色鉛筆男×女

『何上戸?』

青「えへへ〜、あかだいすきだよ〜♪」

赤「青……出来ればそれは素面の時に言ってくれ」

黒「ひくっ、ごめんね、わたししろくんのことほんとはだいすきなのにいっつもひどいこといっちゃって……」

白「だ、大丈夫だよ、僕全然気にしてないから。だからさ、泣き止んでよ」

桃「みどりくんきーてますかっ!?」

緑「あ、ああ、ちゃんと聞いている」

桃「らいたいれふねぇ、みどりくんはもっとかんじょーをあらわにすべきなのですよっ!」

緑「いや、そういうのはどうも苦手で……」

桃「にがてでもがんばるのっ!じゃないのももがふあんになっちゃうからだめなのっ!わかった!?」

緑「……善処する」


『元旦』

茶「あ、明けましておめでとう」

黄緑「明けましておめでとうございます」

茶「着物……似合うよ……」

黄緑「ありがとう茶色君。それじゃ行こう」

茶「やっぱり人沢山いるね」

黄緑「はぐれないないようにしなくちゃね。(ギュ)」

茶「え!ききき黄緑さん!」

黄緑「こうしないといつもはぐれちゃうじゃない?だから茶色君、ちゃんと握ってなきゃ嫌よ?」

茶「う、うん!」

黄緑「あ、次は私達の番ね。(チャリン~パンパン)ずーっと茶色君と一緒にいられますように」

茶「黄緑さん!」

黄緑「次は茶色君の番よ」

茶「(チャリン~パンパン)ぼぼぼぼ僕もずっと黄緑さんといつまでも一緒にいられます」

茶「よぉにぃ……ふぇ?」

ジリリリリリリリリ

茶「え?朝……?」

黄緑『茶色くーん!まだー?置いて行っちゃうよー?』

茶「ふぇえ!もうこんな時間だ!急がなきゃ!……なんの夢だったかなぁ」


「ねえ緑君」

「なんだ?」

「私を好きになったきっかけって何?」

「……どうしたんだ、急に」

「ううん。ちょっとだけ気になったんだ。やっぱり文化祭の?」

「……そう、だな。きっかけはそれなんだが最初は特に好きとかそういうのはなかった。意識するようになったのは桃が最初に図書室に来た時だな」

「どうして?」

「ひょっとしたら同じ趣味を共有出来るのかもしれない……そう思ったら柄にもなくはしゃいでしまってな。それからは桃が図書室に来るのが本当に楽しみになっていた……そうこうしているうちにどんどん桃に夢中になった、というわけさ」

「そっか……」

「さて、次は桃の番だな」

「えっ!?」

「人にばかり話させるのは卑怯だぞ」

「うっ……わ、わかりました……」

「私が緑君のこと好きになったきっかけは……やっぱり最初に見た笑顔かな」

「笑顔?」

「うん。本のこと聞いた時ね、緑君本当に嬉しそうに笑ってさ……それを見たらなんだか胸がドキドキして顔もカーッと熱くなって……」

「そんなにいい笑顔だったか?」

「うん。てゆうか私、緑君の笑った顔って今でもあんまり見ないよ?本絡み以外だと」

「そ、そうか?」

「そうだよ……私はいつまでたっても緑君の2番目なのかなー」

「そ、そんなことはない。ただ僕は、その、自発的に笑うのが苦手なだけで、別に桃といるのが楽しくないとかそういうことは……」

「……あはは、緑君慌てすぎ」

「っ!……かついだな?」

「えへへ、ごめんね?」

「まったく……」

「……それとね、最初に私から話しかけた時……緑君、なんでもないことのように断ったよね」

「ああ、宿題の件か」

「ああいう風に扱われたのって初めてでね……凄くびっくりしたんだ、私に振り向かない人がいるって」

「随分と自信過剰だな」

「だってそれまで私にお願いされてノーと言える男の子なんていなかったんだもん……だからね、緑君が好きだってわかって……どうやって振り向いてもらおうって思ったら……私にはなんにもなかったんだ」

「どういうことだ?」

「かわいこぶりっこしたって緑君は私のことを見てくれないって……それがわかってたからさ、じゃあ他に何があるか考えたら……なんにもなかった」

「……」

「だからそれからは毎日必死だったんだ、緑君に好きになってもらいたかったから」

「そうか……」

「……緑君、これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ。厄介な彼氏だがこれからもよろしくな」


焦「茶よ、最近水君とはどうなのだ」

茶「と、唐突だね、姉さん」

焦「だって水君は可愛らしいではないか。お姉ちゃんとしては是非茶と水君のラブラブカップルを後ろからギュッと抱きしめたいのだが」

茶「カ、カップルとかじゃないよ!」

焦「何、まだ告白してないのか。いかん、いかんぞ、弟よ。こういうのは男から言うものだ」

茶「うう……僕時々姉さんが羨ましくなるよ……」


朱「黄緑、今日は鍋だ!買い物付き合え」

黄緑「わかりました」

朱「ぐだぁ〜……気合い入れて掃除なんてするもんじゃないな。黄緑、悪いんだけど風呂掃除やっといてくれ」

黄緑「はい、やっておきますね」

黄緑「朱色さん、お疲れのようですから肩でも揉みましょうか?」

朱「マジで?助かるよ、頼む」

十分後

朱「あぁ〜いいねぇ〜」

黄緑(さすがに少し疲れてる)

無「黄緑、お前、朱色さんと付き合ってるんだよな?」

黄緑「ええ、まあ」

無「あんな扱いされてていいのかよ。いっつも朱色さん優勢で……」

黄緑「別に僕は構いませんよ」

無「うーん、それも愛か……」

黄緑「それに、夜は逆転しますから(にっこり」


黄「でさ、そん時色無がいきなりさー」

水「……」

黄「そんで俺が転けさせられてさ、みんな笑いやがんの」

水「……」

黄「赤なんかツボに入ったらしくて一分ぐらいずっと爆笑しててよ」

水「……」

黄「ホントお前どんだけ笑ってんのってカンジで……ねえ、水ちゃん」

水「は、はい!?」

黄「もしかして、っつーか……俺の話、つまんない?」

水「そ、そんなこと……」

黄「ホント?ずっと黙ってるから、俺、心配になっちゃって……あの、俺と飯食うの嫌なら言ってね?俺、KYらしいから。嫌がってんのとかよくわかんなくて……」

水「べ、別に……ぃやじゃ……なぃょ……」

黄「退屈じゃない?」

水「黄色くんのお話、面白い……から。……私、聞いてるだけで、楽しくて……。あの……私、おしゃべり、黄色くんみたいに上手くできないから……」

黄「マジで!?俺の話、聞いてて楽しい?」

水「うん。だから……もっと、お話、して?」

黄「おう!もう俺張り切っちゃう!!一日中だって話し続けてやんよ!!」

水「……ふふっ」

黄「お、水ちゃんようやく笑ってくれた」

水「え……?」

黄「笑ってくれると俺の話楽しんでくれてんだなーってわかるし。それに水ちゃん、笑顔の方が可愛いし!」

水「か、かわ……ぃ……ぃ 」

黄「あ、いや、その……今のは言葉のアヤっていうか……や、水ちゃんを可愛いとは思ってるけど……ってぶっちゃけすぎでしょ俺!だから言いたいのはそういうことじゃなくて……」


赤「あー、そこそこ。気持ちいー……」

青「赤、あんた耳垢たまりすぎ」

赤「そうか?ああ自分じゃなかなかやらねーしなあ……」

桃「……」

緑「耳掃除?」

桃「うん、してあげる」

緑「ありがたいがどうしたんだ、突然」

桃「な、なんとなく」

緑「……まあせっかくだしお願いする」

桃「じゃ、じゃあここに頭置いて」

緑「……膝枕か」

桃「ど、どうぞ……」

とん

緑「……柔らかいな」

桃「あ、ありがとうございます……」

緑「ん……」

桃「わっ、緑君動いたら危な……寝ちゃってる?」

桃「……また徹夜でもしたの?ダメだよもう……ふふ……」


黄緑「朱色さん、プレゼントを買ってきたんです。ふと、町で見かけまして」

朱「プレゼント?今日は何も特別な日じゃないぞ?」

黄緑「僕がプレゼントをあげたくなったんです。受け取ってもらえませんか?」

朱「いや、いらなくはないけどさ。ところで何なんだ?」

黄緑「リボンですよ」

朱「……はぁああ!?」

黄緑「何でそんなに驚いてるんですか?」

朱「お前なぁ、あたしにそういう可愛い系のものが似合わないの知ってるだろお?」

黄緑「朱色さんに似合うと思って買ってきたんですが」

朱「……とにかく、あたしはこういうのは絶対つけないからな!」

朱 こそこそ

群「あら?朱色?何してるの?」

朱 びくっ

群「そんなこそこそしてないで……あら、あなた……」

朱「み、み、見るなあああああ!! 」


 ちゅっ

桃「みみみ緑君!?」

緑「ついしてみたくなってやったんだが……桃?」

桃(緑君とキス緑君とキス緑君とキス緑君とキスキスキスキスススススス)

緑「だ、大丈夫か?顔が赤いが……」

桃「……はふぅ」

緑「桃!?」

結論・不意打ちには弱かった、かなり


『バレンタイン』

黄緑「茶ー色君」

茶「ふぇ?何?」

黄緑「今日何の日だかわかる?」

茶「……ヴァ、バレンタイン」

黄緑「正解♪はい」

茶「これって……!くれるの!」

黄緑「そりゃあ茶色君のために作ったんですもの」

茶「ぼぼぼぼ僕のののののの(カタカタカタカタカタカタカタカタカタ)」

黄緑「落ち着いてよ茶色君」

茶「ううううううううううううんんんんんんん!!!!」

黄緑「あとで感想聞かせてね♪」

茶「大事にもって行かなきゃ!」

赤「(ダダダダダ)ちょっとどいてくれよっ!」

茶「(ヒョイ)ふぇ!ろ……廊下は走ったらダメですよぉ!」

茶「い、いつもみたいにコケないように注意しないと」

コツン ドサッドサッ

茶「ふぇえ!」

緑「す、すまない!あまりにも本を持ちすぎて前が見えなかった!」

茶「僕も下ばかり向いてて……。ごめんなさい」

茶「ふぇ、やっと帰ってこれたぁ。寒い寒い。ヒーターつけよ。(ピ)さて、じゃ、じゃあ……」

黄緑『茶色君のために作ったんですもの』

茶「……あー」

茶母「ご飯よー」

茶「ご飯ならしょうがないなぁ。あとで食べよう」

 30分後

茶「と、とろけてる……」


赤「よう、緑おは……なんか顔色悪いぞ」

緑「いや……何故か朝から殺気のこもった視線を大量に向けられて……」

赤「……?」

黒「おはよう、二人とも」

赤「おお、黒」

黒「朝から随分と重い空気ね、緑」

緑「訳の分からん殺気を浴び続ければこうもなる……」

黒「……ああ、そういうこと」

緑「理由がわかるのか、黒」

黒「むしろあなたがわかってないのが驚きよ。今日は何の日?」

赤・緑「……あっ」

黒「合点がいったようね、まあ頑張りなさい」

桃「緑君、これどうぞ」

緑「あ、ああ、ありがとう」

男子s(緑めえええええええっ!)

