灰メインSS

灰「……」

黒「……」

灰「……」

黒「……」

灰「……見切った!!」

黒「甘いわ」(トスッ

灰「あうぅ……」

黒「なんのつもり?」

灰「……文字通り寝首を掻いてやろうかと」

黒「……目的は?」

灰「特にない……かな」

黒「そう。じゃおやすみ。あんたも早く寝なさいよー」

灰「……」

黒「……いつまでも枕元に立たないで。縁起の悪い」

灰「……黒よ……聞こえるか黒よ……お前に最後の技を伝授し

黒「結構です」

灰「(´・ω・`)」


男「ぐー……んー……んー?」

ごそごそ

男「……なんだ誰だ?灰色か?紫か?まったく人が寝てるときにまで現れやがって……」

黒「……っぷは。あ、色無し」

男「なんだ黒か……って黒ぉ!?」

黒「どうした?」

男「いやいま俺の布団の中から……」

黒「頑張って通路を通ってきたの」

男「そそそうじゃなくて……」

黒「よーし始めるか。色無しごめん、少しうるさくなるわ」

男「何を……ってその板と釘はどこから!?」

黒「ふさいでしまえこんな通路!!二度と通れないようにしてやるわ!!」

がちゃ

灰「ご、ごめんなさいお姉ちゃ〜ん!!もうしないから許してぇ!!」

黒「いいや今回ばかりは許さないわ!あんたにはこのくらいの罰を与えとかないと反省しないでしょう!」

灰「したよぉ!反省したからぁ!!」

黒「そうやってすぐ口先だけで!もう騙されないわ!泣いたって無駄よ!」

男「……あれ?黒はいちいち隠し通路通る必要あったのか……?」

灰「ごめんなさいぃ!」

黒「駄目!もうお姉ちゃん本当に怒ったんだから!!」

男「……ってそんなことどうでもよかった、お前ら姉妹喧嘩に他人まで巻き込むんじゃねぇ!!しかも工事するなら昼間にしろぉ!」


灰「おやすみー」

黒「あら、珍しいわねあんたが私と同じ時間に寝るなんて」

灰「……」

黒「……あら、答えてくれないの?まぁいいわ。おやすみぃ。電気消すわよー」

灰「ん。……」

黒「……」

灰「……もそもそ」

黒「……?」

灰「……もそもそ」

黒「……こぉらぁ!!(バッ」

灰「あぁっ!」

黒「寝てからもゲームなんてするんじゃないの!!」

灰「今日はFF3の日だったのにぃ!!返せバカお姉!」

黒「誰がバカだってぇ!?」

男「今日もうるさいなぁ……」


灰「……」

男「……」

灰「……」

男「窓が開いてるからおかしいなと思ったら……やっぱり屋根上か」

灰「……」

男「まぁ月見の時期でもあるけどな……」

灰「……ちょっと団子取ってぇ」

男「ほら。……っていうかそれは……」

灰「学校からもらってきた」

男「無断借用か……」

灰「……」

男「……望遠鏡で月を見るのは月見と言えるのか!?」

灰「……あ!!」

男「どした?」

灰「いま月にうなぎが……」

男「うさぎじゃなくて!?」


灰「ねむねむ……」

男「ちゃんと夜寝ないからだろ……」

灰「眠いよ〜……帰りたいよ〜……」

男「どこの駄々っ子だよ……ってやべぇ!授業始まるよ、席戻らないと!」

先生「え〜それではP108のこの問題を……今日は○日だから○番!黒板に書いて〜」

男(○番って確か……灰色じゃねぇか!!)

灰「……」

男(あいつ寝てるよ〜!)

先生「……?誰かな○番……えっと、灰色さんかな?」

男「こそこそ……おい灰色!おまえだぞ!」

灰「……む〜ん?ふぁぁ……ふぅ。え〜と、なんだっけ、P108?ん〜っ、よく寝たなぁ」

カカカカカッ

先生「……うん、正解だね。この問題にはひっかけがあったのにそれにもひっかからずによく出来ました。みなさんは出来たかな?結構ひっかかる人は多いと……」

灰「ひっかけ?あったんだそんなの……」

男「……」

改めて灰色の凄さを体感した日でした。

                          色無


灰「サザエさ〜んはゆかいだっな〜」

黒「……」

灰「……ふぅ……」

黒「……その激しいテンションの上下は何よ?」

灰「だって……明日学校……」

黒「そうね。学校よ」

灰「行きたくないよ〜ずっとここにいたいよ〜」

黒「ここは学校の寮なんだけど?完全に矛盾してるわよ」

灰「ん〜……そうなんだけど……ってあれ?」

黒「どうかしたの?」

灰「学校の寮……ってことは、ここで働いてる人たちは学校の下で働いてる、つまり学校に認められてる」

黒「それがどうかしたの?」

灰「朱色さんが……学校に認められている……?」

黒「……」

灰「……」

黒「……そんな、あってはならないわ」

朱(あれ……黒にまで言われるなんて……何この空気……怒りに出て行けないじゃん!)


灰「……」

男「……お、灰色が本読んでるなんて珍しいな。何読んでんの?」

灰(スッ)

男「……『本当は怖い家庭の医学』か……」

灰「ためになるよ」

男「そっちは……『捕まらない犯罪』……『困ったときに使える法律』……」

灰「うん、ためになる」

男「『簡単に手に入る薬と効能』……」

灰「っは〜、ためになるなぁ」

男「……いったい何をするつもりなんだ!?」

灰「何言ってんのさ色無ぃ〜。ただの勉強だよ……」

男「目が怖いぞ!」


灰「色無ぃ」

男「?」

灰「……私は罪深い女だ……」

男「……いったい何事だよ灰色」

灰「……猫を……」

男「?」

灰「猫を轢いてしまった……」

紫「とぉりゃぁぁ!!」

灰「あぅっ」

男「横からドロップキック!?」

紫「なんの罪もない……なんの罪もない猫を轢くなんて!!」

灰「……と思ったらビニール袋だった」

紫「……」

灰「……」

男「……」

紫「……さらばっ!!」

灰「待てぇい!」

男「いやお前が悪いだろ。なんだあの言い方」


灰「よし、日付が変わった!ゲームするよ!するよ!」

黒「まったく、あんたどうせするならもっと早くからしなさいよ。夜中の必要あるの?」

灰「そのほうがゲームをしているという実感がぁ!」

黒「ふぅ……まあ勝手にすれば?」

灰「PS2〜PS2〜っと……あれ?」

黒「何よ?」

灰「PS2が……ない」

黒「……あぁ、そういえばあんた、ソニータイマーが発動したとか言って修理出してたじゃない」

灰「……orz」

黒「残念だったわね。ちょうどいいからもう今日は寝なさい」

灰「一度やる気になったら……もう止まらない!!止められない!!なんでもいいからやってやるぜ!」

黒「……重症ね」

灰「……なぜかファミコンでさえ見つからなかった……」

黒「実家に送ったんじゃなかったっけ?」

灰「そうだった……orz」


私は灰色。

排気ガスの色。腐った瞳の色。絶望の色。

白と黒の混ざった色。

白でもあり、黒でもある。

そして、そのどちらでもない。

私は灰色。

私は灰色。

私は……

誰?

何色?

混ざった色なの?

