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#hr

 色無狼と灰羊~
「きみも羊なのに狼が怖くないなんて、変な子だね」~
「あんたに言われたくない」~
「それと、オレの尻尾は枕じゃないよ」~
「だって気持ちいいんだもん」~
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#br
「あんまり狼と一緒にいると、みんなに怪しまれるよ」~
「もういろいろ言われてるもん」~
「まずいんじゃない?」~
「いいよ、べつに」~
「……」~
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 次の日~
「色無……いろなし? ……なんでいなくなっちゃったのよ……」~
#br
「やっぱり、狼と羊が一緒にいるなんていけないよな。ごめんね……灰」~
「勝手なこと言わないでよ」~
「灰!?」~
#ref(pencil_1165.gif)

「一人で勝手にいなくなって……あたしがどんな気持ちかも知らないで!」~
「灰……」~
「ひとりにしないでよ! 一緒にいてよ……」~
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「オレ、狼だよ」~
「知ってる」~
「みんなのところには……」~
「もう、戻らない……あたしも、一緒に行く」~
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「ふたりきりだね」~
「うん」~
「ちょっと怖くなってきた」~
「大丈夫、灰はオレが守るよ。だってオレは狼だから」~
「たよりない」~
「本当は強いんだぞ」~
「知ってる」

 ずっとずっと、一緒にいてね。
#hr
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#hr
「色無ー、こっちに木の実がいっぱいあるー」~
「はいはい」~
「もー、先に取ってるからね」

「……気付いてたか」~
「殺気を抑えてくれないと話もできませんよ。焦茶さん」~
「単刀直入に言う。群れに戻れ」~
「いやです」~
「あの羊か」~
「手を出したら焦茶さんでも容赦はしません」~
「ボスに歯向かう気か」~
「あなただから言ってるんです。他の奴なら話し合いなどしない」~
「……」~
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「……もう少し利口だと思ってたんだが」~
「オレは馬鹿な男ですよ」~
「……勝手にしろ。そういうところも好きだった。伴侶にするならお前しかいないと思ってたが」~
「すいません」~
「謝るな。みじめになる。……最期まで守ってやれ」~
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「色無、いっぱいとれた。これあげる……色無?」~
「うん、ありがとう、灰……大好きだよ」~

#hr
#ref(pencil_1171.gif)
#hr

 色無狼と灰羊が新しいおうちを見つけました。~
「ここが新しいおうち?」~
「うん、やっと落ち着けるね」~
「疲れた……」~
「じゃ、今日はもう寝ようか」~
「うん……って一緒に?」~
「夜はまだ寒いよ。それにオレの近くにいた方が安全だ」~
「うー……わかった」

「ぐう……」~
「……ってしっかり寝てんじゃないの……」~
「むにゃ……灰……」~
 ぎゅっ~
「ふえぁ!?」~
「……ぐう」~
(寝ぼけて抱きつくなー!! ……ちっとも眠れないっ!)
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無「おはよ、灰。あれ? 顔色悪いね、眠れなかった?」~
灰「誰のせいだと……馬鹿色無!」~
無「???」~

#hr

「よし、今日もいっぱい木の実がとれたぞ。これなら灰も喜んで……あれ?」

「あ、お帰りー色無」~
「ただいま。はい、おみやげ」~
「うわあ、木の実いっぱい。ありがと、色無」~
「今日は珍しいものもみつけたよ」~
「なに? ……やだ、この木の実悪くなってるよー」~
「ふふ、ところがこれ、食べられるんだよ。おいしいよ」~
「えー? ……どれ……」~
 ぱく~
「たまにこうして発酵した実が……灰? 灰?」~
「ふええぇ〜〜……色無がいっぱい〜? 目が回る〜」~
「灰ー!? うわ、酔っ払っちゃったか」~
「きゅー……」
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#hr
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#hr

