橙メインSS

『るーじゅ』

橙「どう? 色無」

無「えっと、ケチャップ?」

橙「どうしてそうなるのよ!」

無「え? だって、くちびる赤いし」

橙「ルージュよ」

無「るーじゅ? 口紅の事?」

橙「そうよ。大人っぽいでしょ?」

無「なんか、変な感じ」

橙「変……」

無「なんか、いつもの橙じゃないみたい」

橙「……橙ちゃんは変と言われて傷つきました」

無「あ、ごめん」

橙「バツとして『キスマークの刑』をします」

無「きすまーく?」

橙「動かないでね、動くとつみが重くなりますよー」

無「う、うん」

橙「……ちゅっ」

無「うわっ!?」

橙「家につくまで触ったらダメだからねー」

無「橙! ……帰っちゃった」

●月▲日

 今日、橙にきすまーくのけいをされた。家についたら母さんに「あらあら、この子は」って笑われた。

 鏡を見たらほっぺたに赤い後がついていて、なぜか橙にされた事を思い出して顔が赤くなった。

——へんなの


無「ただいまー」

猫「にゃー」

無「いい子にしてたか?」

猫「ごろごろ」

無「こら、あんまりじゃれるなよ」

猫「ん〜」

すりすり

無「今ご飯にするからね」

猫「にゃーん」

無「よーし、出来たよー」

猫「にゃっ!」

?「に、にゃーん」

無「……」

?「……」

無「あの、橙さん?」

橙「にゃ?」

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無「なんて格好を……」

橙「最新型のネコミミセットよ」

無「なんで?」

橙「だって最近子猫ばっかり構ってさ、あんまり相手してくれないから」

無「橙……ごめんな」

橙「だから構ってにゃ」

無「というか目の毒だよな、その格好」

橙「……恥ずかしいけど、色無のためなら平気だもん」

無「ところで、最新型ってどの辺が?」

橙「えっとね」

ぴく、ふりふり

無「尻尾が動くのか」

橙「そうよ、これで」

ふりふり

猫「にゃ!」

ふりふり

猫「にゃ! にゃ!」

無「夢中だな」

橙「こうして遊んであげれば早く寝ちゃうでしょ?」

無「……そうだな」

橙「だからこの後は、私をかまってね」


『6月の花嫁』

「色無ってさー」

「あ?」

自転車を引く俺と、並んで歩く彼女。

地球温暖化が叫ばれる時代とはいえ、冬の寒さがなくなるわけじゃなく、風は自信を持って俺たちを震わせにきていた。

「チョコそこそこもらってたじゃん」

俺の隣を歩く彼女も寒さはお好きではないようで、マフラーに少し顔を埋めていた。

「まあな」

今日は、人によって意味は異なるが万人に共通して、「聖戦」であるバレンタインデーだった。

「意外と人気あんのね」

「本命があるのかは非常に怪しいけどな」

クラスでのポジションは胸を張って「明るいいじられキャラ」と宣言できる俺は「〇〇クンと〇〇クンと色無にチョコあげる☆」という感じで、それなりにチョコを頂いていた。

……ここでポイントなのは俺の名前が三番目にあることだ。この順番はどの女子からでも変わらない……合掌。

「じゃああたしからも同じ種類のチョコをあげよう。感謝しなさい」

「せめて手作りに……いや、既製品でもいいからバレンタイン仕様のやつにしようぜ……」

この幼なじみの橙は、笑顔で明〇の板チョコを差し出してきたのだ。

板チョコって……。

「えーチロルじゃなかっただけでも充分でしょ」

「お前なぁ……」

「あはははは」

彼女は屈託なく笑った。

その日の天気は薄曇りで、わずかながらの暖を与える太陽すら出ていなかったが、それでもいいと心のどこかで思っていた。

彼女は、太陽だった。

容姿は綺麗で、性格も明るく人を惹きつける。彼女が笑えば、たとえどんな暗がりだって、そこは日向に様変わりした。

「お前は本命とかはあげなかったのか?」

「いないんだもん」

くるくると回りながら、あくまで楽しそうに彼女は笑っていた。

「あたしの理想は高いのよん♪」

当然、彼女はモテた。正直そんなレベルじゃないほどに。

だがその度に彼女はこう言って断っているらしい。

……まったく、素晴らしいもんだ。

「ん?もしかして安心した、色無クン?愛しの橙ちゃんが誰かのもとへ行ってしまうかと悶々としてたの?」

「バーカ」

ほっとくとこうなる。だからついでにもう一言吐き捨てた。

「俺たちは、幼なじみだろ」

そう、これだけは間違いなく変わらず、絶対揺るがない領域だ。

一緒にいる時間が長いと、他の奴らからからかいと羨望の入り交じった態度を取られることもあったが、俺たちはまったく気にしない。

俺たちを繋ぐのは、恋愛感情ではなく、時間と積み重ねが産んだ「幼なじみ」という細い糸だ。

「まーね」

やはり彼女はけらけらと笑っている。

よくある展開のように、どちらかが恋心を隠し持っている、なんて状況ではないのだ。

……正直に言おう。実際は、俺たちは「終わっている」んだ。

さっきあんなことを宣った手前恥ずかしいが、俺たちは中学の時に一度付き合っているのだ。

お互いの感情が昂ぶったのか、そういうことにはなったが、結局「何か」が違かったんだ。

不自然にギクシャクしてしまったし、付き合う前より会話にノリがなくなった。そして何より、お互いに気付いてしまったんだ。

俺たちは必死に「恋人」のフリをしているんだと。

それをお互いが知ってしまったとき、「恋人」という器は一瞬にして意味をなさないものに成り下がった。

だからあの時、俺たちは約束したんだ。

『俺たちは永遠に、幼なじみでいよう』と。

「お前も、さっさといい男見つけろよ。もったいない」

「む、色無だってさっさと告っちゃいなよ。いるんでしょ?好きな娘」

「ぶっ?!!なんでお前……っ?!」

「けけけ♪オンナノコの情報網を侮るなぃ♪」

——だから、このつながりが大切なんだ。「幼なじみ」という、小さく不確かなつながりが。

俺には、板チョコの赤い包装が、ハートなんかよりずっと力強く見えて、少し嬉しかった。

 