桃「?なんか汗凄いけど大丈夫?」

緑「あ、ああ、大丈夫だ」

桃「また後で感想聞かせてね、今後の参考に」

緑「今後?」

桃「あっ……え、えと……またお菓子とか作ってあげたいし……来年のチョコとか……」

緑「……わかった」

桃「じゃ、じゃあまたね!」

青「……あの娘も随分変わったわね、緑と付き合い始めてから」


空「はい、灰君これ」

灰「……なにこれ」

空「チョコレート」

灰「……なんで?」

空「もう!今日はバレンタインだよ、忘れたの?」

灰「ああ、そっか……今までとんと縁がなかったもので」

空「……私毎年チョコあげてたよ?」

灰「へ?……あー、そういえばなんかこの時期になると空からなんか貰ってたような」

空「……そんなんじゃ絶対味わって食べてとかしてないよね、せっかく毎年頑張って手作りしてたのに」

灰「……ごめん」

空「もういいよ、済んだことだし。でも今年はちゃんと食べてよ?……本命なんだし」

灰「あ、う、うん」

黒「灰ー、そろそろ夕飯……何包みを前に固まってるの、顔も赤いし」

灰「へ、あ、姉ちゃん!?」

青「……空、帰ってくるなりベッドに飛び込んでどうしたの」

空「ふぇっ!?べべべ別に何でも!?」


「空ー、準備できたー?」

「うん、大丈夫だよ。どう、似合う?」

「んー、まだ着られてる感があるわねー」

「うー……」

「まあそのうちそういうのもなくなるわよ、じゃあ私は入学式の準備とかあるから先行くわね」

「うん、いってらっしゃい」

「お、おはよう。えーっと……青の妹さんだったよな?」

「あ、はい、妹の空です。おはようございます、管理人さん」

「朱でいーよ、管理人さんとか堅っ苦しいし。今日が入学式か」

「はい」

「あー、そういやもう一人新入生いたなぁ、なんつったっけなあ……」

「私とその人だけなんですか?」

「ああ、今年は去年に比べて少なかったんよ。まあ去年が多すぎただけなんだけどな」

「それでその人は?」

「さてねえ、まだだいぶ時間あるし寝てるんじゃないか?空ちゃん……だっけ?早起きだねえ」

「あ、私はお姉ちゃんに起こされて……」

「あー、なるほど」

「おはよーございまーす……」

「お、おはよう」

「あ、おはようございま……」

「ん……?空……?」

「……灰君?」

「なんだ、二人とも知り合いか?」

「幼馴染なんです」

「空もこの寮ってことは……また毎朝起こされるのか……」

「もー、まだねぼすけなの?ダメだよ、ちゃんと起きないと」

「……随分と仲がいいねえ」

「え、そうですか?」

「ああ、お似合いだよ」

「!!!ちちち違いますよ、ホントにただ幼馴染ってだけで……」

「何慌ててんの空」

「な、なんでもないよ!?そ、それよりほら、早く学校いこ」

「んー……」

「なんかこーやって灰君と学校行くの久しぶりだね」

「あー……そういえば小学校以来かー」

「灰君地元の中学進んだんだよね」

「ん。空はここの中学だっけ?」

「うん。灰君はどうしてこっちに?」

「別に。親が『せっかくだし推薦でも受けて来い』って言われて、んで受けたら通ったから」

「え……ここの推薦って結構レベル高いんじゃ……」

「よく知んない」

「……ね、ねえ、灰君、今度勉強とか色々教えて欲しいなー」

「……空の ものすごい 打算」

「あ、あはは……ダメ?」

「……まあいいけど」

「やたっ!」

「……あんまし変わんないね、空は」

「灰君だってそうだよ。なーんか眠そうでめんどくさそうなとこは昔と一緒」

「そうでもないよ、ねーちゃんなんか輪をかけて酷くなってるって言ってたし」

「あはは、そうかも……でも私はそれでもいいと思うよ。灰君きっちりしてるとこはきっちりしてるし。それに優しいし」

「そう?」

「そうだよ。とにかくこれからもよろしくお願いします」

「ん、こちらこそ」


「我らが姉は捻くれが過ぎると思う」

「どうしたの急に」

「いやお姉ちゃんまた赤さんと喧嘩したんだって」

「……あの二人の喧嘩って、青さんが一方的に怒って、それを勝手に後悔して、でも赤さんはなんとも思ってなくて、青さんが殴る、ってパターンでしょ?喧嘩って言えるの?」

「言えないけど、でもお姉ちゃんはそう思ってるし」

「ふーん……あー、でもうちの姉ちゃんもあるなあ、白兄に言い過ぎて勝手に部屋でふさぎこんで、でも白兄はぜーんぜん気にしてないの。それどころか忘れてたり」

「うちとそっくり」

「素直じゃないって大変だねえ……で、なんで急に?」

「いやあ、妹としてはなんとかしてあげたいなあと」

「……本心は?」

「ちょっとからかってみたいなって♪」

「性悪」

「そ、そんなことないよっ!というかいっつもやきもきしてるんだよ!早くくっつかないかなーって」

「そっか、頑張れ」

「灰君も頑張るのっ」

「なんで」

「私一人じゃ無理だから灰君の頭脳が必要なのですよっ」

「めんどくさい」

「ぶー……」

「だいたいなんとかって何するのさ」

「え?んー……デートのセッティングとか?」

「赤先輩は青さんの誘いなら喜んでついていくし白兄は滅多に出来ないしねえ。外出とかするときは当然のように姉ちゃんついてくし」

「むう……」

「まあとりあえずはすることないしいんじゃない?それで」

「んじゃあ灰君一緒に出かけようよー」

「だから僕じゃなくても……」

「いいからっ!ほら準備していこ?」

「……わかった」


「ほら朱、弁当だ。一緒に食べよう」

「……別に頼んでねーっていつも言ってんだろ。なんでわざわざ作ってくるんだよ」

「朱には私の手料理を食べてもらいたいからな」

「なんで」

「好きな人に自分の手料理を食べてもらいたいと思うのは変か?」

「……好きとか軽々しく言ってんじゃねーよ。つかそれ毎度聞くけど嘘だろ?」

「嘘でそんなことは言わない。本心だ」

「じゃなんでそんな臆面もなく言えるんだよ」

「そうでもないぞ?ほら」

むにっ

「!!!ば、ば、馬鹿、いきなり何すんだよ!?」

「わからないか?今だってこんなに心臓がドキドキしているんだぞ?」

「わ、わーった、わーったよ!」

「……それともやはり朱は私が嫌いか」

「っ……そういうわけじゃねーけどよ、もう少し好きになる人間は選べよ。なんで俺なんだよ」

「ふむ……よくわからないな、気づいたらもう君に夢中だった」

「あんだよそりゃ」

「でも私は朱のいいところを沢山知っているぞ?幼馴染だしな。子供の頃泣き虫だった私の隣にずっといてくれたこともな」

「ああ、んなこともあったな……」

「まあとにかく食事にしよう。今日は君の好物に挑戦してみたんだ」

「ん、いただきます」


「あああああの茶君ここここれどうぞっ!」

「えっ、あっ、ど、どうもって水ちゃん!?」

「それでいきなり渡されたと」

「うん……姉さん何か心あたりない?」

「あるも何も今日はバレンタインだろう」

「へ? ……ああっ!? えっ、じゃ、じゃあこれは……」

「水君の思いの丈が詰まった贈り物だな、駄目だぞ、味わって食べないと」

「お、思いの丈って……そんなんじゃないよ、きっと」

「ふむ……まあお返しのほうもよく考えておくんだな」

「……お返し、かあ……何がいいのかなあ」

「3倍返しは鉄則だからな、告白してみたらどうだ?」

「だ、だから姉さん!」

「いい機会だと思うのだが」

「だ、だいたい僕なんかに告白されたって迷惑なだけだよ……」

「やる前から諦めるんじゃない。それにフラれるにしても言ったほうが心残りはないぞ?」

「……」

「み、水ちゃん、ちょっといいかな……」

「ふえ? な、なんでしょう」

「えと……こ、これ! こ、こないだのバレンタインのお返しに!」

「えっ……あああありがとうございます……」

「そ、それから……よ、よかったら僕と付き合ってもらえませんかっ!」

「へ……」

「ああもちろん水ちゃんさえよければの話で別に無理にってわけでもないし嫌だったら断ってもらって構わない……んだけど……」

「……」

ぽろ

「!!! ご、ごめん、忘れてっ!」

「あっ、あのっ、こ、これは違くて、だから、えとっ……」

「へ」

「だ、だから、あの、わ、私も、茶君のこと、その、す、好き、だから、嬉しく、て、えぐっ」

「……本当?」

「うんっ、うんっ」

「じゃ、じゃあ……」

「はい……よろしくお願いしますっ!」


「んー……」

「……どうしたの、朱。机の前で頭抱えて」

「どわっ、姉貴!? 部屋入るなら一言言えよ!」

「はあ? 何よ、あんたなんかやましいことでもしてたの?」

「……そうじゃねぇけどさ……」

「じゃあどうしたのよ」

「……なあ、姉貴、女が貰って嬉しいもんってなんだと思う?」

「へ?」

「よ、焦茶」

「やあ、朱。おはよう。君のほうから挨拶してくれるなんて珍しいな」

「……なんでそんな嬉しそうなんだよ」

「ふふ、好きな人からおはようと言ってもらうとな、なんだかその日一日がとても素晴らしいものになりそうなんだ」

「……っ、ば、馬鹿なこと言ってねぇで行くぞ」

「私としては手も繋いでもらえるともっと嬉しいのだが」

「出来るかっ!」

「さあ、朱。昼食にしよう」

「ん……あー、あのさ」

「どうした?」

「その……あーもう、やるっ」

「……これは?」

「……バレンタインのお返しだよ。何渡せばいいかよくわかんなかったけど」

「……いいのか?」

「も、貰いっぱなしってのも悪ぃし……ってなんで泣いてんだよ!?」

「え……? あ、あれ? す、すまない、別に悲しいとかそういうことはないんだが……はは、参ったな、止まりそうにない」

「自覚なかったのかよ。ったく……」

「これはあれだな、まさか朱からそんなものを貰えると思ってなかったからあまりの嬉しさについ」

「説明すんなよっ! ああ、くそっ……」

「顔が赤いぞ、大丈夫か?」

「お前がハズいこと言うからだろうがっ!」

「そうか。だが私にとってはそれくらい嬉しかったんだ。ありがとう、朱」

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「お、おう……」

「中身は……綺麗な髪飾りだな」

「……姉貴に相談したらなんか向こうが妙に気合い入れてさ、おふくろまで出てきたし」

「そうなのか。ではお二人にもありがとうと伝えておいてくれ」

「ん」

「ふふ、朝言った通りだ……やはり今日は素晴らしい一日だ。それも私の人生で一、二を争うくらいに」

「だからそういうこと言うなよっ!」


橙「桃って変わったよねー」

桃「へ? どうしたの橙ちゃん、急に」

橙「いやさ、緑と付き合うようになってから変わったって話」

桃「そう、かな? やっぱり」

橙「ちょっと前の桃なんて男なんて利用してナンボ、な考え方だったのに……」

桃「あう……」

橙「今じゃ緑のことに一生懸命だもんねえ、大量の男子が血の涙を流す流す」

桃「お、おおげさだよ……」

橙「なんか服の趣味も変わったよね。前はもっと露出多めのよく着てたのに、こないだ緑とデートしてるとこ見たら全然そういうのじゃなくて」

桃「あー、そういえば……」

橙「久しぶりに着てみたら? 緑のこと悩殺出来るかもよ〜?」

桃「む、無理だよ! 恥ずかしいし……」

橙「……やっぱ変わったわ」


「黄色、お前笑いすぎ」

「ごめんごめん。でもおかしくってさ、あはは……」

「ちぇー、こっちは結構ヘコんでたってのに……」

「だってさー、その話聞いて笑わずにいるのって無理でしょ」

「うっせ。まあおかげでちょっと気が楽になったけどな」

「そりゃよかった」

「よし、青と仲直りしてくっか!」

「頑張れー」

 彼は黄色君。いつもニコニコ笑ってるクラスのムードメーカー。男子にも女子にも友達が多い。なんでも話してると元気が出るとか……私も彼から元気を貰った。

「もうこんな時間……みんな帰っちゃったんだろうなあ……」

 私の名前は白。病弱でよく保健室のお世話になってしまう。今日も途中から保健室でずっと寝ててもう放課後。

「今日は黒ちゃん用事あるって言ってたし一人かあ……」

 〜♪

「あれ……?」

 教室のほうから声が……

「誰かいるのかな……」

 誰か教室で歌ってる……誰だろう……

「……黄色君?」

 まだ帰ってなかったんだ……それにしても歌上手いなあ、私は知らない曲だけどそれでも上手いってわかる……

「……はぁ」

 パチパチパチ……

「へ?」

「すごいすごい!」

「……白ちゃん?」

「黄色君歌上手いんだね、好きなの?」

「……うん。なんかさ、歌ってると楽しくなったり元気になったりするじゃん」

「あ、わかるわかる」

「だからさ、ちょっと気分が沈んでる時とか楽しくて仕方ない時は歌ったり」

「ふーん」

……なんだろう、今の黄色君、いつもとちょっと違うような。

「そういう白ちゃんは?」

「私? 私はさっきまで保健室で寝てたの」

「あ、そっか……ごめん」

「? どうして謝るの?」

「ん、なんか聞いちゃいけないことだったかなって」

「そんなことないよ、慣れっこだし」

「……そっか」

「……なんか元気ないよ、どうしたの?」

「へ? そんなことないよ、大丈夫大丈夫……ただちょっとね、疲れてるだけ」

