黄メインSS

黄「……なんで、あたしはこんなにバカなんだろうね」

男「(酒が入ると愚痴るタイプか……)いいよ、聞いてやる。どうしてそんなふうに思うんだ?」

黄「だってさ。だって、あたしってホントにバカでしょ?……成績見れば一目瞭然だし」

男「……でも俺は、バカなオマエが好きだけどな」

黄「え?」

男「オマエのバカってさ、周りを明るくできるだろ。人を不快にさせるタイプのバカじゃない」

黄「………でも、あたしは今までいろんな人に迷惑かけたよ?」

男「あのな、誰にも迷惑かけない人間がいるもんかよ。人間てのは支えあうもんだろ?」

黄「……」

男「俺はさ、そのままのオマエでいてほしい。バカでも、それでもずっと明るいオマエが好きだから」

黄「え、ちょっと………色無?」

男「……ッ…、……やべ…」

黄「……いいの?あたしで………こんなにバカなあたしで、ホントにいいの……?」

男「……ぅ…」

黄「あれ?い、色無……?」

男「酒が回って、なん、か、アタマが、おかし………ごめ、寝る……」(ドサッ

黄「ちょ、っと……———ねぇ、さっきの言葉は、どっちなの……?本気で信じようとしてるあたしは、やっぱり、バカなの……?」


黄「色無〜、ヒマだよ〜、遊んでよ〜」

無「あのな黄、ここは図書室だぞ? 遊ぶところじゃない。暇だって言うなら少しは」

黄「なによ、あたしに勉強しろって言うの? そんなの死ねっていうのと同じじゃない!」

無「あぁ分かった分かった、だから叫ぶな転がるな。集中できん」

黄「だってヒマなんだもん!」

緑「黄……いつも言ってるけど、図書室では」

黄「静粛にって言うんでしょ?~はいはい、分かってるわよ。

  あたしだって、カサさえあれば、こんなタイクツなとこすぐに出て行きたいんだから」

無「……なぜ俺を見る? まさか俺の傘をアテにしてるのか? だからここにいるってか?」

黄「ピンポーン! あたしと相合傘できるなんて、色無はラッキーメンだね♪」

緑「………………」

無「なぜ複数形……大体、俺のは折りたたみだぞ?二人には狭い」

黄「だからいいんじゃない! 狭いカサに寄り添うふたり、触れ合う肩! く〜〜〜っ、青春だね!」

バンバンバンバン!

無「イテテテテ、あ〜もう分かったから肩を叩くな、少しは大人しく待ってろ。ったく……」

黄「入れてくれるの!? ありがと〜♪ さすが色無、優しいね!」

無「おいこら、抱きつくなっての。字が書けんだろうが」

黄「照れなくてもいいじゃない、嬉しいくせに♪ うりうりうりw」

無「いや、まじで止めろって!」

緑「…………こんな雨、止んでしまえばいいのに」

無「? 緑、なんか言ったか?」

緑「いえ、何も」


『片道ビーチ切符』

 夏の夜、蒸し熱いのは仕方がないとしても、

『あっははははは』

 ビキニ姿でげらげらと笑う酔っ払いを許容出来るとは限らない。俺の器はそこまで大きくないし、仕方がないと言って許すのは無理だろう。第一、未成年がそんなはしたない格好なんてしていたら、いけません。

 それに、

『どこ見てんの、色無…えろなしぃ』

 エロはお前だ。

 と言いたいけれども、視線を黄色に向けると意外に大きい果実が二つ。慌てて視線を反らすと、黄色の笑いが大きくなった。屈辱的でも今は我慢の子、これ以上は相手の思う壺だ。我を忘れるな、相手はあの黄色なんだ。

 深呼吸をして再び正面を見る。

「自分の部屋に戻れ」

『嫌、堅いことを言わないでよ。あっ、それとも』

 にやにやとした笑みを浮かべて、

『もう堅くなってんのかな?』

 視線は俺の股間へ。

 あぁ、なってるさ!! お前の乳のせいでな、座っているのに立っている矛盾の発生さ!! だから、上手いことを言ってやったような表情をするな!! それから服をちゃんと着ろ馬鹿、大体何でビキニなんだ!!

 と心の中で叫び、

「悪いことは言わんから、帰れ。な?」

『イーヤーだー』

 再び馬鹿笑い。

 こんにゃろう、アルコールのせいで馬鹿がレールガンの弾丸並に加速してやがる。普段の俺ならばもう少し付き合っても良いかと思うが、いかんせん今はもう草木も眠る丑三つ時、おまけにビキニガールが相手では理性を保てそうになかった。

『もう少しだけぇ』

「お前な、夏休みだからってだらけんのもいい加減にしろよ」

『そうじゃないのよぅ、あたしは只さ…』

 言いかけたところで黄色の体がぐらりと揺れ、俺の上に倒れこんできた。乳を顔に当て、俺を抱き締めるような状態でもたれかかってくる。

 乳。

 何が起こった、待て待て待て待て!?

 前代未聞、そのあまりの衝撃に視線を上げて黄色の顔を見てみると、

「寝てんのか?」

 黄色はうすら笑いを浮かべたまま、気持ち良さそうに目を瞑っていた。

『起きてるよぅ』

 返す言葉も弱々しい。本格的にダウンしたのか、ぐったりとのしかかる体は密着しているせいか、重くはないけれど体温を俺に意識させた。

 妙に大きくなる鼓動を誤魔化すように咳払いを一つ、黄色の体を引き剥がすと背負う。背中に当たる二つの塊に意識を持っていかれないように無意味に黄色の部屋番号を思い出しつつ、ゆっくりとした速度で歩き出す。

『色無ぃ』

「何だよ?」

『今度、海に行こうねぇ。夏だしさ』

 俺の勘違いかもしれないけれど、漸くこいつの格好に納得がいった。ビキニ姿で海に連れ出そうなんて、本当に馬鹿もいいところだ。それに気が付かなかったり、今は海がとても恋しかったりする俺もかなりの馬鹿だけれども。

「楽しみにしてろ」

 俺の背中で軽い寝息をたてている黄色にそう言うと、少し歩く速度を落とした。


黄「亀田すげぇ……」

無「まぁ今回の勝負は五分だよな」

黄「まずボクシングってかっこいいよな!」

無「ガッツさんとか具志堅さんとか?」

黄「闘う姿がいいなぁ……」

無「……何?そのキラキラした視線?」

黄「……赤呼んでくるね」

無「やめよ?ねっ?やめよ?俺にはこんにゃく戦法とかクロスカウンターはできないよ?」

黄「気合いだ!気合い!さ、世界をとろう!」

数分後

黄「亀田これヤバイんじゃないかなぁ」

無「判定だな」

黄「おっ、まず一つとられた」

無「でも次はとったぞ」

黄「あれ……勝っちゃった」

無「マジ?」

黄「……」

無「……」

黄「……一緒に寝ない?」

無「暑いからやだ」


「あっ、来た! もう、遅いよ色無! 自分から誘ったくせに!」

「ああ、悪かったよ。でも五分も遅れてないだろ? そんなに慌てなくても祭は逃げやしないって」

「もう、分かってないなあ……お祭りの屋台を堪能するには、時間はいくらあっても足りないんだよ? 花火だっていい場所で見たいし、色無は危機感が足りない!」

 待ち合わせ場所に来てみると、すでに来ていた黄はいたくご立腹のようだった。祭とかイベントとか、大騒ぎするのが大好きな黄らしい。俺も黄なら飛びついてくるだろうと計算して誘ったのだ。

「今からでも遅くないって。それより……ゆ、浴衣着てきたんだな。よく似合ってる。可愛いよ」

「え、そう? えへへ、このあいだ橙と一緒に出掛けたときに見立ててもらったんだ。ホント? ホントに似合う? 可愛い?」

 途端に上機嫌になり、ニコニコしながらその場でくるくると回る黄。あまりの愛らしさにめまいがするが、こんな序盤でKOされてる場合じゃあない。

「ほら、今からはしゃぎすぎてるとバテるぞ。行こう」

「あ、ちょっと待ってよ。下駄なんて履き慣れないから歩きにくくて……」

 慌ててヨタヨタと駆け寄ってくる黄に向き直り、わざとらしくため息をついて、俺は手を差しだした。黄が浴衣を着てくることも、事前に橙から情報を仕入れて知っていた。ここまでは完璧に計画通りだ。

「しょうがないな。ほら、手ぇ貸せよ」

「え? う、うん……」

 少し照れながら、黄が伸ばした手を強引に取ってつなぐ。いい感じだ。今日この日のために、何日も前から綿密に計画を練ってきた。今まで仲のいい友達に過ぎなかった俺たちだが、そんな関係ともおさらばだ。

 そうとも、俺は今日——黄に告白するんだ!

 

「色無、次は焼きそば! 焼きそば食べよ!」

「お前まだ食うのかよ……つーか両手にたこ焼きと綿あめ持ってるじゃん。それ食ってからにしろよな」

 ある程度予想はしていたが、さすがの俺もうんざりした表情を隠しきれなかった。射的や紐くじの景品だの金魚だの、黄がゲットしたお宝を抱えてるせいで歩きにくい。

「え〜。じゃあちょっと待っててね、今食べちゃうから」

 そう言うと黄は猛烈な勢いで食べ始めた。口の周りがソースと青のり、そして綿あめでべとべとだ。同時に食ってうまいものなのか? 正直色気もへったくれもない。

「それよりさ、そろそろ花火始まるんじゃないか? 見に行こうぜ」

「そんなこと言ったって、結局いい場所は全部取られちゃってたじゃん。もう諦めて、出店周りながら見ようよ」

「いやいや、こんなこともあろうかと、穴場スポットをちゃーんと押さえてあるんだって。そこなら人もあんまりいないし、花火もよく見えるぜ」

 まあ灰に教えてもらった場所なんだが。あいつは裏道とか穴場とか、そういうのにめっぽう詳しいからな。

「ん〜、でも焼きそば……」

「あとで焼きそばも買ってやるから! な、行こう行こう!」

 たこ焼きの楊枝をくわえながら、なおも焼きそばに未練たっぷりの黄を引きずって、俺は最終決戦の地に向かった。

 

「わー、ホントに誰もいないね」

「ああ、大通りから離れてるせいで普段から人少ないんだけどな、花火を打ち上げてる河原までは視界が開けてるんだ」

 とあるマンションに付属した公園のベンチに黄を案内し、二人並んで座った。すでに花火の打ち上げは始まっていて、あたりを定期的に虹色に染めていく。

「わ、わ、今の見た? なんかドーンってなってから、端っこでもう一回パーってなったよ!」

「あ、すごーい! 今の土星みたいな形してた!」

「ひゃー!! すごいすごい! これ何連発なんだろーね!」

 一発打ち上げられるたびに歓声を上げる黄。俺はそんな黄がもう可愛くて可愛くて、花火なんか見ちゃいなかった。

「……」

「……」

 曖昧な返事しかしない俺に業を煮やしたのか、少しむくれた顔になった黄は、黙って花火を見続けた。

「……もう、おしまいなのかな?」

 どのくらい経っただろうか。やがて夜の闇と静寂が光と轟音に取って代わった。花火は終わった。今だ……このタイミングで、俺は黄に……こここ、告白するんだ!

「……なあ、黄。話があるんだ」

「ん? 話? いいよ、なーに?」

 目を丸くして少し首をかしげる仕草に鼻血が出そうになる。最後の理性で頭に上る血を懸命に抑え、俺は言葉を絞り出した。

「俺は……俺はずっと前からお前のことが……す——」

 どーーーーーーーーーーーーん!!!!!

 そのとき、なぜか遅れて打ち上げられた、これまでで最高にでかい花火が空を染め、一瞬遅れて炸裂音が響き渡った。

「——きなんだ」

「きゃーーーー!! びっくりしたあ……ねえ見た見た? すっごいおっきかった! 三回くらい色が変わって超キレイだったね〜!」

 黄を誘い出す餌だった花火に最後の最後で邪魔された俺は、たぶん酸欠の金魚みたいな顔をしていただろう。

「? どーしたの、そんなに口をぱくぱくさせて? あ、それとごめん、花火の音でよく聞こえなかったんだけど、話って何? もーいっかい言って?」

 俺はがっくりとその場に膝から崩れ落ちた。

 

「あー、楽しかったねえ。花火はキレイだったし、可愛い金魚さんもすくえたし、出店の食べ物はおいしかったし」

 カラコロと機嫌よく歩く黄の後ろを、俺はトボトボと重い足を引きずってついていった。

「……ねえ、なんでそんな暗い顔してんの? 話なら聞いてあげるって言ってるじゃん」

「それはもういいんだよ……はあ……」

 こういうのはタイミングが大事だってのは言うまでもない。聞こえなかったからはいもう一度、ってわけにはいかないのだ。俺は失意のどん底にいた。

「なによう。そんなに“計画”通りに行かなかったのがショックだったの?」

 だから黄の言葉を理解するのに、たっぷり数秒はかかってしまった。

「……な、なんだとーーー!! い、いや何ですか計画って? あっしにゃあ何のことやらさっぱり……」

「橙とか灰ちゃんとか、他にもいろんな子にあれこれ聞いて回ってたみたいだけど、何を企んでたのかな? ん?」

 黄がニヤニヤしながら俺の顎を人差し指でなぞる。畜生あいつら、口止め料までせびっておきながらあっさりチクリやがって……女の友情の前では、男との口約束なんて紙くず同然ってことか……。

「ほら、今なら静かだし、ゆっくり話聞いて上げられるよ。さあさあ、言ってごらんなさい?」

「……お前さっきの聞こえてただろ」

「え〜? 全然聞こえなかったよ? だからほーら、もう一回! もう一回!」

 明らかにしらばっくれた様子でそう言うと、黄はチア部でやってるような仕草をして俺をはやし立てた。

「聞こえてた! お前絶対聞こえてたなこの野郎!」

「きゃ〜、色無に襲われる〜、助けて〜」

 大げさに腕を振り上げてみせると、黄はふざけた悲鳴を上げて走っていった。どうやら下駄だと歩きにくいってのも演技だったようだ。

(くそう、結局いつも通りかよ……いや、俺はあきらめねーぞ!)