紫は赤と青の混ざった色。

でも『混ざった色』だなんて認識、普通はされない。紫は紫。独立してる。

黄緑。ピンク。水色。

全部独立してる。

私は

黒「うるさい寝ろ」

灰「——灰色。誰にも単体として認識されず、常に

黒「うるさい早く寝ろ」

灰「そしていつも黒に虐げられ

黒「うるさい今すぐ寝ろ」

灰「あぁなんt

黒「寝ろ」

 ぼふっ

灰「ただいま〜」

黒「人が寝ろって言ったのにまたどこ行ってたのよ」

灰「色無んとこで同じことやってきた」

黒「本当に迷惑な子ね……」

灰「暗い部屋……ベッドで寝る色無の枕元に立って同じセリフを囁いてきた。もちろんうつろな目で」

黒「夢に出るわ」

灰「なんかうなされてたけど、途中で起きた。気にせず続けたら、肩がしぃって掴まれて名前呼ばれた」

黒「ちゃんとネタばらし……というか、後始末してきたんでしょうね?」

灰「もちろん。『そっか、色無は……そうなんだ』って呟いてから戻ってきた」

黒「……我が妹ながらやるわね」

灰「でしょ?」

黒「今頃色無は……」

灰「っていうかもう今夜は寝れないだろねw」

黒「……」

灰「……」

黒「ふふふ……w」

灰「ふふふふ……w」


灰「月がすごいよ月が」

男「言ってる意味がわからん」

灰「ちょっとおいで」

     外

灰「ほれそのまなこに焼き付けろ(グイッ」

男「……おぉーすげー!!」

灰「白いでしょ」

男「白いなー!!」

灰「あの月はきっと普段の何万倍ものブルーツ波を出しているにちがいない」

男「え、何?ブルー……?」

灰「それにより朱色さんと群青さんはどこかで巨大化、そして猿のように……」

朱「猿のように?」

灰「色無にアタックしては惨敗し、年増は範囲外だということを学習しな……」

群「どうしたのかな?続けてちょうだい(にこっ」

灰「これは……いつの間に……。助けて色無……色無が消えたっ!!」

朱「私らが帰ってきたときには色無いなかったぜ?」

灰「あのやろぉ〜〜」

群「さあ灰色ちゃん、今夜も楽しく過ごしましょうか!」

灰「いやこれは隣に色無がいると仮定しての会話であって、本来なら色無が突っ込んでくれるはずで……いやごめんなさ……アッー!!」


灰「2304……2306……2307……2310」

黒「……」

灰「2308が……ない……」

黒「……」

灰「お姉ちゃん……私、落ちちゃったよ……」

黒「……うん……」

灰「……あー、頭がいいからって、調子に乗りすぎちゃったのかなぁ?やっぱり駄目だったかーw……ぅ」

黒「……うん、うん(ぎゅっ」

灰「うぅ……うわーん……!」

青「あ、いたいた灰色ちゃん!」

黒「青。そういえば空ちゃんもここ受けたんだっけ。どうだった?」

青「んん?奇跡的に受かってたよ!合格率30%以下だったのにね」

灰「空ちゃん……受かったんだ……。そう、よかった……」

青「そんなことより灰色ちゃんすごいじゃない!!おめでとう!!」

灰「……?」

黒「……青、冗談でもそういうことは——」

青「さっき見てきたんだけどさ、特待奨学生として受かってるじゃん!!あれってテストほぼ満点ってことでしょ?やっぱり出来る子は違うのね〜」

黒「……そうだ、特待奨学生の場合は違う掲示板に番号が張られるって聞いたことが……」

灰「きゃー!あったー!!お姉ちゃん、あったよぉ〜!!」

黒「もうあんなところに……そしてもうあんな元気に」

青「何、もしかして落ちたと勘違いしてたの?」

黒「そう。ついさっきまで泣いてたくせに」

青「立ち直り早いのね。まあ受かったんだからいいじゃない!!」

黒「あの頃が懐かしい……」

灰「がっこー行きたくないよー眠いよー……代わりに行ってきて姉者」

黒「さっさと起きなさいこのバカ妹」

灰「あーうーマイ布団がー」


『like a cat』

無「猫がいるぞ」

灰「猫だね」

無「幸せそうに寝てるな」

灰「羨ましいね」

無「まあ少しはな……。灰は猫、好きなのか?」

灰「大好き。猫になりたい。眠い。寝たい」

無「……」

灰「色無は猫好きなの?」

無「……ああ、好きだけど」

灰「そっか。そんじゃ大丈夫だね」

灰、その場でぽふっと横になる。

無「……灰、お前一体何を」

灰「色無、猫好きなんでしょ? だったら今の猫みたいに道端で寝てる私をほっとくわけないよね〜」

無「……てか、お前もっと恥じらい持て。道端で寝転ぶな」

灰「……ZZZ」

無「寝るな」

灰「……だるい。眠い。寝たい。とゆーことで色無よろしく。私は寝るから」

無「……お前なあ」

灰「いーじゃん色無ぃ〜。ほっぺにちゅーくらいならしてあげるから」

無「……や、別に良いけど。仕方ないやつだな」

色無、灰色をおんぶする。

灰「やった、らっきー。ありがとね、色無」

無「へいへい。とりあえず、寮までだな」

灰「感謝してるから、ね」

色無のほっぺたにキスする灰。

無「っ! ちょっ、お前、何を」

灰「お礼だよ、お礼。ありがたーく受け取りなさい」

無「……へいへい」

灰「じゃ、おやすみ、色無」

そういって目を閉じる灰。

彼女の真っ赤な顔は、色無からは決して見えない。


灰「……」

白「……あ、灰色ちゃんだぁ」

灰「!白姉ちゃん!病院はいいの?」

白「うん。この間退院したんだよ。ところで何やってるの?砂遊び?」

灰「うん、いま建設中なんだ」

白「難しい言葉知ってるね。何を建設中なの?」

灰「……要塞」

白「……え?」

灰「敵を打ち落とす要塞」

白「え、え〜っと」

灰「味方には全てから守る盾として頼りにされ、敵には難攻不落の砦として疎ましがられる要塞」

白「……う〜ん」

灰「……あっ!!お姉ちゃんだ!!」

黒「こんなところにいたのか。暗くなってきたし帰るよ。白、子守しててくれたのか?ありがとう」

白「あ、うん全然平気」

灰「帰ろうお姉ちゃん!」

黒「ちゃんとお礼言いなさい」

灰「あ、遊んでくれてありがと!じゃあね〜」

黒「また明日な白」

白「うん、また」

灰「どうしよう……宇宙力学の新たな説を思いついたけどレポートまとめるのめんどくさいなぁ……代わりにやってよ赤」

赤「なにそれ勉強できないボクへのあてつけかい!?」

灰「あぁこの理論がもったいない……でも立ち上がりたくないしなぁ。しょうがない、諦めてもらおう」

白(あのときから普通じゃない気はしてたんだけど、まさかここまでとはなぁ……)


灰「色無ー帰ろーおんぶー」

男「また久しぶりだな。っていうか何でよ?」

灰「惚れた男の背中におぶさりたいから……これが理由じゃだめか?///」

男「焦茶さんの真似すんな。似てないから。しかも照れてんじゃねぇか、ちゃんとなりきれよ」

灰「これが理由じゃだめか?」

男「なんだその喧嘩売ってるような顔は」

灰「とにかくおぶってぇぇ」

男「はいはい……ったく。ほら、早く乗れよ」

灰「わーい」どさっ

男「うぉっ!……悪いけどお前、太った?」

灰「最近また胸が大きくなったのよねぇ〜」

男「ピンクの真似をするな!どう見てもAじゃないか!おんぶしてるのに『当たってるんですけど』イベントすら発生しないぞ!?」

灰「黙って走りなさい。ほらほらみんなが見てるよー」

橙「おんぶ……!」

紫「いいなぁおんぶ……」

青「おんぶなら怪しまれずに密着できる……?」

水「色無くんのおんぶかぁ……いいなぁ灰色ちゃん」

橙「……追えー!!」

灰「ほらほら逃げなくていいの?何人もおんぶすることになるよ」

男「ああもうめんどくさい!!なんで俺が!!」


店員「7140円になりまーす」

灰「……あ」

店員「?」

灰「……ちょっと待っててください。すぐ戻りますんで」

男「あ、ドラクエなんてずっとやってないなぁ。久しぶりに買ってみようかなぁ」

灰「色無ぃ!」

男「おぉどーした、買ってきたか?」

灰「お金が足りなかった!!」

男「……で?」

灰「貸して!!」

男「……人に二人乗りチャリンコ漕がせといてその上お金まで巻き上げようというのかこの女は」

灰「お願い!この通りだから!」

男「頭も何も下げてないじゃん」

灰「自分より格下のやつに頭なんて下げられるか!」

男「……ほほーう(ピキピキ」

灰「嘘嘘!!嘘だってば!」

店員「お客様ー、次のお客様がお待ちになられているのでお早めにお願いしまーす」

灰「ほら店員もああ言ってることだし許してやろうぜ?」

男「誰のせいだ」

灰「もうわかった!!今日1日私のこと好きにしていいから!」

男「……本当だな?」

灰「本当!だから貸して!!」

男「ほら」

灰「ありがとう色無!」

灰「……買ったはいいけど、なんだかヤバイ約束しちゃったような……」

黒「今日1日好きにしていいって?」

黄「うん、確かそんな約束をしたーって色無が浮かれてたよ?」

黒「これは……妹の危機!!早く助けに行かなきゃ!!」

灰「もうやだよぉ……」

男「何言ってんだよ、約束したろ?ほら早く言われなくても自分から動いて」

灰「ん……これ以上……無理だってぇ、恥ずかしいよ」

黒「ななななな、なんということをしてくれたぁぁぁ色無ぃぃ!!」

バタン

男「ん?」

灰「お姉ちゃぁん色無がいじめる〜!!」

男「あ!お前まだ掃除ひとつも終わらせてないだろ!泣きつくな!」

黒「……あれ?」

灰「お姉ちゃん〜」

黒「っていうか……メイドコス?」

男「こいつがなんでもするって言ったからな、身の回りのことするメイドにしたてあげたwところがこいつ家事も何も出来ないのな……」

灰「だってやったことないもん」

男「掃除すら出来ないってありかよ黒!?」

黒「……あ、うんごめんなさい」

男「……黒?」

黒(好きにしていいと言われたのにふしだらなことは何もしない……こいつ、どこまでチキンなの!?)


灰「うっ……気分悪い……」

黒「どうしたの?」

灰「なんか気分が……うぅ……ちょっとトイレ……」

黒(大丈夫かな?)

 1分後

灰「うぇ〜……食べたものもどしちゃった……」

黒「大丈夫?」

灰「なんとか……うぇっぷ……」

黒「まさかつわりとかじゃないでしょうね?」

灰「あー……そういえば色無の部屋に行ったときに……」

黒「ちょっと色無の部屋にいってくる……」

灰「え?あ、いっちゃった……」

 色無の部屋

黒「たのもー!!」

無「ここは道場じゃねぇぞ。なにしに来やがった」

黒「よくもよくも……」

無「?」

黒「灰に妊娠させたなぁ!!」

無「はぁ?」

黒「問答無用!!」

無「やる気かっ!?」

黒「私にも妊娠させ……」

灰「ちょっとまった!!」

無「どこから出てきた?」

灰「企業秘密。それはともかく姉者は誤解してない?」

黒「色無と灰が(ピー)をしてしまったんだろ?」

灰「あのね、あたしは色無の部屋で食べ物をつまみ食いして食中毒になっただけだよ」

黒「なに?」

無「ていうか人の部屋あさるなよ」

灰「というわけで妊娠なんて誤解だよ」

黒「///」

無「はぁ……疲れる……ん?」

赤「灰色ちゃんを妊娠させたって本当?」

青「年下の子と……」

紫「見損なったよ」

無「いや、誤解だって……」

赤&青&紫「御託は、いらねぇ!!」

無「あっー!!」

その後、しばらくの間灰色の妊娠騒動が続いたという

灰「お姉ちゃんあの時なんて言おうとしたの?」

黒「う、うるさい!!」


灰「急に寒くなってきたね〜」

男「ね〜」

灰「だからさ〜」

男「いや早く出て行けよ。一緒に寝るつもりはないって」

灰「けち」

男「なんとでもいいなさい」

紫「……けち」

男「なんとでも……ってえぇ!?紫まで!?」

紫「……色無の布団あったか〜い」

男「ひゃ!?足を入れるなっての冷たいから!」

灰「ほれほれ〜」

男「っひゃあ!!……ってなんで冷えピタ持ってんだよ!!明らかに嫌がらせじゃねぇか!!」

灰「こっちにも構ってほしくて」

男「うるせぇ!黒に遊んでもらえばいいだろ!?」

灰「お姉ちゃん寝るの早いんだもん」

男「俺だってもう寝るんだよ!ほら紫も戻った戻った!」

紫「え〜」

灰「え〜、じゃない!」

男「それは俺のセリフだ!!っていうかお前も戻るんだよ!!何関係ないみたいな顔してんだよ!」

灰「え〜」

男「え〜、じゃない!!」

灰「しょうがないなぁ……っと……あれ?通路が……」

男「……」

灰「たいへんだぁクリストファー、おしりがひっかかって通れないやぁ」

男「ケツに絵ぇ描いて飾るぞ!!」


「はあ……」

 階段を上り、ドアを開け、鞄を床に放り出す。俺は制服も着替えず、床に膝をついてベッドに頭から倒れ込んだ。

「……まあ、うまくいくとは思ってなかったけどさ……いざ玉砕してみると、マジで凹むもんだな……」

「なに、告白でもしたの?」

「うわあああああ!!!! は、ははははは——」

「笑ってるの? ふられたんじゃないの?」

「灰! なんでお前がここにいる!? いつからいた!?」

 我が物顔でベッドに寝ころんでいた灰は、めんどくさそうに体を起こした。

「色無が辛気くさい顔で倒れ込む二時間くらい前から。帰ってきたとき、ちゃんと声かけたんだけど」

「ああそう、気づかなかった……じゃない! また窓から入ってきやがったな! やめろって言ってんだろ!」

 まだバクバクいってる心臓を何とかなだめながらくってかかったが、灰はまったく聞く耳を持たず、再び寝っ転がると手にした雑誌に目を戻した。

「まあいいじゃん。うちだとお姉ちゃんと相部屋だから、ゆっくり漫画も読めないんだもん。ほんとは色無だって嬉しいんでしょ? いっつも窓の鍵開いてるもんね」

 それは過去に二度、鍵のかかった窓と格闘したお前が屋根から落ちたからだ。軽い打ち身ですんだってのが今でも信じられん。

「で、誰にふられたの? 私の知ってる人?」

「お前には関係な——」

「私が小学一年生のとき、二人だけでお医者さんごっこしたこと、お姉ちゃんにばらしちゃおうかな〜」

「……お前ろくな死に方しねえぞ……」

 弱みを握られた男に選択肢なんかない。それに、誰かに聞いてもらいたいような気もした。

「桃だよ。知ってるか? 俺や黒と同じクラスの子なんだけど」

「え、桃先輩? 学年一どころか、高等部一可愛いって評判の? おっぱいおっきくて、ちょっと天然入ってて、ファンクラブができるくらい大人気の、あの桃先輩?」

「いや、そこまで評判とは知らなかったが……たぶんその桃だ。ついさっき告ってきたけど、『そんな風に考えたこともなかった』って……」

 つーかこいつ、桃には“先輩”ってつけるくせに、なんで俺は呼び捨てなんだ。

「あちゃ〜。それはいくらなんでも無謀でしょ。容姿・学力・人気、どれをとっても釣り合いっこないじゃん」

 容赦ない言葉の刃でざっくりと袈裟切りにされ、俺は小さくうめいてぐったりとベッドにもたれた。やっぱりこいつにだけは話すんじゃなかった。

「……あれ? もしかしてけっこうマジだった? ごめん、もっと軽いノリかと思って……あ、これ早売りのジャンプだけど、先に読んでもいいよ?」

「いや、そういう気遣いとかけっこうですから……」

 早売りのジャンプて。それ慰めのつもりかよ。俺は小学生かよ。

「ま、まあ色無にも、そのうちお似合いの相手が見つかるって。そうだ、うちのお姉ちゃんとかどう?」

「くろ〜? 黒なあ……悪かないけど、なんかちょっとこう、恐いんだよなあ。俺はもうちょっと可愛い系が……あっ、今の言うなよ? 絶対言うなよ?」

「むっふっふ、どうしようかな〜? まあそれは置いといて、可愛い系ねえ……あ、じゃあわたしなんかどう?」

 いつの間にかベッドから降りた灰が俺の前に回り込んで、自分を指さした。ちょっと顔が赤い。まったく、照れるくらいならボケるなってーの。

「はあ? お前はどっちかって言うとウザイ系だろ。百歩譲ってウザ可愛い系だな。だいたい中坊なんかガキっぽくて、妹としか思えねーよ」

 一瞬、灰の表情が凍りついたような気がした……しまった、言い過ぎたか? 灰は黙って立ち上がり、俺に背を向けた。

「あ、いやまあ、中学生って言っても俺と二つしか違わないわけだし——いてっ!」

 俺のフォローを最後まで聞かず、灰は俺の膝のあいだにどさっと座りこみ、背中を預けてきた。

「おい、なんだよ……重いだろ。なんのつもりだ?」

「べっつに〜。可愛い“妹”のスキンシップだよ。“お兄ちゃん”、一緒にジャンプ読んでよ」

 なんだか拗ねたように、“妹”と“お兄ちゃん”に妙なアクセントをつけてそう言うと、灰は俺の手にジャンプを押しつけた。

「……しょうがねえなあ。最初っから読むからな」

「いいよ、私も読み直すから……あっ、ちょっと待ってよ、まだ読んでるんだから! お兄ちゃんページめくるのはやい〜!」

 こいつといると、失恋で落ち込んでる暇もないな。少しだけ灰に感謝しながら、俺はページを一つ戻した。


紫「じゃあね色無」

男「ま……待ってくれ紫ー!!……くそ……なんだってんだ……。……あ、水色ちゃん!!おーい水」
水「ごめんね色無くん……ごめんね」

男「そんな……水色ちゃんまで……なんなんだよ!!なんでみんないなくなっちゃうんだよ!!……うぅ……」

男(はっ!!夢か……。それにしても酷い悪夢だったな。……?体が動かない……金縛り?)