「疲れる?」

「うん。いっつも笑ってるけどね、たまに疲れちゃうんだ。別にそういうのが嫌ってわけじゃないんだけどさ。みんなと一緒に笑うのも楽しいし……それでもたまに、ね」

「ふーん……」

「まあだからそんな時は一人でぼんやりと歌ったりするわけですよ。変だね」

「そんなことないよ。私も……たまにそういうことあるから」

「そう?」

「うん……ほら、私あんまり身体強くないからすぐ倒れちゃったりしてさ、それでみんなに迷惑かけてるなあって。例えば黒ちゃんとかね。それでたまにすっごく落ち込むんだ」

「そっか……まあ、そういうときはふんわかいけばいいのさ、ふんわか」

「ふんわか?」

「そそ。落ち込んだってさ、なんか歌ったり楽しいこと思い出したり。そうやって笑えれば少しは気分も晴れるってもんですよ」

「……そうなの?」

「そうそう。そんな顔して悩んでたってしょうがないし。とりあえず笑って気分を晴らせば答えだって見つかるよ」

「……そっか」

「そうそう。だから笑って笑って。笑ってるほうが可愛いし」

「へ!?」

「あっ……ご、ごめん、深い意味はないんだけど……で、でもほら、女の子なんだしさ。沈んでる顔してちゃ周りも沈んじゃうよ」

「そうだよね……うん、ありがとう」

「どういたしまして」

「ねね、黄色君、一緒に帰ろっか」

「いいね、せっかくだし」

「熊の子見ていたかくれんぼ♪」

「あっ、それなら私もわかるよ。お尻を出した子一等賞♪」

『夕焼けこやけでまた明日ー、まーたあーしーたー♪』

 こんな風に私は彼からいっぱいの元気を貰ったんです。でも可愛いって言われた時に少しドキッとしたのは……何故でしょう。


『ホワイトデー』

茶「ききっき、黄緑さん!」

黄緑「おはよう茶色君。どうしたかしら?」

茶「ここ、きょれなんだけど……食べてください!」

黄緑「あー……そういえば今日はホワイトデーでしたね。うふふ、ありがとう茶色君」

茶「あと……それ……その……。僕の手作りなんで……だから……ちょっと……」

黄緑「大丈夫! ぜっっっったいおいしいと思うわ! 自身持って!」

茶「じゃ、じゃあ明日感想聞かせてく、ください! お願いします!」

紫「へぇー。このクッキー茶色君作ったんだ。一応見た目は普通だねぇ。(パク)味も普通だし」

黄緑「(パク)少し甘みがあってお茶のお菓子にちょうどいいわぁ」

紫「いいなぁ黄緑は。水は今年は私に何くれるんだろ」

黄緑「あらあら? 気になるのかしら?」

紫「別に気になるって……あ! このクッキーだけハート型だよ!」

黄緑「あら? まぁ、茶色君ったら」

紫「……てぃ! (ボリボリ)うーんうまい」

黄緑「む、紫ちゃん! なんで食べちゃうの!」

紫「あんまり惚気るから私が食べました」

黄緑「紫ちゃぁん……!(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)」

担任「今日紫さんは頭痛と原因不明の腹痛のため欠席です」

水「そんな……!」


 小学校の頃

「ドッジやろうぜーっ!」

「やるやるーっ」

「おれまだ食いおわってねーよ!」

「灰くん、いかないの?」

「……おなかいっぱいでねむい」

「食べてすぐねると牛になっちゃうよー」

「ならないよ……おやすみ……」

 現在

「灰君、一緒にお昼食べよ」

「んー……」

「はい、今日はサンドイッチ」

「いただきます……」

「どう?美味しい?」

「……ん」

「ん、じゃわかんないよ。ちゃんと言って」

「……パンと具の間で絶妙なハーモニーが」

「そういうことじゃなくて!もーいいよ……」

「ただのユーモアだよ」

「そんなユーモアはいりません」

「別に普通に美味しいよ。空の料理が不味かったことなんてないし」

「……そ、そっか」

「なんか顔赤いけど」

「ほ、ほら、最近あったかくなってきたから!」

「ふーん……」


桃「くしゃんっ!」

緑「大丈夫か、桃」

桃「ぐすっ……あんばり大丈夫じゃない……」

緑「無理はしないでくれよ」

桃「だ、大丈夫。せっかくの緑君とのデー……くしゃんっ!」

緑「……やはり日を改めるか?」

桃「や、やだっ!久しぶりの緑君とのデートなんだもん……」

緑「すまないな、最近は色々と忙しかったから……」

桃「でもそれはアルバイトとか頑張ってたからでしょ? ホワイトデーのお返しのネックレス、嬉しかった」

緑「そう言ってもらえると嬉しいよ。そういえばどうして使わないんだ?」

桃「そ、それはその……もったいなくて使えないというか」

緑「そういうものなのか」

桃「き、気に入らなかったとかそういうのじゃないから……くしゃんっ!」

緑「そうか。それにしても辛そうだな……」

桃「うー、去年は大丈夫だったのに……」


 朝

空「ほら、灰君起きて起きて!遅刻しちゃうよ!」

灰「……寒い。布団返して」

空「だーめ。ほら、早く着替えないと」

灰「うー……」

ぬぎっ

空「!じ、じゃあ私先にご飯食べに行ってるから!」

灰「……?」

灰「ふあ……」

黄緑「あら灰君、おはよう。席は空ちゃんの隣ね」

灰「おはよーございます、黄緑さん……どしたの、空」

空「ふえっ!?」

灰「なんかさっき様子おかしかったけど」

空「な、なんでもないよ!?」

灰「顔赤いけど。風邪?」

空「だ、だって灰君が……いきなり服脱ぎ出すから……」

灰「着替えるようせかしたのは空でしょ。だいたい男の裸なんて見てていいもんでもないし」

空「灰君はデリカシーがなさすぎだよ」

灰「別にいいでしょ」

青「空、朝からあまり不穏当なこと言わないの……誤解するとこだったじゃない」

 昼

空「もう、灰君。いくら成績よくても授業で寝てちゃ駄目だよ」

灰「無問題無問題」

空「もう……いきなりさされたらどうするの?」

灰「大抵席順だから危なそうなときは起きてるし」

空「そういうところは要領いいんだから……」

 放課後

空「雨かあ……天気予報じゃ降らないって言ってたのに……」

灰「ん」

空「え、灰君?」

灰「どうせ帰るとこは一緒だし入んなよ」

空「う、うん……ありがとう……」

 夜

空「灰くーんっ、助けてー……」

灰「……どしたのいきなり入ってきて」

空「化学と数学の宿題手伝って……」

灰「ああ、そういえばそんなの出てたね……期限はまだ先だしいいじゃん」

空「やっとかないと忘れちゃいそうだから……」

灰「……で、どこが?」

空「うん、ここなんだけど……」


『花粉症』

黄緑「ごめんなさい、茶色君。荷物なんか持たせちゃって」

茶「い、いいんですよ! 僕なんかでよければ!」

黄緑「あとでお母さんとお菓子作るから、一緒に食べない?」

茶「いいの? じゃあ御言葉に甘えようか……ふぇくしっ! ふぇ……」

黄緑「あら? 茶色君、風邪ひいてるの?」

茶「ぼ、僕今花粉症で……デュクシ!」

黄緑「まぁ茶色君。鼻水でてるわよ、ふふっ。はい」

茶「え?」

黄緑「だって茶色君、両手に荷物持ってるじゃない。さぁ、思いっきりかんでいいのよ!」

茶「じゃ、じゃあ。(チーン)」

黄緑「……見ておく? 一応」

茶「いえ、いいです」

生徒α「今の見た?」

生徒β「黄緑さんが茶色の鼻をかませてる……だと……!」

生徒γ「そんな二人を妬む賊が3人いた」

黄緑「くしっ! うぅん、私も花粉症かしら」


焦「ああ、起こしてしまったか」

朱「……なにやってんの」

焦「なに、夜明けのコーヒーを一緒に飲もうと思っただけさ。たしか濃い目砂糖抜きミルクたっぷりだったな」

朱「ああ。ンにしても古臭ぇシチュエーションだな。夜明けのコーヒーって何年前の発想だよ」

焦「別にいいじゃないか。昔から憬れてたんだから」

朱「さいで。どうせだったら味噌汁作ってくれよ」

焦「味噌汁の臭いで目を覚ます、かい? キミもだってずいぶんと昭和じゃないか。ほら、コーヒー」

朱「おう、サンキュ……悪かったな昭和で。ウチは姉貴と俺が飯作ってたから、他の誰かが作ったやつも食ってみたいんだよ」

焦「そうなのか。しかし悪いな。料理は不得手なんだ。美味い味噌汁は作ってやれそうにない」

朱「色気のねぇ女」

焦「私の色気でもキミを落とすのには充分だったみたいだけど?」

朱「ぐっ……」

焦「ふふふ。まぁそのうち毎日作ることになるだろうさ。気長に待っててくれ」

朱「はいはい、期待せずに待ってるよ……っと、タバコやめたんだった」

焦「そういえばずいぶんと吸ってないね。どうしたんだい?」

朱「なんでもねぇよ」

焦「あ、いまウソついたね。キミのウソはすぐにわかるんだよ」

朱「……別にたいしたことじゃねーよ」

焦「だったら教えてくれたってかまわないじゃないか」

朱「……」

焦「もしかしてアレか? 医者に『肺に黒い影があります』とか言われたのか?」

朱「違うって。そういうんじゃなくって……から」

焦「うん?なんだって?」

朱「お前とつき合うようになったから、タバコ止めたんだって言ったんだよ! 聞き返すなバカ!!」

焦「朱色……ああ、なんていうことだ! ますますキミのことが大好きになってしまった! この責任、取ってもらうぞ!」

朱「ちょ、おまっ……バカ変なトコ触んな! あっ、アーーーーーーーッ!」


焦「うぅ……ぐすっ」

朱「なに泣いてんだ?」

焦「だってみんな、わたしのことヘンだって……」

朱「あ〜、確かに……」

焦「うぅぅぅぅ。もう、放っておいてよぅ! 朱色ちゃんもみんなも、だいっ嫌い!!」

朱「あ〜っと、その……お前はそのままでいいと思うぞ」

焦「みんなに嫌われたままのどこがいいのっ!朱色ちゃんのバカ!いくらなんでもヒド過ぎるよぅ……」

朱「そうじゃなくって、お前はお前のままでいいと思う」

焦「だからっ、それだとみんなに嫌われたままになっちゃうじゃない!」

朱「大丈夫だよ」

焦「ぇ……?」

朱「その、お前カワイイし……性格だっていいし」

焦「でもみんなわたしのことヘンだって……」

朱「ああ、それは……ほら、お前ってなんにでもまっすぐじゃん。好きなものは好きって言えるし、イヤなものはちゃんとイヤって言えるだろ。たぶんみんなうらやましいんだよ、焦茶のそういうトコがさ。……なんにでもまっすぐ過ぎるのはヘンだと思うけどさ、悪いことじゃないよ」

焦「ホント? ホントにだいじょうぶ?」

朱「ああ、俺がホショーする。焦茶は今のままでもゼッタイにみんなに好きになってもらえるよ」

焦「ゼッタイみんな好きになってくれる?」

朱「うん。……お前カワイイし」

焦「うん、信じる! わたしこのままでいる!」

朱「おう、ガンバれよ!」

焦「……ねぇ、朱色ちゃん」

朱「なんだ?」

焦「大好き!」

朱「なにニヤけてんだよ」

焦「なに、昔のことを思い出していただけさ」

朱「それでニヤけてたのか?変な女だな」

焦「ああ、変な女だ。キミがそれでいい、と言ってくれたからな」


朱「お前、初めてのデートなんだからさ、こう、なんつーか……色気のあるところとかじゃなくていいのか?」

焦「なに、いきなりホテルの方がよかったのか? しかし一日それでは身体が持たないだろう?」

朱「色気と性欲を直結させんなバカ。そうじゃなくって、バッティングセンターなんかでいいのかってこと。よくわかんねーけど、服買いに行ったり喫茶店行ったりとかするんじゃねーの、普通」

焦「なんだ、そんなことか。私はキミと一緒にいられるだけで充分なんだよ。一日キミの顔を見ていられるだけで満足だ。私が満足しているんだから、キミが満足できる場所に来るのは当然だろう?」

朱「あっそ。お前がいいならいいけどさ」

焦「退屈だ」

朱「お前なぁ……俺といられるだけで満足だったんじゃないのかよ」

焦「それは朱色の顔を見ていられればの話だ。ずっと背中を向けられて、朱色はマシンとにらめっこじゃ面白くない」

朱「どうしろってんだよ」

焦「そうだ、私にバッティングを教えてくれないか?」

朱「そうだな、そうするか」

焦「ドラマみたいに後ろから手を回してさ。どこでも触り放題だぞ?」

朱「やっぱやめる。お前ずっと見てろ」

焦「相変わらずノリが悪いな。もう少し性欲に忠実でないと私の相手は務まらないぞ?」

朱「逆だアホ。俺以外にお前の相手なんかできねーよ」

焦「それもそうだ。ふふ」

朱「ちょっと教えただけで130km/hでホームラン量産って、お前どんだけハイスペックなんだよ!」

焦「朱色の教え方がうまかったんだ、ろうっとぉ!」

朱「またホームラン……お前今すぐプロで通用するよ」

焦「そんなわけにはいかないさ。朱色といる時間がなくなってしま、うだろう!」

朱「またホームラン……結局20球中18ホームランって。変態すぎる……」

焦「ふぅ、スッキリした。はい、バット」

朱「あんなん見せられたあとでやる気なんて起きないから」

焦「そうか、残念だ。朱色の格好いいところをもっと見たかったんだが。仕方ない、服を見に行こうか」

朱「賛成。いまさら色気出されても遅い気はするがな」

焦「なにを言う。このあと使う下着を買いに行くのだ、色気がなくては話にならないだろう」

朱(コイツに普通のデートを望んだ俺が悪かったんだろうな……)

