橙メインSS

「フォークダンス;オレンジの場合」

今日は文化祭の最終日だ。俺はこの日があまり好きではない。

別に文化祭が嫌いだという訳ではない。嫌なのはその後だ。

そう、フォークダンス。

うちの学校のフォークダンスは輪になって相手がくるくる変わるのではなく、

パートナーを見つけて踊るというものなのだが、ヘタレな俺にそんなことできるはずもなく

去年は一人むなしく残り物の出店焼きそばを喰らっていたのだ。

だが今年の俺は一味違うぜ。いや、まぁ、その・・・今年はお好み焼きなだけなんだけどねorz



そんなこんなでグラウンドの端のテーブルで黙々とお好み焼きと格闘している時だった。

? 「いたいた〜。探したわよ〜。」

男 「ん?おお、オレンジか。」

橙 「こんなところで食べてばっかりいないで、踊ろ。」

男 「いや、俺踊るの下手だし遠慮しとくよ。」

橙 「あなたの意見は聞いてませ〜ン。いこっ。」

無理やり俺の腕を掴み歩き出すオレンジ。

男 「? あのさ、グランドはあっちだぞ?」

橙 「いいから、いいから。」

そういってたどり着いたのは一階の教室。

男 「なんでこんなとこに?」

橙 「いくら今日は私服がOKとはいえ、そんな格好じゃダメよ。ということで、ジャーン♪」

男 「へ?それは・・・舞台衣装?」

橙 「そう!今日のお昼の演劇見たときにあなたに絶対似合うと思ったの。

   だからこれ着て踊りましょ。演劇部に無理言って借りたんだからね!」

男 「昼の演劇ってシンデレラじゃん。恥ずかしいって。」

橙 「いいから早く着替えましょう。ほらっ、着替えるから向こう向いて。」

男 「え?お前も着替えるの?」

橙 「当たり前でしょ!ほら、あなたの分。早くしなさい!」

男 「え?!でもこれ・・・・・・。」

橙 「往生際が悪いぞ!ほら、手伝ってあげるから。」

男 「え、ちょっ、タンマ!まって、いや〜〜〜あwせdrftgyふじこlp」



 ----------しばらくお待ちください--------------



橙 「うん。やっぱり思ったとおり!すっごく似合ってる♪」

男 「うぅ・・・・もうお嫁にいけない・・・」

橙 「あはは。ほら、フォークダンス終わっちゃうから早くいこっ。」

男 「いや、それは勘弁。」

橙 「ハイハイ、じゃあいくよ〜。」

 容赦なく引きずられる俺。もうだめかもわからんね。

グラウンドに到着。

「ねぇねぇ、あれみて〜」「あはは、シンデレラと王子様だ〜」「仲いいんだ〜あの二人〜」

うぅ・・・周りの視線がイタイよ。オレンジ狙いの男子の目線は特にイタイよ。



橙 「よかったね。まだ時間あるみたい。」

男 「穴があったら入りたいよ。」

橙 「男なんだからいつまでもグジグジ言わない。」

男 「誰のせいだと思って・・・」

橙 「さぁ、それでは踊りましょうか、姫」

ひざをつき俺の手に口づけするオレンジ。

もうね、周り大爆笑。オレンジ満足げ。俺まっかっか。

でもまあ、お陰で今年は一人でなくて済んだんだが。





後日学校の新聞に口づけの時の写真が掲載され、俺は1ヶ月間シンデレラと呼ばれることになる

のだがそれはまた別のお話。


『オレンジストーン』



 今日も大丈夫だろうか、いつもより気合いを入れてみたがやっぱり気になるものは仕方
ない。麻雀で負けた罰ゲームが理由とは言え、これはれっきとした色無とのデート。

 携帯の時計を見る。

 約束時間の三十分前、自分でも早すぎるとしか思えないが、それでもこの場所で三十分
待った結果だ。そう、約束の一時間前に来てしまったあたしは、無意味に不安に耐え続け
ていた。

 先程時計を見てから一分も経っていないのに、再び視線は画面の中へ。

「ごめん待った?」

 突然背中を叩かれ、驚いて見上げてみるとそこには色無が立っていた。

「あ、良いよ。あたしも今来たところだし」

 本当はたかが三十分とは言え、死ぬ程待ったけれど、それよりもあたしを待たせないよ
うに約束の三十分前に来てくれたことが嬉しい。こんな優しさが皆を引き付けるんだろう。

「今日はまた随分と気合いが入ってるな、オレンジ」

「まあね。罰ゲームとはいえ、デートだから。女の子がしょぼいとこ見せれないでしょ?」

 本当は、色無が相手だから、とは言えない。純情が三分の一、意地が三分の一、そして
関係が崩れるのが怖いというのが三分の一。だから、口が裂けても言えはしない。

 しかし、

「どうかな?」

 だからと言って、何も訊けなくなる程には、諦めきれないのがあたしだったりする。

「うん、何かいつもよりも更に可愛い感じだな」

「あはは、ありがと」

 軽い口調で笑って返すが、心の中では勝利の雄叫びをあげていた。

 そのまま二人で並んで歩く。

 と、突然色無が立ち止まった。

「どうしたの?」

 その視線の先に目を向けると、アクセが幾つか。

「お兄さん、今日はデート?」

 露店商のお姉さんが、にやにやと笑いながらあたしたちを見つめていた。確かに傍目か
ら見たらカップルで、そのことに少し嬉しくなる。

「そうなんですよ」

 あたしはわざとらしく色無と腕を組むと、笑顔を浮かべた。少し慌てた色無の顔を見て、
嬉しいという気持ちと悲しいという気持ちが半々で浮かんでくる。

「あ、そうだ」

 色無は腕輪を一つ買うと、あたしに差し出してきた。あたしの好きな色、オレンジ色の
タイガーアイが二つ猫の目のように付いた銀のブレスレット。

「え?」

 訳が分からないあたしに色無は笑顔を向けると、

「オレンジ、今日は誕生日だろ?」

 すっかり忘れていた。

「そう考えると、お前も不幸だよな。折角の誕生日に俺なんかと二人きりなんて」

「そうでもないよ」

 色無の言葉とは逆に、あたしの気持ちは幸せで満たされた。

「そうか? あ、誕生ケーキでも買うか。こないだ行ったカフェのオレンジケーキ好きだ
ったよな、ワンホール頼んでみようぜ」

「良いね、それ」

 笑いながらブレスレットを見た。

 そして軽く目を閉じる。

 今日は大切なものが一つ増えた。

 今まで一番大切にしていた、色無への気持ちの他にもう一つ。絶対に無くしてはいけない、
とても大切なもの。

「どうした? 行くぞ?」

「あはは、待ってよ」

「そんなに笑って、何かあったのか?」

「教えない」

 だから色無にすら教えてあげない。

 この気持ちも、

 ブレスレットの意味も。

 どちらも大切なあたしの宝物。


橙「お金がない……」

男「なんだよ、金欠か?」

橙「別にないってワケじゃないんだけどさぁ、買いたいモノを買っちゃうとその後がキツいのよ」

男「あー、あるある。ちなみに聞くけど買いたいモノってなに?」

橙「ん?そりゃやっぱり、これからに向けての服とかアクセとかよ。あーぁ、せめてあと2万は欲しいなぁ」

男「うへぇ、そりゃまた大金だ。さすがはオレンジ」

橙「……それって褒め言葉?」

男「褒めてもないしけなしてもないつもりだけど。あぁ、一応言っておくと浪費家って意味じゃないから」

橙「そ。それならいいわ……それにしてもどうしよう。やっぱりバイトかなぁ」

男「そこまでして欲しいのか、気合入ってるな」

橙「……まぁね。そりゃ気合も入るわよ」

男「?」

橙「まぁ、そのへんは気にしないでいいの。ほらほら、もうすぐ昼放課も終わるから席に戻りなよ」

男「あ、あぁ」



橙(……なにしろ、アンタへの誕生日プレゼントだからね。だからさぁ、女として下手なモノはあげたくないのよ)





緑「……うーん」

黄「どうしたの?緑ちゃん」

緑「昨日、オレンジが本屋で男物のファッション雑誌を読んでたのよね。どういうつもりだったのかしら………」

黄(…………………まさか、男装の麗人?えーと、オレンジちゃんなら………ちょっと、いいかもしれない…?)


橙「——はい、感想をひとことで」

男「…………目のやり場に困る。かなり、うん……」

橙「それならよかった。てことは、私にもちゃんと魅力があるってことだね」

男「?……随分、オマエらしくないな。その発言」

橙「ん……まぁ、たまには考えちゃうこともあるだけ。気にしないで」

男「そっか。 さて、お披露目が終わったんなら早いとこ着替えてくれ」

橙「え?どうしてよ?」

男「あ、アタリマエだろーがッ!海でもないのにこれ以上水着でいる必要がどこにあるッ!?」

橙「ふーん。じゃあ聞くけどさ。私の家で私が好きな格好するのに、なにか問題ってある?」

男「……、今は俺がいるだろ。だから問題だ」

橙「そう。でもそれってさぁ、私にとっては問題じゃないんだよね。だから、もう少しこのままでいるわ」

男「ッ〜……!あのな——」

橙「別にいいじゃない。目の前に居るのは、私が惚れた男なんだから」

男「—————な」

橙「……へへ。だからさ——この紐、アンタにだったらほどかれてもいいんだよ?」(クルリ


橙「——いらっしゃいませー」

男「……板についてるなー、オマエ。すっかりハマってる感じがする」

橙「(バカ、私語厳禁なの!) コホン……ご注文は?」

男「っと、わり。 えーと、水だけでいいんだけど」

橙「……はい。では、すぐにお持ちしますね」


橙「———やっほ。お待たせ」

男「……このパフェは、オマエのおごりっていう期待をしていいのか?つーか着替えてるし」

橙「ん、いいよ。さてさて、食べよ?」

男「………いいけど、なんかこの絵面って、どうなんだろう」

橙「そりゃどこからどう見ても、バカのつくアレでしょ?」

男「ッがふッ!!お、オマエよくもまぁそんなことを平然と……」

橙「んー、このクリームの甘さが素敵よね」

男「聞けよッ!」

橙「ほれ、あーん」

男「ッ〜〜……、バカなことやらすなッ!!」

橙「あ、そう?じゃあ———」(チュ

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男「———!!、!?、!!?」

橙「どう?甘くて美味しいでしょ?」

男「………う、う……ん」


橙(ひとりで帰るのって、やっぱりつまんないなぁ……)

男「——珍しいな。オマエがひとりで帰ってるなんてよ」

橙「あ、色無。ちょっと委員会で遅くなったの。アンタは?」

男「んー、まぁ似たようなもんだよ」

橙「そっか。でもよかった。ひとりで帰るの、退屈だったから」

男「だろうな。確か、オマエはみんなと騒ぐのが好きだったっけ」

橙「うん。みんなと騒いでると、時間が嘘みたいに過ぎるし。それってつまり、楽しいからだよね」

男「ん、まぁそうだと思うけど」

橙「だけど、アンタといる時間はもっと早く過ぎちゃうんだよねぇ」

男「——え」

橙「いちばん長く続いてほしい時間なのにな。ほら、イマとか……ね」

男「ッ……ば、バカ言うなッ」

橙「あはは。——確かにバカかもしれないけど、ウソじゃないから」(ギュゥ

男「ちょ、ッ!?」

橙「帰り道は短いもの。腕くらい組んでもいいでしょ?」

男「ッ〜〜………す、好きにしろッ!」

橙「うん、そうする。ありがとねぇ♪」


橙「やっぱり、こうも暑いとジュースが飲みたいなぁ」

男「だな。でも、あんまり金を使いたくないっていう……あー、炭酸飲みてぇ!」

橙「あ、いいね。私も飲みたいし、ちょっと買ってくる」

男「え?お、おーい……行っちまった」

ーーーー

橙「——はいこれ。アンタの分」

男「……まさか、おごってくれんの?」

橙「いいよ。バイトしてるから、私。これくらいの余裕はあるの」

男「んー……いや、でもやっぱ払うよ。なんか悪い気がしてならん」

橙「………あのねぇ、そうやって遠慮されるほうがイヤなんだけどなぁ」

男「え?」

橙「こんな些細なこと、今さら遠慮するような仲じゃないでしょ?律儀なのはいいけど、そこまでカタくならなくてもいいじゃない」

男「う……」

橙「ほら、冷たいうちに飲みなよ。炭酸なんだし、あったまったら最悪よ?」

男「……じゃあ、いただくわ————(ブシューッ!!!)うわあぁッ!?」

橙「あはははは!すごい勢い!顔まで濡れてるし!」

男「オレンジーッ!!オマエ、これ思いっきり振ったな!?」

橙「ごめんねー、ちょっと魔が差したの。はいこれタオル……あ、カッターまでべしゃべしゃじゃない」

男「あたりめーだろがッ!誰のせいだよ、誰の!?」

橙「ごめんごめん。じゃあ、ちょっと私の家に寄りなよ。このままだとベトベトだもの、シャワーくらい浴びたほうがいいわね」

男「あぁ、そうす……え?いや、ちょっとそれは」

橙「だから遠慮しないでってば。ほら、行くよ」(ギュー

男「だー、くっつくなって!!」(…………てか、これフツー、遠慮しないとマズくないか……?)