 まだ夏休みは残ってるし、黄が飛びつきそうなイベントも目白押しだ。俺は決意を新たにすると、山盛りの景品を抱えながら黄のあとを追った。


ここはどこだろう?

家の灯りは灯っているのに、人の気配はない

どんなに歩いても誰もいない

アイツもいない

今この世界にいるのは私だけのよう

会いたい

今すぐにアイツ会いたい

黄「色無……会いたいよ……」

黄「あれは……色無?色無!待って!行かないでよ!」

黄「あれ……?夢……か……いつ寝たんだろ……」

黄「ん?……!!」

黄「なんで色無がここで寝てるの?!」

無「う……ん」

無「おはよう、黄色~やっと起きたか」

黄「おはようじゃなくて、なんでここにいるの?!」

無「昨日CD返しに来たらお前が寝てたんだ」

無「起こすのも悪いから置いて帰ろうと思ったら、いきなり泣きながら人の腕掴んで『色無!行かないで!』なんて言うからさ帰るに帰れなかったんだよ」

黄「……」

無「お前が起きたし俺はもう行くからな」

黄「待って……私の横にいて……もう少しだけ一緒に……」

それから私は色無の肩に寄りかかって目を閉じた

多分もうこんな夢は見ないだろう

いつだって色無が側にいてくれるから


黄「ねぇねぇ」

無「ん?」

黄「なんか暇だから面白いことしてよ」

無「そんな無茶な」

黄「つまらないやつよのぉ」

無「うわっ、いますごい傷付いた」

黄「このヘタレめ」

無「そこまでいいますか?」

黄「まあ、あれよ。そんなヘタレがいないと私がつまらないからね」

無「はいはいわかったわかった、ってなんかいったか?」

黄「なんでもない!!さっさと帰るぞヘタレ!!」

無「ヘタレ言うな!!」


白「♪〜」

水「♪〜♪〜」

無「何やってるの?」

水&白「色無くん……」

水「あの! お花にお水をあげてるところ……なの……」

白「色無くんもどう?」

無「じゃあ、手伝おっかな」

白「はいっ、じゃあ、あっちの花壇にあげてね」

無「うん」

水「♪〜」

白「♪〜♪〜」

水「……どうしてこっちを見てるの……?」

白「?」

無「えっ!? いや、かわいいな〜って思って……」

水「ひゃう!///」

白「かっかわいいだなんてそんな///」

無「どっどうしたの……?」

黄「色無覚悟!」(きゅっきゅっきゅっ

無「わわっ黄! それをどうする気だ……。まさか!」

ジャバ———————ッッッ

無「こっ、こっちを狙うな————っ!」

黄「あははははっ☆」(ジャババババッ

無「うわ——————!」

白「色無くん!?」

水「だっ、大丈夫……?」

無「あーあ、びしょびしょ……」

黄「ちょっとこっち来て! ちょっとこっち来て!」(グイッ

無「なんだよ! こんなことしておいて……わわっ!」

水&白(ぽかーん)

無「はぁ、はぁ。こんなとこまで引っ張ってきてなんだよ……」

黄「私にも言って!」

無「へっ!?」

黄「可愛いって」

無「えっ? いや、あれは微笑ましいなっていうニュアンスのかわいいであって……」

黄「そうなの!?」

無「うっうん……」

黄「じゃあ私はどうなの? 可愛い?」

無「え! あ、うん。可愛いと思うよ?」

黄「思うじゃダメ! 色無はどう思ってるか聞かせて?」

無「う///可愛いよ////」

黄「////あんたが好きだyo!」バキッ☆

ズシャッ。

黄「キャー♪」タッタッタッ。

ピクピク。

無「なんで……殴るの……?」


時々すごく不安になる

アイツはいつだって、誰にだって優しいから……

私は本当にアイツの特別なのかって思う

緑みたいに勉強が出来るわけではないし

桃のように胸が大きいわけでもない

黄緑のように面倒見も良くなければ

青のように気の利いた料理の1つも作れない

そんな私をなんでアイツは選んだんだろう

無「ここにいたのか」

黄「色無……」

無「どうしたんだ?深刻そうな顔して」

黄「色無は……どうして……私と付き合ってくれてるの?」

黄「何も取り柄のない私をどうして選んだの?」

無「好きだから」

黄「そうじゃないの……私のどこを好きになったの?」

無「……正直な話、黄色のどこを好きになったかなんてわからない」

黄「え……」

無「いつも一緒にバカやって、飯食って、話して」

無「長い間一緒にいて気がついたら好きになってたそんな感じ」

無「黄色が隣にいると嬉しかった、だから黄色には隣にいてほしいって思ったんだ」

無「他の誰でもない黄色に」

そういって色無はちょっとクサかったなと言って恥ずかしそうに笑った

そして私たちはキスをした

私はもう悩まない

私は間違いなく彼の特別だから


黄「色無ー、宿題手伝っt」 男「却下、俺も終わらねえ……」

黄「ちぃっ、宿題なんか全人類の敵だ……」

一時間後

黄「色無ー、飽きたー」

男「……」

黄「色無ー、遊んでー」

男「……宿題が終わったらな」

黄「むう。じゃあジュース買ってきてー」

男「宿題が終わったらな」

黄「ぐえー、色無つまんなーい」

男「……あー、終わんねー」

黄「くそう……。……色無ー、デートしてー」

男「宿題が終わったらな」

黄「!?! マジっすか!?よっしゃ、やったるでー!!!」

男「(あれ、俺今なんて言ったんだ?……まあいいか)」

三時間後

橙「黄色が知恵熱で倒れたー!!」

黄「……数学があー……英語の単語が襲ってくるー……ぅああ……色無ぃ……待ってえー……」


水「できたー」

白「なぁに? 水ちゃん」

水「色無くんに見せるの」

白「色水かぁー」

水「うん」

白「あ、色無くん……」

水「あ……」

白「いろな……」

黄「あはは☆ やめてよ〜☆」(ドスッ

パシャーン

白「あっ」

黄「ふぇ!?」

水「……」

白「水ちゃん……?」

水「……ぐすん……」

黄「うぁ! ごめん水ちゃん!」

水「うぇ……ぇぐっ……ひっく……」

黄「ごっごめんね……」

桃「どうしたの?」

橙「なになにー」

青「水ちゃん泣いてるの?」

群「こーら、みんなで集まって、どうしたの?」

青「あ、先生……」

桃「水ちゃんがね、泣いてるの」

群「水ちゃんが? どうして?」

白「あのね……黄ちゃんがね、水ちゃんの色水こぼしちゃったの……」

黄「ごめんなさい……」

群「そっか……」

黄「ごめん……なさい……」

群「水ちゃん許してくれる?」

水「ひっく……」(コクン

黄「ごめんね……」

群「黄ちゃんも、謝ったんだから、ね?」

黄「うん……」

黄(ぼー)