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『ででっ、で、でぇと!!!』

茶「じゃ、じゃじゃあ! つつつつ次はあっち行きましょう!」

黄緑「はいはい」

店員「いらっしゃいませー。二名様でよろしいでしょうか?」

茶「は、はい!」

店員「あちらの御席へどうぞ」

黄緑「ここのお店って値段安くて美味しいんですってね。誘ってくれてありがと茶色君」

茶「い、いえ。僕も黄緑さんが来てくれて嬉しいです……あ! へ、変な意味じゃないよ!」

黄緑「わかってる。あ、お料理きたみたい」

店員「お待たせしました。オムライスになります」

茶「ありがとうございます」

黄緑「いただきます」

茶「いただき……あ、トマト……」

黄緑「トマト、嫌いなの?」

茶「ケチャップは好きなんだけど……」

黄緑「じゃ、あーん」

茶「ふ、ふぇ……!」

黄緑「あーん」

茶「ふぇ」

黄緑「あむ。うーん、いいトマト使ってるわね」

茶「ごめん」

黄緑「しょうがないわよぉ。誰にだって嫌いなものぐらいあるわ」

茶「そ、そうなの?」

黄緑「実は私ね、春菊駄目なのよ」

茶「そうなんだ」

黄緑「それより茶色君も」

茶「ふぇ?」

黄緑「あーん」

茶「ふぇぇぇぇぇ!!!!!!」


ピピピピピ……

「ん……もう朝か……」

「んぅ……」

「……どうわああああああああああああああっ!!??!?!?」

「ふあ……ああ、おはよう朱」

「ななななんでお前が俺の布団の中にいんだよ!?」

「? 覚えていないのか?」

「何っ!? ま、まさか……」

「……昨日は随分と激しかったな、でもあんなにも愛してもらえて幸せだったぞ」

「っ!? す、すまん!」

「? 何を謝る必要があるんだ?」

「ちゃんと覚えてねえけどそういうことをしちまったんだろ? なら俺は責任を取らねえと……」

「冗談だったのだが」

「……何?」

「だからただの冗談だ。何故布団に入っていたかというと今日はデートをする約束だっただろう? それで楽しみすぎてつい待ちきれず窓から君の部屋にお邪魔したというわけだ」

「……ちょっとそこに正座しろ」

「こうか? (べしっ)あぅ。何をするんだ、いきなり」

「心臓に悪い冗談を言うじゃねえっ! マジで焦っただろうがっ!」

「むう、私としては是非現実にしたいことなのだが」

「やかましいっ! ったく、姉貴やおふくろになんて説明すりゃいいんだよ……」

「ああ、それなら心配はいらない。ちゃんと昨晩のうちに挨拶しておいた」

「そういうところはしっかりしてるんだな、お前……」

「しかし失敗だったな、君より早く起きていれば君の寝顔を堪能したりこっそりとキスもできたかもしれないのに」

「すんなよ!? 絶対すんなよ!?」

「……そんなに嫌がられるとは思わなかった。すまない」

「ばっ、い、嫌とかそういうわけじゃ……ああもう、目に涙いっぱい溜めるなよ!」

「だ、だって、もし朱に嫌われていたらと思うと、本当に、怖くて」

「……っ、嫌いなら即刻部屋からたたき出してる。つっても好きかって聞かれたら……その、困るけど」

「そ、そうか……よかった……」

「……あーもういいからとっとと着替えて来い。一緒に出かけるんだろ?」

「ん、そうだな」

「っておもむろに服を脱ごうとすんなよっ!自分の家で着替えろっ!」

「あら、おはよう焦茶ちゃん。うちの息子に何かされなかった?」

「非常に残念なのですが何もありませんでした」

「なんで手ぇ出すこと前提なんだよっ!? ちったぁ息子のこと信頼しろよっ!」

「口は悪いくせに変なとこで真面目なんだから……焦茶ちゃん、今ならまだ間に合うのよ? もっとマシな男他にいるでしょう?」

「お義姉さん、私には朱以上の男など存在しません。だいたい他の男も眼中に入るに値しない」

「義をつけるな、義を」

「相変わらずうちのバカ息子にぞっこんなのねえ。まあこんな美人なら大歓迎だけど」

「朱、泣かせたりしたらお姉ちゃんが許さないからね」

「そういう姉貴も早いとこ彼氏とか作あだだだだだだ割れる割れる割れるうううううううううう!!?!??」

「朱ー、私はねー、作れないんじゃなくて作らないの。わかったー?」

「ギブギブギブギブギブ!!!」


焦「朱色、ちょっといいか?」

朱「どうした急に?」

焦「恋人らしく腕を組もうと思ってな。えいっ」

朱「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ、肘極まってるキまってる離せ放せはぁなぁせぇぇぇぇ!!!」

焦「おや、こうじゃなかったか?」

朱「お前ホントにバカだろっ!? どこの世界に腕組もうとして関節極める恋人がいるんだよっ!!」

焦「むぅ、すまない。えっと……こう、か?」

朱「手首が極まってるぅぅ!? ちょ、ば……捻ろうとするな、はぁ〜なぁ〜せぇぇぇぇいぃ!!!」

焦「う〜ん、どこを間違えたんだ? ここがこうなって……」

朱「一番の間違いは関節技を覚えてることだバカ! 全く……ほら」

焦「?」

朱「さっきみたいに腕組もうとして関節極められたらたまったもんじゃないからさ。手、繋いで歩こうぜ」

焦「朱色……やっぱりお前はいい男だな。惚れて正解だった」

朱「ちっ、そういうんじゃねーよハズカシイな」

焦「そういうことにしておいてやろう。朱色の手、大きくて温かいな。お前らしい」

朱「……お前の手も柔らかくていいぞ」

朱「だ・か・ら・な・ん・で指の関節を極めるんだお前はっ!」

焦「おかしいな、無意識に身体が動くぞ?」


「うー、全然鼻水と涙止まんない……顔酷いなあ……」

コンコン

「桃、入るぞ」

「み、緑君!? ダ、ダメ、入っちゃ!」

「? どうしたんだ? 着替えているのか?」

「そ、それはもう終わったんだけど……」

「……? それなら何故入ってはいけないんだ?」

「え、えと、それは……」

 ど、どうしよー、とっさにもう着替え終わってるって言っちゃった……嘘ついて涙とか収まるまで待っててもらうのはもうダメだあ……。

「……桃、ひょっとして僕は何か君の気に障るようなことをしたのか?」

「ふぇ!?」

 え、ええ!? な、なんか盛大に誤解してらっしゃる!?

「ち、違うの! そういうのじゃなくて!」

「いや、いいんだ桃、気を使ってもらわなくても」

「だ、だから本当に違うんだってば! た、ただちょっと花粉症が酷いから……」

「花粉症?」

「うん……それで顔とか今酷いことになってるから見られたくなくて……ごめんね」

「そういうことか。いや、僕のほうこそ勝手に早とちりしたな、すまない。それなら僕は談話室で待ってるから収まったら来てくれ」

「うん」

「お待たせ……」

「……なるほど、随分と酷いな。そんなに眼を腫らして」

「こんな顔見られたくなかったから……」

「今日は出かけるのは中止にして部屋で本でも読むか」

「うん……」

 うー、せっかくのデート日和だったのにぃ……花粉のバカぁ!


『あまあま』

桃「橙ちゃんおはよー」

橙「おはよ桃。おっ、髪型変えたんだ」

桃「うん、今日から新学期だし心機一転ってことで」

橙「なーるほど。アタシも変えてみようかなぁ」

緑「おはよう桃、橙」

桃「あっ、緑君おはよう」

橙「おはよ。んじゃアタシは退散しますかねっと、邪魔しちゃ悪いし。お先ー」

桃「だ、橙ちゃん!もう……」

緑「ありがたいような照れくさいような……ところで桃、髪型が普段と違うようだが」

桃「あっ、うん。今日から新学期だし、ちょっとね」

緑「なるほど」

桃「……それだけ?」

緑「? 何がだ?」

桃「……別に。私先に行くね」

緑「も、桃? どうしたんだ?」

桃「知らないっ」

緑「……ああ。待ってくれ、桃」

桃「つーん」

緑「新しい髪型、よく似合ってるぞ」

桃「! い、今更お世辞言われたって……」

緑「世辞なんかじゃない。本当にそう思っている」

桃「……じゃあなんで最初に言ってくれないの?」

緑「……すまない」

桃「もう……次からはちゃんと気づくように」

緑「わかった」

桃「……いくらみんなが似合うとか可愛いって言ってくれたって緑君が言ってくれないと意味がないんだから」

緑「……桃」

 ぎゅっ

桃「ひあっ」

緑「詫びと愛情を込めて……許してくれないか?」

桃「あ、あ、あの、みんな見て」

緑「構うものか、見せつけてやればいい。僕は口下手だからな、結局こんな風に行動でしか気持ちは示せない」

桃「……うん。大好き、緑君……」

緑「僕もだ……愛してる」

桃「はう」

青「……何、あの朝っぱらから前方に展開されてる超絶桃色空間は」

赤「緑め、なかなかやるな……ならば俺もっ!」

青「なっ、ちょ、い、いきなり抱きつくな馬鹿ぁっ!!!」

バキッ!

赤「がふっ!? いいパンチ……持ってんじゃねぇか……」


 カシャーッ(カーテンを開ける音)

朱「んん……あさか……。はれ? なんで焦茶がいるんだ?」

焦「おはよう朱色。ああ、まだ寝ていろ。今から私が起こすから」

朱「いや、もう起きてる」

焦「お前が起きていたら私が起こせないだろう。これから私が起こすから、それまで寝ていてくれ」

朱「もう意味がわからないからさ。なんだ、とりあえず寝てりゃいいのか」

焦「ああ、それでいい。じゃあ起こすぞ? ……よいしょっと」

朱「焦茶重い。乗っからずに普通に起こせ」

焦「お前好みのスタイルになったんだ、多少重いのは勘弁しろ。あと乗っからないとダメらしい」

朱「ちっ、じゃあさっさとやれよ。いい加減起きたい」

焦「わかった、では遠慮なく。……おにぃちゃぁぁぁぁん、朝だよ起きておきてぇぇぇ!! 学校遅刻しちゃううよぉぉぉぉ!!!」

朱「うるっせえこのバカ! 寝起きで頭回ってないのに無意味にボケてんじゃねぇよ! つっこみきれねぇんだよ!」

焦「むぅ、気に入らなかったか。緑が『この起こし方をされて喜ばない男はいない』と言っていたんだが」

朱「なんでもかんでも間に受けんなよ、まったく」

焦「その……悪かった」

朱「(あーもう、仕方がないなぁ)起こしに来てくれてありがとうな。ちょっと嬉しかったぞ」

焦「本当かっ! じゃあ明日もおんなじように起こしにこよう!!」

朱「普通に起こせ普通に」


群「あら、あなたは?」

茶「は、はじゅめましゅて! おねーちゃんの弟の茶色って言います!」

群「え〜っと……。もしかして、焦茶ちゃんの弟さんかしら? 私は群青って言うの。よろしくね」

茶「はいそうです! よろす……よろしくお願いします!」

群「それで今日はどうしたの? 焦茶ちゃんに用事?」

茶「はい。……いえ、違うんですけどそうなんです」

群「?」

茶「あ、あの! 朱色先輩とお姉ちゃんってつき合ってるんですか!?」

群「ああ、なるほどね。確かにそれは本人に聞きづらいわね」

茶「聞きました。聞いたんですけど、お姉ちゃんもわからないって」

群「聞いたんだ……ってわかんないって? もしかして朱色、焦茶ちゃんにまだ告白してないのかしら」

茶「僕に聞かれても……」

群「それもそうね。いまからあのバカを問い詰めに行きましょうか」

茶「いいんでしょうか……」

群「私がいいって言うんだからいいのよ。それにあのバカと焦茶ちゃんのこと、ちゃんとしないとだし。いくら焦茶ちゃんが優しいからって、関係を曖昧なままにしておくのはよくないことしね」

茶「……はい」

群「大丈夫よ、朱色だって焦茶ちゃんのこと好きだから。なにも心配することないわ」

茶「……そうですね」

群「? ……ああ、そっか。弟としては姉に恋人が出来るのって複雑なのよね。朱色もそんなようなこと言ってたわ」

茶「あの……その……はい、そうです」

群「ふふふ、可愛いわね。ねぇ茶色くん?」

茶「は、はいっ!? なんでしょうかぁ!?」

群「焦茶ちゃんの代わりに、私がお姉ちゃんになってあげようか?」

茶「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

群「くすくすくす、冗談よ。でもね」

茶「?」

群「未来の義妹の弟なんだもの、ちょっとくらいなら甘えてもいいわよ。茶色くんなら歓迎だから、暇なときは遊びにきてね」


焦「キスとか、しないのか?」

朱「いいのか?」

焦「キミがしてくれるんだったら、いつだって構わないさ」

朱「そうか。じゃあ、いくぞ……」

 がちゃ

群「ちょっと朱色! 私のプリン食べ……た……ごめんなさいっ! お邪魔だったわね!!」

 ばたん!