「どう?可愛いでしょ?」

彼女はいつになっても綺麗で、彼女の周りの日向は猫が群れをなして昼寝を始めそうなほど暖かかった。

「すげえなー」

俺は彼女が指差したものに圧倒されていた。

「一生に一度だもん。選りすぐってみました♪」

「高そうだな」

「高くても全然大丈夫ですから」

俺の前に君臨する、魅力溢れる女性のための白き衣———ウエディングドレスがそこにあった。

「似合うかな?」

「馬子にも衣裳って言葉があるんだぜ?」

言った瞬間に裏拳が俺の腹を襲った。彼女は容赦をしないから困る。

「……旦那さんが言葉を失うくらい似合うと思うよ」

彼女は来週、結婚する。

大学で知り合った、容姿端麗、将来有望な男性と見事結ばれることとなった。

「えへへ」

俺の給料じゃ、顔を引きつらせながら諦めるしかない高価なドレスを、一生で一番の舞台で着ているであろう来週の自分に彼女は思いを馳せていた。

「旦那さんは?」

「今日は友達と遊んでくるんだって。結婚前に最後にはしゃいでくるってさ」

だからあたしも、ね?と彼女は悪戯っぽくこちらを見た。

それは俺が今まで見てきたものと何一つ変わっていなくて、……そのせいでなぜか哀しかった。

「スピーチ、頼むわよ」

「任せとけ。お前の生き恥を余すとこなく晒してやる」

また裏拳が俺を襲った。

俺たちはあれから、互いの約束を破ることなく生きてきた。

世界で一番大切な「幼なじみ」を大切に守ってきた。

「色無はまだしないの?結婚」

「俺はもうちょい安定してからだなー」

「そっか。そん時のスピーチは任せなさいよ!あんたが生きていられないぐらいの逸話を語ってあ・げ・る♪」

彼女は来週結婚するし、俺にも付き合ってる女性はいる。

俺たちの道は、いつからか違ったんだ。

必死に細い糸を伸ばして伸ばして、なんとか切らずに耐えていたのに、いつのまにか離れすぎて彼女の姿が見えなくなっていた。

「なんかさ、久しぶりだね」

結婚式場を後にした俺たちは、ぶらぶらと目的もなく歩き回った。

「ま、仕方ねえんじゃねえの?」

梅雨だというのに、空は泣きだす気配を毛ほども見せず、満面の笑みで俺たちを見下ろしていた。

「なんたってワタクシ、来週から人妻ですからね♪」

「自分で振っといて……」

「けけけ♪」

———変わらなかった。俺たちが守りぬいてきた「幼なじみ」はもうすぐ、華麗にゴールを迎えようとしていた。

あの時のまま、あのつながりのまま、ここまで来れたんだ。

なのに———どうしてか、切なかった。

「———ねえ、色無」

「ん?」

「今日はありがとね」

彼女は、すっと手を伸ばした。

「別に。何もしてねえだろ俺」

俺もその手に応じた。

「ううん、ありがと」

———日向に手を置いたような、柔らかな暖かさがそこにあった。

「……お幸せに」

なんでこんなに陳腐な言葉しか出てこないのか、脳みそを引っ張りだして叩きつけたくなった。

伝えたいことがたくさん、たくさんあるのに。それが一つだって、伝わるような言葉に変わらない。

ただ、もどかしかった。

「ねえ、色無?」

太陽が、空からではなく、すぐそこから光を照らしていた。

「———大好きだったよ」

笑顔が眩しかった。

彼女はゆっくりと手を離すと、そのまま歩きだした。

呆然としていた俺には、空が曇りだしたように感じた。

———俺たちは「幼なじみ」だった。


『アナザーエンド』

「どう?可愛いでしょ?」

橙は、満面の笑みで俺を出迎えた。

「……言葉が出ないほど綺麗だよ」

橙を包む純白のドレスは輝いて、ただでさえ綺麗な橙を形容できないくらいまで昇華させていた。