橙「よっしゃゲットぉぉ!!」

男「オレンジってゲームセンターに関しちゃ本当なんでも出来るよなぁ」

橙「色無し〜!これあげるよww」

男「ミニーちゃんの人形なんて男の俺がもらっても嬉しくないんですが……。自分のにすればいいじゃん」

橙「色無しにあげるから意味があるの!」

男「……?わかったよ、ありがたくもらっとく」

橙「ちゃんと部屋に飾ってよ?」

男「わかったわかった…」

橙「あ、飾る気ないでしょ〜?」

男「バレた?」

橙「バレバレ!しょうがないなぁ、じゃあ色無しが飾るように私見張っとくよ!」

男「………だから俺の部屋に入れろと?」

橙「うんww」

男「…狙いはそれだったのか……」


橙「最近、ちょっと胸がおっきくなってきた気がするのよね」

男「……なんでそれをわざわざ聞こえるように言うのかな、オマエは」

橙「そうね、聞いてほしいからかな」

男「ッ——あのな」

橙「ま、別に深い意味はないよ。そういうコト、安易に踏み込むようなアンタじゃないってことは知ってるし」

男「……」

橙「それに私だって、そういうコト軽々しく考えてるワケじゃないから。ちゃんと相手は選んでる」

男「………ッ、いや、ばか」

橙「へへ……ね、それより今日はどこに寄り道しよっか?」

男「寄り道?んー……金を使わないトコならいいけどよ」

橙「お金を使わないところかぁ………あ、じゃあアンタん家でも遊びに行こうかな?」

男「あのな……、いいやもう。好きにしてくれ」

橙「うん、そうする。それじゃ、早く行こっか」


橙「朱色さ〜ん、何か飲みry」

朱「勝手に冷蔵ry」

橙「ありがry」

朱(ん?…それはry)

朱「ちょ…ちょっと出掛けてry」

橙「いってらry」



男「ただいま〜。朱色さ〜ん、何か飲み物〜………あれ、オレンジ?」

橙「…………」

男「朱色さんどこ行ったか知ってる?」

橙「…………」

男「まぁいいか、そのうち帰ってくるでしょ」

橙「…………」

男「オレンジ?元気ないぞ?」

橙「…………グス」

男「!?…どうした!?何かあったのか!?」

橙「私だって……私だって泣きたいときもあるわよぉ!!」

男「…いや、オレンジさん?」

橙「いっつもいっつも、お前悩みなんてないだろとか言われるけどさ?私だって、私だってさ……悩みぐらいあるんだよ?……グス。

私だって黄緑ちゃんみたいに…おとなっぽい女の人になりたいとか思うしさ?……黒ちゃんみたい…に言いたいこと全部ズバズバ言っちゃいたいし…?

水ちゃんみたいに可愛らしい女の子にもなりたいよ?……グス。……胸だってあんまりおっきくないし……」

男「オレンジ……?顔赤い……うわっ!?酒くさっ!」

橙「色無しくんとかも、最近私のことちゃんと相手にしてくれないし……グス。やっぱり軽いとか思われてんのかなぁ……?私も紫ちゃんみたくからかわれてみたいよ……」

男「………(そんなこと思ってたのか……///)」

橙「………ねぇ、聞いてるのスティーブ?」

男「誰だよっ!?」

橙「……今日は…付き合ってくれてありがと。キャシーによろしく言っといて」

男「……だいぶ酔ってるみたいだな?」

橙「酔ってる……?私が?……そうかも、酔ってるかも。……もうこんな辛いの…ヤダよ……色無し…くん…グス……………………スー…スー」

緑「………ちゃんと気持ち汲んでやりなさいよ」

男「緑!?見てたのかよ……」

緑「この子、能天気なようで、実は結構取り繕ってたりするのよ。酒飲むと正直になるのよねぇ。…………しっかり考えてあげなさいよ」

男「うん………」


橙「私たちのこと、応援してくれてる人がいっぱいいるみたいだよ?」

男「いや待て。なんでこんなに知れ渡ってんだよ……俺らのこと、おおっぴらにしないって約束だったじゃねーか」

橙「あ、疑うの?私はちゃんと守ってるよ」

男「じゃあなんで……」

橙「人の口に戸は立てられぬ、ってね。そういうもんでしょ?だからあきらめて、早く帰ろ?」

男「……いや、だけど、まだグランドとかにみんないるし。見られたら、その、ハズいし」

橙「………はぁ。アンタねー、……ううん。やっぱりいいや」

男「ごめん。その、やっぱこういうのはハズいから……ごめんな」

橙「いいよ。その分、ふたりっきりの時に埋め合わせしてもらうから」

男「う。まぁ、そのつもりだけど」

橙「ならいいよ。 それじゃあ、イマちょうどふたりっきりだから——えっと、そこに座って」

男「? なんで床に……壁にもたれていいのか?」

橙「いいよ。で、足をこう、ちょっと広げて——そうそう。そんな感じ——よッ、と」

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男「!!!? お、オマエちょっとどういうつも」

橙「へへー。後ろからアンタがハグしてくれる時が、イマの私にとっていちばん落ち着くのよ」

男「〜〜〜ッ」

橙「というワケで、イマからアンタが帰れる時間になるまでの間、ずっとこのままね。それが埋め合わせってことで、ね」

男「お、オマエなぁ……」

橙「ちなみに胸までだったら許してあげる。ただし、最初はキスからね」

男「——ばばばバカ言うなッ!ここは学校でしかも教室だッつーの!!」


橙「色無し〜!」

男「なんだ〜?」

橙「今日さ、世っ界一おいしい料理作ってあげるからあとで寮のキッチンおいでよ!」

男「世界一?」

橙「そーそ、世界一!」

男「ちょっと気になってきたな……」

橙「じゃあまた呼ぶから!呼んだら来なよ!」

男「へいへい」



男「……で、これのどこが世界一なんだ?ただの肉じゃがじゃないか」

橙「へっへ〜ww男性のツボをついてみました!」

男「………で、やりたかったのはこれだけ?」

橙「違う違う、こっからが世界一!!」

男「……?」

橙「…はい、あ〜んwwww」

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男「(ブッ)な……アホかお前!!」

橙「こんな可愛い子に食べさせてもらえるなんて、それだけで世界一でしょ?www」

男「おま………///自分で可愛いとか言うな!」

橙「え〜…?もしかして私、色無しの好みじゃないの〜……?ショック……」

男「……あぁもう///……俺から見ても可愛いよ!!」(ヤケクソ)

橙「よかった〜!!なら…はい、あ〜んww」

男「でもそれはさすがに恥ずかしい!!!」


橙「やっぱり夏はお風呂でサッパリしないとねー♪」(ガラガラ

男「ッ!?お、おおオレンジ!!?」

橙「あれ?色無入ってたの?物音がしなかったから気付かなかった」

男「いやでも電気ついてるじゃねーか!っていうかそれはいいからさっさと出ろッ!!俺、すぐに出るからッ!!」

橙「えー、いいじゃん。ここの浴槽広いし、ふたりくらい余裕で入れるでしょ?」

男「そういう問題じゃねーッ!!」

橙「じゃあどういう問題?」

男「そ、それは…………とにかくッ!!ダメッつったらダメ!」

橙「……説得力ゼロなんだけどなぁ。 アンタのソレ、痛そうっていうかつらそうね」(ジー

男「ッ!!? みみみみ見るなーッ!!ばかーッ!」

橙「あのね、もっと正直になってもいいと思うんだけどなぁ。 さてと、とりあえずシャワー浴びちゃおっと」

男「………なんかさ、最近オマエって朱色さんに似てきた気がする……」

橙「そう?ま、あの人みたいなタイプは好きだよ私。みんなで盛り上がるのには欠かせないじゃない、ああいう人って」

男「へーぇ……それはわかる気がするなぁ」



朱『———色無。さっきからなぁんで風呂場から話し声が聞こえるのか、きっちり説明してもらおうか』

男「えええッ!!?しゅ、朱色さんッ!?」

朱『さっきからなーんかやかましいと思えば、こういうコトだったとはね……覚悟は出来てるんだろうねぇ?』

男「い、いやえーと、その」

橙「色無、なんでアンタがビビってるの?悪いのはオレンジです、でオシマイじゃない」

男「……それはイヤだ」

橙「——ぇ?」

男「たとえ悪いのがオマエでも、なんか、イヤだ。 ……ごめん。ここは、俺に責任を負わせてくれ」

橙「—————」

朱「さーて、それじゃあキッチリ説明してもらうよ?色無」(ガラガラ

男「!!? ちょッ、なんでアンタまで脱いでしかもこっち入ってくるんですかあああッ!!?」

橙(……もう。ヘタにカッコつけないでよ、ばぁか………)


橙「せっかくのお休みなのに、この天気じゃどこにも行けないや……」

男「だからって俺の部屋に来るのは間違ってるような気がする」

橙「なにが?」

男「いや、もっと……赤とか黄とか、そのへんの部屋で騒いでくればいいじゃねーか」

橙「あの子たちとは学校で騒げるからいいの。イマの私は、アンタとしゃべってたいんだ」

男「……悪いけど、今、あんま気分よくないから。ほどほどにしてくれ」

橙「……ぇ?」

男「………」



『ゴロゴロゴロ……』



橙「ッと、雷……けっこう近い、かな」

男「〜〜〜〜〜ッ、——ぅぁぁぁ!」

橙「え!?ちょ、色無ッ!?」

男「ぁぁぁぁ……ッ!!」

橙「お、落ち着いてッ!!大丈夫!私がここにいるから!」(ギュッ

男「ぅぁぁぁ……ッ」(ギュッ

ーーーーーーーーーーーーー

橙「——雷、ダメなんだね。ちょっと……いや、かなり意外」

男「……」

橙「大丈夫。誰にも言わないし、弱味として握るつもりもないわ。恩を着せるつもりだってさらさらないし」

男「………」

橙「だからこれは、私だけの特権になるのよ」

男「……?」

橙「雷に震えるアンタを護るっていう特権。他の誰にも教えないし、渡さない。私だけの特権よ」

男「……………」 (……ありがとう、と言いたいけど………なんか、釈然としないのは、なんでだろう……?)


橙(うあーん……課題が終わんないぃ……)『♪——♪—♪———』 「あれ?メール……あ、色無からだ」

男『悪いんだけど、科学のテスト範囲を教えてくれ。この時間だとオマエぐらいしか起きてないだろうから、頼む』

橙(ふーん………確かに、この時間はみんなおねんねしてるだろーなぁ。えーと、テスト範囲はと……あ、そうだ♪)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

橙「——ごめんね色無。昨日メールが届いた時間、もう寝ちゃってた」

男「あぁ……そか、ごめん。やべぇ、だいたいは覚えたけど、細かいところがわかりそうにないな……まずい」

青「——えー、科学のテスト終了後に配布された対策プリントを回収します。名前を確認して——」

男「………対策、プリント?」

橙「あ、そういえばそんなのあったっけ……色無、やった?」

男「……………終わった…………追試……か……」

橙「あ……い、色無」

男「………」

橙(ひとりで追試はイヤだから、道連れにと思って嘘ついたけど………ごめんね、色無…)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

橙「——私は赤点だったよ。色無は?」

男「首の皮一枚。対策プリントはでっちあげて提出するから、なんとか追試は免れそうだ」

橙「そっか。よかったじゃん、おめでと」 (……ホントに、よかった。許されることじゃないけど、せめてもの救いがあって……)

男「ありがとう。 あのさ、オレンジ。オマエと黄の追試対策、みんなで手伝うから。ちなみに拒否権なし。だから、次は落とすなよ?」

橙「え……———あ、ありが………っ、ぐす……」

男「お、おいちょっと泣くなッて!そんなたいしたことじゃないだろ!」

橙「ごめ、色無……ありがと、……ッ、ひっく……!」(ギュッ

男「謝られる覚えはないんだけどな……まぁ、いっか」


橙「悪いねぇ〜、休日なのに荷物運んでもらって」

無「じゃあ1個ぐらい持てよ、せっかくの日曜なのに荷物運びさせやがって……」

橙「あら、色無はこんなか弱い女の子にそんな重い物を持てっていうの?」

無「(誰がか弱い女の子だよ……)はぁ……疲れた。ちょっと休もうぜ」

橙「男のくせにだらしないわね〜、じゃあそこの公園で休もうか?」

無「・・zz・・zz……」

橙「(色無に膝枕しながら)今日はごめんね色無。でもこうしないと他の子達に色無取られちゃうから、色無と少しでも一緒にいたかったの……

好きだよ……色無……」

無「zz……俺も……好き……」

橙「///////……」

黄(あーーーーー!!!!橙ってば抜け駆けしてる!!ううっっ何て羨ましい……)


男「はぁ〜今日の体育ハード過ぎ〜〜ふぁ〜」 バタッ(机に突っ伏す)

橙「色無ぃ〜。Σあぁ、もう……」

男「オレンジか……」

橙「しっかりしてよね……あんたがそんなんだと、こっちまでがっかりしちゃうんだから」

男「なんでだよ……」

橙「だって色無がそんなんだと、疲れてるのかな? とか気を使ってあんまり話し掛けられないじゃない?」

男「……だから?」

橙「今日はあんまり話せなかったぁって」

男「うん……」

橙「それでがっかり」

男「! (それって……)」

橙「あっ先生来るよ! またあとでっ」 タタタッ

男(あっ! ……)

男(これは……そういうことなのか!? ……それとももてない男のカンチガイなのか……!?)

橙「はぁ〜っ……もっと積極的に行かなきゃダメかなぁ?……彼、鈍いしなぁ……」


『夕暮れホットショット』

『うわー、あっつー』

「オレンジよぉ、そう露骨にダレるなよ。女の子がそうな風にしてたらいけません」

 ここは俺の部屋。

 だと言うのに何故かオレンジは我が物顔でフローリングを占領してこれでもかと言う程

にグッタリとしていた。メイクはそれなりにしているが、いつもの洒落た雰囲気は全く感

じられない。このままだとドロドロに溶けて、バターにでもなるんじゃないだろうか。

「せめて座れよ」

『この床がひんやりしてるのが悪いのよ』

 寝そべる理由を床に責任転嫁している奴を初めて見た。

「いいから、まずは座れよ」

 薄手のキャミとホットパンツだけの格好だと目に毒だから困る。しかもノーブラなのが

丸分かりでゴニョゴニョ。更に何かエロい太股の付け根、良い形の尻をしているせいで僅

かに浮いたホットパンツの隙間から見える橙のアレがゴニョゴニョ。そのせいで俺の股間

もゴニョゴニョゴニョ。

『どこ見てんの、色無?』

 やっと座ってくれたと思ったら、面白い視線で見られた。

「俺だって男だからなぁ、そりゃ見るさ」

『見るんだ?』

「あぁ、しっかり凝視して網膜に焼き付けたさ!! 綺麗なオレンジ色でしたぁ!!」

 思わず逆ギレしてみた。

 叫び終わった後でオレンジの顔を見てみると、あれ? 真っ赤? 寧ろオレンジ色? 

顔がそんな風に染まっているのは窓から差し込む光が原因かもしれないけれど、多分表情

を見る限りでは、もしかして、

「あの、オレンジさん?」

『ぅ、ぁ、ぁ…』

 恥ずかしがってるんですか!?