男(誰かに乗られてるような……。なんだよこの寮、出るなら出るって先に言っといてくれれば……)

?「ぐーぐー」

男「(……あれ?まさか)

灰「ぐーぐー」

灰「お姉ちゃ〜ん、色無に頭叩かれた〜!!」

黒「あんたが悪い」


灰「ただいま〜」

男「おかえりー。あれ、どこ行ってたの?」

灰「バイトだよ」

男「うそぉ!?バイトしてんの!?灰色が!?」

灰「なんだよその反応……腹立つなぁ」

男「なんでなんで!?」

灰「んー……いまのお小遣いに満足してないから」

男「っていうか何の何の!?」

灰「普通にファミレスだよ」

男「接客できんの!?」

灰「いらっしゃいませー☆」

男「誰だお前!!」

灰「灰色です」

男「いまのは違う!!オレンジのように明るく水色ちゃんのように繊細かつ純粋な笑顔だったぞ?」

黒「……私には『また来たかこのハゲ』という表情に見えたけど」

男「うお、黒!!」

灰「さすがお姉ちゃん、あったり〜。じゃあこれは?」(にこっ

黒「……『このババアたちずっと居座るんだよなぁ……たまにはさっさと帰れっての』」

灰「あったり〜」

男「……全然わからねぇ……」


灰「見ろ色無……!!」

無「あれは……」

灰「夕日だ……日が沈むぞ!!これであいつらは動けなくなる!!はっはー!私たちの勝ちだぁぁ!!」

無「どうみても朝日です。本当にありがとうございました」

灰「やってしまった……これは授業全部寝るコースだな」

無「徹夜ゲームに俺を巻き込むな!っていうかテスト前なのになにやってんだ俺……」

灰「あれ、テストあんの?」

無「お前んとこもあるだろ!……ってそうか、こいつは勉強する必要がないのか……」

灰「やったじゃん色無。テスト中時間あまるから寝れるよ」

無「余ったことねぇよ!!」


ちわーす。灰色でやんす。

さて今日も今日とて色無にいたずらを……

紫「えへへー色無の手あったか〜い」

男「紫はいいかもしれないけど俺はすごく冷たいです」

紫「キニシナイキニシナイ」

ヤツら……手を繋いでこっちに来るとな!?許せん……特にあの……

男の方!!

男「俺かよっ!?」

紫「どしたの色無?」

男「いやなんでも……あれ?なんだろう今の……」

正直ビビッた。自動突っ込みを習得していたとは……恐るべし色無。

とりあえず部屋に先回りして、色無のエロ本をベッドの上に置いておこう。うん、そうしよう。これであいつは紫に嫌われる!

男「あぁっそれは!!」

ふふふ……動揺してる動揺してる

紫「でも私……色無になら……」

男「紫……」

なんでそうなる!?

紫「色無……」

灰「ちょっと待てぇ!!」(バン

男「ん?灰色?」

手に持ってるものは……

灰「……いいともストラップ……?」

男「どこから手に入れたのか知らないけど、紫がくれるらしいんだ。前からほしかったんだぁこれ!!」

灰「……エロ本は?」

男「エロ本……?……あ!!なんでこんなところに出てるんだよ!!///」

紫「……サイテーっ!!///このバカ!!」

男「紫!!違うんだ!!あぁ……タモさんが……」

……まあいいか。結局当初の目的は達成できたわけだし。これにて一件落着……

男「してねぇよっ!!……っは!?また勝手に……」


灰「お姉ちゃん、久しぶりに一緒にゲームでもしようよ」

黒「いいわよ」

灰「やったー!」

黒「私の勝ちね」

灰「うー……」

黒「また私の勝ち」

灰「……」

黒(仕方ないわね……)