「えっへへぇ」

はにかんだその表情が愛しくて、そのまま抱き締めたくなった。

「……ついに、来ちゃったなぁ」

「結婚、だもんね」

どこだったんだろう、俺たちが「何か」に気付いたのは。

道を交えようと、もう一度だけやってみようと思えたのは。

「あんなこと言ってたのにね」

「な」

確かに歩いてきた過去の道を、俺たちは今二人で笑いあう。

俺たちは、幸せだ。

「……行こうか」

「うん」

なあ神様、俺たちはウソつきだ。誓った約束を見事に破った。

だからさ、あと一度挽回のチャンスをくれないか。今度は絶対、守るから。

『健やかなるときも、病めるときも、互いを互いが支え合って生きていくことを誓いますか———』


『ファッションショー』

橙「これなんてどうかな?」

無「いいんじゃね?」

橙「なによ、その気のない返事は」

無「暑いのになんで橙のファッションショーに付き合わなきゃならないんだよ」

橙「……色無は男子の中では比較的まともなセンスを持ってるから、意見を聞きたいの」

無「……どれも同じに見える」

橙「ひどい、せっかく可愛い橙ちゃんのファッションショーに招待したのに」

無「お前は可愛いし、どれも似合ってるんだから、どれでもいいだろ」

橙「どれでもいいなんてひど……」

無「どうした?」

橙「今なんて言ったの?」

無「どれでもいい」

橙「その前」

無「どれも同じに見える」

橙「ちーがーうー、その間に何か重要なこと言ったでしょ?」

無「……暑くて覚えてない」

橙「嘘だっ!」

無「はいはい、じゃあ暑いから部屋に戻るわ」

橙「あー、こらー勝手に帰るなー」

 翌日も橙に引っ張り出されたのは言うまでもない


『コスプレ』

無「ただいまー」

橙「おかえりなさい色無」

無「って、おい!」

橙「……どうしたのよ」

無「何だよその格好は」

橙「かわいいでしょ?」

無「ネコ耳とか久しぶりにみたな」

橙「む」

無「なんだよっ、と……うわっ!」

橙「反応が薄いぞ色無」

無「こら、舐めるな、くすぐったい」

橙「にゃー、色無おいしいにゃー」

無「って橙、お前酒飲んだのか!?」

橙「料理にちょっとだけ使ったにゃー」

無「すぐ酔うくせに酒に目がないんだからなお前は」

橙「だって、私が酔ったら色無が優しくしてくれるんだもん」

無「普段と変わらないだろ別に、というか橙が余計に甘えてくるようになるだけだろ」

橙「だって普段は恥ずかしいにゃー」

無「わかった、わかったからそれ以上舐めるなー」


無「電車ってヒマだよな」

橙「そうだねー」

無「……」

橙「……」

無「……」

橙「……えい」

無「いでぇ! 何すんだよいきなり!」

橙「いま、何見てたの?」

無「何って、ふつーに中吊り広告」

橙「へーなるほど。爆乳アイドルのグラビアですかーふーん」

無「そっちじゃねぇ!」

橙「見てたくせに」

無「ぐ……め、目に入っただけだっつの」

橙「帰ったら紫にチクっちゃおーっと」

無「待ったそれだけは勘弁」

橙「じゃあピンクに」

無「ピンク?」

橙「私にだってあるのにー! って張り合うよ、たぶん」

無「……」

橙「……もうみんなにチクってやる」

無「はぁ!?」


橙「うぅ〜寒〜。冬だねぇ」

無「……なんでそんなこと言いながら、そんな短いスカートはいてるんだ?」

橙「お、色無そんなとこ見てるの?エッチィ〜」

無「お前なぁ……。でもさ、ホントに寒くないのか?」

橙「そりゃあ寒いに決まってるでしょ」

無「じゃあどうしてだよ?」