無「こんな所でどうしたの?」

黄「色無くん……」

無「?」

黄「水ちゃんの色水こぼしちゃったの……」

無「黄ちゃんが?」

黄「うん……」

無「そっか……」

無「ねぇ、サッカーしようよ」

黄「えっ?」

無「サッカー」

黄「サッカー?」

無「うん、しよ!」

黄「……うん」

無「じゃあ、あっちいこ!」(ぎゅ 

黄「あっ……」

トタトタトタ——

黄「……ってことがあったの」

黄緑「麦茶でいい? それとも温かいの?」

黄「あっと……お腹が冷えるから」

黄緑「温かいのね」

黄「うん、ありがと」

黄緑「はい、どうぞ」(コトッ

黄「ありがとう」

黄緑「それがきっかけなのね」

黄「へ!?」

黄緑「色無くんを好きになった」 

黄「えっ! ちっ、違うよ! なんで私が……」

黄緑「隠さなくてもいいのよ、私が色無くんを好きな事も知ってるでしょ?」

黄「う、うん」

黄緑「だったらいいでしょ? 私が知ってたって」

黄「だっ! だから、私は違うって……」

無「ただいまー」

黄緑「あら? 帰ってきたみたい」

黄「はう! どうしよう……」

黄緑「いいじゃない一緒にいれば」

黄「わっ、私二階行くね」(ガバッ

黄緑「あっ黄ちゃん……もう」

無「ただいまです」

黄緑「お帰りなさい」

無「あれ? いま黄の声が聞こえたような……」

黄緑「あら、耳がいいんですね。さっきまで居たんですけど……」

無「そうですか……」

黄緑「残念、ですか……?」

無「いや、最近よそよそしいから……嫌われてるのかなと思って」

黄緑「たぶん、違うと思います」

無「そうかなぁ……」

黄緑「きっと黄ちゃんはお年頃なんですよ」

無「お年頃?」

黄緑「はい」

無「お年頃かぁ……」

黄緑「ふふふ」

無「っていうか、同い年じゃないですか僕たち……」

黄緑「そうですね」

無「……随分大人なんですね」

黄緑「そんな事無いですよ?」

無「そうは見えませんけど……」

黄緑「私だって黄ちゃんと同じで、好きな人と一緒にいたらドキドキしますよ?」

無「へ?」

黄緑「もちろん今も♪」

無「えぇ!」

橙「きぃーっ! あの女ったらし!」

桃「あら、今のは色無くんの方から何かした訳じゃないわよ?」

黄「あんなこと言われた後なんて……。どういう顔してたらいいのかわかんないよ……」

灰「そんなに『ぎゅ』って抱いたらイルカさん潰れちゃうよ?」

黄「ひゃあっ! 灰ちゃん!? どっから入ってきたの!?」

灰「あっち」

黄「ひっ、人の部屋に穴開けないでよ……」

灰「これ、黄ちゃんの部屋じゃないよ、寮の所有物だよ?」

黒「どっちにしてもダメでしょ!」(グリグリ

灰「ひゃあん! お姉ちゃん、いたいよぉ〜」

黒「反省しなさい」

灰「うわ〜ん!」

黄「なんで、黒まで……」

黒「はっ、ははは、ごめんなさいね、今この子連れて行くから……」

ギイッ

黒「それじゃあね」

バタン

黄「はぁ〜、プライバシーが無いわ、ここは……」


黄がお酒を飲みすぎたようです

黄「ぐおーん……ふらふらするー」

男「黄?!何やってんだお前、って酒くせーな……飲んでたのかよ……」

黄「あー色無ぃ……朱さんが余ったから飲んでいいぞーって」

男「やっぱりあの人か……ったく、お前も飲みすぎだろ。限度考えろバカ」

黄「ういー、バカでーす……」

男「あっさり認めんなっつーの」

黄「あははは……。ホントだよねえ……ホンットにあたしってバカ……グス」

男「えっ?!黄?」

黄「いっつもふざけてばっかりでさ……こんなことしかしないから色無もあたしのこと意識してくれないんだ……ッ」

男「お、おい!」

黄「あたしだって……もっとお洒落とかして……料理とかもできて……もっと優しい女の子だったらなぁ……」

男「……黄……」

黄「……色、無ぃ……すぅ……すぅ……」

男「……寝た、のか?……ったく俺は明日、どんな顔してこいつに会ったらいいんだっつーの……とりあえず、部屋まで運ぶか……」

黄「すぅ……すぅ……色無ぃ……ムニャムニャ」

男「人の気も知らないでこいつは……。……知ってるよ、お前もちゃんと『女の子』だってこと」


黄「はぁ〜……」

無「どうしたんだ?溜め息なんかついて」

黄「だって雨よ、雨」

無「あぁ、雨だな」

黄「むぅ……何その反応は」

無「……どんな反応してほしかったのかこっちが聞きたいくらいだけど?」

黄「うるさいなぁ、もう。……あ、そだ。耳掻きしたげよっか?」

無「話変わりすぎだろ!」

黄「いーの!あたしの気分なんだからっ!ほらほら早く頭乗せて?」

無「頭乗せてって、膝枕ですか?!」

黄「耳掻きって言ったらやっぱ膝枕よねw」

無「……じ、じゃぁお言葉に甘えて。///」

黄「どーぞw」

無「……。(黄色の太もも柔らかいなw)」

黄「……。(かりかり)」

無「……いだっ!!」

黄「あ、ゴメン。もうちょっと……こうかな?」

無「いてっ!いたたた!いたいって!!」

黄「こら、暴れるな!もっと痛くするよ?」

無「や、やめて……ぅあいだっ!!(黄色耳掻き下手すぎだ……orz)」


黄「よぅし、がんばるぞっ!」

無「……その格好は、まさかとは思うが料理でもする気ですか?」

黄「まさかって、ヒドイ!……まぁ、夕飯は飛び切り美味しいの作ってあげるから待っててね♪」

無「あ、あぁ。楽しみにしとくよ……。(エプロンつけてそんな可愛いこと言うのは反則なんです><)」

—調理開始

黄「これは……あっー……いっか……・こうして……・うわっ……」

無「……」

黄「なんか……なんとかなるか……あとは……で……」

無「……。(確実に何かしら失敗してると思われるフレーズが飛び込んできてるんだが……。)」

黄「よし……完成っ!」

—夕飯

無「こ、これは……」

黄「黄色特製ハンバーグっ!ちょっとたくさん間違……うぅん、なんでもない!さ、食べて食べて♪」

無「(今間違えたって言いかけたよな??っていうか味は分からんがこの焦げ具合は……orz)……い、頂きます。(ぱく)」

黄「(にこにこ)ふふ、美味しい?」

無「……あ、ああ。美……味し……い……(ガクッ)」

黄「きゃぁっ!い、色無大丈夫?!美味しいからってそんなリアクションとらなくてもいいのに……」

無「……。(しーん)」

黄「あ、あれ?……これってもしかして料理失敗?」


黄「本日は快晴なりー」

無「お前は船乗りか」

黄「気にしなーい」

こんにちは。黄色です。

今日は色無と二人で買い物に来てます。正直どきどきもんですよ。

黄「いやぁ、こんな晴れてるとどっかに行きたい気分だねぇ」

青い空を横切る飛行機雲、降り注ぐ太陽の光。こんな天気だったらお出掛けでもしたいもんです。

無「いまから行くんだって。買い物に」

黄「ですよねぇー」

この男にムードというのはないのでしょうか?くそ、私みたいな可愛い子がこんなこといってるのに買い物ですか。そうですか。

黄「ちぇっ」

無「すねるなって」

黄「ふ〜んだ!!」

無「機嫌直してください」

黄「じゃあ買い物間手を繋いでいい?」

無「はぁ?」

黄「だからぁ、手を繋いでいいかって聞いてるの」

無「わかった」

黄「お、素直じゃん」

無「買い物ほったらかしてかえられたらたまらないからな」

そういえば今日はなんで色無と買い物に出かけてるんだっけ? 
まあ、手を繋いで一緒に歩けるからいいか気にしないで。うん。

無(こいつ今日自分の誕生日だってわかってんのかなぁ?まあ、買い物って嘘ついといてあとで驚かせてやろ)


黄「月が〜出った出〜た〜月が〜でた〜♪」

無「あれ? お月見?」

黄「うん、色無もどう?」

無「いいね」

黄「はー。まったりですなぁ」

無「しかし意外だな」

黄「?」

無「お前は花より団子の方かと思ってた」

黄「あはは、ひどいな〜。でも、お団子もあるよ。はいっ」

無「あはは、やっぱり。いただきまーす」

黄「ね、月にウサギってほんとにいると思う?」

無「どうかなぁ〜」

黄「私はいた方がいいなぁ〜」

無「どうして?」

黄「だって、その方が楽しいじゃない」

無「あはは、確かに」

黄「綺麗だね〜」

無「そうだなー」

—ひゅうぅぅ

橙「っひゃぁ!屋上は寒いねぇ〜!」

赤「そう?ボクは普通だけど」

青「あんたはちょっと異常なのよ!」

紫「ん、誰かいるよ?」

黄&色無『……あ』

青「い、色無っ!?」

橙「あれれぇ〜?もしかしてお二人さんってアレな関係かな?かなぁ?(ニヤリ)」

紫「そ、そんな……。う、嘘だよね?」

無「こ、これは……お月見してただけで……」

黄「み、みんなも一緒にお月見しよっ?」

朱「—おい、お前らこんなとこで何やって……ん、団子……お月見か?いいなぁ、私も混ぜろ!ちょっと待ってろ、酒持ってくる!」

みんな『……。(ぽかーん)』

無「(た、助かった。朱色さんグッジョブです!)」


黄「みんなお待たせ〜!黄色ちゃん特製カレーできたよっ♪」

赤「待ってました!」

黄「さぁ、食べて食べて〜……って、紫ちょっと待ったぁ!!」

紫「ん、なに?」

黄「折角のカレーに牛乳入れないの!」

紫「だって、辛いもん。それにカルシウムがたくさん取れてこれなら一石二鳥だよ?」

黄「ダメなの!カレーは辛さが命なんだから……って、赤!?」

赤「なにぃ?」

黄「どう考えてもアンタは七味唐辛子入れすぎ!それじゃカレーのスパイスが効かないじゃないっ!」

赤「え〜、だってボクもっと辛いほうがいいもん」

黄「早く言ってくれれば辛くしたのに……アッー!橙!!」

橙「げっ、見つかった!?」

黄「マヨネーズなんて邪道も邪道よ!カレー没収するよ!?」

橙「そ、それだけはご勘弁を〜!」

焦「ここの連中はカレーも静かに食えないのか?」

無「……すみません……ところでなんで焦茶さんがいるんですか?」

焦「? そんなもの君がここにいるからに決まってるだろう?……ほら、あーんして」

無「……」


『しょうてんがい』

黄「あ、色無だ。おーい」

無「黄、そんなに大声出さなくても聞こえる。って言うか街中で大声出すなよ」

黄「どうして?」

無「……恥ずかしい」

黄「えー、いいじゃん」

無「(相変わらず良い笑顔だなこいつ)……わかったよ」

黄「へへー」

ぎゅ

無「抱き付……ま、いいか」

黄「色無〜」

無「どうした?」

黄「こうしてたら恋人同士に見えるかな〜?」

無「……かもな」

黄「……えへへ」

無「ほら着いたぞ」

黄「……いつかなってみせるから」

無「え?」

黄「それじゃ、また明日」


黄「ふふ……萌えたろ?」

無「だれか救急車よんでぇー」

黄「あー、まてまて!!」

無「んだよ」

黄「いきなりそれは酷いでしょ」

無「救急車がだめならパトカー呼ぼうか?」

黄「それも駄目!!」

無「つうかなんだ最初の台詞は」

黄「いやぁ、イメチェンしたから似合うかなぁって」

無「え……(どこが変わったんだ?)」

黄「ねぇねぇどう?」

無(上目使いでみるんじゃねぇ!!)

黄「もしかして気付かなかったの?」

無「あ、いや……」

黄「どうせ私なんて馬鹿ばかりやってる女だもんね……」

無「いや、イメチェンなんかしなくても十分可愛いって!!」

黄「ほんと?」

無「まじだって」

黄「ていうかイメチェンなんてしてないんだけどね」

無「(#^ω^)は?」

黄「まあ、可愛いっていってくれたから許してあげる♪」

無「あ、あぁ……(ってなんか黄色のペースに流されてる……)」

黄「よぉし!!今日は美味しいカレーをつくってあげよう!!」


無「あ、猫だ」

にゃあ、鳴きながら近づいてくる猫。

黄「人懐こいねー。色無、もてもてじゃん」

無「猫にもててもなぁ……好きだから良いけど」

鳴きながら色無の足に擦り寄ってくる猫。

黄「……」

無「ん、どうした?」

黄「……にゃー」

無「……は?」

にゃーにゃー言いながら色無に擦り寄る黄。

黄「にゃーにゃー……って何なのその顔は。猫好きなんでしょ?」

無「いや、好きだけど……お前何やってんの」

黄「猫じゃん。どう、好き?」

無「や、お前」

黄「好き?」

無「……はいはい、大好き大好き」

そう言いながら、がしがしと黄の頭を撫でる色無。

黄「ちょ、髪の毛ぐちゃぐちゃになるじゃんー」

そう言いながら、本当に楽しそうな表情の黄。

にゃあ、猫がもう一度鳴いた。


『べんきょう』

黄「……うーん」

無「どうしたんだ、黄?」

黄「秋っぽい事に挑戦しようと思ってさ……」

無「うわ、分厚い本だな」

黄「読んでたらカッコよく見える本を貸して、って緑に頼んだら、これを貸してくれたんだ」

無「黄さん……」

黄「なに?」

無「百科事典は確かにカッコいいかもしれないけど、面白いか?」

黄「似たような言葉がたくさんあるのが分かって楽しいよ?」

無「そうか……黄は大物になるかもな」

黄「えー、そーかなー、えへへ」

無「ま、とりあえず明日の小テストだな」

黄「……あ」

無「どうした、黄?」

黄「忘れてた……」

無「……」

黄「……小テストだけどいつもより範囲広いし、ぜんぜんやってない」

無「……はぁ」

黄「どうしよう」

無「しょうがないな、放課後家で勉強会だ」

黄「え! いいの? 色無大好き!~愛してる!」

無「……こういう時だけ調子いいな」

黄「……へへー」

無「じゃあ放課後な」

黄「……勢いでなら言えるのに、真面目に言えるのはまだ先かな」


黄「銀閣って地味だよね」

無「それ、言っちゃダメ」

黄「そんなこと言ってもさあ」

無「まあ、金閣に比べるとな」

黄「でもさ、私案外楽しいかな」

無「嘘だ!わび・さびとは一生無縁のお前が!」

黄「正直それって食べれるの?って感じですけど何か?」

無「じゃあなんでよ?」

黄「んー?色無がいるからかな?なんてね」

無「えっ?」

黄「2回は言わないもーん。私を銀閣に連れてってー、ってね」

無「っておい!どこ行くんだよ!……ったく、『連れてって』って、もう来てるってーの。……俺もお前のおかげで楽しいよ、黄」


『石焼芋?』

無「はふはふ……どうして焼き芋ってうまいんだろなー?」

黄「やっほー!!!!! いーろーなーしー!!!!!!」

無「……(さっ)」

黄「ちょっとちょっと! どうしてそこにあった芋を隠すのよ!」

無「いや、何となく全部食いそうな気がしたから」

黄「失礼な! 半分食べるだけじゃない!」

無「その考えをどうにかしろって言うんだよ」

無「……はい」

黄「ありがと色無ー! 君は命の恩人だー!」

無「そんな感謝のこもってないお礼はいらないから、さっさと食べろ」

黄「ひどいっ! 他の子達だとそんなリアクション一つも取って無いのに!」

無「お前は容赦なく食べるからだろうに……」

黄「いいじゃない、こんな可愛い子と一緒に食べるんだからー!」

無「……可愛い子?」

黄「何、その冷めた目は」

無「いや、白ちゃんや水ちゃんはまだしも、お前が……熱っ!」

黄「ええい! そんなこと言うのはこの口かー!」

無「おい、やめろって! 無理やり芋を口に入れるな! あつ、あついっ!」

黄「(色無の鈍感。こうなったら今は徹底的に遊んでやる!)どうだ、可愛いと認めるかー!」

無「誰が認めるかっての! こんなことして可愛いと思ってるのか!」

黄「なにおー! まだ足りないってのかー!」

無「あちぃ、あちぃっての黄!」


黄「みっんな〜ご飯できたよ〜」

 (……し〜ん)

黄「……誰も……いない?」

無「あー腹へったー、おい黄、はやくよそってくれ」

黄「あ、色無……他のみんなは?」

無「いや〜おまえが夕食当番の度に毎度カレーつくるからさ、みんな飽きちゃって外食しに行っちゃったよ」

黄「うぅ、いつの間に……みんなヒドイ……あれ、でも色無は一緒に行かなかったの?」

無「ああ、オレも誘われたけど断っといた」

黄「……なんで?」

無「おまえのカレーは絶品だからな〜毎日でも食べれ……いや毎日は言いすぎだけどな。オレもおまえのカレー好きに洗脳されてきたかな」

黄「……(色無……)」

無「ささ、はやく食おうぜ!」

黄(やっぱり……大好き……!)