灰「や、やったー!ついに勝ったー!」

黒「あら?負けちゃたわね。おめでとう、灰」

灰「うん、お姉ちゃんありがとう」


無「う……ん……」

灰「あぁ、おはよう……」

無「……」

灰「あたしの顔になにかついてる?」

無「二度寝の邪魔をするな……」

灰「じゃあ一緒に二度寝すればいいよ。あたしって頭いい〜」

無「そんなこと考えつく前に常識を身に付けような?」

灰「色無はあたしと一緒にねたくないの?」

無「社会のモラルが許してくれないだろ」

灰「社会のモラルにとらわれるなんてちっちゃい男ですねぇ」

無「ちっちゃくてもいいから眠らせてくれ頼むから……」

灰「じゃあ色無が寝つくまで一緒にいてあげる」

無「結局変わらないような……もういいか……おやすみ……」

灰「おやすみなさい……(さてこれで色無を独占できる……むふふ……)」


灰「引越ししたくない?」

黒「何をいきなり」

灰「なんか引越しブームじゃん」

黒「どのへんで流行ってたのそれ?っていうか寮生活してるのに引越しとか言わないでよ」

灰「ちょっと都会に住んでみたいよねぇ」

黒「あー、それはわかるかも」

灰「……お姉ちゃんは横浜のどこがいい?」

黒「横浜限定!?……えっとー……鶴見区とか?」

灰「私は下北沢がいいなー」

黒「あんたも横浜で絞りなさいよ」

灰「ねね、引越しするとき何持っていきたい?」

黒「んー、持っていくって言ったって、洗濯機冷蔵庫電子レンジは共有物だし……テレビぐらい?」

灰「まったく馬鹿だなぁお姉ちゃんは。ここで色無って言っとかないと。そんなんだから最近焦茶さんに人気取られてるんだよ!」

黒「張り合った覚えもないけど……」

灰「言っとくの!!」

黒「……色無を持っていきたい」

灰「私も色無持っていきたい!」

黒「色無を持っていきたい」

灰「色無持っていきたい!」

黒「色無持っていきたい!!」

灰「私だって色無持っていきたい!!」

黒「私のほうが色無持っていきたい!!」

灰「一緒に持っていけばいいじゃん!!」

黒「そうしよっか!」

灰「そうしよう!!」

ばたん

黒・灰「色無引取りに来ましたーっ!!」

男「どうでもいいけど酒臭いぞお前ら」


灰「お姉ちゃんお姉ちゃん」

黒「テストってな〜に〜?おいしいの?」

灰「お姉ちゃん!!」

黒「……はっ!私は何を……」

灰「大丈夫お姉ちゃん?……っていうかお姉ちゃんならそこまで勉強しなくても赤点なんて絶対取らないでしょ」

黒「……私は自分にも厳しいのよ」

灰「何点狙い?」

黒「全教科とも平均点+20」

灰「うっわー、自分でそこまでやるとか……赤が聞いてたら胸倉掴まれてたよ」

黒「自分は狙えるレベルだってわかってるからこうして課すのよ」

灰「気持ち悪いよ?」

黒「オール100点が何言ってんのよ。気持ち悪いのはそっちだっての」

灰「保健体育は苦手だぜ」

黒「聞いてません」


『石焼芋?』

無「はふはふ……どうして焼き芋ってうまいんだろなー?」

灰「……あ、色無だ〜」

無「灰? 外に出るなんて珍しいな」

灰「私だってたまには出るよ〜……おいしい匂いにつられてね」

無「……この焼き芋がほしいのか?」

灰「別に〜。ただおいしい匂いにつられて、って言っただけだよ〜」

無「……分かった。分かったからここに座れ」

灰「わ〜い」

無「ほいよ」

灰「……ん、ありがと」

無「……ん(パクッ)」

灰「……(パクッ)」

無「……(モグモグ)」

灰「……(モグモグ)」

無「……(モグモグ)」

灰「……ねぇ、色無」

無「ん、なんだ?」

灰「焼き芋って、日本の文化だよね」

無「……まぁ、そうだな」

灰「ビバ、日本だね」

無「なんじゃそりゃ」


男「あ、おいしそうなもの食べてるー」

灰「ん、色無も食べる?いも」

男「欲しい」

灰「はい」

男「いっただっきま……って生の芋かよ!焼き芋じゃねぇのかよ!」

灰「騙されたなー」

男「く……いいさいいさ!焼いてやる!」

男「よっし焚き火の準備はOK!焼くとするか」

灰「……ごめんそれじゃがいも」

男「え……でも」

灰「私が色塗ったの」

男「……」

灰「……」

男「……気付けよ俺……」

灰「いやぁあまりにも騙されてたので言い出せなくて……」

男「……orz」

灰「……とみせかけてデッデデーン♪大成功〜!本物のむらさき芋でした〜」

男「……はい?」

灰「それ芋だよ、ちゃんとしたおいもさん。二重どっきりー」

男「……もう僕にはこの子がわからないよ……」


灰「さってとーゲームゲーム」

黒「こんな時間からゲームか?」

灰「ちゃんと音小さくするからー」

黒「まあ別にいいけど……起きれるの?」

灰「?起きる?」

黒「明日平日よ」

灰「( ゚д゚ )」

黒「こっち見ないで」


灰「ふぁ〜……おはようおねえちゃん」

黒「おはようって……あんたいま何時だと思ってるのよ……もうお昼よ?」

灰「最近モンスターハンターにはまってまして……」

黒「あんたまた少し古いのを買ったのね……」

灰「そして今から友達と狩りなのです」

黒「あんたその生活治しなさいよ」

灰「は〜い、でも今はゲームゲーム〜」

キャラクター選択画面

黒「ん……ちょっと灰……待ちなさい……プレイ時間300時間って……あんたこれ一ヶ月前に買ったのよね?」

灰「えっ……え〜っと?そうだったかしら〜?」

黒「罰として暫くゲーム禁止!!」

灰「ひやぁ〜お姉ちゃんそれだけは〜」

Ironashi:Grayさん遅いな


灰「あ〜、ぬくぬく〜。あ、お姉ちゃん、そこの漫画とって〜」

黒「灰、その距離なら自分で歩ける距離じゃない」

灰「わかってないなぁ、お姉ちゃんは。近くてもこたつに入っていない者が優先的に取りにいく運命なんだよ?」

黒「……自分で取りに行きなさい」

灰「ちぇ〜。ならいいや〜。あ〜、ぬくぬく〜」


黄「あ、ゴミ箱はずしちゃった……ま、いっか〜……ぬくぬく」

青「ちょっと、はずしたならちゃんと拾いなさいよ」

黄「だって寒い〜」

青「……そんなことしてると灰色になるわよ」

黄「拾います!」

黄緑「あらあら、ちゃんと布団で寝なきゃだめよ」

紫「だってぇ〜……きもちいいんだもん……えへへ」

黄緑「あらあら、灰色ちゃんに似てきたわねぇ」

紫「布団行くっ!」

朱「お姉ちゃん何、こたつなんか入っちゃって。寒いの?」

群「あんたと違って酒なんか入ってないからね。それにもともと冷え性だし。あ゛〜あっだがい」

朱「こたつの上にもの置きすぎでしょ。落ちちゃってるじゃん」

群「書類の整理が大変なのよ」

朱「ちゃんと机があるんだからそっちでやればいいのに。なんだか灰色を見てる気分だよ」

群「……あんたには言われたくないけど、そうね、机でやろうかしら」

灰「……私ってそんなにイメージ悪い?」

男「泣くな……耐えろ……」

灰「別に全然悲しくないけど」

男「やっぱ性格悪いわ」


灰「お姉ちゃん」

黒「何?」

灰「ほらよーく見て。あなたはだんだん眠くなーる……」

黒「そんなものでこの私が……」

灰「眠くなーる」

黒「……くー……」

灰「眠く……よし、成功?」

黒「くー……くー……」

灰「さぁここからか。あなたは一番大事な人に今すぐ会いたくなーる……」

黒「くー……」

灰「(パチン)……さあ行け!お姉ちゃん!」

黒「……ん……ん?(ムズムズ」

灰「来てます、来てますよ〜」

黒「……灰色ぉ!!」

灰「え……えぇ!?お姉ちゃん!?」

黒「灰色ぉ……」

灰「これは……つまり……そういうこと……?(パチン)」

黒「……あれ?私何で抱きついて……」

灰「よ、喜んでなんかないんだからね!///」

黒「いきなりツンデレ?」


pencil_1226.gif

「オレと一緒ならどこでもいいって、素直に言ってくれるともっと嬉しいんだけどな」

「うぬぼれ屋」

「違うの?」

「……馬鹿色無!」


 ぬくぬく

無「黒〜居るか〜って凄いな!」

黒「色無?」

無「マフラーに半纏、毛糸の帽子に耳当てまで」

黒「寒いのは苦手だわ」

無「コタツに入ってるのに?」

黒「私より重症がいるわ」

灰「(ひょこ)どうも」

無「灰!? 顔だけ出して……まるでコタツと一体化しているみたいだな……」

灰「ふふ……」

無「?」

灰「むしろ私がコタツ!」

無(妙な説得力が……)


灰「ヤター!クリスマスオワター!!」

黒「なんで喜んでんのよ……」

灰「何かとウザイよねー。クリスマス」

黒「そうかしら……。っていうかあんたはいつも通りじゃない」

灰「色無にもらった新作ゲー2本もうクリアしちゃった。てへ☆」

黒「てへ☆じゃない。あんたねぇ……せっかく可愛いんだからちょっとぐらい色恋沙汰にも興味を示したらどうなのよ」

灰「んー」

黒「今だってクラスの男の一人や二人、アタックされてるんでしょ?」

灰「んー」

黒「好きな人とかいないの?」

灰「いないなぁ……あ、ごめんごめん!お姉ちゃん大好き!」

黒「いらないからそういうの」

灰「好きな人が女のお姉ちゃんに言われたくないねー」

黒「女だろうがいたほうがマシだわ。恋は女を綺麗にするんだもの」

灰「あれ?お姉ちゃんそういうこと言う人だったっけ?」

黒「私も変わったのよ」

男「聞いてしまった……黒のレズ宣言を聞いてしまった……!!」


灰「黒……俺たちももう一緒になって一年なんだな……」

黒「……」

灰「こうして一緒に年越せるだけで俺は幸せ者だよ……」

黒「……」

灰「きっと来年もいい年なんだろうな……」

黒「……一応聞いとくけど誰の真似?」

灰「色無ー」

黒「……主にどの辺が?」

灰「くさいことを本気で言うあたり」

黒「……あぁ」

無「っておい!俺そんなんじゃねぇよ!」

灰「出たよ女ったらし……。知ってるよ。私たちには言わないけど、水色ちゃんが純粋なのをいいことに」

男「わぁぁ!」

灰「くさい言葉を連発して」

男「わぁぁぁ!」

黒「……最低」


灰「……あ〜、眠い〜」

無「だからって俺の部屋で寝なくてもいいんじゃないか? つか、こたつあるんだから自分の部屋で寝たほうが」

灰「……色無、今日は何の日?」

無「え? ……ついさっき、大晦日になったな」

灰「うん、大晦日。 だから、ここで寝る」

無「え? ちょ、どういうことだよ!?」

灰「……今年の締めは、色無の顔で締めたいな、って思うから」

無「は、え、へ?」

灰「今の顔は面白かった。けど、真面目に受け取らないのはマイナス」

無「いや、でも、そんなこといきなり言うか?」

灰「私は姉様の妹だよ? それに……もうそろそろ姉様も来るよ」

無「へ、それってどういう(コンコン)……はーい、誰だー?」

黒「私。灰、こっちに来てない?」

灰「ほら」

無「お前はエスパーか?」

 ガチャ

黒「色無、灰がここに……って尋ねる必要は無かったみたいね」

灰「やほー、姉様。姉様も一緒に寝ない〜?」

無「どこのナンパだ」

黒「……あのね。色無に迷惑がかかるでしょう?」

灰「今の間は?」

黒「……」

灰「お姉様〜。年越しは色無で締めたくはありませんか〜?」

無「なんかナンパしてるおっさんみたいだな……黒、別に無視しても」

黒「それ、いいかもね」

無「うそぉ!?」

灰「さすが姉様〜。ささ、どうぞこちらに〜」

無「っておい三人で一緒に寝るのかよ……はぁ、落ちても知らないぞ」

灰(そう言いつつ、笑顔なのは何でだろうね〜♪)


灰「寒いねー……」

黒「こたつむりが何言ってるの」

灰「こたつはいい……日本人の生んだ宝だよ……」

黒「誰の真似?いいからちょっとお節料理作るの手伝ってよ」

灰「つまみ食いしていい?」

黒「駄目に決まってるでしょ」

灰「ちぇー」


灰「正直ね、どうでもいいんですよ」

黒「何よ」

灰「空姉妹が誰を好きだろうが、何時に恋バナしようが」

黒「……」

灰「色無と初詣に行くチャンスを伺ってようが……」

黒「……」

灰「夜這いなんて物騒なことを本気で考えてようが……」

黒「……」

灰「……」

黒「……期待してるわよ、バレない夜這いのアイデア」

灰「……え?お姉ちゃん?」

黒「今日ぐらい張り切らないと。ライバルは多いわよ!」

灰「……サー、イエッサー!」


橙「今年の正月番組どれもおもしろそうなのないなー……」

灰「もし、そこの」

橙「お、灰色ちゃん。何かまた発明したの?」

灰「色鉛筆チャンネルなるものをご用意致しました」

橙「おぉ!何やら期待できそうですな!」

灰「リモコンどうぞ」

橙「どれどれ……?」



黄『黄色が教える!おいしいカレーの作り方!』



緑『……最近の一押しの作家は……』



赤『きれいなフォームで走るには!』

橙「……何これ?」

灰「みなさんがそれぞれのチャンネルで番組を担当しております」

橙「ふーん、なかなか凄いじゃん……」



桃『バストアップ体操ー!』

橙「……!!これは!」


灰「寒い」

男「勝手に人の布団に引きこもってるオマエがなにを言うか。ていうかいつの間にいたんだよ」

灰「それはまぁ、それとして。とりあえずこの寒さを何とかしてくれない?」

男「それなら湯たんぽでも抱いて寝てろ。じゃ、俺はこれからバイトだから」

灰「死地に赴く戦士に敬礼ー」

男「アホか。まぁいいや、じゃあな。くれぐれも散らかすなよ」

灰(さて、と。湯たんぽ1号がいなくなっちゃったな……んーと、じゃあここはひとつ)

水「……」

灰「いらっさいましー」

水「ひゃあぁ!? は、灰色ちゃん!」

灰「そこまで驚くこともないと思うんだけどなー。呼んだの私なんだし」

水「あ、えと、ごめんね。それで、えーと……その」

灰「ささ、どうぞこちらに。今ならタダでこのベッドを使い放題ですよ姉さん」

水「あ、ぅ……でも、いいのかなぁ」

灰「むしろ姉さんに寝てもらった方がこのベッドも幸せというものですよ。色無の匂いが染みて」

水「でもいいんだよね。色無くんはバイトだし、私はあくまで灰色ちゃんに誘われたのであって、うん」

灰(わー、聞いちゃいないや)「……まぁ、とりあえずおいでませ」

水「じゃ、じゃあ失礼しますっ……ん……ひゃぁ!? ちょ、ちょっと灰色ちゃん!?」

灰「バラされたくなければおとなしく湯たんぽやってろー。んー、ぬくいぬくい。余は満足じゃ」

水「はわぁ……あ、あんまりへんなとこ、さわらないで……っ」

灰(……わぁ。これはちょっと、ヤバいかもわからんね)


灰「冬休みももう終わりか……」

黒「あんた宿題やったの?」

灰「カツオくんじゃあるまいし……」

黒「やったの?」

灰「空任せ」

黒「ちょっとこっち来い」

灰「まぁ待て姉者!これはちゃんとした契約の元の行為であって」

黒「どんなのよ?」

灰「ほらあの色惚け姉妹のために一肌脱いだのさ」

黒「それで?」

灰「その代わり面倒なレポートを彼女がやってくれると」

黒「数学のプリントが出たんじゃなかったの?50枚程」

灰「……!な……なぜそれを……」

黒「青に聞けばすぐわかるわ。空ちゃんは青に嘘つかないもの。さ、早くやりなさい」

灰「……あんな無意味なプリントやる価値はない!」

黒「早くやりなさい」

灰「答え言うから書いてって!書くのが一番面倒なの!」

黒「早くやれ」


赤「熱ぢっ!!」

男「おいおい、もっとゆっくり食べろよ」

赤「だって早く走りに行かないとテレビ始まっちゃうよ!」

男「それはわかるけど……」

赤「熱ちちっ!」

男「鍋は無理だろ……」

黄緑「あらあら、よく噛んで食べなきゃだめよ〜」

赤「でもテレビが……」

男「灰色に録ってもらえばいいじゃんか。あいつレコーダー持ってるだろ?」

赤「だめだよ……今月ピンチだから……」

男「……あぁ、あいつ金取ってたな」

黒「!!そんなことしてたのあの子!?」

赤「あ、黒からも何とか言ってよー。一番組500円は高すぎるよー」

黒「えぇ……二度と無駄口叩けなくしてやるわ……」

男「……目が怖いよ……」


灰「さてと、宿題でもするかー」

黒「自分からするなんて珍しいわね。……って言っても空ちゃんのを写すだけだけど」

灰「うん、さすが空。きれいにまとめてあるね」

黒「字も綺麗ねー。あんたとは大違い」

灰「何を言うか姉上。私だって本気を出せば硬筆の銅賞くらい……」

黒「誰でも取れるわよ」

灰「それにしてもこの量……」

黒「凄い量ね。一日で終わるの?」

灰「無理」

黒「無理ってあんた……だから早くからやりなさいって言っ」

灰「この量は無理。しかし、このレポートにはまだまだ無駄が多すぎる!この私が更にまとめてしんぜよう!」

灰「終わったぁ!」

黒「もう!?……ってちょっと待ちなさい」

灰「何か?」

黒「表紙と考察感想だけってどういうことよ」

灰「……このレポート自体が無意味だったんだよ!」

黒「な、なんだってー!?どういうことだキバヤシ!」

灰「みんな思い出してくれ……あのとき先生が言っ」

黒「バカやってないでさっさと写しなさいよ」

灰「……御意」


「あれ……まだ来てないのか」

 晴れ着を着た人が多く行きかう神社の入り口、時間もちょうどだし場所は間違っていないはず。黒さんが遅刻とは珍しいな。

 昨日本屋で黒と会い、お互いにまだ年始のお参りに行っていないという事で二人で神社に行く約束をした。

 厳格で規律を守る黒さんが遅刻するという事は何かあったのだろうか。連絡を入れようと携帯電話を取り出すが、黒さんが携帯電話を持っていない事を思い出した。待つしかない、そう腹を決めて二十分ほどしたところ、なにやら視線を感じた。