 おいおいおいおい。

「待て待て待て待て」

 状況を整理してみよう。

「つまり、見えているとは思っていなかったと」

 小さく頷くオレンジ、そこにはいつものふざけた空気は無い。

「で、見られたら恥ずかしくなったと」

 再びコクリとオレンジ。

『でも、色無なら…』

 軽く俺の服を掴むその手には、いつしか買ってやったタイガーアイの光る腕輪。猫目石

の作る視線が、俺を威圧と疑問の色で睨みつけてくる。

『見られても…』

 ローライズの縁に右手をかけて、左手は俺の股の間で華奢な体を空中に固定。そのまま

オレンジはゆっくりとした速度で顔と顔との距離を縮めて、既にその距離は親指一つ分も

ない。柑橘系の吐息と女の子特有の甘い匂いが鼻孔をくすぐり、

「いかーーん、無理無理無理無理」

 漸く正気に戻った俺は、光速でオレンジから離れた。

『…くぁ、くはははははは』

 突然の笑い声に目を向けてみると、オレンジは腹を抱えて笑っていた。さっきのエロい

雰囲気などどこにも見えず、まるで別人だ。

「んな、オレンジてめぇ」

『ビックリした? 人のパンツを見るようなエロ吉三平には良い薬でしょ? それじゃ、

涼しくなってきたしもう帰るね。思い出してエロいことしないでねぇ』

 一息にそう喋ると、オレンジは俺の部屋から出ていった。

「あんにゃろう」

 最後までオレンジの顔が染まっていたのは、西日のせいだろうか。


橙「ひとりきりの夜って、やっぱり寂しいよね……」

男「……朱色さんはガチだが、オマエが言ってもなーんか妙な含みがあるな。それ」

橙「え?なによそれ、どういう意味?」

男「え?………ぁ、いや、なんでもない」 (狙ってなかったのかよ、今の……)

橙「ねー、なんなのー?」

男「あーあー、俺はなーんにも言ってない。言ってないからくっつくなって!」

橙「明らかに言ってたでしょ、嘘つき。ほらほら、白状しろー!」

男「はーなーれーろー!」

橙「まだシラを切るつもりなの?……それならそれでいいけど、言わない限り、私はここから出て行かないからね」

男「……えーと。いや、俺もう寝るんだけど……」

橙「へへへ……だぁめ、寝させない。ちょうど寂しかったトコロだし、ちょうどいいよねぇ?ね、色無ぃ……」

男「ッ———」

黒「……さっきから騒がしいと思ったら、やっぱりアンタなのね。オレンジ」

橙「あ、黒。ごめんごめん、起きちゃった?」

黒「そんなのはどうでもいいけど……さっきからなに娼婦まがいのことを口走ってるのよ、アンタ」

橙「……え?」

黒「隣の部屋だから丸聞こえだったんだけど、どう聞いてもそういう意味にしかとれないようなことばっかり。どういうつもり?」

橙「……………ぇ、ぇ、ぇ……っ、と、そそ、そんなつもりじゃ、なかっ……あ、あはは!お、おやすみ色無ッ!」(ダッ

男「あ、おーい………とりあえず、まずはありがとう。黒」

黒「気にしないで。常日頃、アナタに迷惑をかけているから………ほら、今も」

男「え?……………おい、オマエいつから俺のベッドに潜ってた?」

灰「……あ。……………………にゃー」


着メロが鳴る。差出人は、珍しい人からだった。

「……要するに、オシャレをしたいけれども、どうしたらいいかサッパリなので、私に教えて欲しい、と?」

私の部屋に来た緑から、いつもより輪をかけて無口な緑から、30分かけてようやく聞き出した内容は、こうだった。

うなずく緑はどこか恥ずかしそうで、いじらしかった。

きっと、オトメゴコロというものだろう。

最近の緑は変わったと思う。

前ほど近寄りづらくはなくなったし、感情が表に出るようにもなった。

話してはくれないから、確信はないけれど、理由はきっと”彼”だろう。

休み時間のたびに図書室に入り浸っていた緑が、教室に残るようになったのは、きっと”彼”から話しかけられたいからだと思う。

好きになった男のためにキレイになりたい。

それは、女として当然のことだし、なにしろ私もそうだった。

あけおめメールしかくれなかった緑が、わざわざメールをしてくる位だから、本気なのだろう。

だから、応援してあげたい気持ちもないわけじゃない。

ただ、問題は———

「……あんたねぇ、私に相談するってことがどういうことか、分かってる?」

「?」

緑が小首を傾げる。

「……はぁ、分かってないみたいね……」

問題は———”彼”、つまり好きになった男が、私と同じだということだった。

(さて、この周りの全く見えていない天然ちゃんをどうしてくれようか?)

あれだけ色無にアピールしている私にこんな相談、普通ならあてつけだと怒る所だけど。

こと、この子に関しては、これが天然だから始末が悪い。

私は悩む。緑は返事を待つ。

会話のない部屋に、時計の音だけが静かに響く。

正直、手伝わない方が、恋の争奪戦にあっては有利だと思う。

緑は素材は悪くないから。むしろ素材だけでそれは反則でしょってレベル。

ライバルに塩を送って負けてたんじゃ、笑い話にもならない。ただ。

(……不戦勝を狙うってのも、私の性には合わないのよねぇ……)

そして、うじうじ悩むこと自体、私っぽくないとも思う。

「……よし、決めた!」

私の声に、緑が顔を上げる。

「OK、私が1から100までコーディネートしてあげようじゃないの!」

「本当?ありがとう!……って、橙、何してるの?」

きょとんとする緑。その足に、私の手がかかっている。

私はニンマリとして答える。

「何って、靴下を脱がせようとしてるんだけど?」

「……なんで?」

「なんでって、コーディネートするにはまずは脱がせないとね」

「ぬ、脱がせ!?って、ちょっとちょっとスカート引っ張らないで!」

「いいからいいから、私に任せて♪ あら、可愛いの履いてるじゃない♪」

「ちょっ……待っ……なんでそんなに手際がいいのよー!」

「まぁまぁ、いいじゃないいいじゃない♪」

「よーくーなーいー! 誰か助けて〜っ!」

結局、この等身大着せ替え人形を使ったお遊びは夜まで続いて。

途中で黄も混じったりしたんだけど、それはまた別のお話ということで。


橙「うあー、おなかいっぱーい……」

男「それはいいけど、なんで俺のベッドに転がってるんだよ。大人しく自分の部屋に行けっつーに」

橙「あームリムリ。動けないもん。 うぅ、ホントに食べ過ぎちゃったよ」

男「……ガキかオマエは」

橙「くるしー……あ、ジーパンだから余計ダメだね。ゆるめよっと……」(ジィィ

男「だからってジッパー開けるなっつーの。やるなら自分の部屋でやってくれよ」

橙「はぁ……ラクになったかも。それにしても美味しかったなぁ、群青さんの手料理……」

男「……聞けよ、おい」

橙「ま、それはいいとして。 色無、ちょっとお願いがあるんだけど」

男「………部屋に運ぶくらいなら頼まれてやるわ」

橙「違うちがう、もっとカンタン。 あのね、おなかをさすってほしいの」

男「なるほど、そりゃラク———……なんだって?」

橙「だからさー、おなかをなでてほしいの。すごく苦しいんだって。ほら、だから早くこっち来てよ。隣にさ」

男「……………………やれやれ」

橙「———気持ちいい……」

男「そーか、それはなによりで。 それで?俺はいつまでこうしていればいいんだよ?」

橙「……………色無」

男「ん?」

橙「………ありがとう。 イマね、すっごく幸せだよ。全然苦しくないし、あったかいし、優しいし……本当に、幸せ」

男「—————ばッ、……そ、そんなの大げさだっつの!」

橙「へへ……。 ……ほんとうに、しあわせだよ」


[どうぞ写真撮影自由ですのでどうぞ]

無「どうも」橙『ハーイw』

朝一で橙に『近くのVIPデパートでトリックアート展やってるから連れてけ』と、強引に連れて来られた。

『デジカメ持ってきたから撮ってよ』「どーせ普通の絵だ…」『どした?』

(゚Д゚)←色無

(⊃Д⊂)

(゚Д゚)

『こっちみんな!っつーかどしたの?』「いーからデジカメで絵、観てみ」『???』

(゚д゚)←橙

(⊃д⊂)

(゚д゚)

二人『「Sugeeeeeeee!!!!11」』

〜〜閲覧中

『色無、次こっち!こっち!』「任せろww」

[これはこうやって…]『キャー!!凄い凄い!!!』「うはw」

  〜〜閲覧終了

[ありがとうごさいました〜]

『面白かったねww』「ああ、正直舐めてたwww」

と、いった感じで俺も橙も童心に帰ってハシャギすぎなくらい楽しんでいた。

橙とデート(映画編)

トリックアートを見た後、映画館にきますた。

『何、観る?』「ん〜…俺が決めとくから、先にトイレ行ってきなよ?」『おっけ〜w』

〜〜〜上映中

『キャー!!ありえないマジありえない!!』「ハハハハハ」『嫌〜流石にだむぇぇぇ』「ゲラゲラ」

  終了〜〜〜

『なんであんな映画にしたのよ〜orz』「この間DVD観てリメイクされたのを思い出したwww」

チケットの半券には[666ーオーメン]と書いてあった。

『じゃあアタシを怖がらせた罰で、カフェは色無持ちね?』「え〜?」『だ〜め。ほら行くわよ(ギュ』

橙とデート(カフェ編)

『アタシはアイスティーとオレンジケーキ』「アイスオレとコーヒーロール」

映画館を出てから二人は腕を組みっぱなし。どうみてもラブラブカップルです。本当に(ry

『モグモグ)おいしー』「ホントだ。流石に情報通だけあるな橙は」『えへへ〜///』

誉められて嬉しそうに橙が微笑む。

「そろそろ行くか?」『うん!』

ーカランコロン、カランコロンと下駄の音を鳴らしながら、舞台は夏祭り会場へ。


無「お、いい所にいるな〜」

橙「!? い、色無かぁ!ビックリした・・・」

無「こんな涼しいとこ独り占めしやがってずるいなぁ、お前w」

橙「独り占めなんかしてる気ないんだけどね。隣来なよ」

無「よっ、と。・・・・・・今日は満月か」

橙「あ、ホントだ!綺麗だね〜」

無「・・・(チラッ)」

橙「・・・ん?そんなにあたしの顔見て・・・なんか付いてる?ん?(ズイッ)」

無「わわっ!そんなに顔近づけんな!」

橙「あれ?色無もしかして照れてる?・・・じゃ、もっと近づいちゃおっかな〜」

無「ちょっ!やめっ・・・うわっ!(ドサッ)」

橙「えへへ、色無押し倒しちゃった♪」

無「えへへ、じゃねぇよ!・・・まったく」

橙「・・・もーちょっと、このままでもいい?」

無「・・・は?」

橙「・・・は?」

無「いやいやいや、意味が分かりませんが・・・」

橙「普通こんな可愛い子にそういう事言われて『は?』はないでしょうが!」

無「・・・えーと、じゃぁ・・・はい・・・?」

橙「うわ、このままがいいんだ!色無のエッチぃ!」

無「・・・プッツン」

橙「ん?今の音何・・・って、ちょっと色無やめ・・って、おい!こら!ぃゃ〜誰か助けて〜・・・」


橙「うーん……」

男「なんだソレ?メモ帳?」

橙「うん。ほら、夏休みってことでみんなで海とか行きたいなーって思ってさ」

男「あー。いかにも夏休みって感じがしていいな。ってことは、予定を立ててるのか?」

橙「ううん。予定はもう立ってて、日にちも決まってるしみんなにも声を掛けてあるの」

男「おお、さすが……ん?ってことは、俺は仲間はずれかい………」

橙「なに言ってるの。アンタには拒否権がないから、わざわざ言うまでもないでしょ?アンタが毎日ヒマしてること、知ってるし」

男「いやおいちょっとまてこら。拒否権がないってのはともかくとしてだな」

橙「で、私が悩んでたのは参加希望者があまりいないってところなの。ほら、コレ」

男「無視かよ……まぁいいや。 どれどれ……——ふんふん。確かにちょっと」

橙「紫、水色、茶色、それに黄色までが辞退するって言ってる。わざわざ色無っていうエサをぶらつかせたのに」

男「俺はエサ扱いかよ」

橙「やぁね、褒め言葉よ。 で、私としてはちょっと気になってしょうがないの。この4人、夏休みに特別な用事はないって言ってたし」

男「でも、突然なんかの用事がってことはあるだろ?」

橙「私もそれなら納得だけど、そういう反応じゃなかったんだって。水色と茶色なんかものすごく挙動不審だったんだから」

男「……つまり、理由がわからんってこと?」

橙「そういうこと。だから気になってるのよ。もし『泳げない』とかだったら尚のこと連れて行きたいし」

男「オマエ……まさか、イジめる気じゃないだろうな?」

橙「ばーか。海ってのは泳ぐだけじゃないんだよってことを教えてあげたいのよ。みんなで行けばそのことにも気付けるでしょ?」

男「あ……そっか。ごめん」

橙「ん。 ところでさ、ちょっと聞いておきたいんだけど」

男「なんだよ?あ、俺この日なら空いてるぞ」

橙「ちがうちがう。 ビキニの色なんだけどさ、黒か白かって言ったら、どっちが好きかな?」

男「ぶッ! お、オマエな!つーかビキニは確定なのか!?」

橙「もちろん。ピンクも朱色さんもビキニで“攻める”って言ってたもの、私だって負けてられないからね♪」


世界を変えたくて、私は言った。世界はそのとき、変わってしまった。

空を見る。

落ちていく太陽の色は、奇しくも私と同じ色。

ああ——空も、私に同情してくれてるのかな。 なんて考えてみたら、どうしようもなく泣けてきた。

『ごめん——俺は、オマエのことを、家族と同じ意味で愛してるから……ダメ、なんだ』

リピートする、大好きな人の声色。何度も何度も、聞きたくない言葉が繰り返されてしまう。

アイツの声が聞きたくないなんて思うのは、これが最初。そしてきっと、これが最後。

「あーぁ……」

彼のことだ。きっと次に会った時、どんな顔をすればいいのか悩んでしまうんだろう。

とてもカンタンに想像できる。そして、そんな彼にきっと私は笑いかけるんだろう。

傷ついた自分を押し殺して、変わる前の世界に戻ろうとするんだろう。

——お互いに、出来ないと、わかっていても。

私が望んだのは、愛して愛される世界/彼が選んだのは、今までどおりの世界。

そこに、歪が出来てしまった。それは新たな世界を祈り、願った代償。もう、今まで通りには、戻れない。

「……ホンキで泣きたいときは、アイツの、隣で……泣こうって、決めてたのに、なぁ……ッ……」

涙は止まらない。今までまともに泣いた記憶がない私は、今からその埋め合わせをすることになるんだろう。

……とてもとても長くなりそうなその時間には、あたたかな橙色の太陽が、気長に付き合ってくれるようだった。


橙「いろなしー、入るよー」

男「ん……オレンジか」

橙「あらら。ベッドに寝転がってるってことは、もうおやすみモード?」

男「まぁな……それで、どうした?」

橙「んー?んーとね、さっきピンクとイイコトしてたの見ちゃってさ」

男「んなッ!!?あ!ってことは、あんとき外にいたのはオマエかよ!」

橙「うん。でさ、もう素直にズルイなーって思っちゃって。それでガマンならないから、こうしてやってきたというワケで」

男「……えーと?それで、どういう?」

橙「んふふふ……こうするの♪」

男「え?っておい、なんでベッドに乗ろうと——!?」(ドサッ!!