「灰色の羊なんて」~
「白くない羊なんて」~
「変な子」~
「仲間にもよりつかないし」~
「変な子」~
「変な子」~
「あんな子仲間じゃない」

「……っ!」~
 落ちるような感覚で目が覚めた。~
「夢……か」~
 まだ鼓動が速い。~
 色無と出会う前の、羊の群れの思い出。~
 ひとりぼっちだったときの思い出の夢だ。~
「色無……いろなし」~
 暗闇の中で、隣で眠る色無にすがりつく。~
 規則正しい寝息、心音。色無の暖かさ。~
 ようやく安心して、うとうととまどろむ。~
 色無が、ぎゅっと抱きよせてくれた。~
 もう一人じゃない。~
 仲間の中でも一人ぼっちだった私は、色無に出会えた。~
#ref(pencil_1178.gif)
 この時が永遠に続きますように。~
 祈りながら、眠りに落ちた。

#hr

「ただいまー、おみやげ」~
「おかえりー。今日はなに? なんか甘い匂いする」~
「ふふふ、なんとハチミツ」~
「うわ、蜂の巣まるごと、すごいすごい」~
「はいはい、あわてないの。あーん」~
「あーん」
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 ぱくぱく~
「甘ーい♪ 色無、もっとー」~
「はいはい、あーん……あっ」~
「ふや? あーあ、こぼれちゃった」~
「ああ、垂れちゃうよ……じっとして」~
「ふえ!? い、いろなし?」
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 ぺろ……~
「うん、甘いね」~
「……馬鹿色無!」

#hr

「いちまーい、にまーい」~
「あ、灰、髪の毛に」~
「んー? さんまいめ」~
「はい」~
「きれいだねー」~
「きれいだよ」~
「……お花だよ?」~
「きみもだよ」
#ref(pencil_1183.gif)

「馬鹿色無!」

#hr

「ふあ……朝か」~
「くう……」~
「(小声)おはよ、灰……」~
「むぅ……すー……」~
「ふふ、かわいいなあ……ん?」~
 もぞもぞ~
「……指?」~
「はむ」
#ref(pencil_1184.gif)

「ちょ」~
「あむあむあむ」~
「〜〜〜!!」~
「ちゅぱ……ぐう……」~
「……オレ、いつか灰に食べられちゃうんじゃないだろうか」

#hr

「さむうっ! 寒いよ色無」~
「はいはい、こっちおいで」~
 ぱさぱさ~
「はあ〜……色無の尻尾あったかーい♪」~
「じゃオレも」~
 もふっ~
「ふゃーっ! け、毛皮に顔埋めるなーっ!」~
「ふわふわして気持ちいいよ」~
「馬鹿色無!」
#ref(pencil_1186.gif)

「灰さんごめんなさいだから尻尾かじるのやめていててて」~
「まったく、いきなりあんなところに顔つけるから……」~
「じゃ、この手首のふわふわは?」~
「んー……いいよ」~
 もふっ~
「あー……幸せ」~
「……」~
「灰の手はちっちゃいねー」~
「……」~
「……ちょっと噛んでいい?」~
「だめっ!」

#hr

「灰さん」~
「んー」~
「オレ向こうの木の実を取りたいんですが」~
「取れば」~
「膝の上からどいてくれないと取れないんだけど」~
「やだ」~
「……」
#ref(pencil_1200.gif)

「うわ、ちょっと首ねっこくわえたまま歩かないでよ!どくから!」~
「ひゃーほれはほれれ(いやーこれはこれで)」~
「馬鹿色無!」

#hr

 それは、突然のことだった。~
「色無ー、待ってよー」~
「こっちだよー、灰。……灰?」~
 いつもならすぐに駆けてくる灰が、来ない。~
 振り返った目に入ったのは、倒れている灰だった。~
「灰!?」~

 元々の性格なのか、あまり動きたがらない灰だったが、ここ数日は外に出るのも億劫そうだった。~
 寒くなってきたからだと思っていた。~
「なまけものだなあ、灰は」~
「うっさい」~
 そんなことを言って笑っていたのがつい昨日のこと。~
 本当は、小さな身体には、故郷を離れた地での無理が過ぎたのだ。~
 気付かなかった自分を殴りたいくらい後悔した。~
 二人の小さなねぐらで、灰は苦しそうに浅く息をしている。~
「いろ……なし……」~
「灰……」~
 灰の身体は火がついたように熱かった。~
「ありがと……今まで……本当に、たのし……」~
「馬鹿言うな! ……オレを置いていかないでくれ!」~
 灰の小さな手をきつく握る。~