「……」

 見たところ小学生か。少し灰色がかった髪に青いリボンを付け、服装は黒を基調とし白いフリルがついている。例えるならば西洋人形といったところだろうか。もちろん知り合いではない。

「……」

 僕が彼女を見ても、彼女は視線を外さない。それどころか目を細めてさらに僕の顔をしっかり見ようとしている。少しツリ目で、同学年の男子を泣かせていそうな感じもする。

 もしかしたら顔に何かついてたかな? と思い頬をかいてみると、その少女は手をポンと叩き「納得した!」と言わんばかりの顔つきで僕の方へと歩いて来た。

「えーっと……何か用かな?」

 少女は僕の足元まで来ると、じっと僕を見上げてさらに何か確認しようとしている。

 十秒くらいにらめっこしていたか。少女は胸元から眼鏡を取り出してかけ、僕の顔を睨みつけるように見た。

 さらに十秒くらいにらめっこを続けると、突然に少女は表情をふにゃりとくずし、口を開いた。

「にーちゃ、見つけた」

「へっ?」

 その言葉と同時に胸に感じる衝撃、少女が僕にぶつかってきたのだ。いや、むしろ抱きついて来たといったほうが正しいか。

「ねーちゃ、今日は来れないって。熱だした」

「ねーちゃって……もしかして黒さん?」

「うん。黒ねーちゃ」

 少し屈んで少女と話しやすい態勢にする。ちょうど僕の肩の横に少女の顔があるといった形だ。

 黒さんが熱を出してしまって、連絡手段もないから妹さんをよこしたって事なのかな。

「えーっと……名前は?」

「灰色だよ」

「そっか。灰色ちゃん、伝えてくれてありがとね」

 そう言うと灰色ちゃんは顔を赤くし、僕の肩のくぼみに顔をぱこっとはめるようにした。

pencil_1338.jpg

「にーちゃ、アメ」

「はいはい。すいません、あんず飴二つ下さい」

 折角だからと灰色ちゃんとお参りをする事にしたのだが、これが結構大変だという事に気がついた。

 灰色ちゃんは好奇心旺盛で、目につく物なんでも飛びついてしまう。黒さんも大変なんだろうな……

「べたべた」

「あぁ、直接触っちゃったのか。ハンカチ持ってきてないしな……手洗い行こうか」

「えいやっ」

「うわっ!?」

「へへ、にーちゃもべたべた」

 少し屈んだ僕の頬を小さな手で挟みこむようにされる。とても嬉しそうな顔しているので怒るに怒れない。

 手洗いを済ませ、境内の奥に進むと何やら人だかりが出来ていた。

 すぐさま駆けだそうとする灰色ちゃんの手を掴む。ここで迷子になられたら凄い困るし、後で黒さんに何を言われるかわからない。顔を膨れさせた灰色ちゃんをなだめて人だかりへと近づく。

「獅子舞だね」

「うー、見たいー」

「ちょっと前の方には行けなそうだね。抱き上げようか?」

「にーちゃ、肩車」

「えぇ?」

「かたぐるまぁー」

 ただでさえ目につくゴシックな服装の灰色ちゃん。今までもかなり好奇の視線に晒されている。これ以上目立つのは嫌なんだけど……

「がだぐるばぁー」

「わ、わかった。それじゃ、はい」 

 泣く子と地頭には勝てぬ。国語が得意でない僕でもそんなことわざが頭に浮かんだ。

 寝てしまった灰色ちゃんを背負い、黒さんの家へと向かう。

 黒さんとお参りに行けなかったのは残念だけど、新しい体験も出来たからよかったのかなとも思う。

 インターフォンを押すと黒さんが出た。熱は下がったのかな。

 ドアを開けた黒さんは僕の背中の灰色ちゃんを見て、信じられないといった表情を見せた。

「なんで……灰色が!?」

「へ? 黒さんが灰色ちゃんに伝言頼んだんじゃ……」

「ま、まぁいいわ……とりあえず中に入って」

 応接間に通された僕は灰色ちゃんをソファーに横たわらせて、その隣に座る。

 黒さんがお茶を入れてくると同時に、灰色ちゃんがゆっくりと起き上がった。少しぼーっとしていたけれど、目の前に置かれたお茶を飲むと覚醒したようだ。

「突然出かけたと思ったら色無と一緒に帰ってくるし……何があったの?」

「ねーちゃ、今日出かけるって言ってた。悔しそうだったから、たぶん誰かと約束してたんだと思った」

「別に悔しそうにだなんて……」

 ちらりと僕を見る黒さん。慌ててお茶を飲み、気づいていないフリをする。そう、別に僕と黒さんは恋人関係でもなんでもない、ただのクラスメイトだ。意識する事なんてない。

「私は色無と会うとは言ってなかったし、第一に灰色も色無の顔知らなかったはずなのに……」

「にーちゃの顔、知ってた」

「え?」

 黒さんは驚いた表情を見せ、自分を落ち着かせる為にかお茶を飲む。

「にーちゃの写真みた。ねーちゃがいつも持ってるやつ」

 僕と黒さんは盛大にお茶を噴き出した。


灰「こたつでみかんはもう古い!」

男「え……今まさに食べてるのに……」

灰「いまどきはこたつで雪見大福だ!!」

男「んー……まあ火照った体でアイスってのもいいけど……やっぱりみかんじゃない?」

灰「みかんは皮むくのがめんどくさい!」

男「どれだけ楽したいんだよ……」

灰「手が黄色くなる!」

男「わかったわかった……(むきむき)……ほら」

灰「(ぱくっ)……うむ、 美味でごじゃります」

男「はいよ」

灰「むぐむぐ……うん、毎回こうしてくれるならこたつでみかんは文化であると認めようぞ」

男「はいはい……。まだ食うか?」

灰「もちろん」


無(こたつで本を読んでいる)

灰(こたつに潜りながらゲーム中)

無「なぁ、灰」

灰「んー? 何ー?」

無「灰って、どうして勉強をしなくてもできるんだ?」

灰「んー。わかんない」

無「そっか。でも頭がいいってのはいいよな」

灰「そーでもないよー?」

無「え。……どういうことだ?」

灰「『人間は努力をしなければ成長しない』。だから、私は全然成長しない」

無「……灰」

灰「だから、私はゲームが好きなんだけどね。ほら、ゲームは地道な努力が必要だから(笑)」

無「そっか。でもゲームばかりはまっているとニートになるぞ?」

灰「……色無。NEETの略さない呼びかたって知ってる?」

無「? NEETは造語じゃなかったのか?」

灰「『Not in Education Employment or Training』の略。『雇用されておらず、教育課程中でもなく、職業訓練中でもない』って意味」

無「そうなのか……初めて知った」

灰「だから、私がニートになる心配は必要ないよ」

無「へ? どうして?」

灰「(笑顔で)だって、今までと同じように、色無の世話になるんだから」

無「……」

灰「……」

無「……灰らしいけど、恥ずかしくないか?」

灰「……お姉ちゃんとかの真似してみたけど、さすがに」

黒「……あとで覚えてなさい、灰」

空「『など』って、私も含まれるのかな?」

青「間違いなく、空もね……黒、手伝うわ」


無「ああ……今すぐ俺に羽が生えてるくらいに可憐な美少女が降りてこないだろうか?」

灰「じー……」

無「……なんだよ」

灰「現実逃避は勝手だけど犯罪者にはならないようにね」

無「……!ちくしょう!こんなに言われて……クヤシイ! ってか勝手に部屋上がってきてゲームしてる奴に言われたかねぇ!」

灰「ゲームは目に見える。妄想は見えない。この違いだよ。わかったかねワトソン君」

無「おのれ……!俺のまわりはこんなのばっかか……!」

灰「あたしゃ天使にゃなれないけどずっとそばにいるくらいはできるよ」

無「……そうかい、ありがとよ」

灰「……ん」


灰「色無〜……」

男「おんぶはもう……まぁいいか」

灰「……やったね。よいしょっと」

男「……悲しいかな、背中に何も当たらない」

灰「お姉ちゃんに密告するぞバカエロ無し」

男「おんぶしてもらってる分際でなぜそんな強気な発言が飛び出すのか……」

灰「いいから歩け〜」

男「はいはい」

灰「……」

男「……」

灰「……」

男「……」

灰「……あったほうがいいの?」(ボソッ

男「……ん?何か言った?」

灰「……別に。いいからほらちゃっちゃと歩くー」

男「歩いてるだろ……」


話し合ったってわかりっこない。所詮人間なんてそんなもんだ。

うざったい。群れるな。馬鹿みたいに笑うな。

……そんなことばっかり考えてた。

分かり合えないなら話す必要もない。分かってくれる人がどこかにいるんだから。その人を待つだけ。

でも、いくら待ったってそんな人は現れなかった。そうだよね、会話しないんだもん。同じ考えを持ってたって、口にしなきゃ気付くことも出来ない。

どうでもいい。本当にどうでもいい。どうでもいい授業。どうでもいい友人関係。毎日が退屈だった。

思ったら最後、もう全てがどうでもよくなった。歩くのも面倒。

終わらない無限思考の中に入り込んできたのは、あなたの声だった。

「帰らないの?」

……また誰か男が寄ってきた。応対するのも面倒。こんなのでも結構男子に人気があるらしい。

答えなきゃ。……あれ?なんで?別に無視したって……まぁいいか。

「……歩くのめんどくさい」

「そんな理由ですか……」

飽きれてる飽きれてる。さぁさっさと帰れ。

「じゃあさ、一緒に帰ろうよ」

うるさい。下心が見え見えなんだよ。

「……おんぶしてくれたらね」

「しょうがないなぁ……ほら、早く」

……あ、これは逆効果だったんじゃないか?男は体が密着するのが好きらしいし……ふぅ、まぁどうでもいいか。心拍数でも計って下心あるのを確認しようかな。

結局、寮にたどり着いてもその男の鼓動が早まることはなかった。坂道を登ったときを除いて。

下心のない男なんて初めてだった。っていうかおんぶしてくれた男も初めて。ろくに喋ったこともないのに……どうして?

後で、最近新しく寮に来た人だとお姉ちゃんから聞いた。

「あとよろしくね〜」

「あ、ずるいぞ自分だけ!」

「あのこと、言っちゃっていいのかな」

「……すみませんでした」

「よろしい。あとは任せたぞ」

「くっそー……誰に似てあんな性格になったんだ。昔はもっと可愛かったのに……。……いや、やっぱりあれはあれでどうかと」

「ん〜?」

「いえ、何も。働かせていただきます」

「よきにはからえ」

こんな性格も、昔は出せなかった。みんなとも仲が良くはなかった。

今がこんなに楽しいのは……全部色無のおかげなんだよ?

ちゃんと私に接してくれたのは色無だけだったんだよ?