焦「続けないのか?」

朱「ごめんな、少しの間落ち込ませてくれ」

朱「あーくそ。天気予報め、雨降るならそう言っとけよ! 全身びしょ濡れじゃねえか。まったく、ついてねーな」

焦「そうかい? 私はキミを家に呼ぶ口実が出来て運がいいと思ってたんだがな」

朱「お前の家に来る時はもっとちゃんとした格好で来たかったんだよ。ご両親に変な印象もって欲しくないし」

焦「私の両親だぞ? そんなこと気に留めるような性格じゃないさ」

朱「なんだろうその説得力。違う意味で不安になってきた」

焦「それに今日、両親は帰ってこないぞ?」

朱「それって……」

焦「さあどうする? 朱色がやりたいことを言ってくれ」

朱「俺は——」

茶「おねえちゃん、タオル持ってきたよ〜」

焦「あぁすまない、弟よ。さすがにこのまま家に上がるわけにもいかないからな、助かった」

朱「茶色も家にいるんだったら言っておけよ! 危うく変なこと言いそうになったじゃねーか!」

茶「あの、ボクしばらく出かけましょうか?」

朱「気を使わないでくれ。泣きたくなる」

焦「朱色、今度の週末なんだが——」

朱「ちょっと待て。お前の髪、桜の花びらついてる。取ってやるから動くな」

焦「わかった。……あっ」

朱「キス、していいか」

焦「キミがしてくれるんだったら、いつだって」

朱「そうだったな。じゃあ……」

群(じぃーーーーーっ)

茶(ドキドキドキドキ)

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朱「……ちゅっ」

焦「ふふっ、なんだか嬉しいな。だがよかったのか? 見られていたが」

朱「いいんだよ。邪魔されてばっかで悔しかったし、どうせだから見せつけてやろうと思って」

焦「男らしいくて格好いいぞ、朱色。じゃああとで群青さんに焼き増しを頼んでおいてくれ」

朱「焼き、増し?」

焦「ああ、群青さんがさっきのシーンを写真に収めていたのは確認したからな。現像が楽しみだ」

朱「ちょ、姉さん! そのカメラ渡せ! つーかなんでカメラ持ってるんだ〜」

茶「おねーちゃん、よかったね」

焦「ああ、至福だ」


朱「ほれ、まずは一献」

焦「〜〜〜〜! これは美味いな。まろやかな甘味がすっと通って、後味は薄いのに弱くない」

朱「だな。正直ここまでとは思わなかった。もうすこし雑味があってもよかったけどな」

焦「これならもっと買っておくべきだったな。一升瓶二本くらい軽くいけそうだ」

朱「俺ンちの冷蔵庫にビールあるし、足りないなら取りにもどりゃいいだろ」

焦「そうだな。ほら」

朱「おっとっと、サンキュー。しっかし、花見に来て一番初めの会話が酒ってのも終わってるよな〜」

焦「まぁ花見というのは宴会をする口実みたいなものだからな。むしろ桜の話をする方が少ないのかもしれないな」

朱「そう考えるともったいない話だよな。こんだけ美事に咲いてるんだから、ただの口実で終わらすのは」

焦「なら、その人たちの分まで桜を愛でればいいさ。……ありがとう」

朱「いやいや。それにしてもお前、けっこう強いな」

焦「父の晩酌につき合ってたら自然にな。ビール程度なら一晩飲み明かしたって酔わない自信があるぞ? 期待外れか?」

朱「いや、それでいい。俺くらい呑める女がいいんだ。女酔い潰した後どうしていいかわかんねーもん」

焦「普通男は酔い潰そうとするんじゃないのか? まぁ、そういうところがキミらしいが」

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焦「朱色、そろそろやめた方がいい」

朱「ああ゛〜? らいじょぉぉぶらいじょぶ。だって焦茶酔ってないだろ? らったらオレも酔ってませ〜ん」

焦「いや、私もけっこう回っている。あまり顔に出ないだけだ」

朱「まぁたまたぁぁ。そんなあぁなたにビールを進呈! オレもつき合っちゃう! ぐびぐびぐびぐび」

焦「ぐびぐびぐびぐび。ほら、立てるか? いま群青さんを呼んだから、さっさと帰ろう」

朱「帰りませ〜ん。まだじぇんぜん桜を見てないもん。あひゃひゃひゃひゃひゃ」

焦「たかだか一升瓶で前後不覚になるなんて、朱色は弱すぎるな」

 

朱「おい、大丈夫か?」

焦「すまない、ダメだ。頭がガンガンする」

朱「梅干茶作ったから飲んでおけ」

焦「助かる。うぅ〜」

朱「てーか、なんでお前酔っ払ってなかったのに二日酔いになってるの?」

焦「私に聞かないでくれ。昔からこうなんだ」


白「じゃあね、黒」

黒「うん、それじゃあね」

灰「あれ? しー兄来てたの?」

黒「今帰ったところよ。なにか用事でもあったの?」

灰「いや、別にないけど。それより何しに来たの?」

黒「今度、花見に行こうって」

灰「ふ〜ん。で、行くの?」

黒「別に断る理由もないでしょ」

灰「たしかにそうだけどさ……(去年は手繋いでたもんな)」

黒「それより、あんたは水ちゃんに誘われてないの?」

灰「たぶんそのうち言われるよ。めんどくさいけど」

黒「たまにはつき合ってあげなさいよ」

灰「わかってるよ。そう言って毎回つき合わされてるけど……(まあ、結局二人を観察しに行くんだけどね……水が)」

 花見後

水「ねえねえ、灰君」

灰「ん、何?」

水「二人ともラブラブだったね」

灰「まあね(まさか腕を組むとは……見てる方が恥ずかしい)」

水(私もあんな風にできたらなぁ……)


「朱、アンタ焦茶ちゃんとはどこまでいったの?」

「……別に、どこにもいってねーよ。だいたいつき合ってもいねーし」

「はあ? 何それ?」

「うっせ、姉貴にゃ関係ねーだろ」

「アンタねえ、ハッキリしない男は嫌われるわよ」

「……わーってるよ。つーか姉貴は他人の心配より自分の心ぱいででででで!」

「うっさい、一言余計なのよアンタは」

「おはよう朱」

「……おう」

「? どうした? 寝不足か?」

「……まぁ、な。考えごとしてた」

「ふむ、珍しいな。朱は考えるより先に行動するタイプだろう?」

「うっせ。お前だってそうだろうが」

「そうだな。君と一緒だ」

「……なんで微妙に嬉しそうなんだよ」

「ふふ、君と似たところがあるとわかって嬉しいんだ」

「っ……! 恥ずかしい奴……」

「自分に正直なだけだ。私は朱が大好きだからな」

「……なあ」

「うん、なんだ?」

「なんで俺なんだ?」

「? 言っていることがよくわからないのだが」

「……なんで俺を好きになったんだ?」

「なんで……とは?」

「いやだから……理由だよ。人のこと好き好き言うからにはなんか理由があるんじゃねーのか?」

「ふむ……忘れた」

「はあ?」

「君の言うように何かきっかけがあってその人のことを好きになった人もいるんだろう。だが私にはそういうものがない。あったとしても忘れた」

「なんだそりゃ……」

「つまりそれだけ小さなものか本当になかったんだろう。いつの間にか好きになっていた、としか言えない」

「……じゃあ本当に好きかどうかも怪しいんじゃねーの?」

「そんなことはないぞ? ほら」

むにっ

「っ!だ、だからいきなり胸を……!」

「いいから感じてくれ。ほら、心臓がこんなにもドキドキしてる……君以外ではこうはならん。それに私が笑うのは基本的に君の前でだけだ」

「……」

「まだあるぞ。君とこうやって過ごす日々が楽しくて楽しくてたまらない。君が会えなかった日は寂しくて心配で心が張り裂けそうだ。君に嫌われたかと思うと怖くて涙が止まらなくなる……これは君のことが好き、ということじゃないのか?」

「……わかんねーよ。俺はそうはなれないんだ」

「ふむ」

「……昨日姉貴に言われたんだよ。はっきりしない男は嫌われるってな。俺も……お前との関係ははっきりさせときたいし」

「ふむふむ」

「……だけどよくわかんねーんだ。お前のこと嫌いかって聞かれたらそうじゃねーし、だからって好きかと聞かれると……だから、俺はお前の気持ちに答えられねぇ。はっきりしないまんまだ」

「そうか……よし、朱、私とつき合おう」

「はあ? お前俺の話聞いて……」

「いいじゃないか、それでも。あくまで仮の関係でいい。そうやって恋人のようなことをしているうちに何か答えが出るかもしれない」

「……結果お前とはつき合えないとか、俺がお前以外の奴好きになった場合はどーすんだよ」

「その時は残念だが諦めるさ。だがそうならないよう努力する。君に振り向いてもらえるよう精一杯頑張る。駄目か?」

「……あくまでも仮にってんなら」

「そうか。ありがとう」

「……悪ぃな、こんなヘタレで」

「気にするな。それを言ったら私だって君と恋人気分を味わいたくてこんな提案をしたんだ。大して変わらないさ」

「……そーだな。でも覚悟しとけよ? 俺はそんな簡単にゃいかねーからな」

「ふふ、望むところだ。そうでなければ面白くない。期待していてくれ」

「おう」


「灰君、ゴールデンウイークは何か予定あるの?」

「寝てゲームして過ごす」

「またそういうこと言って……」

「なんでわざわざ混雑するのがわかりきってるのに外出しないといけないの」

「でもせっかくの連休なんだし」

「だからこそ積んでるゲームのクリアを……」

「もう……」

「じゃあ聞くけど空はどこ行きたいのさ」

「ディ○ニーランドとか」

「めちゃ混み必至じゃん。25周年記念だかもあいまって」

「だから行きたいの。夏休みだと終わっちゃってるみたいだし」

「んじゃ青さんに頼めば? たまには姉妹水入らずで」

「それもちょっと考えたんだけど……なんか赤さんからお誘いがあったみたいですごいウキウキしてたから」

「あー……どこも恋人同士アツアツですなあ」

「……灰君のバカ」

「人にはね、合う合わないがあるんだよ。逆に聞くけど空は活動的な僕とかどう思う?」

「……熱があるかどうか疑う?」

「ほらね。だいたい行くにしても先立つものがないじゃない」

「うー……」

「それに僕個人としては空がいてくれるだけで十分だし」

「っ! ずるい……」

「まあゆったりまったり過ごしましょう」

「なんか上手いことごまかされたような……でもデートくらいはしようよ」

「そんなに遠くないとこなら」


「アンタさぁ、いい加減赤君につきまとうのやめてくれる?」

「そ、そんな……私別につきまとってなんか……」

「ハァ? どう見てもつきまとってるんですけどぉ?」

「そういうのうざいよ。気づいてないの?」

「そ、そんなこと……」

「お、いたいた。水ー」

「っ! あ、赤君!?」

「ん、なんか取り込み中だったか?」

「な、なんでもないよー、ねー水『さん』?」

「う、うん……」

「ならいいけど……ま、いいや、んじゃ水帰ろーぜ」

「う、うん……」

「……チッ」

「今日練習ないって言っといてくれよー。おかげで部室行ったのに誰もいなくてびっくりしたんだぞ?」

「ちゃ、ちゃんと昨日言ったよ……赤がちゃんと聞いてなかったんでしょ?」

「えぇ? ……あっ」

「もう……」

「なんだよ、結局俺がバカやっただけかよ……」

「赤は走るの本当に好きだよね……」

「おう!」

「……ねぇ、赤」

「ん、なんだ?」

「私……赤に迷惑かけたり……してない?」

「へ? んー……全然。てかむしろめちゃくちゃ助かってるぞ? 陸上部のマネージャーもやってくれてるし、毎日弁当作ってくれたり」

「……そっか」

「周りのみんなも言ってるぜ、水がマネージャーで本当よかったって」

「……ありがとう」


「うっし、今日の練習終わりっ!」

「おっ、赤お疲れ。しかしお前も熱心だよなあ」

「まあ俺はこれくらいしか取り柄ないっすから」

「陸上バカもほどほどにな、じゃあお先」

「先輩お疲れっす」

「そろそろスパイクヤバいな……今年は特に練習多かったしなあ」

もう後1ヶ月頑張ってくれよ……懐かしいな、コイツで4足目だっけ……

「赤は中学入ったら陸上部するんだっけ」

「おう、やっぱ走んの好きだからさ。水はどうすんだ?」

「私は……帰宅部かな」

「? なんでだよ」

「だって……私には赤みたいないいところってないから……」

「そういうこと言うのやめろって。水にだってぜってーいいとこある」

「……だといいんだけどね。ところで赤、もうすぐ誕生日だよね?」

「へ?あー、そういやそうだな。なんだ、なんかくれんのか?」

「うん、ちょっと早いけどね……後で家に来てくれたら渡すね」

「はい、誕生日おめでとう」

「サンキュ。さーて、何かなっと……うおっ、スパイクじゃん!」

「やっぱり陸上とかやるなら必要かなって思って……」

「マジサンキュー! でもよくわかったなあ」

「だって最近はずっとその話だったから……」

「そんな話してたか?まあいっか。大事に使わせてもらうな」

「うん、頑張って」

「懐かしいな……あのスパイク、結構大事に手入れしてたんだけどすぐ履けなくなっちまったんだよな、サイズが合わなくなって……んで無理して履いてたらセンパイにどやされたなぁ。その後もずっと水が誕生日にくれたんだよな、新しいの……なんか水が選んでくれたのは違うんだよな、気持ちが引き締まるってゆーか……他の奴から貰ったり、自分で選ぶんじゃこうはいかねぇんだろうな……やっぱり……水が選んでくれるからかな」