無「(バクバク)でもさ〜流石に毎回カレーばっかり作るのはどうかと思うぞ?結婚したら旦那にも飽きられるぞ?」

黄「……じゃあ……毎日カレー食べてくれる人と結婚する……」

無「あはは、そーんな都合いい男いねーだろ」

黄「……ここにいる///」

無「……んぐ!ゲホゲホ」

橙「あっ、大変なことに今気づいた」

紫「へっ、何?」

橙「こうやってみんなで外出しちゃったら……わざわざ黄に色無と2人っきりの時間を提供してるようなモンじゃない?」

一同「!!!」

桃「もしかして……今頃……」

橙「色無が……危ない!今すぐ帰らないと!!」

(御手洗いからもどってきた黄緑さん)

黄緑「あらあら、みんなお勘定もせずにどこに消えちゃったのかしら?私に全部払っておけってことね?うふふ…………うふふ……」


「あ、色無おっかえり〜」

「……おう、ただいま」

 寮の自室のドアを開けると、黄が明るい声で色無を出迎えた。ベッドに寝転がって、なにやら雑誌を読んでいたようだ。

「今日は早かったね」

「仕送り前の帰宅部なんかこんなもんだろ。金欠じゃゲーセンにもカラオケにも行けねーよ」

「あはは、それもそうか。あたしも似たようなもんだしね〜」

 色無は簡易クローゼットのジッパーをおろし、部屋着を出した。そのままいつものように制服の上着をハンガーに掛け、カッターシャツのボタンをはずし、腕を抜き……。

「ちょ、ちょっと! ストップストップ! もう、花も恥じらう乙女の前でいきなり脱がないでよね!」

 真っ赤になった黄は色無に枕を投げつけると、布団を頭からかぶってしまった。なし崩し的に始まった根比べに勝利した色無は鼻で笑う。

「ふっ。まったく、着替えくらいでおたおたするなら、留守中に勝手に忍び込むなっての。灰といいお前といい、なんで俺の部屋に来るんだよ……もういいぞ」

 手早く着替えをすませ、布団虫になっている黄に声をかける。黄はごそごそと布団から首だけ出し、ふくれっ面をして見せた。

「しょうがないじゃん、あたしの部屋のヒーター壊れちゃって寒いんだもん。朱色さんが呼んでくれた業者の人が今修理してるからさ、夕飯までここにいさせてよ」

「だったら俺の部屋じゃなくて他のやつのとこ行けよ。橙とか仲いいじゃん。あいつはチア部で帰り遅いからいないだろうけど、勝手に入っても怒りゃしないだろ」

「はあ? 何言ってんの? 勝手に人の部屋入るなんてできるわけないでしょ? プライバシーってもんを考えなさいよね」

「……」

 何を言っても無駄な気がして、色無はあえてつっこまなかった。

「もうどうでもいいや……コーヒー煎れてくるけど、黄も飲むか?」

「ん〜、紅茶がいいな。レモンティーね。レモンはポッカレモンじゃなくて、ちゃんと生のやつをスライスしてね」

「へいへい、かしこまりましたお嬢様」

「うむ。急ぐがよいぞ」

 精一杯の皮肉も軽くかわされ、色無は軽くため息をつくとキッチンに向かった。

 

「ねえ、色無……ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 しばらく互いに好き勝手なことをして過ごしていると、不意に黄が声を潜めて色無に話しかけた。

「ん? なんだ、あらたまって」

 色無はMP3プレイヤーの電源を切り、ぬるくなったコーヒーを一口含み——

「色無ってキスしたことある?」

「ブホッ!!」

 ——それを盛大に吹き出した。

「わっ、ちょっと何してんのさ! きったないなあ……ちょっとかかったでしょ!」

「ゲホ、お前の、ゲホッゲホッ、せい、だろ……ゴホッ」

 むせかえる色無の前に、黄は読んでいた雑誌を広げて見せた。

「ほら、この特集見てよ。『高二でまだなんてアリエナイ!』ってとこ。アンケートによると、高二の夏までに97%の娘がファーストキスを済ませちゃうんだって!」

 なおも咳きこみ続ける色無を無視して、黄のテンションは上がっていった。

「しかも、しかもよ! 実に52%がそれ以上の関係まで進んでるって……きゃーどうしよう! あたし今年の夏はなーんにもなかったもんなあ。このままどんどん世間に取り残されていくなんて——ちょっと色無、聞いてる?」

「聞いてない」

「なんでよ〜! ちゃんと聞いて! ねえ聞いて聞いて聞いて〜!」

 ようやく気管支の具合も落ち着き、黄に背を向けて再び音楽を聴いていた色無は、肩を揺らす黄の手をうんざりした表情で振り払った。

「あのなあ。今どきそんな雑誌の記事を鵜呑みにするのはお前くらいだよ。嘘っぱちに決まってるだろ」

「そうかなー? この体験談なんかかなりリアルだよ? 『憧れていた先輩と海に行ったとき、いつの間にか岩陰に連れ込まれて——』」

「音読すんな!! 全部嘘! でっち上げ! おもしろおかしくページを埋めてるだけ!」

 情感たっぷりに記事を読み上げ始めた黄から、色無はあわてて雑誌を取り上げた。

「だいたい周りがどうだろうと関係ないだろ。相手あってのことなんだから」

「まあそうだけどさ。そんで、けっきょく色無は経験あるの? ないの?」

「お前もしつこいな……ねえよそんなの。女の子とつきあったこともないのにあるわけないだろ」

 視線をはずし、仏頂面でつぶやく色無。そんな様子を見て黄はにまーっと笑った。

「んふふ、そっか〜。色無もまだか〜。あ、じゃあさ、私としてみない?」

「!! な、ばっか、お前なに言って——」

 あわてて後じさる色無に、黄は四つんばいでにじり寄った。

「ほら、お互いこの先本命の相手が見つかって、いざ勝負ってときに失敗するとかっこわるいでしょ? だからここは初めて同士で練習しとかない?」

 目を閉じ、唇を突き出して接近してくる黄の頭を、色無は両手で押しとどめた。

「やめろよ。こんなの練習とかでするもんじゃない。ファーストキスってのは大切なもんだろ。もっと自分を大事に……黄?」

 黄は色無からすっと離れるとベッドに顔を埋めた。肩が小刻みに震えている。

「おい、どうした? ……泣いてるのか? いや、別にお前とするのが嫌ってわけじゃないんだけど……」

「ぷーーーーーーーっ!!! あーもうだめ、もう我慢できない、あーーーっはははははは!!」

「? な……なんだ?」

「あはははは、色無サイコー、あんたサイコー! 『もっと自分を大事にしろよ、ベイビー』って……あはははは、もう駄目、腹筋がよじれそう!」

「……あ! てめーからかってやがったな! 畜生、男の純情をもてあそびやがって……それに『ベイビー』とか言ってねーだろ、勝手にねつ造すんな!」

 ようやく罠にはめられたことに気づいて憤慨する色無を尻目に、黄はしばらくのあいだ爆笑し続けた。

 

 そろそろ小腹がすいてくる時間になって、色無が夕食のメニューに思いをはせていると、窓の外から車のエンジン音が聞こえた。

「ん? お、修理の人たち帰ったみたいだぞ。お前の部屋のヒーター直ったんじゃないか?」

 ようやく厄介払いができる嬉しさを表に出さないように苦心しながらベッドに向かって声を掛けると、黄は猫のように丸くなって小さな寝息を立てていた。

「……普通男の部屋で寝るか? こいつには根本的に危機感というか、何かそういった大事なものが欠けてる気がする……」

 どのみち夕食の時間になれば起こすことになる。それまでは寝かせてやることにして、色無は黄が読んでいた雑誌を拾い上げた。

「なんだこれは……ある意味エロ本より過激だな。つーかこれってファッション誌だよな? 半分以上こんな記事ばっかりか……」

 表紙からは想像もつかない内容にあきれ声をあげる色無。その目が先ほど話題になった記事の上で止まった。

「キス、か……俺だって夏の花火大会のときに告白できてりゃ、とっくの昔にしてるはずなんだがなあ……」

 ベッドの上で無防備に眠りこける思い人を見て呟く。あの日一世一代の告白に失敗して以来、色無と黄が友達以上の関係に発展することはなかった。

「だいたいこいつも鈍すぎるんだよな。普通あのシチュエーションなら気づきそうなもんだが。そのくせしょっちゅう逆セクハラしてきやがるし、心臓に悪いぜ」

 黄の少し開いた唇に視線が吸い寄せられる。先ほど間近に寄せられた黄の顔が脳裏に浮かぶ。気がつくと、色無は眠る黄の枕元に膝をついていた。

「……お前が悪いんだぞ。あんないたずらで挑発しておいて、そんなノーガードで寝たりするから……」

 全ての音が消えた世界で、色無は少しずつ唇を近づけていった。

「んん……」

 互いの吐息が感じられる距離になったとき、黄が小さく声を上げて寝返りをうった。~「!!」

 心臓が口から飛び出しそうになり、色無は後ろにとびずさった。しばらく息を潜める。黄が目を覚ます様子はなく、色無はほっと安堵のため息をついた。

「何をやってるんだ俺は……一方的にそんなことしても仕方ねーだろ! くそ、ちょっと頭冷やしてくるか」

 強烈な自己嫌悪に打ちのめされ、色無は修行僧になったかのような気分でランニングに出かけた。

 色無が足音高く階段を下りるのを聞き届けると、黄はぱちりと目を開けて身を起こした。

「あはははは! 狸寝入りに気づかないとは色無もまだまだよねー。にしてもあいつの驚きようったら! ほんっとヘタレの根性なしなんだから! あはは!」

 ひとしきり笑うと、黄は色無の枕にぼすっと顔を埋めた。

「ほんと……色無の根性なし……あたしの根性なし……」

 階下から、夕食の準備ができたことを告げる黄緑の声が聞こえてきた。


黄「ねぇねぇ、一緒にお風呂入ろー!!」

男「一人で入れ」

黄「ねぇねぇ、バンド組もー!」

橙「弾き語りでもしてろ」

黄「ねぇねぇ、漫才コンビ組もー!」

青「ピンで滑ってなさい」

黄「……」

黄「……虐げられ属性イイ!」

灰「気に入っちゃうのかよ!」

黒「確かに素質はもとからあったわね」


黄「色無みかん取って」

無「イヤ」

黄「なんで?」

無「なんか負けた気がする」

黄「何それ! こんなかわいい子がお願いしてるのに!」

無「お前可愛くなんか……!!」

 うるうる。

黄「……」

無「……」

無「はい……みかん……」

黄「やったー! ありがとう色無!」

無(負けた……)


 ザァーッ

黄「う〜ん……お腹イタイ……」

無「おい! 顔色悪いぞ!?」

黄「なんだかお腹痛くて……」

無「それ、今話題のノロウィルスじゃ……」

黄「何、ノロちゃん!? 私のお腹にもノロちゃんが飛来したの!?」

無「飛んでは来ないから……」

 ※注意 風に乗って飛んできたりもします

黄「ああノロちゃんノロちゃん、愛しのノロちゃん、麗しのノロちゃん……」

無「ウィルスに愛称つけるなよ……」

 病院

黄「先生、ノロちゃんですか私!?」

医者「うーん……風邪でもないし……単にお腹壊しただけだね、これは」

黄「え?」

黄「という訳だったのです」

無「単に冷えただけなのか」

黄「てへ、アイスがいけなかったみたい」

無「冬場にそんなもん食うなよ……」

黄「だって〜。ぬくぬくしながらおこたでアイスとか、最高なんだもん」

無「あのなぁ……」

黄「あと、カレーに入れたりとか」

無「それはない」

黄「カレーアイス(ライス)なんちて」

無(寒い……これは寒いよぉ……)


『勝負』

黄「色無ー、どう?」

無「うまいな」

黄「スケートは得意なのよね」

無「よし、なら競争するか?」

黄「いいわよ、なにか賭ける?」

無「勝った方のいう事を一つ聞くってのはどうだ?」

黄「いいわね、じゃあ今からコースを先に一周したほうが勝ちね」

無「ああ」

黄「よーい、スタート!」

無「ハァハァハァ」

黄「はぁはぁはぁ」

無「……やるな」

黄「……色無もね」

無「でも同時だったよな」

黄「そうね……! 来週また来て勝負しよう」

無「それはいいけど、オレに何させるつもりだったんだ」

黄「……秘密」

無「そっか……次に黄が勝ったら聞けるんだもんな。とりあえず昼メシにするか?」

黄「いいわね」

無「黄はまたカレーなんだろ?」

黄「ひどいよ、まるで私が毎回カレーしかたべてないみたいじゃない」

無「違うのか?」

黄「失礼ね……10回に8回くらいよ」

無「十分に多いような……」

黄「ほら、早く行こう?」

黄(デートしてほしいっていうつもりだったけど、今度スケートする約束したし勝負は私の勝ちよね)


黄「はぁ……」

男「どした?」

黄「……カレーも飽きたなぁ……」

男「!?」

黄「何食べようかなぁ……」

男「ななな何があった!?」

黄「え?だって毎日カレーじゃ飽きるでしょ?」

男「誰かー!体温計持ってきてくれー!」

黄「健康だよ!?」


黄「……よし」

黄「出来たぁ!!」

橙「(ビクッ)……ちょっと何ぃ?いきなり大声出さないでよ……」

紫「何が出来たのー?」

黄「……年越しカレー!!」

橙・紫「( ゚д゚)……」

黄「今年はカレーで年越そー!」

橙「あんたってヤツは……まさかそこまでとは……」

紫「いったい誰が食べるのよ!?」

黄「明日まで寝かせるからね。もっとおいしくなるよー!」

男「……ん?カレーの匂い?」

黄「年越しカレーさ!」

男「……あ、いいかもそれ。毎年そばってのものなぁ。たまには珍しいことしてみたいよな」

橙「黄色くん!楽しみにしてるよ!」

紫「あ、私のには人参入れないでね!」

黄「食べないんじゃなかったの!?」


黄「年越しカレーも作ったし、新しいメニュー考えないとなー」

灰「もし、そこのお嬢ちゃん」

黄「灰色ちゃん?」

灰「メニューに困ってるんだとか」

黄「そうなんだよー。次は何がいいかなぁ……」

灰「ありますぜ。めにゅう」

黄「本当!?」

灰「どうでしょ?年越し用カレー、なんてのは」

黄「え?でも年越しカレーはもう……」

灰「年越し『用』カレー。年越すために食べるカレー。つまり……寝落ちなんてことが絶対ないようにするカレー!」

黄「……おぉ!!」

灰「ちょっと作ってみようよ。まずは黄色が普通にカレーを作る!」

黄「作ったよ!」

灰「そしてこの……私が開発した新しいスパイスを……ハバネロの百倍の辛さのスパイスを……混ぜる」

黄「おぉ!なるほど辛くて目が覚めるわけですな!さっそく入れよー!」

灰「あ、気を付けてほんとに辛」

ドサーッ

灰「あ」

黄「……手が滑った……」

灰「……」

黄「……もったいないし普通に出しちゃおう!」

灰「……死者が出るかも」

黄「そんなになの!?」


男「うっわー、やっぱり寒いなー」

黄「んふふー。なら、わたしが暖めてあげましょう!(ギュッ)」

男「うわっ! お前、何してるんだよ!?」

黄「何って、私の体温を色無にあげてるんだけど?」

男「……いや、桃とか橙とかならまだしも、黄だと、色気もないというか」

黄「あー、何よそのリアクションは! わたしだってあるんだから、もっと恥ずかしがれー!」

男「うわっ、ちょ、やめろって! 買ったものが落ちるっての!」


黄色といえばカレー、カレーといえば黄色。これが定説であり、カレー抜きにして黄色を語ることは出来ない。

……しかし、本当に他にないのだろうか?