「色無ぃ」

「なんだよ?俺はいま忙しいの。誰かさんのおかげで」

「……ありがと」

「お礼言うぐらいなら一緒に掃除してくれよ……」

「そうじゃなくて……ん……やっぱいい。ほら、早く終わらせないと黄緑さんに怒られちゃうよ」

「だから手伝えっての」

「やだ」


灰「たまにはまっとうな人間らしい生活をしろとお姉様に怒られた」

男「いいことじゃないか。で?」

灰「しかしいきなり言われても、そんなエネルギーがない」

男「……納得してしまいそうな自分がいるんですが」

灰「というワケで、エネルギーをもらいにきた」

男「は?言っておくが食べ物なんてないぞ」

灰「そんなのいらない。 んー」(チュ

男「!?」

灰「んー……」

黒「——ちょっと色無ー、灰色知らな……」

pencil_1381.jpg

灰「……ぷはッ。 あ、お姉様」

黒「なッ……あ、ああ、アンタは今何をしてたのッ!?」

灰「お姉様に言われたことを守るべく、ちょっと活力を取らねばと思って」

黒「それがどうして色無とキスすることになるワケ!?」

灰「お姉様は色無の為にあれこれ頑張ってますよね。つまり、色無は頑張りの源。ということでそれを摂取すれば……」

黒「よっくもまぁそんな無茶苦茶な理屈を……!」

灰「こうしてお姉様がお怒りになり、そのお怒りで私は動かざるをえなくなると考えたワケです」

黒「……そう。そーお……なるほどね、確かにその読みは当たってるわ」

男「お、おい黒!待てまて落ち着けって!尋常じゃなく怖いから!」

黒「灰色、アナタは計算ずくでここまでやったんでしょ?じゃあ私が何しようとも文句はないわよね……」

灰「もちろん」

黒「なら、さっさとそこをどきなさい。そして私のほとぼりが冷めるまでどこにでも行ってなさい」

男「え?そ、そんだけなの?」

灰「わかりました。じゃあ、私は部屋に戻ります」(バタン

黒「ふふふふふ……灰色、アナタの好きにさせるものですか……色無は、渡さない……」

男「え、ちょ黒こわ——ぁ——ッ!」

灰(計算通り。 これで自由は得たものの……やっぱり釈然としないなぁ。次は舌を入れるくらいしないとワリに合わないや)


 思えば、昔から空は少しずれてたよ。

 高校の入学試験

空「ねぇ、灰ちゃん」

灰「何?」

空「みんな受かればいいのにね」

灰「それじゃ、試験の意味ないでしょ……」

空「あ、そっか」

 合間の休憩

空「灰ちゃん!」

灰「……何?」

空「もう友達できちゃったよ!」

灰「受からなきゃ意味ないでしょ……」

空「……そうかな?」

灰「というか、今日何しに来たの?」

空「……あ、試験受けに来たんだっけ」

灰「……」

灰「……とまぁ、こんな感じのヤツなんだよねぇ……なんか憎めないというかね……」

空「灰ちゃーん! はやーくー!」

灰「はいはい、すぐ行くって」

 こんなヤツだから、仲良くできるんだけどね。

空「灰ちゃん、太った?」

灰「あ? ボッコボコにしてやんよ」


灰「青春は甘酸っぱいとよく言うけど……どうなのかなぁ」

黒「さぁ……っていうかあれじゃない?喩えじゃないの?」

灰「いや……先人のお言葉だよ?きっと甘酸っぱいに決まってるのさ!調査開始!」

黒「まったくどうでもいいことに熱くなるわね……」

青「ちょ、ちょっと多く作りすぎちゃっただけなんだから!」

男「はいはい。ありがとな!」

青「……だから別にお礼なんて……」

灰「今だぁぁ!青ぅ!甘酸っぱい!?甘酸っぱい!?」

青「え?いや、えーと……」

男「うわ!?どっから出てきたんだよ!?なぜスライディング!?」

紫「ちっちゃいゆーなぁ!」

男「言ってないだろ!むしろ褒めただけ……って痛い痛い!」

灰「甘酸っぱい!?今甘酸っぱい!?」

男「またお前か……」

男「……俺はすごく可愛いと思うよ?赤」

赤「……へ?でもほら、ボク全然女の子っぽくないし……それにそれに……」

男「別に無理に変わる必要はないよ。ほら、だって俺は走ってる赤とかすごい好きだし」

赤「……え……」

灰「ズサァァァ!!今甘酸っぱい!?今のはさすがに甘酸っぱかったでしょ!?」

灰「……なんかみんな怒ってる……どうして?」

黒「同じことをしてあげようかしら?」


男「おーい、ナマケモノー。起きれー」

灰「あ、ちょうどいい抱き枕。てやッ!」

男「ぅぉっ!?」

灰「ぐー」

男(コイツ、深海魚かなんかの類じゃなかろうか……)

灰「食べてみる?アンコウみたくおいしいかもよ」

男「心を読むな!」

灰「食べたいのならご自由に。初物は縁起がいいって噂だよ」

男「正月じゃないんだか……待てや。オマエ、今自分で何言ったかわかってる?」

灰「んーん。寝惚けてるから」

男「……あっそ」

灰(うん、心臓ばくばくいっていい感じに熱があがってきたね。ぬくいぬくい)


 色無の部屋のコタツにて

灰「色無〜! そこのゴミ箱取って」

無「自分で取れよ」

灰「出るの面倒くさい。それならミカンの皮、ここに捨てちゃうよ」

無「しょうがないなぁ。とってやるよ。ほれ」

灰「ありがと。ぽい」

 食堂にて

灰「焼魚は好きなんだけど骨取るのが面倒ね。色無〜、骨取って」

無「おいおい。俺も熱いうちに魚食べたいんだけど」

灰「頭から食べちゃおうかな?」

無「全くお前は怠け者だなぁ。ほれ」

灰「ありがと。もぐもぐ」

 脱衣室にて

灰「色無〜! 色無〜! 早く来て〜!」

無「どうした? 覗き魔でも出たのか!?」

灰「手、後ろに回すの面倒くさい。ブラのホック外して」

無「それはダメだ」

灰「えぇ〜っ、どうして?」

無「俺の手が後ろに回っちまう」

灰「せっかく人が好意で、あ、いたたた、お姉ちゃん。痛い痛い!」

黒「童貞をからかうんじゃないの!まったくあんたって子は……」


灰「ときに色無、知ってるますか?」

男「日本語おかしいぞ」

灰「恵方巻きの習慣は誰が作ったか」

男「え、あれって伝統行事じゃなかったの?」

灰「伝統行事は豆まきだけ。恵方巻きにはあれがあるのよ、陰謀」

男「寿司屋の?」

灰「みんなそう思うけど、違うんだな〜。実は海苔屋の陰謀なんでるす」

男「だから日本語おかしいぞ……。海苔屋かー。確かに巻物だと海苔いっぱい使うもんなー」

灰「うん」

男「……」

灰「……」

男「……で、この汚い部屋は誰の陰謀?」

灰「私の陰謀」

男「はぁ……なんで俺が片付けなきゃならないんだよ……」

灰「掃除してくれてる間は色無私が独り占めでしょ?」

男「はいはい」

灰「……同じセリフを水色に言われたら顔真っ赤にするくせに……」

男「水色ちゃんはなかなか言わないだろそういうこと。だからだよ」

灰「私だってなかなか言わないよ!」

男「はいはい。いやぁ照れるなー嬉しいなー」

灰「むー……許せん……」


男「おはよ」

黒「おはよう。なにやら腕に面白いものをつけてるじゃない」

灰「Zzz」

男「もう慣れた。軽いしあったかいし、寒い冬には便利だからそのままにしてある」

黒「へぇ。まるでコアラね。食っちゃ寝食っちゃ寝してるところもそっくり」

男「そうだな。さて、起きれ灰色。俺メシ食うから」

灰「んー……」

黒「色無に相手にされなくなってるわね、貴女」

灰「それがそうでもないよ。それに過剰な反応しなくなった分、くっついていられるし」

黒「ぐっ……」

灰「私はコアラで結構。だからユーカリの木からは離れないのです」

黒「……」

灰「そして人間にとっちゃ毒のあるユーカリですが、コアラには平気なのです。むしろ、毒を美味しいとさえ感じてるかも」

黒「毒……ふん。その毒、この寮にいる子ならたぶん誰でも大丈夫なんじゃないかしらね」

灰「おや?お姉様は毒が何を指しているのかお分かりで?」

黒「灰の人となりを鑑みた上で、わかっているつもりだけど」

灰「ありゃま。私はそんなイケナイ子に見られてたんだ」

黒「今さらよ、バカ者」

橙「今の会話を立ち聞きしてしまったワケですが……」

青「色無には毒があるの?しかも私たちなら大丈夫? なんか、よくわかんないんだけど」

橙「あ、あはは……(青ちゃんに私の推測をしゃべったら、射殺体ができちゃうっての)」


男「夜中にごめん。ホントごめん。助けて」

灰「……それじゃあ事情を聞こうか」

男「部屋で宿題してたらストーブの灯油が切れました。寒くてダメです。死にそうです」

灰「はぁ。私のところに来たのはなんで?」

男「こんな時間まで起きてるの、オマエくらいしかいないかと思って」

灰「オレンジと朱色さんも起きてるけど」

男「あ、そうなんだ。うー、じゃあオマエに断られたら頼ってみる」

灰「んー、それもなんかヤだからこっちおいで。あったかいよ」

男「おぉー、ミニとはいえ立派なこたつ。あぁこれ超あったけぇ……」

灰「色無、そこ邪魔。画面見えない」

男「わ、ごめん。今どくから」

灰「ていうかどこにいても頭が邪魔になるんだよ。わかるっしょ?」

男「だったらどうすりゃいいのさ?」

灰「答えは簡単。私の後ろに来ればいい」

男「……はぁ?」

灰「二人羽織の要領でやれば邪魔にならないっしょ?ついでにあったかいし、ほら、いいことづくめ」

男「それってどう考えても俺が宿題できないよね」

灰「あぁ、勃っちゃったらちゃんと責任取ったげるよ?」

男「そういう意味じゃねーよ」

男「——やってみると、案外やれるもんだな。オマエちっちゃいし」

灰「ところがどっこい。こう見えて、胸はお姉様よりおっきいんだよ。この前の寮内検査でも無事成長が確認されました」

男「……いや、寮内検査ってなんだよ」

灰「あれれー?聞きたいのはそっちなのかなー?」

男「ば、あ、当たり前だろが!」

灰「ほーらほーら宿題進んでないよー」

男「てめぇのせいだろがーッ!」


空「暇だね」

灰「そうだね」

空「何かおもしろいことある?」

灰「……思いつかないから、色無の部屋に行こう」

空「そうしよう」

空「お邪魔しまーす」

無「……」

灰「熟睡してるよ……」

空「先輩の寝顔かわいいね」

灰「なんかイタズラしたくなるね」

空「おでこに肉って書いとく?」

灰「んー……それじゃあありきたりだよ……」

空「じゃあ……鯖とか?」

灰「……やっぱり空ってズレてるよね」

空「そ、そんなことないよ!」

灰「なんか、色無の寝顔を見てたら眠くなってきちゃったよ……」

空「確かに……灰ちゃん、おやすみなさーい……」

灰「え?……色無の布団で寝るの?!ちょっと空!!……もう寝てるよ……」

灰「空が寝てるなら私だって……大丈夫だよね……でも嫌われたらどうしよう……空はともかく私はなぁ……」←普段はできるのに意識するとできないタイプ

灰「でも……このままじゃ先越されちゃうな……」

空「……お姉ちゃん、ぬか漬けは反則だよぅ……すーすー」

灰「どんな夢見てるの……」


男「ぐー……ぐー……」

灰「……ろなし……色無……」

男「ぐー……ん、んー?」

灰「色無……色無……」

男「……灰色?灰色なのか?」

灰「色無……色無……」

男「な、なんだこの声!どこからするんだ?」

灰「ここだよ」(にゅっ

男「うわぁ!ベッドの下って……どこの都市伝説だよ……」

灰「結構寒かったし」

男「そりゃあ直に床と接してるからな……ってベッドの下……ベッドの下?」

灰「ん?なに?」

男「い、いや……なんでも」

灰「あぁ、ベッドの下のいかがわしい本なら全部縛ってトイレットペーパーと交換しといたよ」

男「あ、やっぱりそうっすか^^って待て、あれ古紙じゃないから回収には出せないだろ」

灰「回収のおじさんが個人的に交換してくれたよ」

男「いいのかそんなんで……」

灰「ってなわけでおやすみー。あぁぬくぬく……」

男「当然のように入ってくるなって……うわ、お前ほんと冷たいじゃん。毎度毎度バカなことするなぁ」

灰「ほら、早く暖めるべきではなくて?色無、抱いて頂戴」

男「はいはい……」ぎゅ

灰「うわ……ほんとにやった……」

男「何で照れてんだよ。お前が言ったんだろうが」

灰「う……うむ。褒美じゃ、受け取れ」

男「ペロッ……これは……チロルチョコ!」

灰「軽めにしといた。重いのはみんなから大量にもらってるだろうから」

男「やったね、ありがとう灰色。もらえると思ってなかったから嬉しいよ」

灰「よし、それをわらわに口移すのじゃ」

男「はぁ?」

灰「今唐突に甘いものが食べたくなった」

男「口移しって……まったくしょうがないなぁ。パク……ん」

灰「『ん』じゃない!だからほんとにやろうとするな!訴えるぞ」

男「照れるぐらいなら最初から言うなよ……」


男「灰色!ちょ、凄!!」
灰「!!っもう、早すぎだよぉ」
男「俺に言われてもこればっかりはどうしようも……」

橙「これは何やら怪しい会話……けしからん!」
黒「けしからんのはあなたじゃないの。なんでこんな会話で変態なこと想像してんのよ。今のはこうよ」
男『(灰色にやらされているドラクエのレベル上げ中にメタルスライムが4匹出てきて)灰色!ちょ、凄!!』
灰『!!っもう、(逃げるの)早すぎだよぉ』
男『俺に言われてもこればっかりはどうしようも……』
橙「私見てくる!」