「あかくんすごいね、かけっこいっとうしょう!」

「へっへーん!」

「きっとあかくんならおりんぴっくでもきんめだるだよ!」

「……勉強とかそういうのは昔っから、からきし駄目だったけど……走るのだけは自信があったんだよな、水のおかげで」

 水……お前は自分じゃ何も出来ないなんて言ってるけど……そんなことは絶対にない。

 だって俺がこうやって走ってられるのは全部お前のおかげなんだから。

「……よし、帰る前にもうひとっ走りするか!」


赤「おっすチビすけ! 今日もちっちぇえなあ!!」

紫「ちっちゃいゆーな! 私には紫って名前があるの!」

赤「チビすけのほうがわかりやすいじゃんか」

紫「だからちっちゃいゆーな!!」

赤「ちっちゃくてもいいじゃん、可愛いし」

紫「なっ……」

赤「俺、子供と遊ぶの好きでさー、チビすけと絡んでっと楽しいんだよね」

紫「こ、子供と一緒にするな! 私、あんたと同い年なんだから!!」

赤「わかってるわかってる」

紫(……やっぱり、子供っぽいとしか思われてないんだ。私が小さいから……)

赤「ま、お前がいるとマジで楽しいよ。これからもよろしくな、紫」

紫「……え?」

赤「あと、可愛いって思ってんのもマジだから。……んじゃな、チビすけ」

紫「か、かわ……ち、ちっちゃいゆーな……」


橙「お前さ、いっつも本ばっかり読んでるよな」

緑「悪い?」

橙「悪かねーけど。せっかく可愛い顔してんだからお洒落とか気にしてみりゃいいのに」

緑「お世辞なんていらない。それに興味がない」

橙「どうせ本読むんなら、一冊くらいこういうファッション誌とかも読んでみりゃいいじゃん。お世辞じゃなくて、似合うと思うけど」

緑「……どうでもいい」

橙「そーかい」

緑「……」

橙「今日も読書お疲れ様っす」

緑「……」

橙「む、今日は一段と冷たいね。俺、なんかしたっけ?」

緑「……」

橙「? ……っ!」

緑「……」

橙「似合うじゃん、そのピアス」

緑「……こ、これは別に……」

橙「来月のあの雑誌の特集、夏物の紹介なんだ。俺も読んどくから……今度、一緒に服買いに行こうぜ」

緑「……(コクン)」


桃「焦茶せんぱーい♪」

 ふにっ

焦「桃、今まで黙っていたんだが、今日は言わせてもらうよ」

桃「なんですかあ?」

 ふにふに

焦「君のそのわざと胸を押し付けてくる行為が不快だ」

桃「え……」

焦「君はそうすれば男性が喜ぶと思っているのだろうが、僕にとってその行為はあてつけがましくて、何の意味もない行動だ。もう二度としないでくれ」

桃「ご、ごめんなさい……私、焦茶さんに好かれたくて……すみませんでした。迷惑だったんですね……」

焦「ああ。嬉しいと思ったことなど一度もない」

桃「そ、そうですか……私、わざわざ嫌われることをしてたんですね……あ、私、帰りますね。焦茶さん、私がいると面白くないでしょうし……(ああ……やっちゃったよう……ホントに好きだったのに……もうダメだ……)」

焦「? 何を言っている。帰る必要はない。僕は桃にいてほしいからな」

桃「え?でも今不快だって……」

焦「君のあざとい行動はな。僕は、桃の素の人間性はとても好きだよ。女性としての魅力も感じている」

桃「私、焦茶さんに嫌われてるんじゃ……」

焦「何を言っているんだ。僕は君のことを愛している。だからこそ僕は作られていない、いつもの君を見ていたいんだ」

桃「え……?」

焦「聞こえなかったのかい? 愛しているよ、桃。大好きだ。英語でいうならI LOVE YOUだ。けっしてLIKEではない。なんならもう一度言おうか? 桃、愛して——」

桃「も、もも、もうけっこうです!! ってええええええええ!?!」

焦「やはり言い足りなかったかい? じゃあもう一度」

桃「だ、大丈夫ですってば!!」


「ゴールデンウイークかあ……」

「……何よ、急に」

「あっ、ううん。やっぱりみんな色んなところに出かけたりるんだろうなあって」

「……駄目よ、まだ体調が万全じゃないんだから」

「い、いやまだ何も——」

「そんな風に言ってたらどこかへ出かけたいって言ってるのと同じよ」

「……あはは」

私だって本当は白と一緒に出かけたりしたいけど……それでもし悪化なんてしたら……

「やっぱり無理だよね……でもいいなあ……」

「……ほら、これで我慢しなさい」

「……車椅子?」

「そんな顔されてたら気分が悪いのよ、敷地内だけでも少しはましでしょ」

「……ありがとう」

「あ、こんなとこに花壇なんてあったんだ」

「回ってみて初めてわかることってあるのね」

「そうだねぇ」

……なんだかちょっとしたデートみたいで、いいな。

「これなら一人でもあんまり退屈しないですむかも」

「駄目、一人でなんて。いくら敷地内だからって何が起こるかわからないんだから」

「だ、大丈夫だって」

「とにかく駄目」

「黒は心配性だなあ……」

 心配なのもそうだけど……こうやって車椅子を押すのを誰かに取られたりするのも嫌だもの、看護婦さんでも……我ながら嫉妬深いわね。


「朱、朱よ、起きてくれ」

「んぁ……あんだよ……?」

「ほら、早く起きてくれ」

「なんなんだよ……」

「今日は私とデートをしてくれると約束したじゃないか」

「あぁ、そういえば……ん……?……ちょっと待て、今何時だ?」

「6時前だな」

「……はぁ?」

「正確には……5時58分27秒だな」

「……いくらなんでも早すぎるだろ」

「何を言う。君とのデートだぞ? それも付き合うようになって初めての。時間なんていくらあっても足りない。ほらほら、早く準備してくれ」

「ちょ、待、わ、わーったよ、ったく……」

「んじゃ行ってくる」

「はい、行ってらっしゃい。ちゃんと焦茶ちゃんのことエスコートするように」

「余計なお世話だよ」

「では行ってまいります、お義母様」

「さて、最初は映画だな」

「つっても恋愛ものだろ?最後まで見てられっかな……」

「何、眠くなったら私の肩を使ってくれて構わん」

「そりゃどーも」

(やっぱどーにも退屈だなー……)

 とん

「ん?」

「すー……」

「ったく……」

「ほら、起きろ」

「ん……あれ、私……」

「始まって20分くらいで寝ちまったんだよ」

「そうか……肩を貸すつもりが借りてしまったな」

「気にすんな。でもよかったのか?」

「何がだ?」

「映画。楽しみにしてたとかさ」

「ああ、大丈夫だ。確かに少し惜しい気もするが……朱の肩枕に比べたら軽いものだ」

「ま、まあいいや。ならとっとと出るか」

「そうだな」

「ところでお前、ひょっとして寝不足か?」

「? よくわかったな」

「まぁな。映画の前から欠伸して眠そうだったし」

「昨晩は楽しみで眠れなかったんだ」

「子供かよ」

「ふふ、なにせ初めて君のほうから誘ってもらえたデートだからな」

「……そうか」

「ん、顔が赤いぞ」

「うるせぇっ」

「どうだ?」

「んー……まあなかなか」

「なんだそれは。なら……これならどうだ」

「よく似合ってると思うぞ」

「それじゃ駄目なんだ、朱がいい、と思ってくれるような服じゃないと買う意味がない。それともアレか、朱はネコ耳メイドとかそっちのほうがいいのか」

「俺にそういう趣味はねぇっ! だいたい服選べって言われたってよぉ……イマイチピンと来ねぇし、お前美人だから何着ても着こなしちまうだろ」

「ふむ、誉めてもらえたのは嬉しいが、今は君が気に入る服を見つけるほうが先だな」

「気に入る、ねぇ……ん?」

「どうした?」

「……ちょっとこれ試してみてくれ」

「わかった」

「どうだ?」

「……」

「朱?」

「へ!? あ、ああ、まあ、いいんじゃねぇか?」

「……わかった、これにする」

「え、おい」

「顔が赤いぞ、朱。ふふふ、よほどこれを気に入ってくれたらしいな」

「うっ……」

「次のデートではこれを着ていくことにしよう。楽しみにしていてくれ」

「今日は本当に楽しかった」

「そらよかった」

「やはり関係が変わると一日が変わるな。こんなにも楽しかったのは初めてだ」

「……そっか、んじゃもっと楽しくしてやるよ」

「え? んっ……」

「……ちょっと気障だったな」

「あ……朱、駄目だ、もう一度だ」

「は、はあ!?」

「だ、だって今のは不意打ちすぎる。驚きのせいで嬉しさ半減だ。だからもう一回」

「あ、あんな恥ずかしいマネが2回も出来るか!」

「いいから頼む。お願いだ」

「……っ、だー、もう……目ぇ瞑ってろ」

「こ、こうか?」

「そのままだぞ……」

ちゅっ

「……ご満足かよ」

「ああ……凄く嬉しい……最高の一日だ」


赤「だーっ、わかんねーっ!」

水「お、落ち着いてやれば大丈夫だよ」

赤「そうは言うけどよぉ……あー、なんか喉乾いてきた」

水「あ、じゃあお茶持ってくるね」

水「はい」

赤「おう。しかし水はよくブラックコーヒーなんて飲めるよな」

水「慣れると美味しいよ」

赤「そんなもんかねぇ」

水「で、でも、普通に甘いのも、好きだよ」

赤「ああ、それも知ってるよ。生クリームたっぷり使ったケーキとかだろ?」

水「ほ、他にも……」

 ちゅっ

赤「んなっ!?」

水「え、えへへ……」


灰「暑くなったり寒くなったり忙しい時期だよ、まったく」

空「そうだねー、昨日はあんなに暑かったのに」

灰「そのせいでうちの姉の機嫌が最悪に」

空「? 黒さん暑いの苦手だっけ?」

灰「いや、せっかく寮にいるしー兄が体調崩してまた入院することになったらどうするんだってブツブツブツブツ」

空「……黒さんって本当に白先輩のことが大事なんだね」

灰「大事すぎて胃とか痛めそうだけどね」

空「……灰君も好きになった人は大事にするタイプ?」

灰「? なんで?」

空「だ、だって黒さんとは姉弟だしさ」

灰「……どーだろ、ねーちゃんとは別ベクトルだとは思う」

空「そ、そっか」


『五月病』

朱「明日からまた学校か。だりーなぁ」

焦「まぁ今週はゴールデンウィークもあったしな。私も少々気が重い」

朱「……なぁ、明日サボってどこか行かないか? 連休終わったばっかだからイベントとかあんま無さそうだけどさ」

焦「行くなら一人で行ってくれ。私は登校する」

朱「冷たいなー、つき合ってくれたっていいじゃんか」

焦「私がついていったら朱色はそれを肯定するだろう? 私をダシに逃げを正当化されても困るからな」

朱「ぐっ、厳しいな。つーかお前はそういうのってないのか?」

焦「そういうのとはなんだ?」

朱「学校行くの面倒だとか、勉強したくないとかそういう五月病っぽいの」

焦「ないな。少なくとも当分はそうなる予定もない」

朱「マジか。まぁお前ならそうかもしれねーな。俺にゃそんな境地に達するなんぞ出来そうにもないけど」

焦「そうでもない。自分にとって救いになる何かがあれば、後ろ向きになることはないさ」

朱「へーそういうもんかね?で、お前の救いってのは何だ?」

焦「朱色が隣にいてくれること。朱色が私の好意を受け入れてくれること。器量の悪い私を朱色が許してくれること。たぶん私は朱色がいなければ、永遠に五月病にかかるんじゃないかな」