疑問に思った私は、黄色をじっくり観察してみることにした。

黄「お、水色ちゃん。今日も早起きで水遣りかい?」

水「黄色ちゃん……うん、お花の様子も見てあげたいし」

黄「うんうん、毎日の愛情の積み重ねが大事だからね!よくわかるよー」

……発見!黄色はお花好き!意外と女の子!?

水「え、黄色ちゃんもお花を?」

黄「んーお花じゃなくて作物なんだけどねー。やっぱり毎日の愛情がないとおいしくならないもんね!」

水「……あ、えーと……」

黄「最高のカレーを作るには最高の素材から!」

……結論、黄色はカレー抜きには語れない。

男「……ふぅ」

黄「なんでこっち見てため息つくのぉ!?」


あたし達の学校は小高い丘の上にある。

だから校門までずーっとゆるい坂が続くんだけど、これがまた地味に疲れる。

下りも同じような景色が延々と続いていて、なんの面白みもないわけさ。

だからあたしは友達をたっくさんつくった。

皆でワイワイガヤガヤ歩けたならこの道も楽しくていいなーって思ったんだ。

でも、みんなと都合がつかない時もあったりして、そんな時は本当につまらない。

つまらないんじゃなくて、寂しい、かもしれないね。

普段の喧騒と比べると、一人トボトボと歩いている姿はとても静かで悲しい。

本当にこの坂が延々と続いているかのように思えちゃうんだ。

一人って嫌いだな。

今、あたしはそんな危機に陥っている。

何故かと言うと、補習だ。バカですんません。

いつもいっしょにレッドポイントを競い合う戦友たちも今回に限ってみんなパスしやがった。

戦線我、孤立セリ。

裏切りものぉ。

帰りのバス賃すらも入っていない悲しきおサイフをポケットに入れなおして、あたしは玄関を飛び出した。

結局一人で帰るしかないのだ、出来るだけ無心で、何も考えずに、早く、早足で帰るしかない。

さあ、黄。あなたは高度な歩行能力を持つAISIMOになるのよ。マシーンになるの。

例え階段でこけても何事も無かったかのように喋り続けられる鋼の精神を持つのよ!

自分に妙な暗示をかける。

……よし、いくぞ!

「よお、黄。今帰りか?」

「うひゃあ!」

ど、ど、び、びび、ビックリしたぁ〜……

いきなり話しかけられて、心臓が飛び出したかと思った。

高鳴り続ける心臓の辺りを押さえながら振り返って、声の主を睨みつけるあたし。

「い、色無じゃん。いきなり話しかけないでよ、ビックリしたぁ」

「ビビッたのはこっちだ。変な声出しやがって」

「なんであんたこんなトコにいんの?」

「いや、部活の青を送ってきたんだ。コレで」

コレ、と色無が指をさしたのは自転車。いいなー……乗せてって欲しいなー。

「登りなのに?ご苦労様だねぇ」

一人でも楽じゃない坂なのに二人乗りなんてねぇ。少し気遣うあたし。

でも、

「慣れてるもんでな、そうでもねぇよ」

と、少し乱れた息遣いで強がる色無。

ムカッ

そんな態度に訳も無くムカついたので、

「二人乗りかぁ、アツアツだねぇ」

と、茶化してやる。うん、やなヤツだ。

あたしの態度に色無もムっとしたらしく、

「なんだよ、関係ねぇだろ」

と声を荒げた。少し、恐い。

「そんなに恐い声出さなくてもいいじゃん!ホントは図星つかれて焦ってんじゃないの?」

対抗するようにあたしも声を出す。ヤバイ、ケンカっぽくなってる。

「まだ言うかお前は!ただ、遅れそうになってて困ってたから乗せてやっただけじゃねぇか!

なんでそうゆう方向に持ってくんだよ、頭おかしいんじゃないのか?」

カッチーン!

帰りの件で、不機嫌だったあたしの堪忍袋はプチーンと切れたぜ!

いいや、色無に八つ当たりしちゃえー!

「なによー、そんなにゆうならあたしも乗せてけ!」

「はぁ?」

勢いに任せて罵倒するつもりだったけど、口から出たのは本音トーク。

どうしよう……図々しいヤツって思われたかな?

青ちゃんに嫉妬しちゃってるなんて思われたら……

ってはぁ?青ちゃんに嫉妬?何で?あたし色無のことなんて……

羨ましかったのかな……あたし

もうわかんないよ……

「……別に、かまわねぇけど?」

混乱を極めるあたしの頭に響く声。

え?