 羊は嫌いだった。~
 真っ白な、輪郭さえも曖昧な群れは、「色無」の自分を思い知らされるから。~
 「色無」は、群れの中でもただ一匹の、色のない狼。~
 周りに合わせて生きてきて、本当はいつでも一人ぼっちだった。~
 初めて灰を見たときから、心奪われた。~
 白い白い、色のない羊たちの中で、たった一匹の灰色の羊。~
 色のない羊たちに混じらず、まっすぐに見返してきた。~
 自分と同じようで、全く違う灰色の羊を、いつしかこんなにも大切に思うようになっていた。~

 置いていかないでくれ。~
 オレを本当の一人ぼっちにしないでくれ。~

 ねぐらの外に出て、駆け出す。~
 いつか、焦茶が教えてくれた熱病の草。~
 具合の悪くなったときにそれを食べて治すのだという。~
 灰に効くかどうかは分からないが、今はじっとしていられなかった。~
 岩が足を切り、枝が毛皮を裂く。~
 それでも走り続けた。~
「……あった!」~
 ねぐらに戻って、灰の頬に触れる。~
 熱いくらいだが、今はさっきより穏やかに息をしているようだ。~
「……効いてくれ」~
 口の中で噛み切った薬草を灰の口に流し込む。~
 狼には苦すぎる草だが、今はただ灰を助けたかった。~

 一晩中、灰を抱いていた。~
 眠ったらいなくなってしまいそうで、ずっと灰の寝顔を見つめていた。~
 しかし、いつしかまどろんでいたらしい。~
 はっと目を覚ましたときにはねぐらに光が差し込んでいた。~
「灰……灰!」~
 腕の中の羊に呼びかける。~
 動かない。~
 灰の頬は、昨日の熱が嘘のように冷たくなっていた。~
「……っ!!」~
 こらえきれない嗚咽が漏れた。~
 灰を抱きしめる。~
「灰……っ!!」~

「ー……ろな、し?」~
「!?」~
「痛いよ、色無……」~
「灰!」~
 もぞ、と灰色の綿毛が動く。~
「おはよ、色無……うわ、何で泣いてるの!?」~
「はは……ははは」~
「ちょっと、どっか痛いの? 色無?」~
 愛しい灰色の姿が滲まないよう、馬鹿のように流れる涙をぬぐった。~
「うん、大丈夫……大丈夫だよ。おはよう、灰」~

二人の上には、暖かい光が差していた。
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#hr
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#hr

 水猫と緑ねずみ~
「にゃあ、ねずみを捕まえました。これでようやくごはんが食べられます」~
「……つかまっちゃった」~
「邪魔者はいません、覚悟ー」~
「あなた一人?」~
「そうです、一人です……」~
「私も一人ぼっちだった。つまらない人生だったけど、最後にだれかをお腹いっぱいにできるならいいかもね」~
「……」~
「どうしたの? 食べないの?」~
「うえ……ごめんなさいぃ……やっぱり食べられません」~
「おかしな猫。ああ、でもこれで私たち、一人ぼっちじゃなくなったのね」~
「うええぇん」
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#hr

 白猫黒猫~
 ここはとあるペットショップ。二匹の子猫が買われるのを待っています。~
「おきゃくさん、こないねー」~
「そうね」~
「くろちゃんとおなじおうちがいいなー」~
「むりね」~
「わかんないよー?」~
 一人の紳士がやってきました。白が買われていくようです。~
「……やっぱり。いっしょになんていられないのよ」~
「くろちゃん、またあおうねー」~
「むりよ。さよなら、しろ」~
 一人の婦人がやってきました。黒が買われていくようです。~
「どこでもおなじよ……しろはいないもの」

「お父さん、お母さん、おかえりなさい! ……え? プレゼント?」~
「あっ!」~
「あっ!?」~
「うわあ、かわいい猫、二匹も! ありがとう!」~
「うふふ、くろちゃん、いっしょのおうちになったね」~
「うん」~
「よかったね」~
「うん」
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 ここはとある少年の家。二匹の子猫は、今日も一緒に過ごしています。

#hr






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