橙「だってこっちのほうが見栄えがするじゃん。ストッキング穿いてもいいけど、男の人って生足のほうがグッとくるんじゃないかなぁって思ってね。実際どう?」

無「そりゃ確かに……って違う!そういうことじゃなくてだな……」

橙「よかった。目標達成してる♪」

無「……男受けするためにそんなカッコしてんなよ。それで風邪とかひいたら馬鹿みたいだろ」

橙「もしかして心配してくれてる?」

無「大事なヤツに風邪ひかれて嬉しい奴なんていないだろ」

橙「……えへへ。色無にそんなこと言ってもらえるなんて、ミニスカートはいてた甲斐あったな」

無「な、何言ってんだよ 」

橙「心配してくれてありがと。……あとね、あたしだって誰にだって足とか見せたいワケじゃないんだよ?」

無「は?」

橙「これからは色無と一緒にいるときだけ生足でいよーっと。じゃね、あとで部屋に遊びに行くから」

無「なっ!おい!! 」

橙「大事な、だって。えへへ♪」


灰「ずるいずるいずるい〜」

朱「背中の刺繍、なんとかならないか?『仕事命』じゃなくってせめて『寮母』とかさ」

橙「何なに?どうしたの?」

灰「聞いてよオレンジさん!色無ってば朱色さんにプレゼント出来ても、私にプレゼント出来ないとかほざきやがるですよ」

無「人聞きの悪いことを言うなって。それにお前、去年俺の半纏を勝手に自分の物にしたじゃないか」

灰「私は手作りの愛が欲しいんであって、半纏が欲しいわけじゃないの!」

無「俺の私物を無断で持ってかないなら作ってもいいよ」

灰「私に死ねと!?」

無「なんでだよ!」

橙「色無、私は手編みのカーディガンが欲しいな。そんなダサい半纏じゃなくって」

無「ダサいって……。半纏もけっこう良いもんだぞ?」

橙「ないない。半纏なんてダサいだけだって」

朱「む、それは聞き捨てならないな。コタツやナベと同じでコレは冬には必要不可欠なものだぞ」

灰「そーそー。ジャージと一緒で楽だしあったかいし着替えやすいし」

無「よし、そこまで言うなら橙の半纏を作ってやろう」

灰「え〜っ、私のは〜?」

朱「アタシのくれてやるから、色無、アタシの新しくしてくれよ」

橙「私カーディガンって言ったんだからカーディガンにしてよ〜」

無「異論は認めまっせ〜ん。まぁ、楽しみにしとけ」

 初日

橙「マジで半纏だよ。色無には悪いけど、しまっておこう」

 三日目

橙「最近はすっかり寒くなってきたな〜。ちょっと試してみようかな」

 ニ週間後

灰「ねーねーオレンジさん、その半纏ください」

橙「ゴメン無理。これは手放せないわ」

無「まさかずっと着てるとは……。オレンジは普段の服のセンスがいいから余計にダサく感じるなぁ……」


無「橙は春の七草知ってるのか?」

橙「まあ、一応ね」

無「なんか以外だな。知らないかと思った」

橙「む、なんか馬鹿にされた気分。ほら、あたしも女の子ですから」

無「やっぱり男よりは女の子のほうがそういうのは詳しいよな」

橙「そんなもんでしょ。……そうねえ、あたしは、ナズナかな」

無「は?」

橙「七草の中でならやっぱりナズナだって話よ」

無「なんでナズナなんだ?」

橙「ん〜……秘密♪」

無「何だよそれ」

橙「わかんないなら誰かに聞いたら?……あ、言っとくけどあんた限定だから」

無「だから何のことを言ってんだよ」

橙「さあね♪」

無「ワケわかんないなあ……あ、水」

水「何、色無くん?」

無「さっき橙に、春の七草の中ではナズナがいい、って言ってたんだけど、ナズナってなんか特別なのか?」

水「え……?そんなことないと思うけど……」

無「あ、あと俺限定とか言ってたな」

水「え……あ!! 」

無「わかった?」