朱「……恥ずかしいことを真顔で言うなよ。赤を前にした青じゃないんだから」

焦「照れるな、本当のことだ」

朱「……俺もお前が救いだよ。こうして愚痴ってればお前が慰めてくれるの知ってるからな。なんか甘えてるな」

焦「別に構わないさ。ところで」

朱「なんだ?」

焦「明日サボってどこか行かないか? 連休終わったばかりでイベントはなさそうだけど」

朱「お前な……。受験生に遊んでる時間はないの! 学校行くぞ学校!」

朱「……二人でな(ぼそっ)」


焦「朱色、ドライブに行きたいんだがどうだ?」

朱「どうだも何も、姉貴がいないから無理だろ」

焦「大丈夫だ、私が運転しよう」

朱「いつの間に免許取ったんだよ。今年受験だってのに余裕だな」

焦「女に学歴はあまり関係ないからな。イギリスの知り合いから大学に誘われているし、気楽なものさ」

朱「他のヤツに言うなよ。お前を刺そうとするヤツが出るかもしれないから」

焦「お前以外に進路の話をする気はないさ。で、どうだ、ドライブに行かないか?」

朱「行く。お前の運転ってのも面白そうだ」

朱「出発前に茶色がめちゃめちゃ心配してたのが妙に気になるんだけど」

焦「茶色には運転に慣れるまで一緒してもらったからな。最初の運転のイメージが抜けないんだろう」

朱「そういう類の心配じゃなかったような……?」

焦「とりあえずどこに行こうか。隣町のアウトレットまで走らせようか?」

朱「そうだな……。そうだ、お前が車の練習してたところ見に行きたい。免許取った時そこで練習できるし」

焦「そうか、じゃあそうしよう。ついでにそこで知り合った連中も紹介しよう」

朱「あ、結構有名なところなんだ」

焦「ああ、全国から腕のいい連中が集まるらしい」

朱「は?」

 

赤「あれ、焦茶さん? しばらくぶりじゃん、どうしてた?」

焦「最低限必要な運転技能は獲得できたからな、ここはもう卒業しようと思ってな」

赤「あ〜、この辺じゃもう最速だもんね。絵具山とかクレヨンヒルに有名なのがいるし、そっち攻めてみたら?」

朱「最速? 攻めるって……?」

焦「いや、どうせなら雪道や舗装されてない道を走る技能が欲しい」

赤「そうなるとケント市とかラシャ市の方まで行かないとダメだと思うよ。ただ向こうはさすがに専門家がいないと……」

焦「そうか、それは考えどころだな」

朱「さっきからなんの話をしてるんだ?」

焦「運転技能の向上に便利な場所についてだが」

赤「有名な走り屋がいる場所についてだけど……キミ誰?」

朱「茶色が心配してたのはこれか……焦茶がハイスペックな馬鹿だったことを忘れてた……」

焦「彼は朱色。私の男だ」

朱「朱色です。よろしくお願いします」

赤「へぇ、キミがあの朱色くんなんだ。焦茶さんからよく聞かされてるよ。キミも峠に興味があるのかい?」

朱「えっと……興味はありますが、峠を攻める気はないですね」

赤「そっか〜、残念だ。最近どんどん人口が減ってるから新しい仲間が増えるかと思ったんだけど」

焦「まぁ免許なんて身分証の代わりに持つ人間も多いし、車は維持費がかかるからな。その辺は仕方がないだろう」

朱「そういう根本的な話じゃないからさ」

赤「あ、いま思い出したんだけど、このごろ焦茶さん目当ての走り屋が来てるんだけど」

?「そうか、お前が焦茶か。ようやく会えたぜ」

焦「誰だお前は」

紅「俺は紅色。虹色の紅いの流星とは俺の事だ」

焦「虹色なのか紅色なのかはっきりしない通り名だな」

紅「うるさい!! そんなことより俺と勝負しろ。お前を倒せばこの辺りじゃ最速になれるんだ」

朱「茶色、お前もこんな風に巻き込まれたんだな。大変だったな。でも言っっておけよこういう大事なことは!」

焦「別に最速を名乗りたければ名乗ればいいだろう。私はそんな称号に興味はない」

紅「はっ、強がんなよ。大方俺に負けるのが怖いんだろ? 俺が来てから今日までずっと逃げ回ってたくらいだしな」

赤「いや、焦茶さんは普通に興味ないだけだと思う」

焦「最速を名乗りたいなら勝手に名乗ればいい。私はこれから焦茶とドライブなんだ。無駄な時間は過ごしたくない」

紅「負け犬女に合った冴えない男だな。そんな男に付き合ってる時間が一番無駄なんじゃないか? はははっ」

焦「……なんだと?」

紅「気に障ったか? でも間違いじゃないだろ。勝負に逃げる女の男だ、ろくなもんじゃないに決まってる」

焦「そうか。よっぽど惨めに負けたいらしいな。乗れ。二度とそんな口が叩けないようにしてやる」

紅「そうこないとな。ルールはこの峠を速く下りた方が勝ちだ。シンプルでいいだろ?」

焦「いいだろう」

赤「お〜、こりゃ久々に面白い物が見れそうだ」

朱「冴えない男でいいから帰りたい……」

焦「朱色、なにをしている。早く助手席に座れ。一緒にあの阿呆を倒すぞ」

朱「茶色、なんで本気で止めてくれなかった。お前ならわかるだろ……」

 

朱「自分の部屋がここまで安らげる場所だと思わなかった。加速度を感じない世界最高……」

焦「不愉快な輩に会ってしまったが楽しかったな。その内また行こうな」

朱「全力で断る!!!」

紅「馬鹿な……この俺が振り切られるだと? しかも助手席に男を乗せて? ありえないありえないありえない」

赤「やっぱ焦茶さんは速いな。俺も見習わないと」


「桃、本当にいいのか……?」

「う、うん、緑君の為なら私……平気だから」

「……無理、してないか?」

「そ、そんなことないよ!」

「ならいいが……いくぞ?」

「う、うん……」

 

「……だからそんなにじっと見られると食べづらいんだが」

「あ、あう……ごめんなさい……」

「……やはり譲るよ。好物なんだろう? 大福」

「ダ、ダメだよ! せっかく黄緑ちゃんがみんなにって配ってくれたのに……」

「ちょうど寮にいる人数分だったらしいな。それで一人一つが徹底されたのか……」

「だ、だからそれは緑君の分! わ、私はもう食べちゃったし」

「……そんなに美味かったのか?」

「そ、それはもう! 餡の甘味もちょうどよくってお餅の食感も……」

「……なら半分づつ食べるか? それならいいだろ?」

「ごめんね……」

「気にするな」


『反応の違い』

 赤の場合

「青、ちょっと宿題見せ……」

「あ、赤先輩……きゃああああああああああああああああ!!!」

「わっ、そ、空、わ、悪ぃっ!」

「空、いったいどうし……あ、赤、アンタ……!」

「大変もうひわへほはいまふぇんでひた……」

「部屋に入る時はノックしなさいっていつも言ってるでしょう? まったく……」

「うー、もうお嫁にいけない……」

 灰の場合

「空ー、ちょっとかくまってー」

「へ? いいけど」

「空ちゃん、灰の奴ここに来てない?」

「いえ、来てませんよ」

「そう……ありがとう」

「ふぃー、助かった助かった」

「もう、今度はなにやったの?」

「別に。隠れてゲームしてたら見つかっただけ」

「テスト前だからだよ」

「だって勉強めんどいし」

「うー、羨ましい……」

「……で、空は何時になったら服着るの?」

「へ? ……うわわっ」

「女の子がその格好はどうかと思うよ」

「い、いいのっ、部屋の中だし」

「見えないところからしっかりと。バイねーちゃん」

「うー……」


朱「焦茶〜、起きろ〜」

焦「く〜。すぅ」

朱「さっさと起きろ、てか俺の部屋で寝んな〜」

焦「んん、すぅ」

朱「起きないとキスしちゃうぞ〜」

焦「すぅ——(ぴくん)ん! ん!」

朱「起きたみたいだな。ほれ、そろそろ姉貴が帰ってくるからお前も帰れ」

焦「ぐ〜っ! ぐ〜っ!」

朱「起きてるのはわかってるから、さっさと体起こせ」

焦「キスをされるまで起きない。ぐ〜ぐ〜!」

朱「キスしたって起きないくせに」

焦「何を言う。朱色にキスされて私が起きないはずないだろう。ぐ〜ぐ〜すやすや」

朱「既に三回もしたんだけど起きなかったじゃないか」

焦「(がばっ)待て朱色、それはどういう意味だ!?」

朱「お〜起きた起きた。さっさと帰って茶色に飯でも作ってやれ」

焦「その前に朱色、既にしたって、キスをしたのか!?」

朱「お〜やったやった。起きてくれないからけっこう寂しかった」

焦「なんということだ! なんということだ!! 朱色にキスされたのにそのことを覚えていないなんて!!!」

朱「ま、たまにはな」

焦「悔しすぎるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

朱「それはそうと、焦茶」

焦「なんだ!?」

朱「ちゅっ。続きは明日してやるよ。だから今日は帰りな」

焦「……わかった、帰ろう。だけど——」

朱「?」

焦「朱色を家に持ち帰ろう」

朱「ちょ、おま! この手錠どっから出した。ちょっ、あっ、アーーーーーッ!!!」


茶「すみません、買い物につき合わせてしまって」

黄緑「いえ、私も欲しい物がありましたしいいんですよ。それに茶色君が車を出してくれたお陰で帰りも楽チンです」

茶「そう言ってもらえると助かります。……あ、着きましたよ」

黄緑「はい、ご苦労様でした。それでは——」

茶「(黄緑のドアを開けて手を差し出しながら)どうぞ」

黄緑「? えっと……」

茶「あ! すいません、いつもの癖でつい……」

黄緑「癖って……見かけによらず随分とプレイボーイなんですね」

茶「そ、そうじゃなくて、ホームヘルパーの時にお年寄りが車に乗るときとか下りる時とか、こうやって手で支えてあげるんですよ。それでうっかり」

黄緑「まったく、茶色君はドジですね。ふふふふふふふふふ」

茶「あはははは」

黄緑「ところで、どうしてうっかりお年寄りと勘違いしたんですか?」

茶「ちょ、ま、待ってください! お年寄りと勘違いしたわけじゃな、あーーーーっ!」


 ザァァー

黒「はぁ……全くもう」

白「あれ? 黒がイライラしてるなんて珍しいね」

灰「どうやら雨のせいみたい」

白「どういうこと?」

灰「最近、雨が続いてて洗濯物が乾かせないって」

白「あはは黄緑さんみたいだね」

灰「笑い事じゃないよ、しー兄。お姉ちゃんがイライラしてると怖くて怖くて……」

白「うーん、それなら考えが」

白「黒ー」

黒「何? 白」

白「あのね明日時間ある? よかったら何処かに行かない?」

黒「できればそうしたいけどね……」

白&灰「?」

黒「急に雨が降り出して白がずぶ濡れにでもなったら……」

白「大丈夫だよ」

灰「そうそう心配しすぎだよ」

黒「だめ! それで白が風邪でも引いたら大変よ。季節の変わり目なんだから注意しないと!」

白「そ、そうかな」

黒「そうよ!」

白「で、でもそんなに心配しなくても……」

 以下言い争いが続く

灰(しかし相変わらずの過保護っぷりだよ……でも、しー兄でもお姉ちゃんを止められないなんて! やっぱり一大事だよ)