橙「へへー♪どう?女の子に押し倒されるのって」

男「うぁ……とと、とりあえず、落ち着いてくれればそれでいいから」

橙「私は落ち着いてるよ?腕にしっかり力入れてるから、崩れることもないしね。崩れたら色無がタイヘンなことになるからさ」

男「……いろんな意味で大変そうだな、ホント」

橙「というワケで、そーっと力を抜いて……と」(ピトッ

男「!!!」

橙「んー。色無の音が聞こえる……早いね。まるで走った後みたいにドクドクいってる」

男「あ、アタリマエだバカッ!!はは、はやくどけよッ!」

橙「やだ。 こうして早い鼓動が聞けたのも、お腹のあたりにあたってるのも、嬉しいから」

男「なッ……、ば、ばかっ」

橙「こんなふうに意識してくれてるだけで嬉しい。ピンクも言ってたけど、私もイマ、しあわせだよ……?」

男「〜〜〜ッ」

橙「どうせ暑くて寝らんない夜なんだし、今日はこのままでいようかな。 ねぇ、ダメ?」

男「ッ、ああ……もう!か、勝手にしろッ!」

橙「やった。 えへへ、サンキュー♪」(チュッ


橙「おーい、はやくー」

男「とと、悪い悪い。お待たせ……にしても、出校日なんてめんどくせぇなぁ」

橙「あはは。そうだねー。でも、毎日ごろごろしてたら腐っちゃうよ?」

男「……なぁ、俺がいつごろごろしてたよ?オマエらに引っ張られてたか、バイトしてたかの記憶しかないぞ?」

橙「……今さらだけどさ、この制服かわいくない?」

男「すり替えんな! ……まぁ、カワイイと思うけど」

橙「えへへ♪どう、似合う?」

男「……聞くまでもねーだろうに」

橙「あはは。ソレ、肯定的な意味として取っとくね。 それにしても久しぶりだなぁ、コレ着るの」

男「卒業したら着ることもなくなるしな。ちょっともったいない気がしないでもないような」

橙「……」

男「ん?どうした?いきなり考え込んで」

橙「いや、確かにもったいないなーとか思って」

男「で?」

橙「で、色無も残念そうだったからちょっと有効利用しようかなーって」

男「ざ、残念そうって……別にそんなつもりじゃ」

橙「うーん、この制服カワイイし……やっぱり、コスプレがいちばん有効かな」

男「ぶッ!」

橙「似合うって言ってくれたし、うん。そのうちやろっかな♪ イマならオプションで夜這いも」

男「やめれ……」

橙「なんて、ね。 それよりほら、急がないと校舎に入れてもらえないよ?」

男「あ゙、そういえば出校日ってそういうルールだっけ。急ぐか!」

橙「おっけー♪」


男「うああ……、今日も疲れた……。さっさと風呂に入って、寝よう……」(ガラガラ

?「——あ、え、えええッ!!?」

男「ッ!!?だ、誰か——うわああああ!!ごご、ごごごめんッ!!」(ピシャッ!!

男(や、やっちまった……あぁぁ。いくら疲れてるっていっても、コレは……あぁ、もう最悪だぁ……)

?『……色無?』

男「ご、ごめんッ!!その、誰か入ってるかどうかなんてのを見てなくて——」

?(ガラガラ)「あはは。そんなの気にしないから、こっちおいで。一緒に入ろうよ」

男「うぇ!?——っおわぁ!」

?「はいはい、ドアは閉めましてと。 ……こんなとこで言うのもなんだけどさ、おかえり」

男「お、オレンジッ……まぁ、まずはただいまでいいとして、だな。いやなんにもよくないんだけどさ。いろいろと」

橙「疲れてるときにはゆっくりお風呂に入るべし、だよ。せっかくだもの、背中を流すくらいはやったげるからさ?」

男「……いや、でも」

橙「それとも、イマ唯一元気そうなコレを洗ってあげようか?けけけ♪」

男「……あとでひとりでゆっくり入るわ」

橙「あぁ、ごめんごめん。 でもね、ソレは絶対に許可しないよ。そんなの、イヤ」

男「……オレンジ?」

橙「こんなに疲れてる人をほっとけるワケないでしょ?ましてやソレが好きな人なら、少しでも、少しだけでも、助けたいじゃない……」

男「ッ———ちょ、っ」

橙「……そういえばさっき、『ただいま』っていうセリフはおかしいって思ったけど、これならおかしくないよね? ……お疲れさま、色無」

男「——、……ぁ」

橙「話が聞きたいな。いろんなこと。どんなことでもいいから……分けて、ほしいな」

男「——ッ、オレンジ……ッ」

橙「ん……ねぇ、お湯につかってあったまろう?背中も流してあげるけど、まずは、ね?」

男「……くそッ、なんで……こん、な、……グスッ……」

橙「うん、うん……はじめて泣いたね、強がり屋さん。 本当に、お疲れさま。イマのアンタ、カッコイイぞ……♪」(ナデナデ


男「ぐー……」

橙「朱色さんに頼まれて来てみれば……よく寝るなぁ、色無」

男「……」

橙「もったいないよ?みんなで遊べる時間、どんどん減っちゃってるよ?」

男「Zzz……」

橙「この短いお休みが終わったら、また忙しくなっちゃうんでしょ?」

男「ぅぅ……ん」

橙「……はぁ、ゴメン。ワガママだね、私……ゆっくり、休んでてね」

朱「——おっ。オレンジ、アイツ起こしてくれた?」

橙「……起こしてないです。っていうか、起こせないです」

朱「え?」

橙「イマは疲れて寝てるから、自分に言い聞かせることができるんです」

朱「?」

橙「だけど、アイツが起きたら……私はたぶん、なりふりかまわずアイツを引っ張って遊びに行っちゃいます」

朱「……ふぅん。 いいじゃん、行って来な」

橙「そうしたいんですけど、ね。せっかくのお休みなのに、疲れさせちゃいけないじゃないですか」

朱「ばかたれ。身体を休めるだけが休息じゃないだろ?せいぜい派手に遊ばせてやりな。そういうリード、得意だろ?」

橙「ええ、それなりに。でも……」

朱「……なにビビッてんだ、オマエらしくない。普段、あんだけ色無にイロイロやってるくせにさぁ」

橙「……」

男「——おはよう、ございます……うぅ、寝過ぎた……」

朱「おっと、ナイスタイミング。おい寝ぼすけ、今日は橙がデートしたいってよ」

橙「! ちょっ、しゅ、朱色さん!?」

男「デートって、アンタね……ま、いっか。 いいよ。準備すんのにちょっと時間かかるから、それまでにどこ行くか考えといてくれる?」

橙「——ぁ……わ、わかったっ。考えとくねっ」

朱(……大胆なようで臆病、か。少しだけ、昔の自分を見ている気がするなぁ。だからこう、応援したくなるのかな……なんて、ね)