水「な、なんでもないです!!(逃)」

無「な、何なんだ?」

水(……橙ちゃん、大胆だなあ……)


 暇だったので寮内をふらついてたら奇妙な動きをする橙を見かけた。

「何してんだ橙?」

「ん〜前にテレビでやってた体操。これやるとウェストが細くなるんだって〜」

「それってオカマの人たちが出ているバラエティー?」

「そうそう、あとオカマじゃなくてオネェ系ね」

「意味は一緒だろ」

「意味は一緒でも流行とともに言葉も変わんの。あ、暇ならちょっと付き合ってよ」

「おういいよ」

「これってさ〜腰を回すんだけどちょっと難しいんだよね。で、見ててくんない後ろで」

「後ろで?」

「うん。ほら、はやくはやく」

「わかったよ……・いいぞ〜」

「あ〜い」

 腰を回し始める橙。それを後ろで見る俺。いかんせんある一部に目がいってしまう。

 そうお尻である。形のいいものが目の前でこうグリグリと……いやいやいやそうじゃなくてちゃんと見てやらないと。

「どう?そそるっしょ?」

 と橙は動きを止め上半身をこちらに捻り聞いてきた。

「なっお前わざとか!!」

「うんわざと。で、どうだった?セクシー?」

「知るか、男の純情を弄ぶな」

「あっははははごめんごめん。でもこれだけじゃダメなんだって」

「は?何が?」

「体操。他にもいろいろやらないと骨盤の形も整わないし、ウェストも細くならないみたい。詐欺だよね」

「でも橙なら全部やるだろ」

「当たり前じゃん、そうやって苦労するからこそいい体型になれる訳」

「そうかい、頑張れ」

「ナイスバディになって惚れさせてやるからね」

「惚れるか」

「いや、そこは惚れろよ」


 ちゅ

橙「な、何!?いきなりだね!?」

無「いっつもやられてるからな。今日は俺からだ」

橙「……」

無「だ、橙?」

橙「い、色無からしてくれること……何だか慣れなくて 」

無「……攻められると弱いのか?可愛いやつめ!!」

橙「あ、ちょ、そんな……」


『ココア』

橙「あったかーい♪寒い日のココアって暖まるしおいしいしで最高だよね」

無「まあな。やたら甘いけど」

橙「それがまたいいんじゃない。あ〜ホント暖かい」

無「……なんかココアとかの缶をほっぺにくっつけるのっていいな」

橙「ん?可愛い?」

無「うん。俺はけっこう好きだ」

橙「へえ。でもこうしてるとあったかいよ」

無「そうだろうな」

橙「でもね、あたしもっとあったかくなる方法知ってるよ」

無「え、なんだ——」

ぎゅ

橙「あたしの手、あったかいでしょ」

無「あ、あったかいけど、お前、これ……」

橙「色無は嫌?」

無「そ、そんなことないけど……」

橙「じゃあいいじゃん♪早く帰ってココア飲も」

無「俺、ココア買ってないんだけど」

橙「あたしのを一緒に飲もうって言ってるのよ」

無「お、お前なあ 」

橙「……んーでも、ちょっと手繋いでいたいし、遠回りしよっか」

無「……好きにしろ」


『わがまま?』

あたしが歩くペースをゆっくりにしたのは、あたしに合わせてくれるあなたが見たかったから。

黄色信号でも歩みを止めたのは、少しでも長く手を繋いでいたかったから。

喉が渇いたと言ってしまったのは、あなたと向かい合って話がしたかったから。

手が寒いと言ったのは、あなたのコートのポケットがとても暖かそうだったから。

少し咳払いをしてみたのは、あなたに心配してほしかったから。

あたしのことばかり話したのは、あたしのことだけ考えて欲しかったから。

こんなにあなたに構ってほしいのは、あなたのことが好きだから。

こんなあたしはわがままかな?