男「かませぇぇ!!メタル切りぃぃ!!」
灰「……当たったぁ!!」

橙「……黒、あんた凄いわ」
黒「これぐらい、あなたもすぐわかるようになるわ」


灰「色無、かくれんぼしよう」
男「いきなりどうしたんだよ?」
灰「いいから。さ、目ぇ瞑って数数えて!」
男「?いーち……にーぃ……」

男「きゅーう……じゅう!もおいいかーい?」
灰「もーいいよー!」
男「ふぅ、さてと……いないだろうけど一応このへんも見とくか……ってあれ?見つけちゃった」
灰「見つかっちゃった……」
男「ん?お前何がしたかったんだ?灰色なら本気出したら一週間とか平気で隠れられそうな気がするけど……」
灰「……やっぱり」
男「?」
灰「かくれんぼ、体は隠せても、恋する気持ちは隠せないんだね」
男「……」
灰「……」
男「……」
灰「……」

青(あれは!!私のポエムの一節!!なんで灰色が!?)


灰「あ……あはは、あはははははははははははははッ!!」

男「うおッ!?どど、どうした!?」

灰「見てよ色無ッ!ほら!画面ッ!」

男「これ……メモリーカード?あれ、でも中身がないぞ?」

灰「そう!そしてこれは紛れもなく私のメモリーカード!!つまり何が言いたいか、おわかりかな!?」

男「……おきのどくですが メモリーカードのデータは きえてしまいました」

灰「その通りだよ!これを笑わずして何を笑う!? あはははははは!私の時の結晶は闇へと消えた!!」

男「あー……黒はたぶん軽くあしらうだろうけど、俺はそのつらさ、わかるつもり」

灰「あははは……」

男「これは代わりも効かないし慰めようもない。けどさ、少なくとも無理して笑うのはやめろと言える」

灰「はは……」

男「たかがゲーム、されどゲーム。手塩にかけたモノが消えるのは悲しいよ。だから笑うんじゃなくて、泣けばいい」

灰「……ぅ、ぅ」

男「ほら、いつもの毛布と布団。これ被って泣けば、外には漏れないから」

灰「……ぅ、ぐすっ、えぐ……うあぁぁ、ぁぁ……」

男「よしよし、つらかったな」(ポンポン

灰「うぅ、ひぐっ……ふとん越しじゃなくて、ちゃんと頭さわって……」

男「はいはい」


無「灰色さん……」

灰「なんだね色無君?」

無「ここは私の部屋なんですが……」

灰「ファイナルアンサー?」

無「ファイナルアンサー!」

灰「正解!」

無「そして、それは私の布団なんですが……」

灰「ファイナルアンサー?」

無「ファイナルアンサー!」

灰「正解!」

無「……」

灰「それじゃオヤスミ」

灰(毎日少しずつ部屋や布団に私の匂いを染み込ませる作戦には気付かれていないようだね)


灰「にゃー」

男「ん……う? はれ、なんでオマエがここに?ふわぁぁぁあぁ……」

灰「飼い猫はおかあさんのミルクを思い出して、毛布をぐにぐに揉むことがあるのを知ってるかにゃ?」

男「……あれってそういう意味があったんだ。で、なに?」

灰「色無のネコはお腹が空いたのでミルクをもらいにきたのにゃ」

男「はい……?」

灰「というワケで、大人しくミルクよこせにゃ」

グニグニ

男「うひゃぁぁぉ!? ちょちょ、ちょっと待て待てまって」

灰「ごろごろ……」

男「や、やめ————」

男「うああぁぁッー!!! はぁ、ぁ……っ、ゆ、夢……か。 はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……た、助かった」