橙「おかえりなさいませ御主人様」

無「なぜメイド服で俺の部屋にいる」

橙「ちょっとした遊び心で」

無「まあ、そんなことはいいんだ。その右手に持ってる本はなに?」

橙「エロ本」

無「どこから手に入れました?」

橙「ベッドの下から」

無「く、もうこの寮にいれない……」

橙「大丈夫だって。私の婿にしてあげるからさ」

無「というか橙が原因つくってるんじゃないか?」

橙「あ……」

無「一時間頭グリグリの刑な」

橙「あっー!!」

……10分後

青「あら、赤どこにいくの?」

赤「色無にCD貸しっぱなしだったから返しにもらいにね」

 色無の部屋

無「おらおら!!」

橙「色無が私の大事なところ(頭です)をぐりぐりしてるぅ!!」

 廊下

赤&青「……」

青「帰りましょうか?」

赤「そうしようか……」

〜赤の日記〜

色無は間が悪すぎるキャラだと痛感した一日だった


橙「眠い……」

男「……寝ればいいじゃないですか」

橙「だって寝たら色無に襲われちゃうかもしれないじゃんww」

男「どんだけ飢えてるんだ俺は……」

橙「あ、でも色無だったら襲われてもいいいかなぁ……ううん、やっぱ駄目!!私優位じゃないと絶対イヤ!」

男「素晴らしいS属性ですね」

橙「早く寝なさい!!私が襲ってあげるから!!」

男「いやです」

橙「んもー……しょうがないな、今日だけだよ?一緒に寝るなんて……」

男「誰も頼んでないよ!?」

橙「ほらいいから早く早く!」

男「ったく……」

橙「えへへ〜。ねぇ色無?」

男「ん?」

橙「……」

男「……どした?」

橙「色無は……Sは嫌い?」

男「……深刻そうな顔して何を言うかと思えば」

橙「Sなんだもんしょうがないじゃん!!」

男「Sがどうこうっていうか、オレンジなら好きだよ?」

橙「……嬉しいこと言ってくれるじゃん!!///このこの!」

男「いや腹とか触らないで変な声出るから!!」

橙「なんなら下腹部のほうも……ってなんか後ろに凄い重圧を感じる……。振り向かないほうがいいよね?色無!?」

男「いや……まぁ……俺にはよくわからないということに……」

朱「……」


橙「色無捕まえたっ!(がしっ」

無「うぉっ!いきなり抱きついてくるなよ!」

橙「んふふ、いーじゃんたまにはw最近紫ちゃんに独占されててあたし寂しかったよ?」

無「ちょっ///真っ昼間からそうゆうこと言わないで下さい><」

橙「あれ、照れてる?可愛い〜♪(ぎゅぅ」

無「こ、こら!苦し……っていうか胸が当たってますって橙さん!///」

橙「ふふふ、当たってるんじゃなくて、当ててるの♪」

無「や、やめて〜!(やめて欲しくないけど、このままだとナニが……)」

橙「ほれほれ〜♪(ぎゅぅぎゅぅ」

無「うぁ〜///……くそ、こうなったら……えいっ!(ガバッ」

橙「きゃっ!!……あ、あれ?色無が上に……ついにあたしは色無に襲われるの?!」

無「そんな気は毛頭ありません!///」

橙「な〜んだ、つまんないの……」

無「つまんないって……orz」

橙「ところで、あたしを押し倒した辺りから水色ちゃんに見られてるけど?」

水「(びくっ)……あ……ぅ……・・じゃ、邪魔してごめんなさいっ!!」

無「こ、これは違うんだ水いr……行っちゃった……orzorzorz」

橙「んふふ、これでまた二人きりだね♪」

無「えっ?ちょっ、やめ……アッー!」


橙「水色ー、なにしてんの?」

水「あ、え、えと、橙ちゃん……」

橙「またシケた顔してえー。笑ってごらん?」

水「え、えと……」

橙「悲しい顔してると気分も悲しくなっちゃうからさ、笑ってたほうがいいよ?」

水「……」

橙「幸せ呼ぶ秘訣!幸せ体質のあたしが言うんだから間違いないって!」

水「……うん(ニコ)」

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『おまじない』

橙「じゃあ次は色無の番ね」

無「……あのー」

橙「なに歌う?」

無「なんで俺、ここにいるんだっけ?」

橙「私がカラオケに誘ったからに決まってるじゃない。忘れたの?」

無「誘われた記憶はあるんだけど、そのあとの記憶が……」

橙「ごちゃごちゃうるさいわね、デュエットしましょう。ほらこれとか」

無「……橙さん」

橙「なによ」

無「英語なんですが」

橙「そうよ」

無「言いたくないけど、俺達英語の成績よくないよな」

橙「……そうよ」

無「どうしてこの歌なんだ」

橙「……(いつも読んでる雑誌に両想いになれる歌だってのってたなんて言えないし……)」

無「橙?」

橙「英語の勉強にもなるじゃない。……それとも私と歌いたくない?」

無「そんな事ないけど」

——英語の成績がよくない二人はきちんと歌えませんでしたとさ。

橙「……真面目に英語勉強しよう」

無「……そうだな」


橙「ただいまーっ」

男「おかえりーってやっぱり雨すごい?」

橙「見りゃわかるでしょ私の有り様を!もぉびちょびちょだよ〜……」

男「傘差しててもそんなに濡れるのか……」

橙「……!そだ、早くタオル持ってきてよ〜!」

男「あぁ、ごめんいま取って来るよ!」

男「はいよ〜」

橙「……ん」

男「なに?」

橙「色無が拭いて」

男「俺が!?」

橙「持ってくるのが遅れた罰!ほらほら早くぅ!寒くて風邪ひいちゃうじゃんかw」

男「え……でも」

橙「は〜や〜く〜」

男「……ふぅ、まぁいいか。ほれ」

橙「……もっとちゃんと拭いてよ。そんな軽くじゃなくてぇ」

男「こう?」

橙「そうそう。……あ、そのまま前も拭いちゃって!」

男「バカ、自分でやれよ!!///」

橙「も〜照れちゃって〜!少しぐらいなら触ったっていいんだよ?」

男「うるさいわ!!///」

青「……」

灰「外行くのはやめときなよ。ほんとに風邪ひいちゃうから。風呂上りでしょ?」

青「誰も行くなんて言ってない!!」


橙「なんか最近急に寒くなってきたねー」

男「そうだねー」

橙「ということで色無!!」

男「湯たんぽは嫌だよ」

橙「問答無用ーww」(ぎゅ

男「……」

橙「……冷たっ!!」

男「冷え性だから」

橙「そうだったっけ?」

男「いや今年からそういうことにした。だからもう湯たんぽは無理だなw」

橙「……くそぉ……」

男「……ww」

橙「……!」

男「?」

橙「じゃあ私があっためてあげるー!!」(ぎゅ

男「結局はこうなるのか……」


無「うわ、シャンプー切れてる……誰かの借りないとな」

キョロキョロ

無「これでいいか」

シャコッシャコ……しゃかしゃかしゃかしゃか

無「結構香りがキツいなこのシャンプー……そういえばこれ嗅いだ事あるな……」

橙「い〜ろなしっ」

がばっ

無「わあっ。橙、急に抱きつくなってアレ?」

橙「あれ、この香り……色無、もしかして私のシャンプー使った?」

無「ああ、これ橙のだったんだな。悪い、勝手に使わせてもらったわ」

橙「えへへへぇ、おそろいだね」

無「同じシャンプーだしな」

橙「でもなんでかな、色無の香りの方が落ち着く気がする」

ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

無「こらっ、ドサクサに紛れて抱きつくなっ!」

橙「えへへへへぇ、い〜やだよっ」


『あきのしんしょく』

橙「おっはよー色無」

無「おはよう橙、元気だな」

橙「へへー」

無「顔突き出してどうした?」

橙「何か気付かない?」

無「ん?」

橙「んー」

無「あ!」

橙「やっと気付いた?」

無「橙、お前……」

橙「そうそう」

無「ニキビが……」

橙「え! ウソ」

無「嘘だよ……口紅か?」

橙「気付いたんなら素直に言ってくれればいいのに……照れ隠し?」

無「なんで照れなきゃならないんだよ、ほら行くぞ」

橙「むー」

無「……似合ってるぞ」

橙「……今なんて言ったの?」

無「遅れるぞ、って言った」

橙「えー、長さが違うよ、ホントはなんて言ったのー?~ねーってばー」

無「……聞こえてたんじゃないのか?」

橙「だって嬉しいことは何回でも聞きたいし……あっ!」

無「やっぱりな……ほらいくぞ」

橙「あ、今のウソ! だからもう一回言って、ね。色無ってばー」


橙「あ、色無ー」

無「おー、オレンジ。寒いのに元気だな」

橙「そりゃ私だって寒いけどね。ってコトで、うりゃっ♪」

無「おいこらっ!」

橙「いいじゃん、ポケットに手入れるくらい。あったかいし、恋人みたいだし」

無「お、お前なあ……」

橙「照れてる?可ー愛い♪」

無「……可愛いのはお前だっつーの」

橙「え?」

無「自分からやっといて顔赤くしてんじゃねえ」

橙「えっ、嘘ッ?!」

無「……頑張ってくれてんだろ?……今日は特別だからな」

ギュッ

橙「色無……大好きッ!!」

無「なっ、抱きつくなって!!」


男「ゲーセンかぁ……久しぶりに来たな」

橙「ん〜なんか久々に学生っぽいデートだね!」

男「デートって……まぁそうか」

橙「あ〜!認めたな色無〜!そういうことなのか?そういうことでいいのか?襲っちゃうぞぉww」

男「なんでそうなるんだよ……ん?」

『YOU WIN!!』(おぉ〜!!)

男「なんだあの人だかりは……」

灰「YES!!」

男「……」

橙「どしたの色無〜プリクラ撮ろうよ!」

男「……帰ろう」

橙「え?なんかあったの!?ねぇ答えてよぉ〜」


『石焼芋?』

無「はふはふ……どうして焼き芋ってうまいんだろなー?」

橙「い・ろ・な・し!」

無「うわぁっ! な、なんだ!?」

橙「あはは! 色無ったら驚きすぎー!」

無「橙が驚かすからだろ! 喉につまりそうだったじゃないか!」

橙「ごめんごめん。 あ、私にも少し頂戴」

無「あ、ちょ、橙!」

橙「(ヒョイ、パク)んー、やっぱり秋と言ったらこれよねー」

無「それ俺が買ったやつなんだけどな……」

橙「いいじゃない、これくらいw もう少し頂戴?」

無「……いいけど。ほら」

橙「ありがと。それじゃ、お礼に……」

無「お礼? んっ!」

橙「んー……ん」

(芋を入れた口を色無の口につけて舌を入れる橙)

無「ん、んー! ……ぷはっ! だ、橙!?」

橙「あはは! 二人で味わえてお得でしょ?」

無「……(そんな笑顔で言われたら、何も言えないじゃないか)」

橙「(うわー、ディープキスってこんなにも気持ちいいものだったんだ……(照))」


橙「ふふ〜ん♪今日は給料日だったから奮発してケーキ買ってきちゃった♪やっぱ自分へのご褒美は必要よね♪」

橙「……ん?色無の部屋のドアが開いてる……ちょっと入って悪戯しちゃおかな?かな?」

—キィ……

橙(ソロソロ)お邪魔しまぁす……相変わらず質素で何もない部屋ねぇ……でもここらへんに……(ゴソゴソ)ほら、あった!……ん、また趣味変わったのコイツ? 『清純OL淫乱物語』?……今度はOLさんのコスプレか……でもOLなら悪くないかも♪」

無「……くかー……くかー……」

橙「ん、色無もしかしてもう寝てるの?まだ夜の11時よ?若い子はこれからの時間が楽しい時間になるのに……」

無「……くかー……くかー……」

橙「……こんなに幸せそうに寝られると……悪戯せずにはいられないっ♪」

橙「何してあげようかしら?……そうだ!……んっ。(かぷっ、ちゅうぅぅぅ)

橙「っぷは!……ふふふ、出来ちゃった♪……ここなら……あんまり目立たないよね……///」

橙「えへへ〜、これでついに色無は私のものだぁ!」

—次の日の朝

無「おはよ〜」

紫「おはよっ!……あれぇ、色無首のとこなんか赤いよ?」

無「ん?」

黄緑「あらあら、もしかしてそれって……うふふ♪かしら?」

橙と紫以外のみんな『……な、なんだってー!?』

無「……???」

橙(あ、あれぇ?予想外に早くバレちゃった?)

紫「ねーねー、あの赤いのなにー?」

黄緑「うふふ、紫ちゃん二の腕の柔らかそうなとこチュ—って吸ってみて?それでその吸ったとこ見てみて?」

紫「(チュー)……わっ、赤くなった!色無とおんなじだ!」

黄緑「でね、首筋のあんなところ自分じゃ出来ないでしょ?つまり……」

紫と色無『……な、なんだってぇー!?///』

青「ちょっと待って!なんで色無まで驚くのよ?」

無「いや、だってそんなの俺知らないぞ?昨日は10時にはもう寝たし!!(ボソッ)ていうかそんな出来事があったなら起きてれば良かった……」

赤「でもそれは動かぬ証拠だよね?」

黄「ちょっとぉ、誰としたのよ〜?」

桃「ん、橙ちゃん顔赤いわよ?熱でもあるの?」

橙「へっ!?……っあ、あぁ!な、なんでもないの!き、昨日バイト頑張りすぎたかな〜、あはは……///」

黒「あやしいわね」

青「あやしいわ」

赤「うん、あやしいね」

橙「……きゃー!色無助けてー!みんながいぢめるぅ!」

無「犯人はお前かーっ!!(やるんだったら起こしてからやれーっ!!)」


『ばにーがーる』

橙「じゃーん」

無「……」

橙「……何か言いなさいよ、私がバカみたいじゃない」

無「……バニーガールなんて初めて見た」

橙「どう?」

無「……ああ」

橙「……ちゃんと見てよ。せっかくうさぎの耳が生えたから頑張ってみたのに」

無「落ち込むなよ……正直なんか照れちゃってまともに見れないんだから」

橙「! やっぱりそうなんだー、ふふふ」

無「まて、その格好のまま近付かれると困る」

橙「いいじゃない、私がいいって言ってるんだから」

無「いや、だからね、橙」

橙「なによ、色無が喜ぶと思って着たんだから」

無「だから、健全な男子にその格好は刺激が強すぎるんだって」

橙「ぅー」

だきっ

無「うわ! 橙、抱き付くなよ」

——逃げる色無

橙「なによ逃げたりして……うさぎは寂しいと死んじゃうんだからね」


『百万本のバラ』

年末も押し迫る12月30日。世間はあいかわらず忙しそうだ。

「色無君、今日はあがっていいよ。もう、お客も来ないから……」

そんな言葉を寂しそうに言われても困るのだが……。

「結構、売れ残ったなぁ……。世間の景気回復はニュースの中だけなのかねぇ……」

そこにはクリスマス需要を見込んで大量に仕入れた色とりどりのバラの花が咲き誇っていた。

「せっかく仕入れたのに……このままここで枯らすのも可哀相よね……」

「綺麗なのに……もったいないですよね……本当に……」

「あたしのことかしら?」

「えっ! い、いやぁ〜そのぉ〜まぁ〜、なんというか……」

「ふふっ、いいのよ、君が困らなくても。店主も花も売れ残りさっ。花屋なのに華がないとはいかにっ! 世の男には見る目と花を贈る気概と余裕を持って欲しいもんだわ。君も、気をつけなさい。好きな女の子がいるなら、早く手をつけてしまうことね。長いこと指を咥えていると、他の誰かに持っていかれたり、旬を逃すわよ。綺麗なものは、綺麗なうちに自分のものにすること。おわかり?」

「手をつけるって、オーナー……」

「あははっ、高校生にはまだ早いっていうのかな? 何言ってんだか。いまどきの子が……。まぁ、それでもね、想いは伝えなきゃ、伝わらないのよ。待っていても、誰も判ってはくれない。行動に起こすことが大事。それだけは、覚えておきなさいね」

「はい。覚えておきます……。ココ片付けたら失礼しますね」

「うん、いいよ。……あ、そうだ! 色無君。このバラの花引き取ってくれないかな? 半額でいいよ」

「オーナー、単価いくらだと思っているんですか……半値でも買えませんよ……」

「あ……」

「それに、何本あると……」

「そ、そ、それじゃあ……うん、よし。今日のバイト代は現物支給! ついでに運搬費も込みだ! そうと決まれば早く片付けるわよ。君の大事な娘の所に全部運ぶから。さ、早く早くっ」

「で、え、えええええええええええっ。こ、これからですかぁ?」

「色無君、あたしはね。やると言ったら、やるの。覚えといてね」

「イ、イエス・ボス……」

しかし、どう見ても配達用の車には積みきれない……。途方にくれていると、オーナーがトラックに乗ってきた……あんた……ナニモンだよ……。

11tトラックの荷台に目いっぱい積み込む。おいおい、もう一軒、花屋が開けるぞ……。

「色無君、さ、乗って乗って。いくわよぉ〜」

行く先は、寮。積み込んだ花を彼女の部屋から見える庭に降ろす。彼女の部屋意外にも何部屋か明かりが点いている……。

目撃者多数っていうことになりそうだが……ままよ。

「ふう、これで全部ね。あとは、頑張りなさい。じゃ、よい年を!」

手を振り遠ざかっていくトラック。まったく、なんて女性だ……。ポケットから携帯を取り出し、ボタンを押す。

「あ、俺。部屋の窓から外を見てくれないか。ああ、すぐ済むから……」

 

年末の帰省もしないで学校近くの店でバイトをしていた日の夜。のんびりと雑誌を読んでいたときに携帯が鳴った。

かけてきたのは……色無。

実は先日のクリスマス以来、特別な関係になりつつある。

「はいは〜い。どうしたの? うん、外? 今? 判った……」

いきなり、どうしたんだか……。

カラカラカラカラ。

窓の下には色無。……と、狭くはない庭を埋め尽くすバラの花……。

「ちょっ……っとぉ。なにこれ? どうしたのよ?」

「ああ、百万本には かなり足りないけど……、橙、お前をバラで飾りたかった」

「もう……、ばかね。古い映画の見過ぎよ……。でも、綺麗ね……」

「降りてこいよ。近くで見てみないか」

「待ってて、いま降りていくから」

ずいぶん積極的になったじゃない。他の娘も見てるの知ってるのに。

「お待ちどうさま。わぁぁぁぁぁぁぁ。すっごいねぇ。こんなにたくさんのバラの花って見たことないよ。どうしたのこれ?」

「バイト先でね。ああ、そこに立ってみてよ」

「ここ?」

「そう、そこ。ああ、いいなぁ。そこが中心になるように並べたんだ。照明もよくあたるから。思ったとおりだ」

「なにが思った通りなの?」

「橙には華やかな色のバラがよく似合う。とても綺麗だ」

「なーに言ってんだか。そういうセリフを言うときは顔が赤くならないように言わなきゃね」

軽口を叩く私の顔も熱くなっている。まったく、色無のばか……。

「あーあ、見ちゃいられないねぇ、まったく。夜だってのに、二人でな〜にやってんだか」

あっ。

「色無も、覚悟を決めたようで……。あーあ。これからつまらなくなりそうね」

「そう? これからが面白くなるのよ。ねぇ? 色無」

だんだん、色無の顔色が無くなっていく……。自分のしたことの意味がようやく判ってきたようで。

ま、いいじゃないの。

「大丈夫よ。わたしがいるじゃない!」

とびっきりの笑顔で胸に飛び込む。バラの花に囲まれた世界には二人しかいない。

もう、わたしには あなたしか見えないのだから。


男「うがぁぁぁー!!」

橙「あ、ケダモノだ。そんなにいきり立っちゃって、今夜はダレを食べるのかなー?」

男「誰がケダモノだ! あぁもう無理だー……さようなら俺の単位……」

橙「あぁ、なるほど。でも受験生に比べればマシでしょうに」

男「比べたってしょうがないだろ。つーかオマエは大丈夫なのか?」

橙「んー、まぁなんとかなるかなって感じ。落としちゃったらそれはそれで、ね」

男「……その楽観さがうらやましい」

橙「アンタが悲観的すぎるの。えいッ」(ギュ

男「うわ!? きゅ、急に抱きつくなビックリするから!」

橙「なにも大学だけで人生決まるワケじゃないんだからさ、ね? そりゃないがしろにしていいとは思ってないけど」

男「……」

橙「落としたってまた取り直せばいいんだし。そんなこと気にするばかりじゃ、つまんないよ?」

男「そりゃ、そうだけど……」

橙「んふふー。なんだったら、今から一緒に現実逃避しちゃおっか?」

男「……はい?」

橙「例えばさ、気分転換ってことでかるーく運動なんかしてみるといいんじゃないかな?」

男「いや、なんか話が読めないんだけど?」

橙「……やれやれ、このニブチンめ。いいやもう、じゃあこのままだっこされてろー。うりうり」

男「だぁぁ頬擦りすんな胸押し付けんなーッ!」

桃(……あれって私の役割だと思うんだけどなー)