「黄は補習終わったんだろ?だったら乗せてってやるよ。」

「え、でも」

「お前が、言ったんだろ。いいから乗れって、ホラ」

「あ、うん。わかった……」

昼下がり。

ゆるい坂を下る影一つ。人は二人。

色無の背中にくっつきながらあたしは、同じような景色を見つめている。

歩いていたら止まっている絵も、自転車なら動画になる。

あたしはつまらないと決め付けていたその映画を色無の背中を感じながら見つめていた。

坂はどこまでつづいてゆくのだろう。

「おとなしいな」

突然響く、色無の声。低い声。

「ま、揺らすなよ。坂だから危ない」

「わかってるよ」

答えながらあたしは、色無から聞こえる低い声を映画のBGMにして楽しんでいた。

心地よい。

「ホレホレ〜」

「わ、バカ!揺らすなって!」

もっともっと聞きたくて、ついふざけてしまう。

少し声が高くなった。

面白い。

でも、この映画は永遠じゃない。

自転車は速い。通り過ぎるのもあっという間。

だから、少しおねだり。

「ねぇ、色無」

「ん?何だ」

「少し、スピード落として」

もっともっと楽しみたいから。

自転車が減速する。ゆっくりと。

映画もゆっくりと減速してゆく。

無意識にあたしは色無を抱き寄せる。

「お、おい」

色無のオドオドするヘタレボイス。

「ねぇ、色無」

「な、なんだよ」

あたしは数泊置いて、肺一杯に空気を吸い込んで絶叫した。

「たんのしいねぇーー!!」


紫「今日ーぉのおっ昼っはなぁーにーっかなぁー?」

無「うどん茹でたぜ」

赤「うどん?色無が茹でたの?」

無「あぁ。たまには冷たい麺でさっぱりってのもいいだろ?」

青「こんな寒い時期に冷やしうどんだなんて、何考えてるのよ?」

無「じゃあ食べなくてもいいぞ?」

青「うっ……だ、誰も食べないだなんて言ってないじゃない!」

黄「ふっふ〜ん。そこで私の出番ですよ?うどんだなんて、昨日の夕飯の余りのアレを消化するにはもってこいのメニューだね!」

無「ちょっと待て黄色。お前のやりたいことは大体分かってるが、冷たいうどんが食べたい奴も——」

黄「さー、カレーうどんの出来上がりっ♪あとはお好みでチーズをちょちょいっと入れれ……ば……あ、あれ?みんなこっち見てどうしたの?」

無「さて、こいつの処罰は如何しますか?」

赤「とりあえずボクと一緒に42.195kmのランニングにでも行ってこよっか」

青「私と一緒に5時間耐久座禅でもする?心が落ち着いてそのカレー病を治すにはいいかもしれないわよ?」

水「あ……あの、皆さん喧嘩は良くないです……私はカレーうどんも……好きですから」

黄「だ、だよねっ!!おいしいよね、カレーうどん!!」

無「……ま、水もそう言ってることだし、いいか。素直に反省して今度からはちゃんと空気読めよ?」

黄「うんっ!……ゴメンね、ありがとう色無っ!(ギュッ)」

無「ちょっ、うわっ!いきなり抱きつくなバカ!///」

赤「……やっぱり教育が必要みたいだね、この子は」

青「まず空気の読み方から教えなくちゃいけないみたいね」


黄「おっはよー色無!」

無「おはよう。あ、いいにおい」

黄「今日はキーマカレーだよ!」

無「お、うまそう」

黄「おかわりしてもいいからね。私布団干してくる」

タッタッタッタッタッタッ

無「元気だなぁ」

黄「よし、今日も快晴!」

無「ただいまぁ」

黄「ふふぅん♪」

無「なんだよその笑い?」

黄「じゃーん!見てこれ!」

無「母子手帳……。えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

黄「この度私、お母さんになりまぁす!」

無「こうしちゃいれん!早く名前考えるぞ!」

黄「ん、じゃご飯食べながら考えよ?」

無「よし!男ならルークで女ならレイヤだ!」

黄「ちょっと早いよ」


黄「いやあ、クレープごちそうさま!」

男「へいへい。タチの悪いたかりだよ、まったく」

黄「あたしはお願いしただけだもんねー」

男「フン。にしてもカスタードクリームとはベタ甘な……てっきり辛い系に走るかと思ったが」

黄「甘いものも大好きなの。なんかさ、しあわせになるじゃん?」

男「……そんなふうに口周りをべたべたに汚してるのを見れば、頷くしかないかと」

黄「へ? あはは、ホントだ。それならこうしてやるっ」

男「うわ!何すんだよ!」

黄「ほっぺにクリームつけたのさ!で、これをこうすると」(ペロッ

男「ッ!?」

黄「へへー♪どうよ、しあわせ?」

男「……し、知るかっ」

黄「♪」


黄「そうそう……もっとかき混ぜて!」

男「こ、こうか?」

黄「ん……結構上手じゃん」

男「そうか?じゃ、もうちょっと頑張るか」

黄「あーもうちょっと優しくして?」

男「え?……わ、わるい」

黄「いいよ、それだけがんばってるんでしょ?」

男「……」

黄「よし!この出来上がったカスタードクリームをシューのなかにたっぷりと入れれば完成だよ!」

男「さっきから狙っておかしな発言してなかったか?」

黄「んー?おかしな発言って何かなー?」

男「し、知らねぇよ!」


黄「いーろーなーしーっ!」

男「なんだよ、ひっつくなって」

黄「んーっ、色無だぁー!」

男「どうしたんだよ……」

黄「だって最近全然かまってくれないんだもん!」

男「んー……まぁ全員の相手しないといけないからなぁ……わかってくれよ」

黄「わかりたくもないねモテ男の気持ちなんて!乙女の心を踏みにじる男の気持ちなんて!」

男「わかったわかった。明日どっか遊びに行こう、なっ?」

黄「おっけーい!約束だよ?じゃ、今日はもうさっさと寝ちゃいなさい!黄色特製ジュースを飲ませてあげちゃうから!」

男「特製ジュース?意外と健康に気ぃ使ってる——」

黄「はい、カレー」

男「……」

黄「……」

男「……」

黄「……」

男「デブの発想だろそれ……」

黄「……はっ!?じゃあじゃあ私デブなのかなぁ!?」

男「いやそうじゃないけど……もういいや」


「はぁ……」

気が重い。放課後いきなり職員室に呼び出されたと思ったら、30分ぐらい進路のことについて話された。……将来やりたいこと、わかんないんだよな。

さっき渡された資料で鞄も重けりゃ足取りも重い。俺はふらふらと自転車置場へ向かった。

「へい大将!なんか今日は暗いねぇ」

すると、今の気分とは正反対の明るい声が背後から響いた。

「黄色か……。お前は元気だな」

彼女の無邪気な明るさが今はとても羨ましく思える。リアルな話はそれほど重いものなのだ。

「ん?どしたの?なんかマジで暗いけど」

俺のあまりのテンションの低さに黄色も気付いたらしい。心配そう、とまではいかなくても若干俺を気遣っている感じがする。

「さっき呼び出されてさ、進路のこと言われたんだよ」

「あー、さては決まってないんでしょー?」

黄色はまだ楽しそうにしているが、こっちにとっては大きな問題だ。

「……悪かったな。よくわかんねえんだよ、先のコトとかさ」

クラスのやつで、入学当初から進学先のこととかが完璧に見通しがついてるやつがいたが、本当にすごいと思う。俺なんか毎日をこなすのが精一杯だ。

「なんかそうっぽいもんね、色無は」

まだ彼女は楽しそうだ。

「お前は決まってんのかよ」

なんとなくそれがしゃくで、黄色にふってみる。

「トーゼン」

「なんだよ?」

「カレーの専門学校」

「えっ!マジでッ?!」

「あはははは、ジョーダンに決まってるでしょー、そんなの」

彼女はまた笑いだす。……なんか黄色ならやりかねない気もしたんだ。

「さすがにそれはないけど、やりたいことはあるんだー」

そう明るく言う黄色に、俺は少し劣等感を持ったかもしれない。

「……すげぇな、お前」

もしかして、みんなみんなやりたいことがあるのだろうか。取り残されてるのは俺だけなのか? 
「———色無は、大丈夫だよ」

彼女は、微笑んでいた。

「え?」

いつもと少しカンジの彼女に驚いていたのかもしれない。何を言っているのかわからなくて聞き直した。

「色無は、毎日毎日頑張ってるから。だから、大丈夫だよ。たぶん」

「あたしは、そういう色無、好きだよ」

彼女は心底楽しそうに笑う。

———魔法なんじゃないか、と思う。黄色のとびきりの笑顔を見るとこっちまで明るくなってくるんだ。

「—————ッ!」

思いっきり伸びをした。きっと、いつもの俺に戻れる。

黄色はそんな俺をやっぱり楽しそうに見ている。……すごいやつだよ。

「おーしっ、黄色!遊びに行くか!」

「えっ、マジ!?」

「おう!自転車に乗れ!」

「お、おー!」

置場から自転車を引っ張り出して、後ろに黄色を乗せる。———さぁ、行こう。

「行くぞ!」

「れっつごー!!」

後ろからは、心まで明るくする、元気な声が響いていた。


黄「ごめんね色無、ありがとっ!」

無「そう思うなら次から忘れるなよ、バカ」

無「さて、教科書も無事間に合ったし……次の授業に臨むかな」

無(——意気込んだはいいけど、つまんね……ん?これ、ラクガキ……筆談か?)

『この前さー、色無と遊びに行ったんだ』

『うそ!?ずるいずるい!』

『だって部活だったんでしょ?そうじゃなかったらちゃんと誘ったよ』

『じゃあ次の土曜日!部活ないから!』

『おっけー。勝負下着の準備はいいかな?』

『なんで知ってるの!? でもそれを言うなら黄色もでしょ』

『えーっ!?バレてた!?なんでなんでぇ!?』

『そんなのどうでもいいじゃん。でもこのこと、みんなには内緒だからね』

『あ、それはもちろん。あー、だったらいっそふたりでやっちゃいますか?赤さん』

『えぇッ!?それってつまり』

無(……えらく中途半端なとこで終わってるな。なんでだ? しかし、あのバカやろー……人のでラクガキすんなよな!したならしたでちゃんと消しとけ! てかなんだよこの内容ッ!どう考えたって俺が見ていいもんじゃねーだろ!?あぁもうなんでアイツはこう——)

先「——じゃあここの問題を、次の人。色無くんだね。はい答えて」

無「うぇ!?あ、えーと……あの……(ラクガキが終わってたワケは、たぶんこういうことなんだろうな……うぅぅ)」


黄「雪だぁ!!」

男「あ、ほんとだ。夜のうちに降ったのかな?一晩でこんなに積もるとはなぁ」

黄「雪だよ!ねぇ雪!」

男「見ればわかるよ」

黄「雪だって!!」

男「……なんだよ期待に満ちたその目は」

黄「雪といえばすることは一つ!」

男「俺はやだねー。寒いから」

黄「じゃあ色無の分も私が取ってきてあげるね!」

男「だから俺はいいって……ん?俺の分?雪合戦じゃなかったのか?」

黄「ほーら色無ぃ!色無は何かけて食べる?私はいちごかなぁ。シロップどこにあるか黄緑さんに聞いてくるね!」

男「……」


男「はぁ〜……」

黄「ん?なに、どうしたの?」

男「いや……せっかくこうして外歩いててさ」

黄「うんうん?」

男「いい風も吹いてるのに……」

黄「気持ちいいよねぇ!爽やかすぎる!」

男「スカートの下はジャージ」

黄「……あぁ、パンチラ期待してたってやつ!?」

男「まぁ、それなりに」

黄「まったく……男の子の考えることはよくわかんないなぁ」

男「恐縮です」

黄「っていうか寒いじゃん、穿かないと!」

男「あ、やっぱり寒いんだ。人によっては真冬でもミニスカートだったりするから女の子は寒さに強いのかと……」

黄「必死に無理してるんだよっ!」

男「女の子は大変だねぇ」

黄「その目は何……?よし、じゃあ黄色ちゃんもサービスしてあげちゃおう!」

男「ん?何すんの?」

 ジー……

黄「どう!?ビバ!チラリズム!?」

男「そんな……足んとこのチャック開けられても……」

黄「ふくらはぎには興味なしなの?」

男「赤だったらわかるけど……黄色の見てもねぇ」

黄「ひどっ!!」


『ケーキ』

黄「色無」

無「なんだ、黄?」

黄「ケーキ食べたくない?」

無「なんだよ、オレに奢らせる気か?」

黄「ちがうよ、いつも色無にはお世話になってるから私の奢り」

無「いいのか?」

黄「実はもう買ってあるんだ」

無「……イチゴのショートケーキか」

黄「……キライだった?」

無「いや、イチゴは好きだ。よし、紅茶でもいれるか」

無「……結構うまいな」

黄「でしょー? 今度連れてってあげる。私のお気に入りのお店なんだー」

無「楽しみにしとくよ」

黄(これってデートの約束よね?)

無「ガッツポーズなんかしてどうした?」

黄「なんでもない……あっ!」

無「……今度は何だよ?」

黄「……目、閉じて?」

無「なんでだよ」

黄「いいから、ほら」

無「……わかったよ」

黄「……色無のケーキいただきっ!」

無「な! ってお前自分の分食えよ」

黄「人の食べてる物って美味しそうに見えるよね?」

無「そういう事ならオレも……ん? 味が違うな」

黄「スポンジがちょっと違うのよ……替える?」

無「なら半分ずつ食べないか?」

黄「うん……(あー、私のバカ! せっかく色無が口の横にクリームつけてるのに)」

——ケーキ越しに間接キスしている事に気がついてお互い真っ赤になるのは少しあとの話


ヒュー

黄「きゃっ!?」

無「凄い風だな……」

黄「……今見えちゃった?」

無「別に。お前のパンツ見てもあんま嬉しくないし」

黄「なによそれー……あれれ? 何か顔赤くなってる気がするけど気のせいかなー?」

無「しらねー」

黄「ふふ、口ではそう言っても私のこと女として見てくれてるんだねー。嬉しいな」

無「パンツ見られて喜ぶ女もどうかと思うぞ……」

黄「あは、確かに」


黄「酷いよ……酷いよ色無!!」

男「えっ?ごめ、今俺そんな酷いこと

黄「うわーん!!」(ダッ

男「黄色っ!?」

黄「ひぐっ……」

灰「どったの?」

黄「灰色ちゃん……あのね!?グスッ……色無酷いんだよぉ!?」

灰「またあの男は……で、どうしたの?」

黄「それがね?……グス……『黄色の作るカレーはおいしいけど、もう飽きた』って……」

灰「……」

黄「……うぅ……うわぁぁん!!」

灰「黄色ちゃん、それは違うよ」

黄「グスッ……え?」

灰「『おいしいけど』まずここ。一旦黄色ちゃんのこと褒めてるでしょ?」

黄「うん……でも色無はいつも言ってくれてるし……」

灰「そして次。『もう飽きた』。つまり……カレーだけじゃなく他の手料理も食べてみたいってこと」

黄「……え?」

灰「更に言い換えれば……毎朝味噌汁を作ってくれってこと。あいつもなかなか古い人間だねぇ」

黄「……それって……」

灰「あいつなりのプロポーズでしょ」

黄「色無ぃ!!」

男「ごめん黄色!さっきは言い過ぎた!そんなつもりじゃ……」

黄「えへへー毎朝作ってあげる!だから……絶対幸せにしてねっ!」

男「……え?お、おう……(なんだ、この超絶スマイルは……)」


『応援』
黄「色無ー、ガンバレー」

無「着替えまでして本格的だな」

黄「この方がやる気出るでしょ?」

無「やる気と言うか、部屋の中にチアガールが居るってどうよ?」

黄「色無は宿題を頑張る、私は色無を応援する。合理的でしょ?」

無「お前もやれ」

黄「えー」

無「えー、じゃない。ほらその姿に免じて解らない所は教えてやるから」

黄「……やっぱり、こういうの好き?」

無「好きと言うか、貴重な体験だとは思う。ほら手が止まってるぞ」

黄「……好きじゃないの?」

無「ずいぶんこだわるな」

黄「せっかく部活の服まで着たんだからもう少し収穫が欲しいわけですよ、色無君」

無「分かったから無意味にすり寄るな。仕方ない、晩は俺がカレーを作ってやるから頑張れ」

黄「む、そのとりあえずカレー食わせとけばいいやみたいな考えは」

無「いらないのか?」

黄「いるに決まってるでしょ! さぁ、早く宿題終わらせてカレーにしましょう」

無(ったく、さっきからまともに見れないっての。よし、せめて、気合い入れてカレー作るか)


黄緑「今日のお夕飯は何にしましょうかねぇ?」

黄「刺身!」

 ざわ……ざわ……

一同(あの黄色がカレー以外を?頭がおかしくなったのか……? それとも何か裏があるのか……?)

無「き、黄色、お前大丈夫か? 熱とか……ない……よな?」

黄(計画通り!!! 私がカレー以外を選択することにより周囲に異常を装う。そして色無が声をかけてくれた!)

無「と、とりあえず部屋に行って少し休もうか? ほら、連れてってやるから……」

黄「えっ、別にそこまでしてもらわなくても——ひゃぁっ!(お姫様抱っこされる)」

一同(!!!!???)

無「っとと、あんまり動くと落ちるぞ。おとなしくしてろ」

黄「え……あ……う、うん……」

無「ちゃんとおとなしくしてろよ」

黄「う、うん……(ホントはなんともないんだけどなー)」

無「じゃあな——」

 ぐぅー

黄「ぁ……(お、お腹鳴っちゃった……)」

無「……もしかして、腹痛か? じゃあ夕飯はいらないって黄緑さんに言っておくな」

黄「えっ!? ちょ……ちがっ……」

無「お大事にな」

 バタン

黄「……お腹すいたぁ……」


黄「お花見〜♪お花見〜♪」

無「やけに嬉しそうだな?」

黄「ん?だって色無とこうやって二人でおでかけするのなんて久しぶりだから」

無「そうだっけか?」

黄「色無ってば普段、私のこと全然かまってくれないんだもん」

無「いや、それは灰や紫の相手するので手一杯だから……」

黄「知ってるよ。だから今日ぐらいは私だけをたくさん可愛がってよね♪」

無「お、おう……(な、何かいつもの黄色と違うくないか?)」

黄「ふ〜。それにしても少し張り切りすぎたかな」

無「さっきから気になってたんだけど、その荷物は?」

黄「えへへ〜♪せっかくのデートだから本日は黄色ちゃん特製のカレーを持参しました〜」

無「やっぱり……(やっぱりいつもの黄色だった……)」

黄「花見といえばやっぱカレーでしょ」

無「あるあ……ねーよ」

黄「えっ〜ウチでは当たり前だったんだけどなぁ」

無「自分だけのものさしで世の中を測ってはいけません。黄の頭のなかにはカレーのことしかないのか?」

黄「ぶぅ〜失礼な……ちゃんと色無のための場所もあるんだから。カレーの次に……」

無「じゃあ、俺とカレーどっちが好き?」

黄「……」

無(どきどき)

黄「……カレ——」

無「ストーップ!!もう何も言うな!」

黄「冗談だよ。色無のこともカレーと同じくらい好きだよ」

無「カレーと同列に並べられても嬉しくなんかないやい!」

黄「ほら、黄色ちゃん特製カレーを食べて機嫌直してよ」

無「む〜(パク)う、うまい」

黄「よかったぁ〜」

無(これなら同列にされても……)


 出会ったのは二人同時だったけど、前に踏み出したのは橙で、だから私は一歩後ろに下がった。

 私の前に色無と橙が並んで歩き、私はそのあとをついて行く。

 それが、今の三人の距離。

 

「あ、どうも、色無です。その、まさか寮に入る男が自分一人になるとは思ってなかったので、ちょっと緊張してます……よろしくお願いします」

 第一印象は、まああんまりよくはなかった。女の子に囲まれておどおどしてて、遠慮してる感じだったし。

「あいつ、ちょっと暗くない? いい男だといいなーって、けっこう期待してたのに」

「まあねー。でも、この環境じゃしょうがないっしょ。あんまり女の子になれてる風でも逆に引くし。まずはお近づきになりますか。おーい、色無くーん!」

「あ、ちょっと橙ちゃん!」

 入寮生歓迎会(と言っても、上級生は誰も入寮してなかったけど)のとき、ジュースの入ったグラスを持って両隣に座った私たちに目を丸くした色無の顔は、今思い出しても笑える。