男「おはよーっす」

黒「あら、おはよう」

灰「おー。色無、おはよう。ねぇねぇ、昨日はいい夢見れた?」

男「ッ——!? ななな、なんで、オマエ」

灰「んー?」

男「あ、アレは夢だった……夢だったんだぁぁあぁぁぁッ!!!」

ダッ

灰「……どうしちゃったんだろ、色無」

黒「またアンタがなんかしたんじゃないの?」

灰「失礼な。私は昔ながらのロマンをちょっと試しただけですよーだ」

黒「ロマン?」

灰「枕の下に写真を入れておくと、その人の夢が見られるっていうの。いったい夢の中で私は何をしてたんだろ?」

黒「まぁ、あの慌てぶりから察するに、ロクなもんじゃないと思うけどね……」

灰「ロクでもない色無の夢……ぁぅ、なんか、想像しないほうがいいかも」

黒「……想像しないの。はしたない」

灰「あれー、そういうお姉様も顔が赤——ご、ごめんなさい!!今のはなかったことにしてくださ、いやああああぁッー!!」


「電話ボックス……減ったなぁ」

 色無は歩みを進めながら電源の切れた携帯電話をうらめしそうに見つめる。

 色無は昨晩充電するのを忘れ、電話は家を出たところですぐに重電マークが点灯させた。

 幸い手帳に電話番号を控えてあったため、待ち合わせの遅刻の連絡は出来る。

「黒さん、怒るぞ……」

 黒の家は携帯電話を持つ事を認めていない。それにもかかわらず黒は色無と連絡を取りたいとこっそりと契約した。

 それなのに……色無は自分を恥じた。

 ようやく電話ボックスを見つけ中に入る。財布をさがすと小銭やカードは無く百円玉のみ。携帯電話にかけるんだからいいだろうと投入した時、電話ボックスの扉が開いた。

「にーちゃ、見つけた」

「灰色ちゃん!? なんでここに!?」

「何してるの?」

 ゴシックな服を身につけた少女と普通の身なりの青年が一つの電話ボックスの中。なんとも珍妙な風景。

「いや、黒さんに電……」

「でん?」

 そこまで声に出しかけて色無は踏みとどまる。黒が携帯電話を持っている事は秘密なのだ。

「ねーちゃにでん……でん……でんわ!」

 灰色が狭いボックス内で大声を出す。声の大きさと指摘された事により色無は二重に驚いた。

「かけてあげるー!」

「ま、待って!」

 灰色は色無の言う事を気にせず、色無の身体をよじのぼり電話番号を押す。灰色の身体を支えなくてはいけない態勢の色無はその動きを止める事が出来ない。

 五回のコールを聞いた所で、受話器のあがる音がした。

「……はい」

「え、あ、ええええ、色無と言いますが、黒さんは、いらっしゃいますか?」

「黒なら出かけているが、何の用事だね?」

「えー……」

 黒の父親に繋がった電話、そして話す事の出来ない用事。色無は足場が崩れ落ちていくような感覚を味わっていた。

「とーちゃ?」

「灰色? 灰色か?」

 灰色が受話器のそばで喋る。色無は希望の光を感じ取った。受話器を灰色と反対側に持ち変え、黒の父親に話し掛ける。

「そうです。灰色ちゃんです。偶然みかけたのでもしかしたら迷子かなと思いまして!」

「そうか、それはありがたい。家はわかるか? できれば連れて来てもらいたい」

「迷子じゃないよー」

「わかりました! すぐに!」

 受話器を置き、がくりと肩をおろす色無。灰色はのぼった時のように色無から降りる。

「迷子じゃないのにー」

「ごめん、あとで好きな物買ってあげるから。ね?」

「すこんぶ」

「酢昆布? うん、わかった。それじゃ帰ろうか」

 色無が顔に疲労をにじませながら電話ボックスのドアを開けようとすると、手も触れていないのに自然にドアが開いた。

「色無……何やってるの?」

 そこには漆黒の髪を揺らす鬼の姿があった。


「色無、ちょっとだけ真面目に聞いて」

灰色にしては珍しくはっきりとした物言いだった。

「あの……ね?まぁわかってるとは思うけど……一応ちゃんと言っとくよ」

照れ隠しなのか、指をくねくねと絡ませている。

「好き。……かもしれない」

うつむき加減に色無の目を見ずに言う。その表情は今にも蒸発しそうなくらい真っ赤だ。

「……あくまで可能性の一部なんですか」

「くそぉ……意地悪」

灰色に対して色無が優位的な立場に立てることなんてそうそうない。この期を逃すまいとからかってやる色無。

「ちゃんと言ってよ。俺だってちゃんと答えたいしさ」

「もう……わかった」

息を大きく吸い込んで、軽く吐き出して、

「好き。色無のこと、好き」

顔を上げてはいるが、それでも色無と目を合わせようとはしなかった。面白いほど目が泳いでいる。やはり灰色はこういう真剣な場面に慣れていないのだろう。

……っと、いつまでも遊んでちゃいられないな。そろそろこちらも本気で答えてあげないと。

「うん、ありがと。俺も好きだ。灰色のこと」

色無を見つめる灰色。普段ならやる気のないうつろな瞳が、少し潤んでいるように見えるのは気のせいではないだろう。

「……本当?それ本当に言ってる?」

「あぁ、本当だ」

「じゃあ他のみんなはどうしちゃうの?もう前みたいには戻れないんだよ?」

「戻れなくてもいいよ。それと引き換えに、灰色と一緒にいれるなら」

灰色は下を向いて服の袖で涙をぬぐい、

「……ふっ、だろうね。ロリコンだもんねー色無」

「そういうこと言う?」

「言うよ。このバカエロ無」

「煩悩だらけですみませんね」

出てくる言葉とは裏腹に、灰色はこれ以上ない笑顔を振りまいていた。

「近う寄れ、色無」

「ははぁ」

「……これから毎朝私に味噌汁を作るがいい」

「それ立場逆じゃね?」

「一度言ってみたかった」

「……しょうがないな。味噌汁ぐらい作ってやるよ、姫様」

「良きに計らえ」

ふふふ、と二人は笑う。

「んーと……色無。はい」

色無にむかって両腕を差し出す。

「なに?」

「おんぶ」


男「……なんだこれ?」

黒「どうかしたの?」

男「いや、灰色がな、二年の教科書見せて欲しいっていうから一日貸してやったんだけど……」

黒「たまにはあの子もちゃんと勉強するのね」

男「返ってきた教科書にこれが……」

黒「……」

男「なぁ、これなんの暗号だと思う?灰色に限って落書きってことはないだろうし……でもちょっと人間っぽい感じもするんだ」

黒「これは……」

男「なんかわかったのか、黒?」

黒「……いえ、別に」

男「そっか。……なんだろう、文字のようにも見えるんだよなぁ……」

灰「……」

黒「……元気出しなさい」

灰「……」

黒「なんであんたは昔っから絵の才能だけはないのかしらね……」

灰「……」


白「あぅー……」

水「うぅぅ……」

無「さーて、どういうことか説明してくれるかなー? は・い・い・ろ・さんッ!」

灰「ぎにゃああッ!! か、肩はだめぇすごく凝ってるからぁいだだだだぁッ!!」

無「凝ってるんならほぐさなきゃー、ってやる前に事情を聞こうかね」

灰「あぁぁ、いったたた……え、えーとですね。飲み物取りにリビングまで行ったら妹組+白でホラー見てたのです」

無「ふむ」

灰「それでこう、あまりに熱中してたし私も妹組なのにハブられてたりでね、うん」

無「……で?」

灰「近くのソファにあったお姉様の黒いひざ掛けを頭から被って、こう、背後からそっと肩に手を……」

無「あー。それで怖くなったからいっしょに寝てくれと、そういうことでいい?」

灰「いいんじゃないでしょーか」

無「とりあえずハブられた点に同情の余地ありということで、これ以上はお咎めなし。っていうか別にオマエたいして悪くないね、あはは」

灰「……ぶん殴っていい? お姉様直伝の寝起きによく効くボディブローがあるけど」

無「まぁ怒るな怒るな。で、ふたりだけど……あのさ、ふたりいっしょになって寝れば怖くないんじゃないかな?」

白「そ、そうかもしれないけど……でも、色無くんといっしょに寝ると、すごく安心できるから」

灰「え?」

水「……わ、わたしはその、白ちゃんからそれを聞いたし……白ちゃんがここに行くっていうから、その」

灰「ちょいまて色無。白と寝たことがあるってどういうことさね」

無「ん? あぁ、白にお願いされていっしょに寝たんだよ。風邪が長引いて寝込んだ時で、すごく不安だったらしくてさ。OK?」

灰「『——あぁ、白にお願いされていっしょに寝たんだよ』……うん。ばっちり録音OKです」

無「な、なぁッ!? お、おいッ!」

灰「これバラ撒かれたくなかったら、大人しく私らを寝させろい。こちとらいい加減に眠いんじゃ」

無「オマエなー……ん? 待てよ、なんでオマエまでここで寝るワケ? ……もしかして、オマエも怖くなったのか?」

灰「はっ。さて、どうだろね」

無「ほう、これは意外な弱点か?そーかそーか、ふーん」

灰「……このばかちんめ」


灰「色無ぃ……」

無「ん?どうした?」

灰「ねぇ、一緒にお風呂、入ろぉ?」

無「……酒臭い……」

灰「汗かいちゃってさ……早くすっきりしたいの〜」

無「よし、じゃあ入ろう」

灰「えっ!?」

無「すっきりしたいんだろ?その状態で一人じゃ危険だろうし、一緒に入ってやるよ」

灰「あ……うんそうなんだけど……でも……」

無「……なーんてな。お前本当は酔ってないだろ」

灰「……え?やだなぁいろらし、最初っから酔っぱらってなんからいってぇ……だからほら、お風呂入ろ?」

無「Tシャツの襟んとこ、濡れてるぞ。酒でもつけたんだろ?」

灰「……ちっ、ばれてたか」

無「灰色ともあろう者が酒に飲まれるわけないからな」

灰「よくわかっているではないか」

無「で、何がしたかったの?」

灰「いや……その……」

無「?」

灰「たまには……(私も普通に甘えたかったんだけどな)」

無「たまには?」

灰「たまには……」

無「?」

灰「……た、たま!そう、たまが一つしかないって噂を聞いたから確かめてやろうと思って!」

無「そんな噂どこで聞いたんだよ!?ちゃんと二つあるって!」

灰(私は紫みたいには……なれそうにないかもね)


黒「灰色ー、いいかげん起きなさーい」

灰「うーん……やだ」

黒「日曜だからってだらだらしていいっていう決まりはないの。ほら早く起きないと恐竜のゲームやらせないわよ」

灰「んー……しょうがないなぁ。うー……さぶい……」

黒「今日は晴れてるけど気温は低いわね」

灰「おこたおこた……よいしょ。……ってあれ?」

黒「こんないい天気なんだもの」

灰「こたつを干してしまうなんてぇ!こんな机だけ残されたってぇ!」

黒「ヒーターがあるじゃない」

灰「こたつを干してしまうなんてぇ!お姉ちゃんが私を殺す気でいたなんてぇ!」

黒「……っるさいわねぇ」

灰「こたつを干してしまうなんてぇ!」

黒「……」

灰「こたつを……グス、こたつを干してしまうなんてぇ!」

黒「何も泣くことないじゃないの……」

灰「こたつ……こたつぅ〜……ひぐっ」

黒「……もう、わかったわよ。ちょっと待ってなさい」

無「いや……なんで俺んとこに溜まるんだよお前は。こたつ貸してあげるから帰れよ……」

灰「やーだー絶対もう動かないー」

無「っていうかこれ、寝てても起きててもあんまり変わらないんじゃないのか、黒?」

黒「まあ一度起きたか起きてないか、ほとんど心理的なものね」

灰「あーぬくいぬくい……色無ぃ、みかん」

無「自分で取れよ……」

黒「……私の責任だわ。そろそろこの性格なんとかしないといけないわね」


男「あー疲れたぁ……」

灰「おー、お帰りぃ」

男「……当然のように俺の部屋にいるけど、これっておかしいよな?おかしいことだよな?」

灰「気にしない気にしない。布団は私めが自らの体温で暖めておきました故」

男「ご苦労」

灰「……頑張るねぇ、バイト。最近夜色無いないからつまんないよ」

男「だって頑張らないとな……もう三月だし……」

灰「もてる男は辛いねぇ」

男「そう思うならそこをどいてくれ。俺もう寝たいんだけど」

灰「……ん?あ、そう。ほれ」(ぽんぽん)

男「一緒に寝ろと?狭いっつーの。だいたい横で携帯ゲームやられたらかちゃかちゃ音が気になって眠れないって」

灰「わかった、じゃあ子守唄でも歌いながらゲームする」

男「何がわかったのそれ?」

灰「ねぇぇぇ〜〜むぅぅれぇぇぇええぇぇ」

男「こぶしをきかせるなこぶしを」

灰「ギザギザハートの♪」

男「こもりうたぁー♪じゃねぇよ!寝させてくれよ!」


ダダダダダダ……

男「ん?なんか騒がしいな?」

バンッ

灰「色無ぃ!学校行くよ!」

男「……はぁ?」

灰「学校行くよ!」

男「……大丈夫か、灰色?いま夜だぞ?12時過ぎだぞ?」

灰「わかってるよ!いいから行くよ!ほら!」

ぐいっ

男「……何?その手は」

灰「おんぶ!」

男「てめぇ……」

灰「早く!」

男「はいはい……ってなんで従ってるんだ俺」

灰「ほら!出発!」

男「わかったよ……でも何があったんだ?」

灰「ちょっと、そっちじゃないよ!窓から窓から!お姉ちゃんにばれでもしたら……」

男「だからどうしたんだっての?」

灰「……学校にゲームの充電器忘れてきた」

男「……お前なぁ」

黒「話は聞かせてもらったわ」

灰「お姉ちゃん!!」

黒「さ、帰るわよ」

灰「助けてぇ!私の今日12時間の努力の結晶がぁぁ!」

黒「あれだけ大きな音たてて騒いどいて私が気付かないとでも思ってるのかしら?」

灰「色無ぃ!一生のお願いだよぉ!」

黒「そのお願い、色無に使うのもう7回目よ」

男「……スリープ機能があるだろ……常識的に考えて……」


男「何も秋葉原まで行かなくたって……」

灰「何言ってんのさ。電器ものはここが一番安いんですよ」

男「まあなぁ。朱色さんからは10万しか渡されなかったもんなー」

灰「……あ、ほら。ここだよ、電車降りなきゃ」

男「おっと、ほんとだ。降りなきゃ降りなきゃー!……」

灰「……」

男「……」

灰「……」(ぐいっ

男「……やっぱおんぶしなきゃダメ?」

灰「ダメ」

男「朱色さん、お使いに出す人は選ばなきゃだめだよ……」

灰「私だって行きたくなかった……ただ寮に残ってたってだけでこんな目に会うなんて思ってなかったし温暖化っていったってまだ冬で寒いし動きたくないしごにょごにょ……」

男「あぁわかったわかった。っていうか疲れるのは俺だよな。確実に」

灰「さっさと歩く」

男「はいはい……。っていうかさ、思ったんだけど」

灰「……何?」

男「灰色って結構服のセンスいいな。今日の服すごく似合ってると思うよ」

灰「……」

男「……いや、普段寮での部屋着しか見てないからか?錯覚なのか?」

灰「……」すとっ

男「?なんで降りた?」

灰「……下心的なものを感じた」

男「下心も何も……まぁいいや、降りてくれるなら楽だし」

灰「……ん」

男「?」

灰「手。迷子になられたら困るから」


灰「じゃーん(ヒョコ)」

無「な! どうしたんだ灰、その格好……」

灰「証拠は押さえてある」

無「な、何のことかな……?」

灰「これだ!(ビシィッ!)」

無「そ、それはみみっ子ばかりを集めた特集誌『みみっ子大図鑑』! ど、どこでそれを……」

灰「そこのベッドの下」

無「ぬぐわぁぁぁあ! もう立ち直れない、社会復帰できない!」

灰「ふふふ、それで、どうかにゃ? 似合うかにゃ〜?」

無「いや、ちょっと違うな」

灰「えっ!?」

無「自由人な感じを装っているが灰の本質はご主人様にかわいがってもらえないと拗ねてしまうわんこだ。ということで灰はこれだな」

灰「え、え!? ちょっと……!?」

無「よし、できた」

灰「わふー」

無「似合ってる似合ってる」

灰「あ、あたしにこんなカッコさせるなんて……絶対許さないんだからね!」

無「しっぽ振ってるぞしっぽ」

灰「え、うそっ!?」

無「しっぽなんかついてないだろ」

灰「ぐ……憶えてろぉ……」

青「まったく、男って馬鹿ね……」

空「あれ、お姉ちゃんそれ猫の耳?」

青「にゃー」


男「さーてテレビもつまらんし寝るかな〜……ってなんでまたこいつは俺のベッドで」

灰「くー……くー……」

男「……」

灰「くー……」

男「静かに寝てれば十分可愛いのに……。変なこと考えつくからなぁ」

灰「くー……」

男「……」(灰色の鼻をつまむ)

灰「くー……く……ん゛……む゛……」

男「……おっと、死んじゃう死んじゃう」

灰「っぷは……くー……」

男「……すごいな、寝続けるのか」

灰「くー……ん……ぃろなし……」

男「……寝言?ふふ、可愛い奴」

灰「ふく……作用はない……はず」

男「ていっ!」(でこぴん)

灰「あ痛っ!……?何?なんなの?色無?あれ?あ、おはよう」

男「おはようじゃねぇよ!どんな夢見てんだよ!」

灰「夢……?あー……見てたかもしれないけどもう覚えてない……すごく楽しい夢だった気がする」

男「絶対俺悲惨だろ!」


男「なぁ、俺風邪ひいてんだけど……」

灰「……んー?まったく、この私に許可も取らずに何を……」

男「許可とかいるのかよ……まぁいいや、とにかくそこどいて?俺寝れないからさ」

灰「ほら……いつもなら無下に断るはずの灰色ちゃんが、風邪のせいで少し良心が痛んで譲歩しちゃうじゃないか!」

男「普段から譲歩してくれよ……」

灰「早く寝て!せっかくあっためたのに熱が逃げてく!」

男「はいはい……おぉ、あったかいなー」

灰「……よし」

男「よしじゃねぇよ。なんでお前も入ってくるんだよ」

灰「風邪の治し方、知ってる?」

男「出て行け」

灰「誰かにうつせばいいんだよ」

男「出て行け」

灰「……」

男「……」

灰「……」

男「……わかったよ。いいよ、一緒にいても。お前なりに心配してくれてるんだもんな」

灰「……え?いや今から自分の布団あっためんのがめんどいだけで……」

男「出て行け」







トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-10-21 (日) 05:08:50