橙「色無ー、見て見て! じゃーん!! 春物買ってきたからさっそく着てみたよ。どう?」

無「どうって……まあ似合うとは思うけどさ」

橙「思うけど……何さ?」

 ガラガラ ピュー

橙「寒っ! ちょっと、何で窓開けんのよ! 寒いでしょ!」

無「そんな薄着するのは早いだろ、常識的に考えて……まだ三月だぞ?」

橙「分かってないわね〜。季節を先取りするのがオシャレの基本じゃない」

無「どんな可愛い服着たところで、鳥肌立ってたら台なしだろ」

橙「そ、そんなことない——くちゅっ!」

無「ほら見ろ、やっぱ寒いんだろ? 歯の根もあってねーじゃん。ほら、俺のどてら貸してやるから、部屋に戻って着替えてこいよ」

橙「あ……う、うん。ありがと……ねえ色無、私——」

灰「わーん、色無ー! お姉ちゃんがもうコタツ片づけるって言うんだよー! やめさせてよー!」

無「お、おい灰、いきなり抱きつくなよ……だいたいどてらにももひきに腹巻きまで装備してれば寒くないだろ」

灰「コタツは別格なんだよー!」

赤「まあしょうがないよ。もうそろそろ片づけどきだもん。ボクの部屋はとっくにしまっちゃったよ」

無「あ、赤! またそんなジャージ姿で歩き回って……もっとちゃんとした格好しろよ!」

赤「えー、なんでさ? しょっちゅう外に走りに行くから、この方が楽じゃん」

無「目のやり場に困るだろ!」

赤「はあ? ジャージのどこが目のやり場に困るって言うのさ?」

橙(色無……どうも反応が鈍いと思ったら、まさかダサい格好フェチ? なんてマニアックな……)


『些細なこと』

橙「おっはよー」

無「おっす。橙、今日ヘアピン昨日と変えてる?」

橙「あったりー、昨日可愛いの見つけたんだ」

無「お前毎日色々変えてくるよな。髪の結び方とかキーホルダーとか」

橙「だってオンナノコですから♪」

無「そんなもんなのか」

橙「それにね」

無「それに?」

橙「……やっぱり教えなーい」

無「なんだよそれー」

橙「教えないったら教えないんだもーん♪」

 そうやってあなたがいつも気づいてくれるから。


無「俺さ、昔子供の日に、親に兜をせがんだんだ」

橙「へー、わがままボーズだったんだ」

無「まあな。たぶん、あの兜をかぶってみたかったからなんだよな」

橙「可愛らしいじゃん」

無「強くなりたかったんだよな。子供のころの俺、喧嘩とか弱くて。よく泣かされてたからさ」

橙「それっぽいもん色無」

無「るっせーな。ま、とにかく、俺にもそんな時期があったわけだ」

橙「あたし、今の色無は充分強いと思うよ」

無「は?」

橙「あたしらみんなのこと考えて行動して、みんなに優しくしてくれる。兜かぶるような強さより、よっぽど素敵じゃん」

無「橙……」

橙「ま、できればその優しさ、あたしだけにくれればいいんだけどな♪」

無「お前なあ……」


無「(今度は橙が風邪か……俺のせいなのか?)橙〜、具合はどうだー?」(こんこん)

橙『ん〜、まだ熱下がんないみたい……』

無「大丈夫か?氷枕持ってきたから使え。入るぞー」

橙『え!?ちょ、ちょっと待って!いやしばらく待って!』

無「どうした?何かまずいことでもあんのか?」

橙『えっと……今私ジャージだし……その……』

無「なんだそんなことか。気にしねーよ」

橙『あたしが気にするの!ちょっと着替えるから待ってて!』

無「氷枕溶けちまうよ。入るぞー」

橙「きゃー!?入るな見るなこのへんたーい!!」

無「ごげふぅ!?」



無「もう着替え中ならそう言えよ……いってー」

橙「待ってって言ったじゃない、もう……けほ、けほ!」

無「大丈夫か?」

橙「誰かさんのせいで無駄に動いちゃったからねぇ」

無「う!……悪かったよ」

橙「本当に悪いと思ってる?なら……」(にじりにじり)