 

 それからだんだんと打ち解けてきて、互いに呼び捨てにするようになり。わりと頼りになるところとか、さりげなく優しくしてくれるところとかが見えてきて。

 いつの間にか、私と橙、そして色無の三人で一緒に遊ぶことが当たり前になったころのことだった。

「あの、さ。黄」

 その日、宿題を忘れた色無が機嫌の悪かった担任に呼び出しを喰らい、私と橙は珍しく二人で下校し、マックに寄り道してた。

「ん? 何、橙」

 それまでの他愛ない会話が不意に途切れ、ちょっとした沈黙のあとで神妙な声を出した橙に、私もちょっと居住まいを正した。

「色無のことなんだけどさ……」

「色無? ああ、あいつほんと要領悪いよねー。ふだんはちゃんと宿題やってるくせに、先生の虫の居所が悪いときに限って忘れるなんてさあ」

「う、うん……その、そうなんだけど、そうじゃなくて……」

「……何? 色無になんかされたの?」

 歯切れの悪さを心配した私の言葉を、橙は首をぶんぶんと横に振って否定した。

「ち、違うよ、そういうことじゃなくて! その……私、色無のことが……好き、みたい……」

「……え?」

 心臓が頭の中でおおきく一回脈打つと、周りの音が全然聞こえなくなった。溶けかかったシェイクを無意味にストローでかき回し、なんとか意識をつなぎ止める。

「へ、へ〜。そりゃ物好きだねー。見た目も普通で取り柄も大してないし、まあ優しいのは確かだけど、八方美人だし……」

「……」

「えーと……マジで?」

 真っ赤になってうつむき加減のまま頷く。正直言って、こんなかわいい橙をみるのは初めてだった。

「そっか……いいんじゃないの? でも早めに告ったほうがいいよ。さっきも言ったけど、あいつ八方美人だから他にも狙ってる子がいるかもしれないし」

「黄は……それでいい?」

「へ? いや、いいも悪いも橙が決めることだし。私に聞くことじゃないでしょ?」

「……うん、分かった。ありがと。じゃ、うまくいくように応援してね!」

「大丈夫だって!」

 それから寮まで色無の話で盛り上がり、どこに惚れたのか、いつ好きになったのかと根ほり葉ほり聞いて、照れる橙をからかった。

「じゃ、またあとでね。結果が出たら教えてね!」

「うん。じゃああとで!」

 隣同士の部屋の前で別れて、鞄を放り出して制服を着替え、放心状態でベッドに倒れ込む。

「……ふ……う……」

 不意に涙と嗚咽があふれ出し——私はようやく、自分も色無が好きだったことに気づいた。

 

 結局、そのあとすぐに橙は色無に告白し、色無はそれを受け入れて、二人はつきあうことになった。なのにどういうわけか、

「黄が一緒じゃないとつまんない!」

「そうだよ、別に遠慮することないだろ。同じ寮に帰るんだからさ。今までと一緒でいいじゃん」

 ということで、その後も私たちは三人で登下校を続けている。やっぱり周りからは奇妙に映るみたいだけど、もう笑ってごまかすしかない。

 ……ちゃんと笑ってられてるかな? 私は誰もが認めるムードメーカーなんだし、ちゃんと周りを、二人を盛り上げていかなきゃね。

 

 その日、掃除で遅くなった私が教室に戻ると、色無が一人で退屈そうにしていた。

「おっまたせ〜! トイレ掃除が長引いちゃってもう大変だったよ! でも苦労の甲斐あって便器なんかもう顔が映るくらいピッカピカ! 鏡代わりにして化粧直しして来ちゃった!」

「ぶっ! くっだらね〜。お前ここに来るあいだ、ずっとそんなネタ温めてきたのかよ。ほんとしょうがねーな、黄は……じゃあ行くか」

 色無は吹き出しながら立ち上がると、私の席から鞄を取って放り投げてきた。

「わ、っとと。行くかって……橙は?」

「あー、なんか急用とかで先に帰ったよ。待てなくてごめんって言ってたぞ。俺たちも二人じゃしょうがねーし、まっすぐ帰るか」

「え、あ、ちょっと待ってよ!」

 すたすたと先を行く色無の背中を、私は慌てて追いかけた。

 

「……」

「……」

「……なんで黙ってんだよ」

「なんでって……別に」

 いつも三人で騒ぎながらたどる道が、二人して無言で歩くとやけに長い。三人ならできる馬鹿話も、二人だと気恥ずかしくてとてもできない。

「そういえば、黄が俺の隣を歩くのも久しぶりだな」

「そうだっけ?」

「そうだよ。最近はいっつも俺と橙の後ろを歩いてるだろ……なんか、気つかってんのか?」

「べっつにー。何、私も横に侍らせて両手に花っていきたいわけ? そうはいきませんよーだ!」

 おどけて見せて本心を隠し、色無から少し離れて縁石の上に乗って、平均台のようにして歩く。

「そんなつもりじゃねーけど……おい、危ないから降りろよ」

「大丈夫だいじょーぶ、私のバランス感覚をなめないで——きゃっ!」

 調子に乗って一回転したら、ずるっと靴底がすべって——気がついたら、色無の腕の中にいた。

「おっと! ほら見ろ、いわんこっちゃない」

「ご、ごめん……」

 色無の声が耳元で聞こえる。色無の匂いがする。色無の鼓動を感じる。

「おい、もう離れろよ」

「……ね、今日はこのまま腕組んで帰ろうよ」

「はあ!? お前何言ってんだ?」

「いいじゃん。ほら、私誰かとつき合ったことないからさ、ちょっと恋人気分ってのをお試しで味わってみたくて」

 硬直する色無が我に返る前に、私はその腕をしっかりと抱きしめた。

「お、おいまずいって。誰かに見られたら……」

「だいじょーぶだって、橙にはあとで私からちゃんと言っとくから。あ、いたたたた、さっきので足をくじいちゃったみたい……」

「うっわ、嘘くせー! ……ったく、しょうがねえなあ……ほんとに橙にはちゃんと説明しとけよ!」

「はーい!」

 ため息をつき、色無は鞄を持ち直して歩き出した。ごめんね……でも、今だけは恋人のふりをしてね。

「? お、おい黄、なんで泣いてるんだよ!? 俺なんかしたか? あ、もしかしてほんとに足痛いのか?」

「え?」

 言われて頬に手をやると、自分でも気づかないうちに涙が流れてた。

「あ、あはは……ごめん、なんでもない。夕日が目に入って、ちょっと痛かっただけ……」

 あわてふためく色無をなだめ、なんとか納得させて、また二人で歩き出す。

 一緒にいると楽しくて、優しくて、本当に大好きで、今はこんなに近くにいる色無。だけどこの想いは伝えられない。だってあなたは——彼女の彼。


『遠足』

黄「いろなし、お昼一緒に食べよ?」

無「いいけど」

黄「じゃーん」

無「へぇ、きれいなお弁当だね」

黄「実は一種類だけ私が作ったのが入ってるのよ」

無「ごはん作れるんだ、すごいね」

黄「すごいでしょ」

無「うん、すごいよ。いいお嫁さんになれるね」

黄「!!」

無「じゃあ、いただきます」

黄「い、いろなし」

無「ん?」

黄「これひとつあげる」

無「コロッケ?」

黄「そうよ、特製カレーコロッケなんだから」

無「カレー味なんだ……いただきます」

黄「……ど、どう?」

無「おいしいよ、黄が作ったの?」

黄「そ、そうよ」

無「すごいなー、これならいいお嫁さんになれるね」

黄「そ、そう?」

無「うん。黄のおむこさんになる人がうらやましいなー」

黄「だ、だったら!」

無「ん?」

黄「あたしをもら……(恥ずかしくて言えないよー)」

無「変な黄?」


黄「さぁ待ってました昼休み! 今日もカレーの味が私を学食へと駆り立てていくぅ!」

赤「元気だね……ボクはテスト勉強疲れでへとへとなのに」

黄「何言ってるの赤! カレーは至高にして究極の——」

赤「あー、はいはい。その話はいいよー」

黄「なにおぅ!」

黒「……それにしても、黄は本当にカレーが好きよね」

黄「当たり前だよ!」

黒「どうして、そこまで好きになったのか……興味あるわね」

黄「へ?」

赤「あ、それはボクも聞きたいかも」

黒「ねぇ、よかったら教えてくれないかしら?」

赤「教えて教えて!」

黄「え、えーと……」

 私がカレーを好きな理由 それは、私と色無が初めて一緒に食べた味

 色無はきっと忘れてる だけど、私にはあの味と一緒に続いてる気持ちがある だから、この気持ちを色無に伝えるまでは誰にも喋らない

黄「ごめん、これは秘密!」

赤「え〜〜!」

 それが、色無と私だけの秘密だから


『かれーなひととき』

無「おーい、黄。昼ご飯だぞ」

黄「……食べたくない」

無「具合悪いのか?」

黄「……浮気者」

無「……は?」

黄「昨日小さい女の子を肩車して一緒に遊んでたでしょ」

無「見てたのか」

黄「見てたよ、ひどいよ、こんなに可愛い恋人がいるのに」

無「見てたんなら声掛けてくれよな。迷子の世話は大変だったんだぞ」

黄「……」

無「……」

黄「……迷子?」

無「そうだよ」

黄「……ロリコンじゃなかったの色無?」

無「はぁ?」

黄「だってこんな子供っぽい私と付き合ってるし」

無「……どの辺が?」

黄「……性格とか……ごにょごにょ」

無「なんだ、自覚あったのか」

黄「わ、悪かったわね」

無「……まあ、その辺も気に入ってるんだけどな(ぼそ)」

黄「なんて言ったの?」

無「昼は特製カレーだって言ったんだよ」

黄「ホント! やったー、先に行くからね色無!」

無「……普段は地獄耳なくせにこういう時は聞こえないんだな」

黄(うわー、なんてタイミングで言うのよ、色無が来る前に早く赤くなった顔を戻さないと)

 ——後から来た色無に、顔が赤いのはスパイスのせいだと言い張る黄だった


黄「起きてる?」

無「……」

黄「ねぇ、起きてる?」

無「……寝てる」

黄「起きてるじゃんw」

無「……なんでこんな修学旅行じみたやりとりをしなきゃいけないんだろう……」

黄「まぁまぁ。どうせ明日には部屋のクーラー直るしさ、今日だけだからいいじゃん!」

無「まぁ俺の部屋クーラー付いてないけどね」

黄「いいからさっさと寝る!」

無「起こしたのお前じゃん……」

黄「……」

無「……」

黄「……寝た?」

無「寝た」

黄「……そっか、寝ちゃったのか。じゃあ一人で好きな人暴露大会でもしてようかな。……本当は色無とするつもりだったけど」

無「……」

黄「んーと、私の好きな人はねぇ、かっこよくてぇ、優しくてぇ、勉強は……あんまり出来ないけど。スポーツもそこまで得意じゃないかな」

無「……」

黄「あ、でも最近は赤ちゃんとよく走ってるから体力ついてきてるのかも。……それでね、さっきは優しいって言ったけど、なんか私にはちょっと厳しくてね?」

無「……」

黄「黄色ちゃんのキャラ的にあんまり気にしてないよう取り繕ってきたけど……。やっぱり嫌われてるのかなぁ?他の子たちには優しいし……」

無「……」

黄「……なんか、ほんと嫌になってきてさ、自分が、実は嫌われてたのに調子にのってたならさ、……ぐすっ……」

無「……逆だよ、バカ」

黄「……え?」

無「……寝言だ」

黄「……そっか、寝言か」


—ゴロゴロゴロ……

黄「うわぁ……雷鳴ってるよ……」

無「近くに落ちなきゃいいんだけどな」

黄「え、縁起でもないこといわないでよ!」

無「お?黄色さんは雷が苦手なんですか〜?」

黄「悪い?」

無「いや、全然。ただちょっと意外だなぁ……と」

黄「いっつもカレーとかなんとか言われてるけどさ、あたしだって一応女の子なんだからね……?」

無「ぅ……そんな顔すんなよ。俺は黄色のことちゃんと女の子として見てるよ」

黄「本当?!やっぱり色無は違うね!……あたし、そんな色無のことが……前から好k」

—ドシャーン!