「い、色無の誘いを断ったぁ?そりゃまたどうして?」

「今日はいつものメンバーで遊ぶ約束があったんです。だから、ごめんねって」

「……ふぅん」

物言いたげな視線を受けつつ、淹れてもらった緑茶をすする。とても、まろやかで優しい味。

朱色さんはこう見えて意外と繊細なところがあるらしく、淹れながら作法についての講義を展開していた。やっぱり只者じゃない。

「私はてっきり、オマエさんなら色無を取るかと思ったけどね」

ふふんと意地の悪い微笑み。それがあまりに朱色さんらしくて、思わず笑ってしまいそうになる。

「私は確かにアイツが好きです。四六時中、一緒に居たいって思うときもあります」

「ほぉ。じゃあ、一緒に行かなかったのはなんでだい?」

ばりばりと煎餅をかじりながらの問い掛け。私も煎餅の封を開けながら、その問いに答える。

「私は、世界にアイツさえいればいいって思えないタチなんです」

「……へぇ」

「みんながいなくちゃ、ダメなんです。大切な人はひとりじゃない。たくさん、たくさんいるんです」

恋愛物で見かける『あなたがいれば他に何もいらない』という台詞を、私はどうしても受け入れられない。

家族や、友達。それはどんなに大事な人であっても、代わりにはなりえないもの。

「……友情を犠牲にしてまで愛はいらないってことか。なるほどねぇ」

「みんなで騒ぐことがいちばん楽しいんですから。その上で、隣にアイツが居てくれればと思ってます」

朱色さんに倣って、煎餅をかじる。ぱきっという乾いた音に混じって、朱色さんのお茶をすする音が聞こえる。

「ふぅー……。 なるほどねぇ。でもな」

「もし私が色無と付き合ったとしても、みんな受け入れてくれます。そういう子たちってことぐらい、分かってますから」

逆に誰かが色無と付き合うことになっても、私は受け入れるだろう。心の底で泣いたとしても、悟らせない笑顔を見せる自信がある。

「あぁ……確かにオマエらはそーだわな。余計な心配だったか」

「むしろ、モノにしてから奪われないかを心配してます。受け入れるのと諦めるのは、別ですからね」

自然、笑顔が浮かぶ。きっと向かいの人と同じくらい、意地の悪い笑顔だ。

「……じゃあ、私はそろそろ行きますね。ごちそうさまでした」

「お粗末様。面白い話が聞けてよかったよ。 じゃあ、気をつけて行っといで」

外に出る前。伸びた橙色の髪を縛ろうと慌てる私の後ろで、朱色さんは「色無の未来は予想できそうだな」と、楽しそうに笑っていた。


橙「料理は苦手なんだよね……あはは」

男「作ってくれることがありがたいから、いいんだよ。いただきます」

橙「でもそれだけじゃ嫌なのよね、こっちとしては」

男「ん? あ、この卵焼きうまいよ。ほんのり甘くていいな」

橙「ありがと。ほら、じゃあその卵焼きで……はい、あーん」

男「いらん!」

橙「やだ。私は料理ヘタだからさ、こういうふうに違うところで労ってあげるしかないもの」

男「だ、だからって」

橙「料理に込めた愛情は見えないけど、こんなふうに形で示せばしっかりわかるでしょ?だからさ、ね」

男「……あーん」

橙「隙ありっ」

男「んぅッ!?」

橙「——ぷはッ。 あはは、おかえりがまだだったからさ」

男「……オマエには敵わん」

群(……甘いのは卵焼きじゃなくてアナタたちじゃない。はぁ、激甘ごちそうさまでした……)


「ふあ〜……」

色無が買い物から帰って、意気揚々と自室の扉を開けると、そこには口から覇気の全くない溜息を漏らした橙が居座っていた。

「なんだお前いきなり」

「ああ……色無。おかえり」

ぎぎ、と壊れたからくり人形のように首を色無のほうに向けると、これまた力なく呻く橙。

「ああ、ただいま……」

とりあえず、部屋を進んで鞄を机の上において椅子に腰掛けベッドにもたれている橙の対面に座る色無。

改めて橙を観察する。

いつもの快活さは鳴りを潜め、今は鬱モード全開。心なしかいつもの洒落っ気も消え失せているような。とにかく今の橙には全身から他人を寄せ付けないオーラを醸し出していた。

「どうしたんだ今日は。元気ないじゃないか」

「うん……実はね……」

嫌な事があったのだろうが、その事を思い出しているのだろうか?沈鬱な表情が更に影を深める。しばらくの間があって、やがて重々しく吐き出すように橙が口を開く。

「黒と……ケンカした」

と、一言。

「……で?それで」

促す色無。

「最初はね、他愛のない世間話だったの。ファッションとか、恋愛とか……そんな感じの。で、二人してどんどん熱くなって、あたしがちょっとキツイ事言っちゃったのよ。そしたら黒がもっとドギツイ事言い返してきて……。

で、どっちも引くに引けなくなって……そのまま近くを通りかかった黄緑に仲裁されるまで散々討論してたの。ううん。討論じゃなくて、罵倒しあってたって言った方がいいかも。凄い事言ってたもん。アタシ」

と、ここまで言い切って沈んだ顔を膝に埋める橙。それからピクリともしなくなってしまった。

「……」

色無はただ黙っていた。今の話のままでは色無はどうする事もできない。ただ、橙が顔を上げるのを待っていた。

暫く、部屋には沈黙が漂う。お互いがお互いに何も言えなくなっていた。

正直色無は、こんな橙を見た事が無かった。

いつも明朗としていて、輪の中心となって騒いでいる。そんなイメージの彼女がここまで悲痛な姿を見せるのだ。色無はなんとなく全身がむず痒くなって、落ち着かなくなってしまう。

何か声をかけようとしてみても、喉から先に声が出ない。全て飲み込んでしまうのだ。この口先から出るどんな言葉も今の橙には届かないのではないか?そんな予感を色無は感じていた。

何故彼女はこんなにまで苦しんでいるのか。どんな事をしてやれるのだろうか?それらが全く解らない色無は、ただ待つしか出来なかった。

居た堪れない時間が過ぎる。長らく沈黙が支配していた部屋だったが、

「……っ……ひっ……う……」

橙のすすり泣きによって沈黙は破られた。と、同時に色無の膠着も解き放たれたようだ。

「橙……」

身体は自然に動いていた。橙の隣に腰掛ける。

「……」

しばらくのためらい、しかしすぐに思い直し、橙の肩を抱く。

「……!」

瞬間、震えた橙だったがやがて崩れるように色無に頭を預けていった。

再びお互いの会話が止まる。ただ違うのは橙の押し殺した鳴き声だけだった。

再び時間が流れて、橙も落ち着いたのか、今は泣きはらした顔を上げて色無にもたれかかっていた。

「あたしね、友達と悪ふざけしても、ケンカは絶対にしないって誓ってたんだ」

震える声で吐き出す橙。色無はただ黙って聞いていた。

「ちょっとした対抗心だったのにね、いつの間にか本気になってた。ダメだ、とも思わなかった」

ポツリ、ポツリと懺悔してゆく。

「後で仲直りしても絶対わだかまりが残る。解ってたのに。だから決めてたのに……!」

そんなの全然楽しくないよ……と頭を振る橙。

色無は暫く考える———これならことは簡単なんじゃないか?

「橙は、どうしたいんだ?」

「え?」

「黒と仲直り、したいんだろ?だったら」

一旦区切って

「あやまりゃいいじゃないか」

自信満々に、いや、当然のようにこう言った。

「ちょ、ちょっと!」

橙の手を取り、急に立ち上がってドアに向かって歩き出す色無。

「ほら、いくぞ」

「ま、待ってってば!」

色無がドアノブに手をかける頃になって、ようやく色無の手を振りほどく事に成功する橙。

「黒は……許してなんか……くれないよ。酷い事言ったもんあたし」

「橙は、黒に言われた事、怒ってるのか?」

「それは……!違うけど……」

「だろ?だったら黒も同じだって!」

立ち尽くす橙。しかし、色無はまるで取り合わず再び橙の手をとってドアノブをひねった。

ほとんど飛び出しに近い勢いで、廊下に出る二人。勢い余って少しつんのめってしまった。

「なにしてるの?アンタ」

頭上に降りかかる凛とした声音。ぱっ、と顔を上げると、そこには黒が腕を組んで訝しげな視線を二人に突き刺していた。

「あ……黒」

「あら、橙」

交互に色無と橙を見比べる剣の如く鋭い視線。

飛び出すような勢い。握り合ってるというより強引に掴んでいるといったほうがいい色無の手。泣きはらした橙。

結果。黒の見解。

バシィ!

「あいたー!」

「アンタ橙に何したのよ!」

奴沈む ビンタ一撃 色無に。

すぐさま橙を色無から引き剥がして橙をかばうように後ろに回して色無をねめつける。

「大丈夫?平気?橙」

「へ?あ、ああ、うん……じゃなくて!」

声を溜めて、キッ、とした視線を黒に向ける。

「ゴメン!」

と、一言。謝った。

すると、きょとんとした顔の黒が、

「なにが?あ、ああ〜、さっきの事?大丈夫よ、気になんかしちゃいないわ」

と、頭を下げる橙の肩を優しく叩いた。

「ホントに?」

「ホント」

「絶対?」

「絶対。ってゆうかねアタシも似たような事いったんだから、そっちも気にする事なんかないのに」

しつこく繰り返してくる橙に、それこそ怒りそうな感じでたしなめる黒。

「そっか……良かった……!」

心底安心したように、胸を撫で下ろす橙。

「そんなことより、橙。桃が駅前の美味しいケーキ買ってきたんですって。行きましょ」

「ホント!?いくいくぅ!」

それっきり、楽しそうに二人は階下へと降りてゆく。

「ま、まて……お前等ぁ……」

廊下に沈んで呻く色無が見送った橙は、いつもの快活として洒落た笑顔を浮かべていた。


あたし、橙。ケナゲに恋するオンナノコ。

現在、前方にターゲットを発見。さっそく声をかける。

「あ、色無だ!おーい……ってなんだ、寝てるのか……」

せっかく見つけた大好きな人は、すやすやと壁に寄り掛かって寝ている。なんか残念。

「こんなトコで寝なくてもいいのに、あはは」

キミには部屋があるでしょ。でもせっかくなので、寝顔を拝見してみたり。

「……へへ」

この顔は今、あたしだけのモノ。そう考えるとすごく嬉しくなってくる。

「……」

髪とかも触ってみたり。……いっつもこうならいいのに。

ライバルの数を数えると、少し頭が痛くなってくる。負ける気はないんだけどさ。

「……ねえ、あたしはキミにとってどんな存在?」

答えが返ってこないってわかってるからこそ、こんなことを聞いてみる。起きてたら聞けないよ、こんなこと。

アピールはしてるつもり。でもたまに、それが虚しくなってくる。最近はあしらわれちゃうこともある。……もしかして、軽いヤツって思われてるのかな?そんなことないのにな。

「……好きだよ」

こんなにキミを想ってるのに、どうして届かないんだろ? 
……こんなに、近くにいるのになあ。不意打ちでキスでもしてやろうかな。……やめよ。なんだか余計に虚しくなりそうだし。