「桃、これを」

「へ? どうしたの緑君」

「うん? 今日じゃなかったか? 桃の誕生日」

「え……お、覚えててくれたの!?」

「さすがに彼女の誕生日を知らないというのはまずいからな。まあ青さんに頼んで教えてもらったときは日にちが迫っていたから多少慌てたが」

「あ、開けてもいい?」

「もちろん。気に入ってもらえるといいんだが」

「えへへ、なんだろう……あ、カーディガンだ」

「これから寒くなるし、こういうのもいいかと思ったんだが……どうだ?」

「凄く嬉しいよ、ありがとね、緑君」

「そうか、気に入ってもらえたなら何よりだ」

「これ緑君が選んでくれたの?」

「え、あ、いやその……見立ては青さんに頼んだんだ」

「青ちゃんが?」

「ああ、聞いたはいいが、何を渡せばいいか見当もつかなかったからな……本くらいしか自信を持って選べるものもなかったし」

「そっか……でも私は緑君のくれるものだったらなんだって嬉しかったよ?」

「気持ちは嬉しいが、そういう心遣いは抜きにちゃんと喜んでもらいたかったからな」

「……ありがと、大事にするね」

「ああ。来年は一人で選べるよう、僕もいろいろと勉強させてもらうよ」

「あ、いいのかなー、そんなこと言っちゃって。女の子は期待させると怖いんだぞー?」

「む……」

「ふふ、嘘嘘、冗談だよ」


「……何してんだお前」

「おお、朱じゃないか。何、とは?」

「その格好だよ」

「? 何の変哲もないチアガール服だが」

「だからなんでそんなもん着てるかって話だよ」

「今日は体育祭じゃないか」

「……ああ、そういやなんか応援団には制服があるとかどうこう言ってたな」

「どうだ、似合うか?」

「……なんかミニスカのお前って新鮮だな。いつもズボンだろ」

「うむ、自分でも新鮮な気分だ。それはそうと早く感想を言ってみてくれ」

「感想ねえ……」

「この野郎、朱め!」

「どわっ!? なんだよ、後ろからいきなり」

「うるさい! こんなときにもかかわらずチアガール姿の焦茶さんとイチャつきやがって! 少しは俺らにも譲りやがれ!」

「イ、イチャついてなんかねーだろ! てか話したいんだったら勝手にしろ!」

「ええい、黙れ黙れ! あ、それと焦茶さん、そろそろ応援合戦が始まるそうです」

「ん、そうか、ありがとう」

「……それにしてもやっぱ美人だよなあ」

「喋んなきゃ普通にな」

「バカ野郎、ああいうところも魅力の一つだろうが」

「そーかよ、俺にゃわからん」

「どうだ、朱、見ていてくれたか?」

「んー、まあな。上手いじゃん、踊り」

「うむ、皆で練習したからな」

「ご苦労様。んじゃ俺もそろそろ行くわ」

「障害物競走だったか?」

「ああ。ったく、一人一つは必ず何かの競技に出る、ね……めんどくせーの」

「待ってくれ、朱」

「あ?」

 ちゅっ

「!? ななな、何すんだよ!」

「私からの個人的な応援だ」

「あ、あのなあ……」

「じゃあ頑張ってくれよ」

「……ったく、しゃーねーの」

「すごいじゃないか、朱、一位だぞ!」

「だー……しんど……もー、今日は走らねーぞ……」

「でもどうしたんだ急に。いつもなら適当に流すだろうに」

「……お前があんなことすっから……ガラにもなく頑張ってみよーっつー気になっちまったんだよ……ったく……」

「……! そうか!」

「なんでそんな嬉しそーなんだか……」


「よーっし、きょうのうんどうかいがんばるぞー!」

「あかくん、がんばってね」

「おう、きょうは『たいくのひ』だからな!」

「……たいくのひ?」

「え? ちがうのか?」

「……あれれ? でもそれでいいような……」

「……まあ、なんでもいいや、いっとうしょうはおれがとるかんなー!」

「う、うん!」

「ふふ……」

「お? どした水、急に。俺なんかおかしいとこあるか?」

「あっ、ううん、そうじゃなくてね……ちょっと思い出し笑い」

「? まあいいや、んじゃそろそろ行くな」

「うん、赤、頑張ってね」

「おう!」

「うっしゃー、一位ーっ!」

「最後すごいスパートだったね……はい、お水」

「サンキュー」

「……やっぱり『たいくのひ』は赤の日だね」

「へ? 何言ってんだ、体育の日、だろ?」

「そうだね」

「……?」


「緑くーんっ! 見て見て!」

「……どうしたんだ桃、その格好は」

「なんか今日はミニスカートの日なんだって」

「なんでもあるな……ところで桃、寒くないのか」

「へ? だ、だいじょーぶだよ」

「嘘をつけ。少し震えているじゃないか。とりあえず早く着替えて……」

「で、でもでも……緑君に見てもらいたかったんだもん」

「……そうか」

「せめて感想だけでも聞かせてくれない?」

「ん、そうだな……月並みな言葉だが、よく似合っていて可愛いと思う」

「えへへ、ありがと」

「そういえば桃がそういう格好をしているのを見るのも久しぶりな気がするな」

「そうかな?」

「まあおしゃれをするのもいいが、風邪をひかないようにな」

「うん」


朱「はあ? メイド喫茶ぁ?」

友「なんかクラス合同でやるみたいだぜ」

朱「よくそんなもん通したな、オイ……」

友「まあとにかく行ってみようぜ。なんか面白そうだし」

朱「……なんとなく嫌な予感がするんだが」

焦「お帰りなさいませ、ご主人様♪」

朱「……」

友「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

焦「ん、どうした朱、こめかみを押さえて。頭痛か?」

朱「おかげさまでな……なんでこういう予感ばっか当たるんだか……」

焦「まあとにかく座ってくれ。ちょうど席も空いたところだ」

朱「ん、そだな。メニューは……案外普通だな」

焦「こちらがオプションになります、ご主人様♪」

朱「その声やめろ。なんか気味悪ぃ」

友「何を言うか、朱! すばらしい萌えボイスじゃないか! さすが焦茶さん!」

焦「ありがとうございます♪」

朱「……まあいいや。とりあえずコーヒー頼む」

焦「かしこまりました♪」

焦「お待たせしました♪」

朱「お、けっこう美味いな」

友「おお、ホントだ。インスタントじゃないんですか?」

焦「なかなか本格的なものを持っている先生がいたので貸してもらっている」

朱「ほー……んじゃついでだし、なんか料理でも頼もうかな。オススメとかあるのか」

焦「それならぜひ朱にはこれを頼んでもらいたい」

朱「んー? オムライスオプションつき? なんか普通のより高いが、オプションってなんだよ」

焦「それは注文してからのお楽しみだ。料金も通常と同じでいい」

朱「おいおい、いいのかよ」

焦「差額は私が払う。頼んでくれないか?」

朱「……まあいいけど。じゃあこれ頼む」

焦「どうぞ、ご主人様♪」

朱「ぶふぅっ!? なんだよコレは!?」

焦「私のご主人様への愛の形です♪」

友「うおお、ケチャップでハートマークに『I Love Syu』とまで……」

朱「これがお前が推してた理由か……」

焦「……お気に召しませんでしたか?」

朱「うぐっ……だー、もうわかったよ!」

焦「はい、あーん♪」

朱「んなぁっ!?」

焦「あーん♪」

朱「……ああもう!」

 パクッ

焦「どうですか?」

朱「……美味いよ、そりゃもうものすげぇ美味い」

焦「そうか! 自分で作った甲斐があったな」

朱「これお前が作ったのか……妙に時間がかかると思ったら」

焦「ほらほら、朱、あーん」

朱「……くそぉ」

友(焦茶さんすごい笑顔だな……こんな嬉しそうな顔初めて見るぞ)


 ピピピピピ……

「んー……ん? 目覚まし?」

 ピッ

「……珍しいな、アイツが朝起こしに来ないなんて」

「あ、朱おはよう」

「おはよう……なあおふくろ、焦茶は?」

「それがね、なんか風邪ひいちゃったんだって」

「へえ……」

「学校帰りにお見舞いにでも寄ってあげたら? はいこれ、ケーキでも買ってあげなさい」

「んー」

「けほけほ……」

「ういーす」

「え……しゅーくん……?」

「おう、しゅーくんだ。大丈夫か?」

「ああ、大丈夫……けほっ」

「とてもそうは見えねーぞ」

「朱が来てくれたから大丈夫だ、元気が出た」

「アホ。ほら見舞いのケーキだ」

「ありがとう。わざわざ買ってきてくれたのか?」

「おふくろにほいと金渡されたらなんも買わないわけにもいかねーだろ。食えるか?」

「……駄目だ、少し辛い」

「そうか、じゃあとりあえずここに——」

「あーんしてくれ」

「はあ!?」

「あーん」

「出来るかンなこと!」

「むう、いいじゃないか、あーん」

「雛鳥みたいに口開けてんじゃねえ。さっさと口閉じろ」

「意地悪……」

「意地悪もくそもあるか、ンな冗談言う元気があるんなら食えるだろーが」

「でもせっかくのチャンスだし、朱に食べさせてもらいたい……駄目か?」

「うっ……ったく……ほら」

「あーん」

 ぱくっ

「どうだ?」

「うん……おいひい」

「ん、そうか」

「次は口移しがいいな」

「!? お、お前なあ……」

「駄目……?」

「同じ手が二度も通用するかっ。ほら、あーんだけはしてやるから、さっさと口開けろ」

「あーん♪」

「ったく……」

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灰(男)×橙(女)

 年上になんか、恋するもんじゃない。

『Please,see me』

「あんたさー、もうちょい見た目に気ぃ遣いなさいよ」

 馴れ馴れしい声。iPodに耳を傾けてる俺に聞こえるようにご丁寧にイヤホンを左耳から抜き去ってくださっている。

「……だるい」

 目線だけ声の主に向け、いつもと同じ返答をした。

「あんた、見た目は悪くないんだからさ、髪とか服とかどーにかすればかなりイイカンジになるよ、絶対!」

「……めんどくさい」

 正直、朝に時間をかけて髪をセットしてくる奴はバカだと思う。俺ならその時間は睡眠に回す。

 服に金かけるのも同じ。それっぽいジャケット買う金でいくらゲームが買えると思ってんだ。

「おねーさんがコーディネートしてあげるから♪」

 ……こう言われると、断れない。理由なんか、聞くな。

「あはははは♪」

 学校の廊下、偶然、あいつを見た。

 俺と違い、誰からも好かれるあいつ。隣には誰がいたっておかしくない。……けど。

 ——また、そいつかよ。

 めんどくさい感情が胸の奥から沸き上がってくる。

 前が見えないくらい長い髪。あいつには切れと言われるが、これはこれで便利だ……見たくなかったものを見なかったことにするために。

 年上になんか、恋するもんじゃない。

 『幼なじみ』なんてハンデ、クラスメートに比べたらカスみたいなもんだ。勝手に仲良くなって、勝手に一緒の思い出を作っていく。俺の知らない奴と仲良くなっていくあいつを止める手段なんかありやしない。

 ……なあ、金をいくら使ったってお洒落な服を着るよ。どんなに朝早く起きたっていいから髪だって整える。

 そしたら、そしたら……お前は俺を見てくれるか?


黄(男)×赤(女)

『負けない!』

「……なんで赤なわけ?」

「むしろ俺はなぜお前が赤ちゃんの魅力がわからないのかと問いたい!」

「友達として絡む分にはおもしれえけど、オンナとしてだとなあ……」

「黙れ橙! とにかく俺は、マイエンジェル赤ちゃんと一緒に帰るべく、今からお誘いしてくるのだ!!」

「あーはいはい、いってら。さっさと撃沈してこい」

 つーことで、俺、黄色はついに、『友達』というカテゴリーから一歩足を踏み出すべく、愛しの赤ちゃんの元に特攻したのだった!

「あ、あ、あああ、赤ちゃん! ききき今日! い、一緒に帰らねえ!?」

 うん、完璧、予習通りにすらすらと言えたぜ☆(いや、テンパりすぎだから by橙)

「うん、いいよー」

 !!!

 み、見たか橙!! 俺の熱い想い、赤ちゃんに通じたぜ!!

「あ、でもボク今日部活だから9時過ぎくらいまで待っててもらうけど、いい?」

「……」

「まーしゃーねーって。電車通で帰宅部期待のホープのお前じゃ9時までは待てねえだろ」

笑顔で肩を組んでくる親友に本気で憎悪を覚えながら、自転車通学のこいつにものすごい嫉妬をしてみたり。

「くそぅ……くそぅ……三駅先の我が家が憎い……」

 9時ちょい前の電車を逃せば、次の電車は11時の最終便。ああ素晴らしきかな、ど田舎の交通事情……。

「赤は部活第一だからなー。万が一付き合うことになったって、お前はずっと陸上の二番目だろ」

「……ずーん……」

 言い返せないのが辛い。そうだよなあ、土日も練習だろうからデートもできないだろうし……ああ、ある意味どんな男を敵に回すよりも厄介だよ。

 ……寒い。一人での、この時期の空気はいくらなんでも冷たすぎる……でも!

「……え!? 黄色くん!?!」

「言ったっしょ、一緒に帰ろうって」

 大好きな人の、可愛らしい驚きの声。それだけで、待ってた時間なんてどうでもよかったみたいに思える。

「ホントに、待ってるなんて思わなかった……」

「へへへ。じゃ、一緒に帰ろうぜぃ♪」

 いいんだ、別に。今、俺が一番じゃなくてもさ。だって、この子といると、たのしーんだもん。

「今日の部活でね……」

 いいんだ、別に。こんだけ待ってたのに、話題が部活のことだけだって。だってこの子の声聞けるだけで幸せなんだもん。

「ね、赤ちゃん」

「え? 何?」

 ただ……さ、

「また、今日みたいに一緒に帰ろうぜ♪」

 いつかは勝ってみせるからな、陸上このヤロー!!!







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 13:13:24