黄「ひぁっ?!(ギュッ)」

無「うわっ?!(ドサッ)」

黄「ったた……だ、大丈夫、色無?」

無「お前こそ大丈夫か?」

黄「う、うん」

無「大丈夫なら良かった。それで……えっと……」

黄「ん?どうかしt……」

無「まぁ、抱きつかれても俺は別に迷惑じゃないんだけど……」

黄「……じ、じゃあ!!……も、もう少しこのままで……いい?」

無「ん」

黄「……ありがと」

緑「続きを読みたければわっふr」

黄「わっふるわっふる!!」

緑「……やっぱやめた」

黄「えぇぇぇぇぇ?!」


黄「途中雨が降ってきてびしょ濡れになった↓↓……っと」

無「……日記?」

黄「あ、色無!人の日記書いてるとこ覗くなんて感心しないなー」

無「やっぱり日記だったのか。なんで突然?」

黄「いやさ、最近物忘れが激しくてさー。ボケ予防のためにね!」

無「……」

黄「……う、嘘だよ!そんな目で見ないでお願いだから!」

無「……黄色ならありうると思ってしまった……」

黄「ひどっ!?」

無「で、なんで?」

黄「……文字にすると、自分の今の気持ちがよーくわかるかなぁと思って」

無「……へぇー。確かに思いを形にするのって大切だからね。せめて三日は続くように頑張れよ!」

黄「あ、バカにするな!」

『日記を書いてるところを見られた。でもあんまり嫌な気分はしない。……むしろ嬉しい感じかな?日記のおかげで結構長く喋れたし』

『……誰にも負けないんだから』


無「さてと、もう遅いしそろそろ寝るか——」

コンコン

無「……ったくこんな時間に。はいよー、どなた?」

黄「だんなだんな、あちきです、灰色です」

無「なんだ、灰色か……また黒と何かあったのか?」

ガチャ

黄「や!」

無「……」

ガチャン

黄「何で閉めるかなー!?」

無「……お前灰色の声真似上手いな」

黄「へっへー、練習したもんねーw……っていうか開けてよ!」

ガチャガチャ

無「えと……部屋汚いし」

黄「別に気にしないっての!」

無「本当に汚いんだって!」

黄「ふーん。……灰色は入れるのに、私は入れてくれないんだ。ふーん、そっか……」

無「!いや、灰色はハナからそういう対象じゃないから別に気にしないでも大丈夫っていうか俺自身多少身なりも整えないとっていうかなんというか!」

黄「……へぇ、私はそういう対象に入ってるんだw」

無「あぁ!いえ決して邪まな考えを持っているわけではなくてですねそのなんというかあぁもうなんというか!!」

ガチャ

無「あ!」

黄「へっへー、油断したね?入っちゃったもんねーだ!……うわ、ほんとに汚いにゃこりゃ」

無「だから言ったのに……」

黄「……」

無「……?」

黄「えと、ね……さっきのは、嬉しかったよ?」

無「……!あ、いやさっきはその——」

ちゅ

黄「……次は、口だからね!覚悟しろよこの女ったらしめ!」

ガチャ ばたん

無「……結局何しにきたんだよ、あいつ」


黄「ねぇ水ちゃん、買い物したいから帰りに一緒にお花屋さんに付き合って欲しいんだけど」

水「えっ、も、もちろんいいよ!(黄色ちゃんが植物に……ていうかカレー以外に興味をもってくれた……)何買うの?」

黄「ふっふーん、見てのお楽しみ!」

黄「えーと……あ、あったあった!これよこれ!」

水「?……この植物はなんて名ま……ってカレー臭!……あのーこれは一体……」

黄「カレープラント!いやー、カレー好きとしてこんな植物があるのを知らなかったのは迂闊だったわ!

これさえあれば毎日好きなときにカレーの匂いが嗅ぎ放題!やったね!」

水「……結局……カレー……」


『魔法のスパイス』

黄「いろなしー、今日は暑いよねー」

無「……黄は元気だな、ってか夏は暑いもんだろ」

黄「そーだよねー」

無「……なんでそんなに元気なんだよ」

黄「今日の夕食なんだと思う?」

無「黄がニコニコしてるってことは……カレーか?」

黄「そだよ、しかも私の特製スパイス使用の本格派だもん」

無「あー、そっかー、がんばってくれ」

黄「もっとこう、全身で喜びを表現しなさいよ」

無「……暑いんだよ」

黄「むー……じゃあ私と賭けしない?」

無「……賭け?」

黄「今日の夕食、色無がお代わりしたら明日私につきあって」

無「いいぜ、どうせ食欲ないし。でオレが勝ったらどうするんだ?」

黄「明日1日色無の言うこと何でも聞いてあげる」

無「……忘れんなよその言葉」

黄「……色無こそ」

 翌日

無「黄さん、もう勘弁して下さい」

黄「だめー、今日は1日付き合うって約束でしょ?」

無「だからって朝からカレー屋巡りは勘弁して下さい」

黄「なんでよー、1人分頼んで2人で食べてるんだからまだ余裕あるでしょ」

無「百歩譲ってそれはいいけどな、『あーん』はやめてくれ」

黄「だーめ、今日は私の言うことを聞いてもらいます」

無「まあ、黄おすすめの店ばっかりだから旨いのが救いか」

黄「何か言った?」

無「何でもない、ほら次はどこだよ」

黄「次はね、最近できたスープカレーの店だよー」


黄「お盆かー。色無は帰んないでよかったの?」

無「まだまだ元気だからなー。顔見せるのは受験終わってからでも遅くはないだろ」

黄「あらそー。……で、お盆といえばもちろん……?」

無「やめとけ」

黄「えー、なんでよー?」

無「去年、しょっぱなから水ちゃんが大泣きしたの覚えてないのか?」

黄「あぁ……あれは羨ましかったなぁ……」

無「お前人が泣いてんのにそれはないだろ……」

黄「結局水ちゃんが寝付くまで一緒にいてあげたじゃん、色無。どこのお母さんだよ」

無「本当に怖がってたからなぁ……ほかに男がいないから俺しか頼れなかったんだろ」

黄「本気でそう思ってるところがまた色無の色無たるユエンだね」

無「……?」

黄「じゃあさ、今年はやらないからさ、その代わりに私も寝かしつけてよ!」

無「なんで!お前泣くどころか楽しんでたじゃねぇか!」

黄「いいから!やってくれないと……今から水ちゃんに怖い話聞かせて大泣きさせちゃうもんねー!」

無「な!お前あれ本当に大変なんだぞ!心の底から怖がっちゃってるからもう……」

黄「水ちゃーん!ちょっとこっちおいでー!楽しいお話しよー!」

無「わかった!わかったから!」

黄「よし!」

無「何がしたいんだよまったく……」

黄「今夜は寝かせないよー!」

無「すでに矛盾……」


無「あー、背中がかゆいっ!!」

黄「どしたの?」

無「なんか日焼けしたら皮が剥けてきたみたいで……」

黄「ふっふっふ……そーゆーことなら黄色ちゃんにまかせなさーい♪」

無「あ、あんまり激しくしちゃダメだからね」

黄「んー……(ピリピリ)」

無「ふぁ……」

黄「こら、変な声だすな」

無「だ、だって……」

黄「なんか面倒になってきたなぁ……あ、アレ使っちゃおうか!」

無「アレ?」

黄「じゃーん!必殺コロコロ粘着テープ!」

無「げっ?!それ痛いだろ絶対!!」

黄「うるさい!だまって背中向けろー!」

無「あーっ、黄色に襲われるーっ!」

青「……賑やかだこと」

空「お姉ちゃん、羨ましいの?」

青「そ、そんなわけないじゃない!べ、別に私ならもっと優しく皮剥いてあげるのにとかなんて考えてないわよ!」

空「……逆に考えればお姉ちゃんの性格って物凄い素直だよね」


『かれいの日』

無「黄……お前の作ったカレーが食べたい」

黄「色無……わかった作ってくるから待ってて!」

無「煮付けの方のかれいを頼む」

黄「……」

無「……」

黄「それはこの私への挑戦ね」

黄「はいどうぞ」

無「……きちんと煮付けだ」

黄「私が本気を出せばこれくらい楽勝よ」

無「じゃあいただきます……美味い」

黄「と、当然でしょ」

無「これなら毎日でも食べたいな」

黄「……カレーも食べてくれるならいいよ」

無「バカだな黄のカレーが嫌いなわけないだろ」

黄「じゃあ私のことは好き?」

無「ああ、黄。俺はお前のこと……」

ピピ! ピピ! ピピ!

黄「……夢? もう少しくらい見せろー、バカー」

 食事当番の日にかれいの煮付けを出して一騒動あるのはまた別な話。


『黄色とカレーと健康志向』

色無が今日も一日バイトに精を出して寮まで帰ってくると、気配を察したのか黄色が食堂からひょこっと顔を覗かせていた。

「ただいまー今日の晩飯は」

「遅いよ色無ぃ、さっさと来ないと先に食べちゃうよっ!」

小さく頬をふくらせて自分を急かす黄色を見て色無は今夜のメニューを察したのだった。

「カレー、か……」

そのままカバンを部屋に投げ込み食堂へと戻っていると、ちょうど黄緑が食堂からこちらへ歩いてくる。

「黄緑ただいま」

「はい、色無さんお帰りなさい」

「あー、ちょっと聞きたいんだけどさ。夏休みに入って何回カレー出たっけ?」

「ええと、週一回は食べてますねぇ」

そう言いながら黄緑はちょっと困ったような笑みを浮かべる。

「黄色の奴、海自のコックにでもなるつもりか」

「この前紺色さんとカレー談義してましたし、火が付いちゃったんですよきっと」

正直な話、何度出ても食べようという気になるぐらい黄色のカレーは美味しい。

その上この夏だけでも牛肉・シーフード・スープカレーに本格的な羊肉のキーマカレーと多種多様なレパートリーを持つ黄色は純粋に凄いと色無は思う。

「それじゃぁ、あの三人を呼んできますから先に席に着いていて下さいね」

「はぁーい」

返事を聞いて黄緑は、いつものにこにこ顔で廊下の奥へと歩いていった。

入れ替わりに色無が食堂へ入って自分の席に着くと、

少し遅れて黄緑がややぐったり気味の群青朱色姉妹と一人だけけろっとした顔の焦茶を連れて戻ってきた。

「はいはい今夜のカレーは本場インドでも人気のスパイスを使った特別カレーでございます!

今年は特に熱いからカレーを食べて夏バテなんか吹き飛ばしちゃぉう!」

一際威勢のいい黄色が嬉しそうに今回のカレーの事を語り始める。

「あなた、前回もそう言ってなかった?」

「いやいやいや黒ちゃん今回のはまた更に違うんですよ。

今回は食欲増進だけじゃなく、ウコンの薬効を期待して頭の活性化ってゆーかボケ予防とガン予防、豚肉と夏野菜でお肌ピチピチ!

インド人の師匠もびっくりの会心の出来なんだってば!いやそもそもカレーって言うのはねイギリス——」

お肌ピチピチという言葉が食堂に響いた所で乙女達の顔が変わった事にも黄色は気付かず話はカレー雑学へとなだれ込んでゆく。

「前書きは良いから早く食べようよー、僕もう限界!」

気炎を吐く黄色も赤の声で気が付いたのか、はにかみながら両手を合わせ、

「それじゃみんな、いただきまーす」

「いただきまーす」

黄色の号令で皆がいつものカレーより気合いの入った顔で食事を始める中、遅れてきた四人の前に黄色が大盛りのカレーを置いてゆく。

「はい、年上4人には大盛りだよーん!特に群青さん朱色さん焦茶さんはたっぷり飲んでるんだからウコンで肝臓休ませましょっ!」

そう言いながら焦茶にカレーを差し出した黄色が群青の前に大盛りカレーを差し出すと手首をものすごい力で捕まれる。

「ちょ、群青さんえっ?」

「……黄色ちゃん、私まだボケるような年じゃないわよ?」

二日酔いと徹夜のせいか、やや虚ろな目で群青は黄色をじっと見つめている。

ただそれだけのことで黄色は気圧されたように引きつり笑いを浮かべた。

「で、ですよねー!群青さんまだまだ綺麗ですもんね!」

「なぁ黄色、コレ食べたらシワが減ったりするのか?」

「え?あ、ちょっとは変わると思いますけど……」

うなだれたまま問いかける朱色に黄色はしどろもどろに言った。

「ちょっとなのか……」

やや必死な群青の横で、朱色はややしょんぼりとした様子で出されたカレーを黙々と食べている。

そうしてようやく群青・朱色姉妹から解放された黄色が最後に黄緑の前にカレーを置くと、

「黄色ちゃん、私はまだ17なんですよ?17歳なんです」

そこには笑顔で17歳を強調する黄緑の姿が。

「もういやぁ……」

年上系3人に圧倒された黄色の、万感を込めた一言であった。

「おねーちゃんは何も言わないんだね……」

おずおずと茶色が小さな声で焦茶に問うとカレーに満足しているのか嬉しそうな声ですぐに答えが返ってくる。

「あぁ、私はあの2人ほどああ言ったことに気を遣わないからな」

そこで焦茶はスプーンをくわえたままちょっとだけ考え込んで、

「……色無分を定期的に摂取することが私の健康法だな!」

元気よくそう言い放った。

そして目の前に座っている焦茶から気恥ずかしさで目をそらした色無は、これまでいつもの溌剌さが無くなっていた群青と朱色の眼になにか”いやなもの”が宿った事に気が付いてしまった。

「ねぇ色無君」「色無ぃ」

「このあとちょっと、良いかしら」

翌朝には花も恥じらう乙女達によってカレーも色無もきっちり空になりましたとさ。







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Last-modified: 2012-10-21 (日) 03:24:38