無「お、おい……何でこっちに這って近づいて来てるんでぃすか?」

橙「もっと激しい運動していっぱい汗かいちゃわないとね♪」

無「けっきょくそれか!?えっちぃのはいけないと思いまーーーーー!!??」


『好きな感じ』

橙「わー、赤の足の筋肉すごーい。触らして!」

赤「えへへ。毎日鍛えてるからね」

橙「この硬さ加減がいい感じだわ」

橙「おぉ! 青の腕筋すごいなあ。触らしてよ!」

青「弓道してればこんなもんでしょ」

橙「細さと硬さのバランスがいいなあ」

橙「およー。薄黄ちゃんのほっぺた柔らかそう。触らして〜」

薄「きゃあ! やめてくらはい〜〜〜〜」

橙「ほよほよ加減が気持ちいい〜」

橙「……もーも!!」

桃「ひゃあ! な、何すんの〜〜〜」

橙「やっぱり一番桃の胸がいい感じだわ〜〜〜」

桃「ちょ、何の話……!!! 待って! 直に触っちゃらめえぇぇぇぇっぇ」

紫「ふん! おっぱいが大きいうえに気持ちいいだなんて、うらやましくなんかないんだから!!」


橙「おっはよーっ! いろなしー!」

無「おはよう……って、なんだか暖かそうな格好だな」

橙「ん?」

無「帽子にマフラーに手袋って、今日そんなに寒いか?」

橙「今日は二月十日でニットの日だからねー」

無「それで毛糸づくしなのか?」

橙「そそ、あ、ちゃんとコーディネートもしてあるよ? ほら!」

無「お揃いなのな。にしてもオレンジ色だとなんか眩しいな」

橙「え? アタシが眩しいって? 朝から口説かないでよー」

無「誰もそんなコトは言ってない」

橙「ノリ悪いなー。でもオレンジ色とかって暖かいんだよ」

無「別に変わらんと思うが」

橙「イヤイヤイヤ、こういう色は見た目で体感温度があがるんだって」

無「まぁ見てる方が暖かく感じるけどさ」

橙「だからさ、寒かったらアタシを見てれば暖かくなるよ?」

無「そうだな(じーーーーっ)」

橙「ってじろじろ見るなって」

無「どうしろと。でもそのスカートの短さは見てる方が寒いな」

橙「エロ無君を発見しました」

無「エロ言うな。でもホント寒くないの?」

橙「うーん、寒いけど、やっぱこの短さは譲れないしさ」

無「そんなもんか?」

橙「うん。寒さと見た目なら見た目を選ぶっしょ、やっぱ」

無「でもあんまり冷やすなよ?」

橙「だいじょーぶだいじょーぶ、ちゃんと寒さ対策もしてるし」

無「寒さ対策って?」

橙「それは乙女の秘密」

無「何だよそれ」

橙「へへー、あ、早く行かないと遅れちゃうよ?」

無「へいへい」

(ぴゅーーーーーーー、ふわっ、チラッ)

橙「キャッ!」

無(これが寒さ対策ですか)

橙「……見た?」

無「いえ」

橙「ホントは?」

無「今日はニットの日だと再認識をば」

橙「やっぱ見たんだ」

無「ほら、オレンジ色でコーディネートされてるから大丈夫だって」

橙「言うなー、もぅ知らない!(タタッ)」

無「あ、ちょっと置いていくなって」


橙「ねぇ色無。熱中症、ってゆっくり言ってみて」

無「なんだよ急に」

橙「いいからぁ〜」

無「わかったよ……ねっ……ちゅう……しょう」

 ちゅっ♪

無「!? 何なんだよ!?」

橙「だって色無がしようっていったんじゃあん♪」

無「ふ、不意打ちすぎるんだよ!!」

橙「へー。じゃあ、不意打ちじゃなきゃ大丈夫なんだぁ?」

無「なっ……」

橙「じゃあ、今度はあたしから。ねっ、ちゅうしよう、色無?」







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 04:29:59