きっともうすぐ、誰かがやってきて、この色無の表情もあたしだけのものじゃなくなる。

ほら、楽しそうな声が近づいてくる。あたしは最後に、彼の頬に触れた。

——これが、あたしの大好きな人。


とある日の寮。帰って食堂に行くと、橙が赤ん坊を抱いていた。

「え???? 橙、どうした??? まさか……」

「ばかね、朱色さんの友達の子だってさ。静かにしてよね、起きちゃうじゃない」

「ああ、すまん。そうか……」

女の子が赤ん坊を抱く姿はいいものだ……なんとなく、俺は未来が見えた気がした……

「いいもんだな……。なんか……綺麗だぜ」

「なーに言ってんだか。よいしょ、肩貸してね。赤ちゃんって意外と重いのよ……ふう、よしよし」

「よく寝てるな」

「さっき、たっぷりミルク飲んだから。それまでは大変だったわ……。黄緑が来てくれなきゃ、朱色さんや青と右往左往してたから……」

「あーーーー、聞いただけで目に浮かぶわ。それで、皆は?」

「朱色さんと黄緑は夕食の買出し。青は空ちゃんと一緒に、この子の物の買出し。朱色さんってば、黄緑に叱られてたわ……

 赤ん坊の世話なんて出来ない事を引き受けてー!って」

「ま、朱色さんだからね。事情を聞いて断れなかったんだろ。それも、聞かなくても目に浮かぶわ……」

夕日が差し込む食堂のソファーに並ぶ俺と橙。橙の胸に抱かれる赤ん坊。なんか……たまんなくなってきた……

そっと、橙の肩に手を廻す……。ちょっと驚いた顔。視線が絡み合う。どちらからともなく、微笑がこぼれる……

漂うミルクの香り……赤ん坊の寝息。

「悪くないわね……こーゆーのも。いつか……」

「そうだな……いつか……」

夕日に照らされた橙の顔が綺麗だ……目を閉じて……俺を待つ橙……

二つの影が一つに重なる瞬間……

「コホンッ」

「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」

「えー、じゃないわよ。あんた達……誰もいないと思って、何しようとしてたのかな? ン?」

振り返ると、俺と橙以外の寮生が勢ぞろいして俺達を見下ろしていた……。

橙の胸には俺達のことなど知らないふりして、安らかに赤ん坊が寝息をたてていた。


男「Zzz」

橙「あ。色無、またここで寝てる。よっぽど好きなんだねぇ」

男「んー……」

橙「せっかくだし、膝枕でもしてあげよっかな。 いしょ、っと……ふぅ、できたできた」

男「うぅ、ん……」

橙「どんな夢見てるのかなー。私たちの夢だといいんだけどな」

男「……すー」

橙「あはは、ホントに穏やかな寝顔。普段の慌しさがウソみたい」

男「……」

橙「いつも楽しさをくれてありがとね、色無。おやすみ」

橙「——ぅ、ん……?」

男「あ、起きた。おはよ……っていうのも変だけどな。夜だし」

橙「色無……? あぁ、そっか、膝枕したまま寝ちゃったんだね」

男「起きた時はビックリしたよ。いきなりいたからさ」

橙「ごめんごめん。つい、ね。それで、まだこのまま膝枕しててほしい?」

男「オレンジがよければお願いしたいです」

橙「ラジャー。 でもねぇ、ここからは延長料を頂くよ?」

男「え。な、なに?」

橙「ふふ……」

男「んッ!?」

橙「んぅ……ぷはッ。 ふぅ、これでおっけー」

男「い、今……し、し」

橙「はいはーい、余計な詮索はしないの。……これでもけっこう恥ずかしかったんだからね」


橙「それにしてもさー、色無はいったい誰とくっつく気なんだろうね?」

青「そ、そんなの知らないわよ。アイツの勝手っていうか、そもそもなんであんなヤツと」

黄「あれ?青は色無のこと嫌いなの?」

青「誰も嫌いとは言ってないでしょ! ただその、なんていうか……」

黄「なんだかよくわかんないけど……あたしは好きだな。色無のこと」

青「ッ!?」

橙「おー、言うねぇ黄色」

黄「友達としても面白くていいヤツだし、恋人ならそれはそれでいいかなって思うよ。あはは」

青「あなた……なんでそんなに堂々と言えるのよ、そんなこと」

黄「オレンジと違って、本人を前にしては言えないよ?けどいないんだったら別に」

橙「あ、色無だ」

黄「ええええッ!?あわわわわわ、いい今のナシナシ!!オフレコオフレコー!!」

橙「あっはははは!大丈夫、いないから安心してよ。 にしても慌てすぎでしょ、いくらなんでも」

黄「……オレンジといっしょにしないでよ」

橙「だって隠してたら取られちゃいそうだもん。私だってホントは恥ずかしいって思ってるよ?」

青「そうなの?全然そんな素振りすら見せないのに」

橙「それは桃とか焦茶さん。私はこれでも純な乙女なんですよーだ」

青「……へーぇ」

黄「とてもそんなふうには見えないですよせんせー」

橙「せんせーはそういう努力をしているんです。えっへん」

黄「おぉー、さすがですせんせー」

青「それって褒められるものなのかしら……」

橙「少なくとも、青はそういう努力をすべきじゃないかな?けけけ」

青「う……ぁぅ」


橙「そもそも色無を好きになったきっかけってなんだろう?」

男「……そーいう話は本人とするもんなのか?」

橙「いいじゃん別にー。で、考えてみたんだけど」

男「う、うん」

橙「これといって理由がないってことに気がついたんだ」

男「……怒るべきか泣くべきかわからん」

橙「第一印象はフツーでさ。別にそんなに目立つことしたワケじゃないし、顔はいいけど理由にするほどじゃないし」

男「そろそろ悲しくなってきたんですけど」

橙「でもさ、それでも好きなんだよ。どうしようもないくらいに」

男「……」

橙「こうだから好き、っていうのが、好きだから好き、って感じになってるのかな。色無のすることがみんな特別に思えて」

男「オマエ……」

橙「えへへ……恋人になった記念ということで、ちょっとしゃべりすぎちゃった」

男「……俺も似たようなもんかもしれないな」

橙「え?」

男「なんでもねーよ」

橙「そっか。 あー、風が気持ちいいー」

 晴れた日、夕方、彼女の色が映える時。

 繋ぐ理由を育んだふたつの手は、離す理由を持たないだろう——この先も、ずっと。


男「雨、止まねぇなぁ」

橙「明日は晴れるみたいだけど」

男「今が退屈なんだよ。あーもう、出かける予定があったのに」

橙「どこにお出かけのつもりだったの?」

男「いやまぁ、目的はないんだけど。こう適当にぶらつくだけで」

橙「それならさ、ここで適当におしゃべりしてるだけでもいいんじゃない?」

男「んー。でもみんなはみんなですることあるんじゃない?」

橙「ふーん。じゃあ、ためしてみよっか」

橙「赤と青は部活、白は病院、群青さんはお仕事で不在でした。で、居る人に声かけてみたところ」

男「……みんなも意外とヒマなんだね」

橙「色無、本気でそう思ってる?」

男「へ?」

橙「はぁ……この朴念仁め」


橙の自室。

橙は部屋の真ん中で、帰りに購入してきたファッション雑誌をめくっていた。

「ん〜、そろそろ新しい春物の服が欲しいな〜っと……」

目がチカチカするくらいにカラフルできらびやかなページが延々と続く。しかし、特に橙の心にヒットするような物がない。可愛い!と思うものもあるにはあるのだが、いざ自分が着るとなると怪しくなってくる。

「ん〜……」

パラパラピラピラ……

「んん?」

橙のページ捲りが止まる。しかし、ページに写っているのは男物の服。橙にはメンズを着るような趣味は無かったはずだが。

「ん〜ふっふっふっふ〜ん♪」

なにやら面白い事を思いついたようである。橙の顔が妖しい笑みを映し出す。

「は?街まで付き合え?」

「そ」

寮の居間でのんびりと茶をすすっていた色無に、いつもの快活な表情をした橙が甘えるようにもたれかかっていた。

「やだよ。どうせ荷物持ちかなんかだろ?なんか奢ってくれるってんなら考えてやらんでもないが……」

過去、こういうシチュで散々振り回された経験のある色無。必要以上に邪険に扱っている。

「え〜……い〜じゃ〜ん、別に〜。他の人は皆忙しいって言うし」

「嫌だ」

「そんな〜」

「だ・め・だ。他の人と行け」

取り付く島もない色無。しかし

「アタシは色無と一緒に行きたいの〜」

「ぶ……!」

盛大に茶を噴出す色無。

良く見ると肩が小刻みに震えて、顔はトマトのように真っ赤だ。

(あれ?ツボッたかな?よ〜し)

「色無だけが頼りなの〜。色無じゃなきゃ嫌なの〜」

自分的に精一杯の甘えた声を出してみる。

震えている色無は、俯いてしまって顔は見えない。

しかし、髪の毛から覗ける耳は先程より一層赤く染まっていた。その耳に橙はそっと息を吹きかけるようにこう言った。

「ねぇ、ダメ?」

ダメ?というダメ押し。洒落じゃないぞ。

「だぁ〜もう!わかった、わかったから!」

流石に耐え切れなくなった色無がヤケクソ気味に悲鳴を上げる。

「行く、ってゆうか行こう!ホラ、準備するから、一緒に行こう!」

「やだ、色無ったら……一緒にイクだなんてそんな……」

「うっさい!言葉のあやだ!し〜ましぇ〜ん」

もはやヤケクソというよりクソミソだった。

それから2時間ほどたった現在。

結局散々振り回される結果になった色無であったが、さほど疲れてはいなかった。何故か。

「なぁ、長いことこうしてるけどお前何も買ってないじゃん。良いのか?」

「ん〜まぁね。いいのがないんだよね〜……っと」

色無の両手には何もぶら下がっていなかった。橙が物色しこそすれ、結局買わずに行ってしまうのだ。橙にしては珍しい、というよりおかしい。一体どうしたのだろうか?

そろそろ色無がいぶかしんできた頃に、橙は急に足を止める。

「あ、コレなんかいいんじゃない?」

そういって取り出したのは男物のシャツ。左胸のオレンジのラインが妙に際立つ、まぁ中々センスのある上着。

「でもこれって男物じゃないか。お前そんなの着る趣味あったっけ?」

「ああ、アタシはいいの。コレ色無にプレゼントしようと思って」

「え、いいのか?」

「いいのいいの。どうせ私のは買えなかったんだし。付き合ってくれたお礼」

本当はコレが目当てだったのだが。

「そっか……ありがとうな。じゃあ買ってくるよ」

そんなことは知りもしない色無は、橙の好意を一身に受け止めて、どこか嬉しそうにカウンターへ駆けていった。

「ねぇ色無、ちょっと着てみなよ」

「ああ」

寮に帰ってきた二人は早速色無の部屋で、買ってきた上着を取り出した。

色無がそのシャツを纏う。

「どうだ?」

「うん、カッコイイ!」

橙の歓声に少しばかり顔を赤らめる色無。確かに色無に似合っていた。

しかし、橙の心の目線は上着の左胸のラインに集中していた。

(ちょっとした自己主張ってとこかな……)

色無の心臓部にきらめくオレンジ。橙は、色無は自分の物だというマーキングのつもりだった。パラパラ捲くっていたファッション誌で目に留まったのだ。

「色無」

「ん?」

「それ着て、どっかデートしよっか?」


無「ここってさ、何気に姉妹が多いよな」

橙「んー?あぁ、言われてみれば確かにそうかも」

無「黒と灰、青と空、群青さんと朱色さん、焦茶さんと茶色……しかもそれぞれ違いがあるとはいえ、みんな仲良し」

橙「そうだね。でもどうしたの?急に」

無「いや、別にどうしたってワケじゃないよ。ただなんとなくってだけでさ」

橙「そっか。ね、色無は一人っ子なの?」

無「ああ。ついでに言うと、いわゆるカギっ子ってヤツだった」

橙「カギっ子?」

無「自分で鍵を持って行って、帰ったら鍵を開ける。だからカギっ子、つまり帰ったらひとりぼっち」

橙「へぇ……そっか。色無は、兄弟がほしかったんだね」

無「……そうだな。兄さんや姉さん、あるいは弟でも妹でもいてくれたらなぁって思ってたよ」

橙「それ——私もわかるよ、おにいちゃん♪」

無「はッ!?」

橙「ふふっ。でも、今は帰ってきた時にカギは要らないよね。ほぼ確実に誰かがいるもん」

無「あ、あぁ……そうだな、うん、そう」

橙「だから、今はもう、寂しくないよね?おにいちゃん」

無「ぁ……あぁ」

橙「よかった。あはは、色無のことをおにいちゃんって言うのもなんだか新鮮でいいな♪」

無「さいですか……。オマエはちっとも妹って感じしないけどな」

橙「そりゃまぁ、妹って関係より彼女って関係でいたいですから」

無「——ぅ」

橙「でも大丈夫。どっちにしたって、寂しい思いだけはさせないよ?お・に・い・ちゃん」

無「……わかったから、それ、やめれ」


男「風、強ぇなぁ」

橙「うぅー……足が冷えるー」

男「ジャージ穿けばいいじゃん」

橙「アレは可愛くないからやらない。プライドに反するの」

男「な、なんかオマエらしいけど……でもさ、寒いだろ?」

橙「寒さはガマンすればいいの。それにアンタだってさ、ジャージ穿いてるよりはミニのほうが嬉しいでしょ?」

男「なッ!お、俺は別に」

橙「本当に?」

男「う……」

橙「ほ・ん・と・う・にー?」

男「ぅ……嘘つきました。ごめんなさい」

橙「うむ、正直でよろしい。でも、期待してスカートばっかり見るようなヘンタイにはならないでよ?」

男「誰がなるかッ!」

橙「あっはは!ごめんごめん」

男「ったく」

橙「そんなにむくれないでよ。冗談だってば。ね?」

男「ふんだ」

橙「しょうがないなぁ。じゃあお詫びに……(ゴニョゴニョ)……ってのは、どう?」

男「はッ!? いやでもそれって無理じゃない?」

橙「だいじょうぶだいじょうぶ。たぶん余裕だよ?」

男「だけど……あぁもう、いいや。好きにしろい」

橙「アイアイサー♪明日をお楽しみに!」

男「……ホントにやった。あのカタブツである黒までもが。なんで?なんて吹き込んだの?」

橙「それは内緒ですよーだ。しっかしみんな似合ってたなぁ。このままミニばっか穿いてもよさそうだけど」

男「……ま、まぁそうかもしれんね、うん」

橙「ふーん……鼻の下伸びてるよ、エロ無」

男「んなッ!?」


『眼鏡』

橙「色無、何も言わずにこれをつけて」

無「なんだこれ、眼鏡?」

橙「お願い」

無「わかったよ……これでいいか?」

橙「やっぱり思った通り似合う」

無「そりゃどうも」

橙「写真撮ってもいい?」

無「携帯カメラか、何する気だよ?」

橙「これ、この本のココ」

無「『街で見掛けた眼鏡の似合う男のコ』ってまさかこれに」

橙「色無ならいい所までいくと思うんだけど」

無「というかこの本、結構有名なヤツだろ?」

橙「そうよ」

無「晒し者になるのはちょっと」

橙「えー、いいでしょ? 賞品当たったら分けてあげるから」

無「賞品てなんだよ」

橙「映画のチケットとか遊園地の一日パスとか、ね、お願い!」

無「映画か……わかったよちょっと気が進まないけど、そこまでお願いされたらな」

橙「じゃあここで撮るから、こっち見てね」

無「ああ」

橙(見慣れてる色無の顔のはずなのに、なんだろ? ちょっといいかも)

無「……もういいか?」

橙「……」

無「おい、橙!」

橙「ひゃい!」

無「どうした? 大丈夫か?」

橙「な、なんでもないよ。ありがと、それじゃ!」

無「……走って行かなくてもいいだろ」

橙(……応募するの止めよ、ライバル増えたら困るし。そうだ! 当たったって言って映画に誘おうかな)


……う〜ん、やっぱやりすぎだったかな?~もう誰も残っていない教室で、一通り気になる物はチェックし終えた雑誌を閉じてため息を一つ。

時計を見ると放課後になってから既に30分が過ぎている。それでもあいつはまだ帰って来ないワケで。

女の子を待たせるなんて何様のつもり——って言いたい所だけど。

皆の前であいつが慌てるのが面白くて、抱きつきながら耳元で放課後の約束を取り付けたのは私だし、あんまりグチはこぼせない。

今までの掃除をサボってきた分の罰って名目で連行されていった時のあいつのすがる様な目はめったに見る事はできないだろう。

ぶっちゃけ巻き添えをくらうのはゴメンだし、無視したけど。ただ良心が多少痛まない事も無いし、待っててあげようとは思うけどね。

……自分で待つって言った直後に何だけど、待ってるにしてもマジでヒマ〜。うぁ〜。

ヒマっていっても、読み終わったばかりの雑誌を読み直すのも少しバカらしいし、机に突っ伏したままケータイを開いていらないメールの整理を開始。

特別重要な事をメールした訳じゃないけど、なんとなくあいつから来たメールを最優先で保護していく作業の中で、一通のメールで目が止まった。

『む〜、右かな』

私がピアスを買いに行った時、二つのピアスで迷ったあげくにあいつに写メを送った時の簡潔なリアクション。

私自身ちょっと右側に気持ちが傾きかけてただけに、あいつと意見が合って嬉しかったのを覚えてる。

ま、この時は何となく恥ずかしくなって『じゃあ左買う』って言ったんだけど。

小学生かっての、私は。苦笑しながら左耳を触る。指先に感じるのは写メに写ってたピアス。

それにしてもこれを買ってから結構たつっていうのに、あいつが全く興味を示そうとしないのはどういうつもりなんだろ。

……あいつに期待してる時点でダメだってわかってるはずなのにねぇ。はじめは微笑ましい気持ちでピアスをいじっていた指に段々力が入り始める。

「悪いっ、遅くなった!!」

指が痛くなってきた所に噂の男が大登場。あいかわらずタイミングいいんだか悪いんだかわかんない。

ん〜、せっかくのタイミングだしこのイライラを解消させてもらおうかな?

