もう終わりになるので少し待っててもらえますか?」
「分かったよ。あわてなくていいからな」
「しかし、花屋っていうのもあまり暇じゃないんだな」
「そうなんですよね……あ、でも全然つらくはないですよ。好きな事をやってるんですから」
「そっか……そういえばショーウィンドウのところにずっとちっちゃい女の子がいたよな。どうしたんだろう」
「あの子ですか? なんでもお母さんにお花を贈りたいんだけど何がいいか決めてないそうで。それでずっとああしていたそうです」
「そうなんだ。なんつうか、ちょっと微笑ましいな」
「あの……色無君」
「ん? どうかした?」
「子供って……可愛い……です……よね」
「まぁ、基本的にはな。みんな可愛いと思うよ」
「その……子供……欲しいですよ……ね?」
「え? ああ、まぁ……な」
「……」
「……」
「……」
「……」
「お、お腹空いちゃいましたね! は、早く帰って晩御飯にしましょう!」
「ちょ、ちょっと待てって。そう急かすなよ」
色無です。今日も今日とて大残業。それでも終わらず、明日は休日だというのに、家に仕事を持ち帰りです。
「あの、色無さん……そろそろお休みの時間ですけど……」
「あー、これ今日中に——って言っても、もう12時回っちゃったけど、寝る前に終わらせちゃいたいから、先に寝てていいよ。お休み、水」
「……分かりました……お休みなさい……」
(? なんか涙目になってたような……?)
しばらくパソコンに向かってうなっていると、さっき出てった水が戻ってきました。
「あれ、まだ起きてたの? もう遅いから早く寝ないと——」
「あの……一人だと寂しいから、ここにいてもいいですか? 頑張って起きてますから、終わったら一緒に寝ましょう?」
今、水は僕の後ろで仕事の邪魔をしないように息を殺しながら、ときどきうつらうつらと船を漕いでます。
神様ありがとう、僕にこんな可愛いお嫁さんをくれて。