「お〜そ〜い〜」

「ここまで遅くなるって思ってなかったんだよ、マジでゴメンっ!」

「ホントに悪いって思ってるの〜?」

「全面的に俺が悪かったです、ハイ」

とりあえず牽制代わりにいかにも不機嫌ですって声を出す。てっきり開き直ると思ってたのに、こいつにしては珍しく謝り続ける。

こっちとしては八つ当たりをしてるだけだし、私のほうが悪者のような気がするなぁ……。

「信じてあげましょうか。ってか今まで掃除してたの?~大変だねぇ〜」

「あ、違う。掃除はすぐ終わったぞ」

……はい? 私が八つ当たりをやめてあげようと思ったとたんに、いきなり何を言い出しやがるのでしょうかこいつは。

「掃除終わった後に白さんと茶さんに会ってな。話し込んでたらこの時間になってたんだよ。はっはっは」

前言撤回。やっぱ悪者はこいつです。笑顔で他の女の子とイチャついてました、なんて言う男にロクな奴はいない。

「……」

「はっはっは、とりあえず行くか——あれ? どした?」

さすがのこいつも、私が真横を向いてノーリアクションを決め込んだら違和感に気づいたらしい。

「おーい?」

「つーん」

「『つーん』なんて言ってる余裕があったらこっち向けっての」

「つーん」

回りこんできた分だけ動いて、こいつに対して常に横を向いた状態を保つ。状況を飲み込めていないんだろう、かなり慌ててる。

「オレンジちゃ〜ん?」

「つーん」

「ほ〜ら、こっち向いてぇ〜」

「つーん」

「ああもう、俺が何したってんだよ!?」

「つーん」

いつも私が笑って流すと思ってたら大間違い。私だってそうそう甘い顔ばっかしてるワケじゃないのよ?

かまって欲しい子犬みたいにクルクル私の周りを回ってるのをしばらく放置してると、かける言葉も思いつかなくなってきたのか大分大人しくなってきた。

「う〜、そのピアスよく似合ってるな?」

「……つーん」

確実に苦し紛れで言ったんだろうけど、まさかこのタイミングでここに触れてくるとは。ちょっとグラってくるじゃない。

……いやいや、この程度で態度を変えるなんてどれだけ甘いんだ私は。どっちに主導権があるか理解させないといけないんだから、ガマンガマン。

「何かそれどっかで見た事あるんだよな〜」

「……つーん」

「思い出したっ!~お前が写メで送ってきたヤツだ——ってそっちって確か俺が薦めた方じゃね?」

「……つーん」

「やっぱオレンジにハマってるじゃねぇか、それ。マジで似合ってる」

「……っ」

だからなんでこのタイミングでそれを思い出しますか。

こいつに『やっぱり俺は間違ってなかった』って感じの嬉しそうな顔をされたら、横目じゃなくて正面から見たくなるのは私だけじゃないハズ。

……あぁ分かりましたよ、私の負けっ!!人のツボをつくのが上手いって言うのは反則っ。

「はぁ、もういい。行こっか」

「お? おう。って何だったんだよ、今の?」

「いいからいいから。何でもなぁ〜い」

切り替えが早いのが私のいいところだよね? 必要以上に分かりやすく開き直って、あっけにとられてるこいつの右腕をとりつつ教室の入り口へ直行。

「いや、マジでどういう事——って引っ張るな引っ張るなっ!!」

「あんたが遅かったんだから急がないとねぇ〜」

「ワケがわからんにも程があるぞ?~待てって!」

誰かに真正面から顔を見られたら不審に思われるぐらいにニヤニヤしつつ廊下を進む。

自分がこれほどこの手の話に弱いだなんて思ってなかった。これから青のこととかあんまりからかえないなぁ。

……ま、私も初心者だし。今日は初心者らしく過ごす事にしましょうか。

耳にかかった髪をかき上げて、なるべくこいつが恥ずかしがりそうなコースを考えながら私は言った。

「当然、私について来てくれるよね?」

商店街を歩きながら、ふと思い出した気になってた事を聞いてみる。

「ね、白達とどんな話してたの?」

「ん? あぁ、お前と出掛けるから一緒にどう? って」

「……」

「でもなんか二人とも微妙な顔して、『今日はやめとく』って言われたんだよな。……ひょっとして、俺って避けられてる?」

天然につける薬はないとはこの事ね。わかったのはあの二人に借りができたって事ぐらい。

とにかく、これで今日のお出掛けにかかる経費は全部こいつ持ちって事が私の中でたった今決定。

女の子と出掛けるのはリスクを伴うっていうのを教えてあげないと、ね。


橙「男の子ってさ、得だよねぇ」

男「なんだよ藪から棒に」

橙「だって女の子のパンツが見えただけでこう、グッと来るものがあるんでしょ?」

男「……あ、あのなぁ」

橙「だけど、その逆って別に嬉しくもなんともないし。そもそも男はズボンだから見えないしね」

男「まぁ、そうだけど」

橙「そういうとこひっくるめて、男ってずるいと思わない?」

男「いや、そう言われても困るっていうか」

橙「——なんて、そんなふうに考えていた時期が私にもありました」

男「へ?」

橙「それって逆に考えればさ、そういうちょっとしたことで男の子の興味を引けるワケじゃん」

男「……ちょっとしたことなのか?」

橙「行きずりの男とかに見せるのは嫌だけどね。だけど、相手が好きな人ならそんなに気にならないもん。ちょっとしたことだよ」

男「それはオマエだけじゃないかなぁ?」

橙「あはは、そうかも。色無はそーいう女の子、イヤ?」

男「それは……それは、ずるい聞き方だと思う」

橙「ずるい?イヤならイヤって言えばいいんだよ?なんにもずるくないでしょー?」

男「……うるせー」

橙「へへっ♪ あー、やっぱアンタといる時間は楽しいし、落ち着くなぁ。よいしょっ」(ボフッ

男「……そのカッコでベッドに寝られると、こっから見えるんだけど」

橙「それがイヤだったら初めからこんなことしませんよーだ」

男「ッ……お、オマエなぁ」

橙「あははー♪」


『雛祭りの夜』

「じゃあね、色無君」

「あら、桃じゃない。どうしたの?」

「あ、橙。なんでもないよ。またね」

足早に逃げていく桃の背中を見送って色無を振り返る。

「なんだったの? 聞かれちゃまずい話かなぁ?」

「いやいや、雛飾りを見に来て欲しいそうな。実家から送ってもらったんだってさ」

「ふ〜ん」

「ん? 嫉妬か?」

「……ばか」

桃かぁ、可愛い娘だからなぁ……心配じゃないといえば嘘になる。

色無のこと、信じていない訳じゃない。でも……桃って可愛いからなぁ……。

綺麗な長い髪。整った顔立ち。どうしたって目立つ胸。それでいて細い手足。

どれを取っても、男の気を引くには十分すぎる……。

行ってほしくないなぁ……

「いいよ、行っておいで。でも、あたしのところのお雛様も見に来てよね。あんたと一緒に祝うつもりで用意したんだから」

「ああ、適当なところで切り上げてくるよ。夜には顔出すから」

「ん。じゃ、夜にね」

物分りの良い娘のフリしちゃった……。あたしってやつは……。

ま、ここの寮だしね、独占は難しいか。夜まで寝てようかな。

ちょっとぉ〜。何時だと思ってるわけ?? 何時までまたせるかなぁ?

まったく、あいつったら。友達と恋人の付き合い方の区別もつけられないかなぁ。

もー、日付けが変わっちゃうよぉ。ンもー。

コンコン。

「起きてるか?」

「こんな夜更けにどなたかしら?」

「意地悪言うなよ。これでも、必死に逃げてきたんだぜ」

「どーだか。鼻の下伸ばしていたんじゃなくて?」

「まあ、そー言うな。すまないと思ってる」

カチャ。

「もう、お雛様は片付けなきゃならない日になっちゃったんだからね」

「ごめん。でも、そんなに急いで片付けることも無いだろ。いき遅れって言われないように、俺が頑張るから」

「顔」

「ん?」

「赤くなってるってば。まったく、嘘のつけない男よね」

「仕方なかろ。入るぞ」

「うん。で、どーだったの? 楽しんできた?」

「それなりにナ。まあ、色気で意識が遠のく経験は初めてだったから、少しとまどったよ。って、怒るな怒るな」

「ふんっ! 色気ねぇ……誘惑された?」

「まあな、ものすごく判りやすくな。自我と本能が乖離する瞬間を味わったよ。でも、抱きつかれた時の感触が橙と違った。髪の香りが橙と違った。違うことに気が付いて、一気に冷静になった。おれが、そーゆーことをする関係にあるのは橙。お前とだけだってさ。そーなると、もーダメ。丁寧に謝って逃げてきちまった」

「顔、赤くないよ色無」

「チャカすなよ」

「ごめん……」

「やっぱり、橙と桃の節句を祝うってのが、今月の一大事だからな」

「嬉しいなぁ、その一言や実際にこうして来てくれることが……。そのキスマークが無きゃ、もっと嬉しかったなぁ……」

「!!」

「ちょっとジェラシーに火が着くよね。そういうの見るとww。だから……反対側はあたしが付けるから。動くんじゃないわよ、色無」

(せっかく、必死にカッコつけたのに……締まらねぇ……)


「卒業式だったね……あのカップルだった先輩……卒業したら……すぐに入籍するんだってさ……」

橙がよく晴れた春の空を見上げながら呟いた。

「気になるのか?」

こちらに振り向くが、目線を合わせようとしない。

「まあね。女の子としてはさ、気になるじゃん。どんなに強がっても、知らん振りしてても、あの白い服を着て歩くことは気になるよ。女の子はみんな、一度は憧れるものだからね」

「そうか……そうだな」

「そうだよ」

橙が俺を見つめる。——よし。

「その憧れ、ずっと持ってろよ。卒業と同時ってわけにはいかないし、大学の在学中も無理だけど。いつか、俺のために白い衣装を着て、ヴァージンロードを歩いてくれよ。俺は、神父の隣で間抜けな顔して待ってるから」

「色無……」

「橙に似合うドレスとブーケはどんな感じだろうな……」

「んもう……期待してるからね」

「男の子ってさ……好きな女の子のために頑張る生き物だから。いつか、時期が来たらもう一度プロポーズするよ」

「待ってるわ。気長にね」

 いつもより橙の笑顔が優しかった。


橙「もぐもぐ」

男「……ガム?」

橙「うん。食べる?」

男「いや、いらないけど」

橙「そう言わずに食べなって。ほい、あーん」

男「むぐっ! ……うん、フツーのガムだな」

橙「他にどんなガムがあるっていうのよ。まったく」

男「いやだって、今までガムとか食べなかったしゃん。なんでまた急に?」

橙「それはですねー」

橙「……ふぅ。こうしとけば、お互いニオイも気にならないでしょ?」

男「……ニオイじゃなくて人目が気になりますから」

灰「……ミタゾ」

翌日からしばらくの間、寮ではガムが密かな必須アイテムになったとか。


「いやぁ〜、季節代わりってついつい買い込んじゃうよね」

買い物の荷物を抱えた橙が部屋に入ってきてくつろいでいる。

男の部屋にノックも無しに入ってくるっていかがなものか……あなた、男性と言う生き物をナメてますね? と、言いたいが言葉が口から出てこない。

「あ、そうそう。見てよこれ。色無が好きそうだなぁって思って買っちゃった」

袋から薄っぺらい包みを取り出して見せる。

「なんだこれ?」

「見る? 見る? 見たい?」

「ああ、まあ……」

俺の言葉を待たずに橙は包みから中身を出す。見せたかったのかよ。

中身は艶やかな布?

「シルクのガーターストッキング。クラシカルでいいでしょ。それに、好きでしょ。こういうの」

「オマエナァ……そんなもので俺が……って、そっちはなんだ?」

「あ、これ? セットで買ったシルクの長い手袋。併せたほうがカッコイイでしょ」

「……うん」

「ははぁ、そっか。色無ぃ、もっと早く言ってよね。私に任せなさい。

 今度、裸で手袋とストッキング着けて魅せてあげるから」

「いやいやいや。それはマズイっしょ」

「いいのよ。あんたにだけなんだから」

想像しそうになる俺としたくない俺が葛藤していた。

橙の言葉でさらに頭がオーバーヒートした俺を見て橙は笑っていた。


無「なぁ、本当に良かったのか?」

橙「うん。私は花見よりもこっちのほうが……」

無「花見よりも服とはおしゃれな橙らしいよ」

橙「それ、ほめてるの?」

無「もちろん」

橙「ありがと♪それに……」

無「それに?」

橙「お花見は他の子とも行ってるんでしょ?」

無「知ってたのか?」

橙「とーぜん。今、寮では誘われた子と誘われていない子の間で冷戦状態が続いてるわよ」

無「……そ、そんなことになってたのか。その〜怒ってた?」

橙「誰が?」

無「ま、まだ誘ってない子たちは……」

橙「それはもう」

無(ガクガクブルブル)
橙「……それに私だって怒ってたんだから」

無「え?」

橙「本当ならこの橙ちゃんを真っ先に誘うのが君のつとめでしょうが!」

無「ごめん……」

橙「もう……今日はトコトン付き合ってもらうからね」

無「りょ、了解です」

橙(みんなと同じことしてちゃ色無の印象に残らないからね)







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 04:27:56